記者会見

小林外務報道官会見記録

(令和5年10月25日(水曜日)16時02分 於:本省会見室)

イスラエル・パレスチナ情勢(グテーレス事務総長の発言、上川大臣のイスラエル訪問)

【共同通信 林記者】中東情勢について2点お伺いします。  国連安保理のガザ情勢をめぐる閣僚協議において、グテーレス事務総長が、イスラエル軍によるガザ空爆を国際人道法違反だということで非難され、人道目的の即時停止を求められました。一方、イスラエルの方は、「国連との関係を見直す」という強い言葉で、反発していて、また、米国のブリンケン米国務長官は、イスラエルの自衛権を認める一方で、戦闘の一時停止も考慮すべきだというふうに述べておられます。日本政府として、こういった状況、あるいは、それぞれの発言・立場について、どのように受け止めて評価されていますでしょうか。
 あと、別で、上川大臣が、11月上旬に、イスラエル訪問を検討しているという報道がありまして、その方向で、調整が進められているのでしょうか。調整状況をお願いします。

【小林外務報道官】今、二つの御質問ですが、まず、上川大臣の訪問に関する報道については承知していますけれども、何ら決まっていないということでございます。
 それから、最初にご質問のあった国連安保理での公開討論における様々なやり取りについてですが、その発言の一つ一つにコメントすることは差し控えたいと思います。
 その上で申し上げますが、まず、公開討論におきましては、我が国の石兼大使から、ハマス等によるテロ攻撃を改めて断固として非難するということとともに、人質の即時解放や一般市民の安全確保を求めたところです。また、米国を始めとする各国による外交努力を歓迎するということとともに、事態の早期沈静化に向けて、安保理の一致した行動が不可欠であるということを強調しました。
 政府としては、刻々と動く現地情勢を踏まえながら、事態の早期沈静化や、人道状況の改善に向け、国際社会とも連携しつつ、関係者に働きかけるなど、引き続き、積極的に取り組んでいくということを考えています。
 1点補足として申し上げますと、いろいろと、一時的に戦闘を休止するというような発言が、いろいろなところで出ています。現状に鑑みて、人道的な観点から、私どもは、これまで、ハマス等のパレスチナ武装勢力のテロ攻撃を断固として非難すると言った上で、人質となっている人々の即時解放や、一般市民の安全確保、全ての当事者が国際法を踏まえて行動すること、そして事態が早期に沈静化することが極めて重要だと述べてきていますけれども、まさに現状に鑑みて、人道的な観点から、一時的に戦闘を休止することは日本としても重要だと考えています。

イスラエル・パレスチナ情勢(邦人保護、商用便の停止等)

【朝日新聞 長﨑記者】私も中東情勢の関係ですが、イスラエルと日本の直行便が、定期便ですね、今日の運行を最後に、来年春まで運休することになりました。邦人に退避を求めている政府として、今後の対応に変化があるのか、今、周辺国に自衛隊機が、まだ待機している状態だと思うんですが、これをイスラエルに派遣することがあるのか、このあたりを教えてください。

【小林外務報道官】まず、事実関係からですが、イスラエルのエルアル航空は、本年3月以降、テルアビブ発成田空港行きの直行便を週2便運航しておりましたけれども、この直行便が、今般、10月25日の便を最後に運休されることになったと承知しています。
 このエルアル航空による日本行き直行便は、当初から、冬期は運休が計画されていたというところですが、実際の需要等を踏まえて、今般、当初の予定をやや早めて運休することになったと承知しています。
 なお、テルアビブの定期商用便は、現在、便数は少なくなっていますが、エルアル航空を含め、引き続き、運行しており、在留邦人に対しては、出国を希望する方は、商用便が運行されている間に、早期出国いただくよう改めて呼びかけてきています。
 また、今後の不測の事態に備え、政府としては、自衛隊機をヨルダンに待機させているところです。
 政府としては、引き続き、在留邦人の安全確保のために、全力を挙げて対応していく所存でございます。

イスラエル・パレスチナ情勢(アル・アハリ病院の破壊)

【読売新聞 谷川記者】ガザのアル・アハリ病院で17日に起きた爆発について、英国のスナク首相は、ガザからのミサイルの可能性が高い、という見方を示しました。ハマス側は、イスラエル軍の空爆と主張しており、情報戦の様相を呈していますが、爆発の要因をめぐる日本政府の見解を伺います。

【小林外務報道官】10月17日に、ガザ地区のアル・アハリ病院が破壊されて、多数の死傷者が発生した事案の原因主体につきましては、イスラエル側とハマス・イスラム聖戦側が、それぞれ異なった主張を行っており、当事者の主張のみでの断定は困難なところです。
 その上で、我が国としては、これまで確認した各種情報を十分に考慮して、総合的な判断として、本件はイスラエル軍の攻撃によるものではないと考えております。

イスラエル・パレスチナ情勢(ガザ地区の子供の被害)

【アナドル通信 フルカン記者】パレスチナ保健省の発表によると、ガザで過去2週間半でイスラエルの攻撃により、6,000人近くの民間人が命を落とした、ガザで殺害された人々のほぼ半数は子供でした。これについて質問したいと思います。日本政府は、ガザで民間人に死者を出したイスラエルに対しても対応をするつもりですか。日本政府は、イスラエルの攻撃の中で、ガザで罪のない子供たちが殺されたことについてどう思いますか。

【小林外務報道官】まず、ガザ地区及び周辺におきまして、既に多数の死傷者が発生しています。現地の緊張度は、刻一刻増していると認識しています。
 情勢は全く予断を許さない状況でございまして、我が国としても、非常に深刻な懸念を持って情勢を注視している状況でございます。
 これまでも申し上げていますけれども、我が国としては、今般のハマス等のパレスチナ武装勢力によるテロ攻撃を断固として非難した上で、第一に、人質となっている人々の即時解放及び一般市民の安全の確保、第二に、全ての当事者が国際法を踏まえて行動すること、第三に、事態が早期に沈静化することが極めて重要である、という一貫した立場で、これまで取り組んでまいりました。
 イスラエルとの関係におきましては、上川大臣がコーヘン・イスラエル外務大臣と、それから、辻外務副大臣が駐日イスラエル大使とも会談をいたしまして、罪のない一般市民の方が重要であり、全ての当事者が、国際人道法に則した対応を行うことが必要であるとして、一般市民に必要な支援が行き届くよう、人道支援活動が可能な環境保護のために、協力を要請することもしてきています。

イスラエル・パレスチナ情勢(邦人保護)

【NHK 加藤記者】中東関連ですが、イスラエル、またはパレスチナ自治区、ガザ地区で、在留邦人、最新の情報として、何人確認されているのかということと、邦人の安全確保に向けて、外務省として、どのように取り組んでいくのか、改めてお考えを教えていただければと思います。

【小林外務報道官】今、イスラエル・パレスチナ自治区における在留邦人数は約800人でございます。随時安全の確認を行ってきています。
 ガザ地区には、少数の邦人が滞在しています。これらの邦人とも緊密に連絡を取り合ってきています。政府としては、同地区から退避させるために、関係国・機関に精力的に働きかけを行いつつ、全力で取り組んでいるところです。
 いずれにせよ、現時点で、在留邦人の生命・身体に被害があったという報告は受けておりません。
 政府としては、引き続き、在留邦人の安全確保のために全力を挙げて対応していく所存でございます。

記者会見へ戻る