記者会見

上川外務大臣会見記録

(令和6年2月6日(火曜日)17時54分 於:本省会見室)

(動画)上川外務大臣会見の様子

冒頭発言

エチオピア、ソマリア、ケニアへの緊急無償資金協力

【上川外務大臣】本日の閣議におきまして、アフリカの角地域のエチオピア、ソマリア、ケニアに対し、1,000万ドルの緊急無償資金協力を行うことを、私(上川大臣)から発言いたしました。
  これらの国は、過去3年にわたる干ばつや、昨今の国際情勢を受けた世界的な食料・エネルギー価格の高騰等の複合的な影響によって、深刻な人道状況に直面しています。こうした中で、昨年末に発生した洪水により、特に甚大な被害を受け、人道的見地から看過し得ない状況にあることから、支援を行うこととしたものであります。
 今回の協力は、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)及び国際移住機関(IOM)などの国際機関を通じて、一時的避難施設、水・衛生などの分野で人道支援を実施するものであります。水は命の根幹であり、人間の安全保障の観点からも、水・衛生を確保していく必要があります。
  気候変動は、水関連災害のリスクを増大させ、世界の災害の約8割が水に関連したものであると言われています。日本は、気候変動の緩和策・適応策の両方を目指す取組にも着目した、水に関する具体的貢献として、「熊本水イニシアティブ」を主導しています。
 また、昨年3月に行われました第3回国連・水会議に、私(上川大臣)が総理特使として出席した際には、洪水を未然に防止し、発生時の被害を軽減する観点から、流域管理を含む、統合水資源管理の重要性を指摘したところであります。
  我が国として、今後こうした協力についても強化していく方針であります。
 私(上川大臣)からは、以上です。

北方領土問題

【NHK 五十嵐記者】北方領土の関連で伺います。明日2月7日は、北方領土の日です。ロシアによるウクライナへの軍事侵攻で、日露交渉が停滞している中、元島民らは、北方領土の早期返還や北方墓参の再開などを訴えています。北方領土をめぐる日本の立場について伺います。

【上川外務大臣】御指摘のとおり、明日2月7日は、「北方領土の日」であります。
 北方領土は、我が国が主権を有する島々であります。我が国固有の領土であります。我が国として、このロシアによる北方領土の占拠については、法的根拠がなく、不法占拠されているという立場であります。このような北方領土の不法占拠は、我が国として受け入れられるものではありません。
 ロシアは、ウクライナ侵略開始の1か月後の2022年3月に、日本の対露制裁等を理由に、日本との平和条約に関する交渉を継続するつもりはないと一方的に発表をしました。
 この状況は、現在も続いており、残念ながら、現在、平和条約交渉について、何か具体的に申し上げられるような状況にはございませんが、政府としては、北方領土問題を解決し、平和条約を締結するとの方針を堅持してまいります。

北方領土問題(膠着状態の打開)

【北海道新聞 荒谷記者】関連で伺います。元島民は、もう既に、平均年齢は88歳を超えていて、政府のこの領土の返還交渉や墓参の動きが見えない状況に、もどかしいとの声も聞かれています、日本が、今、対露制裁を継続せざるを得ない状況ではありますけれども、こうした状況が、いつまで続くとお考えなのか、また、こうした動かないというような状態が続くのであれば、何か新しい策を検討するとの考えはありますでしょうか。

【上川外務大臣】ロシアは、ウクライナ侵略開始の1か月後の2022年3月に、日本の対露制裁等を理由に、日本との平和条約に関する交渉を継続するつもりはないと一方的に発表いたしました。
 この状況は、現在も続いておりまして、残念ながら、現在平和条約交渉について、何か具体的に申し上げられる状況にはありませんが、政府としては、北方領土問題を解決し、平和条約を締結するとの方針を堅持してまいります。
 また、北方墓参につきまして、政府として、その再開を、日露関係の最優先事項の一つとして位置付けております。ご指摘のとおり、ご高齢となられました元島民の方々も、その再会を心から望んでおられます。
 政府といたしましては、様々なレベルで、ロシア側への働きかけを続けてきておりまして、墓参の枠組みが維持されていることについては、確認が取れておりますが、残念ながら、ロシア側から、これらの再開に向けた肯定的な反応は得られていない状況にあります。
 政府といたしましては、元島民の方々の切実なるお気持ちに、何とか応えたいとの強い思いを持って、ロシア側に対しまして、今は特に、北方墓参に重点を置いて、事業の再開を、引き続き、強く求めてまいります。

北方領土問題(北方墓参・「北方四島周辺水域操業枠組協定」)

【産経新聞 原川記者】私も北方領土問題に関してお伺いします。関連してお伺いします。北方墓参の再開とともに、今、途絶えているのが、日露間の協定に基づく政府間協議が行われていないことによって、北方四島周辺海域で、以前はできた安全操業ができない、ホッケとかスケトウダラとかタコとかですね、漁ができないという問題があります。こちらの方、この安全操業の実施、こちらも大きな課題だと思うんですけれども、これについては、どのように取り組もうとされているか、また、どういう見通しがあるのかについて教えてください。よろしくお願いします。

【上川外務大臣】漁業につきましては、政府といたしまして、日露が、隣国として対処する必要のある事項の一つと位置づけております。中でも、北方四島周辺水域操業枠組協定、ご指摘いただきましたけれども、これは、北方四島周辺水域におきまして、我が国漁船による安全操業を実現するものとして、大変重要な意義を持つものと考えております。
 こうした観点も含めまして、政府としては、様々なレベルでのロシア側への働きかけを続けてきておりますが、残念ながら、ロシア側から、これらの再開に向けました肯定的な反応は得られていないという状況にございます。
 政府としては、先ほど、元島民の方々の様々な切実なお気持ちに答えたい、という強い思いを持って、ロシア側に対して、今、特に北方墓参に重点を置いて、事業の再開を、引き続き、強く求めてまいります。また、この枠組協定の下での操業、これも早期に実施することができるよう、引き続き、ロシア側に強く働きかけてまいりたいと考えております。

中国によるサイバー攻撃

【読売新聞 上村記者】外務省をめぐるサイバー攻撃事案についてお伺いします。中国によるサイバー攻撃によって、外務省の公電が漏えいしていたと、読売新聞などが報じました。外務省として把握している事実関係と、外務省としての対応をお聞かせください。

【上川外務大臣】御指摘の報道につきましては、承知をしているところでございますが、情報セキュリティに関する事案につきましては、その性質上、回答を差し控えさせていただきたいと思います。
 その上で、このサイバー安全保障分野での対応能力の向上、これは、政府として重要な課題と認識しております。
 また、情報セキュリティは、米国をはじめとする関係国との情報共有、これを進め、連携を強化していくにあたっての基盤でもあると認識しております。外務省といたしましても、関連省庁と緊密に連携しつつ、引き続き、しっかりと取り組んでまいります。

尖閣諸島領空における退去警告

【毎日新聞 村尾記者】中国の関係で伺います。中国海警局の船が、1月より、尖閣諸島周辺を飛行する航空機に対して、無線で退去するよう警告を始め、それに対し、外交ルートでの抗議を行ったとされていますけれども、改めて事実関係と、あと、中国側が行動をエスカレートさせているのか、そういったことを含めた分析状況について伺います。

【上川外務大臣】御指摘の報道につきましては、承知をしているところでございます。
 現場におきまして、個別具体の事象に関する対応につきまして、逐一お答えすることは差し控えたいと思いますが、一般論として、中国側が、尖閣諸島に関する独自の主張を行う場合には、我が国として、厳重に抗議を行ってきております。
 政府としては、国民の生命・財産、及び我が国の領土・領海・領空を断固として守るとの方針の下、引き続き、緊張感を持って、関係省庁間で連携し、情報収集に努めるとともに、尖閣諸島周辺の警戒監視に万全を尽くしてまいります。同時に、中国側に対しては、今後とも冷静かつ毅然と対応してまいります。

ガザ情勢(UNRWAの独立評価グループ設置)

【共同通信 桂田記者】国連のパレスチナ難民救済事業機関UNRWAについて伺います。国連のグテーレス事務局長は、声明で、イスラム組織ハマスのイスラエル奇襲にスタッフが関与したとの疑惑が浮上しているUNRWAについて、組織の中立性や活動の妥当性などを独立して評価するグループを設置したと明らかにしました。今回の動きへの受け止めを伺います。また、3月後半に中間報告、4月後半に最終報告書をまとめる見通しとのことですが、日本の資金拠出再開可否を判断するタイミングについて、どのようにお考えか、お聞かせください。

【上川外務大臣】御指摘のUNRWA職員の疑惑につきましては、現在、国連の内部監査部でありますOIOSによる調査が開始されているところであります。我が国といたしましては、国連側に対しまして、関係国と緊密にコミュニケーションを取りつつ、本件疑惑に係る調査を、迅速かつ完全な形で実施し、ガバナンスの強化を含め、適切な対応をとることを強く求めてきたところでございます。
 こうした中で、この国連による調査に加えまして、今回、グテーレス国連事務総長が、UNRWAの中立性の確保や、また、疑惑への対処を評価するための独立した評価グループ、これを任命したことは、我が国として前向きに捉えているところでございます。
 現時点で、お尋ねの判断のタイミング、ということにつきましては、予断を許すことはなかなか難しいことではございますが、UNRWAが、本来の役割を果たす上では、同機関のガバナンスが、信頼あるものであること、これが前提であると考えておりまして、引き続き、国連やUNRWA、また、関係国と緊密にコミュニケーションを取りながら、我が国の対応につきましても、検討してまいりたいと考えております。

ガザ情勢(イスラエル非難)

【インディペンデント・ウェブ・ジャーナル 濱本記者】イスラエル・パレスチナ情勢について伺います。米国のジャーナリスト保護協会CPJが、昨年末、ガザで殺害されたジャーナリストが、この時点で、過去最多の68人に上ると発表し、イスラエル軍による攻撃で、ジャーナリストとその家族が標的になったとみられるパターンが、特に懸念される、と強調しました。これに対して日本政府として、イスラエルに自制を求め、その行為に対し、非難を行うお考えはおありでしょうか。

【上川外務大臣】御指摘の米国のNPO団体であります「ジャーナリスト保護協会」による、昨年末の発表につきましては、承知をしているところであります。
 現地の状況に関する正確な情報を世界に発信するという意味で、メディアが果たす役割は、重要と認識をしております。これらの関係者を含めまして、民間人は保護されなければならず、これまでも日本政府として、全ての当事者に対しまして、国際人道法を含みます国際法の順守や、民間人の安全確保を求めてきたところでございます。
 日本政府といたしましては、引き続き、事態の早期沈静化に向けまして、外交努力を粘り強く積極的に続けてまいります。

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