記者会見

吉田外務報道官会見記録

(令和3年3月31日(水曜日)15時47分 於:本省会見室)

ミャンマー情勢(日本政府の姿勢)

【テレビ東京 加藤記者】ミャンマー情勢についてお伺いいたします。先日の国軍記念日でも、ミャンマーでは多くの国民が殺されるなど、ミャンマー情勢は、日に日に悪化の一途をたどっているように思えますが、これまで日本政府は目立った制裁を行っておらず、軍部とのチャンネルを生かした対話による解決を続けてきたと思います。こちらの方針は、現下の状況に至っても変わりはないのか、日本政府としての現在の姿勢をお願いいたします。
 
【吉田外務報道官】ミャンマー情勢につきましては、ご指摘のように悪化の状況にあると認識をしています。先日の国軍記念日における状況を踏まえて、改めて日本政府の立場を外務大臣から談話で示していただいたと思います。これまで日本政府としては、クーデターの発生以来、民間人に対する暴力の即時停止、拘束された関係者の解放、それから民主的な政治体制の早期回復を強く求めてきているところです。
 日本独自の役割ということで、ご質問にもありましたけれども、ミャンマー側へのパイプ、こういったことも生かしながら、働きかけを鋭意継続しています。これまでのところ、目に見えた変化がないという状況にはありますけれども、引き続き関係国と連携をして、粘り強く、そういった働きかけを継続していきたいと思います。
 一方におきまして、情勢が悪化しているということもあり、引き続き在留邦人の安全確保ですとか、現地の日系企業の利益の保護には、最善を尽くしていく必要があります。それからまたミャンマーの国民の方々、こういった人への必要な支援を差し伸べていくことは、今後とも必要かと思っています。こういった観点から、ミャンマー側の国家統治評議会の下にある「政体」に対して、引き続き働きかけを行っていく必要があろうかと思っています。こういったミャンマー側への接触・やり取りにつきましては、真に必要かつ最低限なものに限って実施していますけれども、今後もそのように対応する考えです。
 他方、こういったミャンマー側への働きかけ、接触等々は、これがこの軍政下にある「政権」そのものに対する日本政府の立場、これを予断するものではないということも重ねて強調しておきたいと思います。
 ミャンマーとの関係では、日本は最大の経済援助、ODAをしてきている国です。ミャンマーに対する経済協力は、人道上の必要性が高い案件、それから国民生活の向上に資する案件、こういったものは支援の緊急性が高いと考えていますので、先般ユニセフを通じたコールド・チェーン整備支援であるとか、それからWFPやICRCを通じたラカイン州の国内避難民支援、こういったものについては決定しています。これは、先ほど申し上げたような考え方に基づくものであります。
 一方、それ以外の新たな経済協力、こういったものにつきましては、クーデター後、ミャンマー国軍が指導する体制との間で新たに決定したODA案件はありません。今後についても、現時点で早急に判断すべき案件はないと、このように考えています。

ミャンマー情勢(米国の政府職員に対する退避命令)

【読売新聞 大薮記者】引き続いてミャンマー情勢に関しまして、米国は在ミャンマーの米国大使館員に、出国の指示を出したという情報もございますけれども、日本政府として、今、同様の対応を採られる必要性について、どのように考えていらっしゃいますでしょうか。
 
【吉田外務報道官】今、ご質問がございましたけれども、米国政府は、米国時間の30日に、ミャンマーへの渡航をしないということをこれまで求めてきているけれども、それに加えて、非緊急の米政府職員とその家族に対して、出国する命令を出すという発表を行ったかと承知しています。現時点で、日本政府として、日本政府の関係者に対して、国外退去を指示するといったような検討は行ってはおりません。ただ、状況・事態の推移を、引き続きよく注視をしてまいりたいと考えています。

ミャンマー情勢(邦人保護)

【読売新聞 大薮記者】引き続きまして、ミャンマーにいる日本人の、邦人保護といった観点で、ミャンマー外に出国するように求めるですとか、あるいはコロナでは武漢にチャーター機を出したりしましたけれども、何か保護に関して、今後動きをとられる予定等はございますでしょうか。
 
【吉田外務報道官】ミャンマーの在留邦人の方々、多数民間の方がいらっしゃいます。大使館から、随時領事メールを出させていただいていますし、デモに関する情報の発出、それから注意喚起として、不要不急の外出は控えてくださいということを呼びかけてきています。それから3月9日には、いわゆる速報的なものとして、「スポット情報」を出して、商用便による帰国の是非を検討するよう呼びかけておりまして、これまでに数回、全日空の直行便で出国がなされています。近々またそういうことが計画されているかと、このように思います。
 政府としては、平素から在留邦人の保護、退避が必要となるような場合、様々な状況を想定して、必要な準備・検討は行っています。邦人保護の強化を図るという考え方においては、引き続き万全を期していく考えであります。
まずは、ミャンマーに滞在する邦人の安全確保という観点から、不断にそういった検討は行ってまいりたいと思っています。

ミャンマー情勢(日本政府による働きかけ)

【朝日新聞 安倍記者】先ほどのミャンマーへの働きかけについて言及がありましたけれども、日本独自の役割というのは、これまでも説明してこられたところだと思いますが、その役割というのが、なかなか表では見えづらい印象を持っています。これまでに具体的に、国軍の誰にどういった働きかけを行ってきたのでしょうか。例えばフライン司令官にも、直接こういった働きかけは行ってきたのでしょうか。
 
【吉田外務報道官】従来から、日本政府としてミャンマーの国軍関係者、様々なレベルで働きかけを行ってきているということを申し上げてきているかと思います。働きかけの相手方、ルート、これは様々ございますので、詳らかにしておりません。
 それから、今、言及のありましたフライン司令官に対して直接やっているかどうか、こういったことも含めて、現況、ミャンマーサイドとのやり取りについては、極めて我々としても配慮しながら行っている段階ですので、具体的な相手方に言及することは差し控えたいと思います。

ミャンマー情勢(対ミャンマー投資に関するブリンケン国務長官の発言)

【朝日新聞 安倍記者】もう一点、ミャンマーに関してですが、米国のブリンケン国務長官が、軍への資金源を断つために、各国の政府や企業にミャンマーへの投資を見直すように求めています。こうした発言を受けて、今後何らかの対応を検討するお考えはあるのでしょうか。
 
【吉田外務報道官】ブリンケン国務長官が、30日の記者会見において言及された中に、世界各地の国・企業、ミャンマー軍を支援する事業へ多額の投資をしているものがあると、こうした国・企業に対して、再考すべきだといった趣旨のご発言をされたことは承知しています。
 日本政府としては、米国との間では、ミャンマー情勢について相当緊密に意思疎通を行ってきております。そういったものは、先般、直接ブリンケン国務長官自身がお見えになった日米外相会談であるとか、「2+2」とか、そういった機会もございますし、加えて事務レベルでの突っ込んだやり取りも行っております。
 他方、今回のそのご発言につきましては、まずは事態の推移、それから米国を含めて関係国がどういう対応をするのか、こういったことをよく注視しながら、一番大事なのはミャンマー「政府」、ミャンマーの「政権」側に、その働きかけの効果を上げていくために、何が最も効果的なのかという観点から考えるべきということであって、そういった状況であるとか、関係国の対応、こういったものを注視しながら考えていくことになろうかと思います。

ミャンマー情勢(ミャンマーに対する経済協力)

【テレビ朝日 佐藤記者】一番最初のテレビ東京さんの質問と今の質問とリンクすると思うんですけれども、確認ですが、ミャンマーに対する支援というところで、例えばこれから国軍側から、国民の生活にも影響してくるであろうインフラ支援というところの要請があった場合に、それを拒否する可能性があるのか、また、今継続している事業についても止める可能性があるのか、そのあたりを再度確認をしたいということと、その場合の日本政府の意図、どういう効果を望むものなのか、そのあたりを教えてください。
 
【吉田外務報道官】ミャンマーへの経済支援、全般に関するご質問と受け止めましたけれども、一部繰り返しになりますが、ミャンマーに対する経済協力は、人道性の必要性が高いもの、国民生活の向上に資するもの、こういったことは実施するということで、実際クーデター以降もそういう対応をしています。
 それ以外の新たな経済協力については、2月1日のクーデター以降、新たに決定したODA案件は現にありません。また、今後についても、現時点で判断すべき案件はないということで、その立場を明らかにしてきています。
 これは昨日の参議院外交防衛委員会におきまして、茂木外務大臣も「新規の案件はない」と、明確な立場を取っているというふうに明言されているかと思います。現に実施中の案件ですけれども、様々なものがありますので、その案件の目的や内容・性質・現地情勢、こういったものを総合的に勘案しながら、具体的に検討を加えていくという考え方をしています。
 日本は、ミャンマーの民主化に向けて様々な支援を行ってきた。その結果として、最大の援助国であります。対ミャンマー経済協力の今後の対応、まず、ミャンマーにおける事態の沈静化の度合い、それから、民主的な体制の回復に向けた動向、そのためにどのような対応が最も効果的なのかということを、先ほど申し上げた最大の援助国であるという立場を踏まえて、具体的に検討し、対応していくということです。

在日米軍駐留経費負担に係る特別協定

【朝日新聞 北見記者】話題、変わりますけれども、本日、ホストネーションサポートの特別協定の改定議定書が国会で承認されました。そのことに対する受け止めと、22年度以降の交渉の状況に関して教えてください。
 
【吉田外務報道官】ホストネーションサポート、在日米軍駐留経費負担に係る特別協定の改正議定書、本日の参議院本会議でご承認をいただきまして、現行協定の期限が切れる本日に、次の協定の承認が行われて、切れ目なく協定の効果が継続するということになりました。
 協定の交渉につきましては、様々な経緯がありましたけれども、バイデン政権が発足して、まだ米国側の陣容も十分に揃ってないような中で、迅速に、しかも前向きに交渉に対応していただき、短期間で交渉の結果が協定に反映されるこということになったということで、改めて日米間における交渉のやり取りに対して、高い評価をしたいと思います。
 この協定は基本的に、現行水準で1年間、同様の状況を継続するということですので、22年度以降の在り方につきましては、これから日米間で交渉していくことになります。これまでも、このホストネーションサポートにつきましては、在日米軍が、日米安保体制、あるいは、ひいてはこの地域の平和と安定の中核になっているということ、それから現下の厳しい安全保障環境、更には日本の厳しい財政状況、こういったことを踏まえつつ、そういった現状の中における日米の間で協力すべき、多角的な分野、新しい分野、こういったことも視野に入れながら、それぞれの役割を論ずる中で、次の協定の在り方について、議論がされていくというのが望ましいと考えております。
 協定の交渉の今後の推移につきましては、また、そういった段取りが決まったら、然るべく皆様にもお知らせしていくことになろうかと思います。

日韓局長協議

【NHK 渡辺記者】日韓関係についてお伺いしたいと思います。きょう、韓国の鄭義溶(チョン・ウィヨン)外相が発表しまして、李相烈(イ・サンリョル)アジア太平洋局長を日本に派遣したと。日本側はアジア大洋州局長とお会いになると思うんですけれども、この日韓の高官級協議が始まるということは、今後、新しく外相が変わった後に、日韓のやり取りがなかったですけれども、どういった意義を持つのか、今後、日韓関係をどのように動かしていきたいと考えていらっしゃるのか、その辺、日本の立場も含めてお願いします。
 
【吉田外務報道官】我々も報道ベースで承っておりますけれども、韓国の鄭義溶外交部長官が、李相烈・新アジア太平洋局長だと思いますけれども、近く来られて、日韓局長協議をやることを明らかにしたという報道がされているかと思います。
 日韓局長協議につきましては、コロナ禍におきましても、昨年も幾度も、対面は一度だけですけれども10月にソウルで行った。それ以外は、こういう状況だったので、テレビ協議という形で、幾たびも実施してきております。直近だった1月15日に、テレビ協議をやっておりますし、韓国の外交当局との間では、局長レベル含めて意思疎通、これは不断に行ってきておりますけれども、先ほど、鄭義溶長官が言及された日韓局長協議については、近く実施するという方向で調整しております。
 日韓関係につきましては、ご案内のような状況が継続しています。日本政府の立場も、これまで累次に亘って公の場でも申し上げてきておりますし、韓国の当局者に対しては、直接申入れをしてきています。
 他方、同時に、今繰り返しませんけれども、そのような厳しい中にあって、日韓関係を前進させるというのであれば、韓国側にきちんと対応していただくということが必要になろうかと思います。他方、日韓関係は単なる日韓関係に留まらず、北朝鮮情勢などをめぐって、米国とともに連携を進めていかなければならない相手方でもあります。そういった意味においては、日韓の事務当局の責任者が不断に意思疎通する、そういった中で、まずは日米、それから日米韓3か国の連携を推進していくということが重要であるという考えに変わりはありません。局長協議の中身とか日程であるとか、これについては、お示しできるところになれば発表すると思いますけれども、そういった精神で進めていただきたいと思います。

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