記者会見

上川外務大臣会見記録

(令和6年5月14日(火曜日)16時44分 於:本省会見室)

上川外務大臣会見の様子

冒頭発言

経団連によるグローバル・サウスとの連携強化に関する提言

【上川外務大臣】私(上川大臣)から一点ございます。
 先ほど、経団連の安永開発協力推進委員長が来訪され、グローバル・サウスとの連携に関する提言をいただきました。日本が「必要な国」として選ばれることが重要との点、大いに賛同いたします。
 私(上川大臣)も、就任以来、率先して「経済外交の新しいフロンティア」を掲げ、一貫してグローバル・サウスとの連携を重視しております。しかし、ひとくちにグローバル・サウスといっても、これらの諸国は一枚岩ではなく、地域ごと、国ごとの事情や、また、歴史的な背景がございます。こうしたことを踏まえまして、丁寧に対応する必要があると考えております。
 その観点から、今月初めのアフリカ及び南西アジアへの訪問も含め、大臣就任以来、東南アジア、中東、太平洋島嶼国、中南米等の現場に足を運んでまいりました。現地での外相会談や、日本企業を含みます様々な関係者との意見交換を通じまして、日本への高い信頼と期待が感じられました。
 このような経験を通じまして、グローバル・サウスの活力を我が国の成長に取り組むためには、クロスボーダーな活動を展開する日本企業を、効果的にサポートする必要があると実感をいたしたところであります。
 こうした観点から、先般、まずは、アフリカで国境を越えて、大きなスケールで事業を展開する日本企業からの期待に応えるため、国ごとではなく、広域的な視点から対応できる経済広域担当官を指名し、企業の問題意識や実情、そして、ニーズについてしっかり情報収集するよう指示いたしました。
 また、「経済外交強化のための『共創プラットフォーム』」も活用して、相手国の課題解決と同時に、我が国の経済成長にもつなげてまいります。
 日本が、強くしなやかな経済力で、更に世界に存在感を示すことができるよう、今回の提言も踏まえて、経団連を始めとする経済界と緊密に連携しながら、引き続き、取り組んでまいります。
 私(上川大臣)からは以上です。

韓国外交部長官の訪中

【共同通信 西山記者】韓国の趙兌烈(チョ・テヨル)外相が、13日、韓国外相として6年半ぶりに、中国・北京を訪問しました。訪問に関する日本政府の受け止めを教えてください。また、日中韓首脳会談の調整状況や、今回の訪問が、日中韓首脳会談にどのような影響を与えるのか、見解をよろしくお願いします。

【上川外務大臣】韓国の趙兌烈(チョ・テヨル)外交部長官は、13日、中国・北京を訪問し、中韓外相会談を実施したと承知しております。
 日中韓の三か国は、地域の平和と繁栄に対する大きな責任を共有しており、我が国としても、今回の訪問につきましては、関心を持って注視しているところであります。
 また、日中韓サミットにつきましては、開催日程は決まっておりませんが、昨年11月の日中韓外相会議におきまして、なるべく早期で、適切な時期のサミット開催に向け、作業を加速させることで一致をしているところであります。我が国といたしましては、引き続き、議長国であります韓国の取組を支持してまいります。

ラファハでの国連職員への攻撃

【朝日新聞 松山記者】中東情勢について伺います。13日に、ガザ地区で、国連の車列が攻撃を受けて、職員の方がお一人亡くなられたという報道があります。午前の長官会見でも、長官のご発言、ありましたけれども、その後、日本政府として、把握されている情報、何か更新などありましたら教えてください。

【上川外務大臣】5月13日、現地時間でありますが、ガザ地区ラファハにおいて、国連職員が攻撃を受け、1名が死亡、1名が負傷したと承知しております。
 ガザ地区では、これまでも、援助関係者を含みます多くの民間人が攻撃を受け、犠牲となっており、国連職員や、ガザの人々のために必要な支援物資を届けるべく懸命に働く援助関係者を含みます民間人が被害を受けていることを、深く憂慮しております。全ての犠牲者の方々に哀悼の誠を捧げ、御遺族に対し哀悼の意を表し、負傷者の方々に心からお見舞いを申し上げます。
 我が国は、これ以上、一般市民や援助関係者の死傷者が出ないよう、引き続き、全ての関係者が、国際人道法を含む国際法に従って行動することを求めてまいります。

米国による臨界前核実験

【中国新聞 宮野記者】米国が、2024年前半と25年前半に、臨界前核実験を計画していると、中国新聞の取材で判明しました。また、ロシアも実験の準備しているという可能性が報じられています。臨界前核実験に関しては、核兵器の廃絶に逆行するとして、広島市や被爆者は抗議しています。こうした計画についての受け止めと、対応をお伺いします。

【上川外務大臣】一般的に、この未臨界実験でありますが、包括的核実験禁止条約(CTBT)におきまして、禁止されている核爆発を伴うものではないものと承知しております。
 未臨界実験等、核爆発を伴わない核実験の扱いにつきましては、「核兵器のない世界」を目指すとの立場から、核軍縮に取り組んでいく中におきまして、今後検討すべき課題であると考えているところであります。
 我が国は、この「核兵器のない世界」に向けまして、CTBTの早期発効を目指しつつ、核戦力の透明性の向上、FMCTの早期開始交渉開始、3月の「核軍縮・不拡散」に関します安保理閣僚級会合の主催といった、現実的かつ実践的な取組を行っているところであります。

日本への原爆投下に関するグラハム米上院議員の発言

【読売新聞 工藤記者】米国の共和党のリンゼイ・グラハム上院議員が、広島と長崎への原爆の投下をめぐって、それを正当化するような発言を繰り返しておられます。8日にも、そうした発言があり、大臣の方からも申入れをしたと明らかにされましたが、12日も、また正当化するような発言がございました。こうした発言が繰り返されることについての受け止めと、今後の対応について、よろしくお願いいたします。

【上川外務大臣】ご指摘をいただきました発言については、承知しているところであります。まさに、こうした発言が繰り返されたことにつきましては、極めて残念に思います。
 我が国としては、広島及び長崎に対する原爆投下は、大変多くの尊い命を奪い、病気や障害などで、言葉に尽くせない苦難を強いてきたものでありまして、人道上極めて遺憾な事態をもたらしたものと認識しております。また、政府といたしましては、かねてから明らかにしてきたとおり、核兵器の使用は、その絶大な破壊力、殺傷力の故に、国際法の思想的基盤にあります人道主義の精神に合致しないと考えております。
 このような広島及び長崎に対します原爆投下に関する日本側の考え方につきまして、先般の上院歳出委員会の小委員会におけるやり取りを受けまして、米国政府及びグラハム上院議員議員事務所に申し入れを行ったところでございます。
 いずれにいたしましても、引き続き、唯一の戦争被爆国として、核兵器による広島・長崎の惨禍は、決して繰り返してはならないとの信念の下、「核兵器のない世界」の実現に向けまして、米国とも協力をしながら、現実的かつ実践的な取組を積み重ねるとともに、グラハム上院議員を含めまして、被爆の実相の正確な理解を促進するため、不断の努力を行ってまいりたいと考えております。

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