記者会見
吉田外務報道官会見記録
(令和3年3月17日(水曜日)15時47分 於:本省会見室)
総理の訪米(外交目的のワクチンの接種)
【毎日新聞 田所記者】必ずしも外務省というよりは政府全体ということかもしれないんですが、昨日、総理が訪米のためのワクチンを接種し、今日、政府職員等がワクチンを接種したということで、また今後、茂木大臣の訪米や岸防衛大臣の訪米の可能性もあると思うんですけれども、外交を目的としたワクチンの優先接種といいますか、そういったことが今後一つの制度として、事実上できる可能性もあるのではないかと思うんですが、ワクチン担当の部分もあるかもしれませんけれども、可能な範囲で教えていただければと思います。
【吉田外務報道官】ご質問にありました、4月前半にも予定されています菅総理大臣の訪米につきましては、記者の皆様も含めて同行の日本の代表団の方々には、ワクチンを接種していただくことになりました。昨日と本日、ワクチン接種していただいているかと承知しています。
これは、やはりコロナが今、蔓延している、更に変異種、変異株のような脅威も出てきている、そういった中で、外国訪問を行うに当たって、念には念を入れた対応ということで、今回ワクチン接種をすることにいたしました。
他方、こういった措置というものが、今後、総理であるとか閣僚の外国訪問において、また必要になるのかどうかということについては、現時点では必ずしも定まったものがあるわけではありません。その時々の感染状況、日本の国内、それから訪問先を含めた海外における感染状況であるとか、そこにおける防疫措置の状況、そういったものを総合的に判断しながら、個別に、またどのようにして万全な対応をとるかということを、検討していくことになろうかと思います。
そういった過程におきましては、政府の関係部署、とりわけコロナについての事務を所掌しておられる厚生労働省であるとか内閣官房とも緊密にやり取りをしていく、このようなことになるかと思います。
日米「2+2」
【朝日新聞 北見記者】昨日開催されました日米「2+2」に関してお伺いいたします。
まず成果というか、終えられての評価を教えてください。その上で、今後日米関係での役割分担の議論を進めていくと思うのですが、日本として、どういう観点に立って、今後整理されていくお考えでしょうか。
【吉田外務報道官】昨日行われました日米安全保障協議委員会、「2+2」ですが、昨日も、共同記者会見の場において、出席閣僚から様々ご発言があったかと思いますけれども、ブリンケン国務長官とオースティン国防長官が、バイデン新政権が発足して、このように早いタイミングで、最初の国外出張として日本を選んで、そろって日本を訪問し、「2+2」を開催した、これは非常に歴史的な意義があると思っています。
加えまして、そういった「2+2」が今回行われたこと自体、バイデン政権、米国が日米同盟、それからインド太平洋地域へのコミットメントを明確にする、そういったことを示していると、このように認識をしています。
成果につきましては、共同発表という形でお示ししていますけれども、インド太平洋地域の戦略環境は、極めてこれまでとは違う次元にある、厳しい状況にあるということで、その中で日米同盟が持つ意義は、かつてなく高まっているということであります。
加えてバイデン政権は、これから一連の安全保障であるとか国防であるとか、政策レビューを進めていくわけですけれども、そういったタイミングに先駆けて、日米間でその戦略環境であるとか、あるいは日米同盟の抑止力、対処力のあり方、強化のあり方について、じっくり議論ができた、これは極めて意義が大きいものであったと、このように認識しています。
その中で、同盟への揺るぎないコミットメントが内外に示されたということ、日米同盟がその地域の平和、安定、繁栄の礎であるという認識を共有したこと、それから日米のみならず、オーストラリア、あるいはインドといった同志国と連携しながら「自由で開かれたインド太平洋」を推進していくことで一致をみたこと、更に、核を含むあらゆる種類の米国の防衛力、軍事力によって、日本への防衛をコミットメントすることが再確認されたこと、こういったことが意義として言えるかと思います。
更に、地域の戦略環境におきましては、特に中国情勢をめぐって、時間をかけた極めて深いやり取りが行われました。結果については、共同声明にお示ししているところであります。当然、北朝鮮の非核化についても意見が交わされて、基本的な認識のすり合わせを行いました。
更に、こうした戦略環境の認識に立って、今後、日米同盟の抑止力、対処力の強化、こういったものを進めていく、米国での各種政策レビューが行われる中で、それと平仄を合わせて、日米間で戦略、政策を緊密にすり合わせていくことが確認されました。その中には拡大抑止、それから宇宙・サイバーといったクロス・ドメイン、領域横断的な協力、こういったものも含まれることになります。
今後の、そういった抑止力、対処力の強化、あるいは任務、役割、分担に関するすり合わせ、こういった中で、日本としての新たな戦略環境に応じた役割、これについて主体的に、検討、取り組んでいくことになろうかと承知しています。
【朝日新聞 北見記者】最後の部分に関連してですね、拡大抑止の関連ですけれども、今年の1月の首脳協議に続けての再確認をされたというふうに思っておりますが、この改めて再確認をされた意義というのは、どういうところにあるんでしょうか。
【吉田外務報道官】拡大抑止につきましては、日米同盟の基本にあります日米安保体制、米国による日本の防衛の中核を占めるものであります。ご案内のように、近年、日本、それからこの地域を取り巻く戦略環境、安全保障環境は極めて厳しいものになっていますし、一層厳しさを増すことが想定されています。こういった共通認識を日米間で共有して、その上に立って、米国が日本の防衛、この地域へのコミットメントを明らかにするという意味で、拡大抑止について改めて確認されたことは有意義であると認識をしています。
ウクライナ国防相の訪日(新型コロナウイルス対策)
【NHK 渡辺記者】テーマ変わりますけれども、先ほど毎日新聞の田所さんの質問に関連するんですけど、対面外交がかなり本格的に始まったという印象を持っているんですけども、今日の外務副大臣との日程で、ウクライナのタラン国防大臣がオンラインでの会談になりました。防衛大臣との会談の方も対面式ではなくなったのは、代表団の中の1人が陽性反応が出たと、日本に到着してからですね。
そうすると、今回例えば米国のデレゲーションは、そういうことはなかったと思いますけれども、今後そういう対面外交再開とか、オリンピックで各国代表団が来るという中で、1人の方が、例えば今回のようになった場合の対応策というのでしょうか、多分個別の案件ごとに検討していくしかないと思うんですけれども、そういう水際対策、対面外交をするに当たって、そのデレゲーションの1人が陽性だった場合にどうなるのか、今回はオンラインでの会談に切り替わりましたけれども、何かそういうことを今後考えていくとかですね、そういったことは外務省の中で検討されているのでしょうか。
【吉田外務報道官】対面外交の再開については、昨年の夏ぐらいから、外務大臣の出張を皮切りに、随時、その時々の状況に応じて、実施をしてきているというところです。先ほども申し上げましたように、その際における防疫措置につきましては、その時々の内外の感染状況、それから各国の防疫対策、それからデレゲーションの日程であるとかその状況、こういったことを踏まえて、個別に検討して、やり取りをした上で実施をしてきています。
今回、ご指摘のあったウクライナの国防大臣のご一行の中に、残念ながら感染者が発生したということで、日本での対面のやり取りについて事情変更が生じたということですけれども、そういったことは当然万全にも万全を期した上でも100%排除はできないということでありますから、そういった場合にどのように対処すべきかということは、実はこれまでの対面外交、これは、日本側から海外に出張する場合、それから日本に外国の閣僚首脳に来ていただく場合、それぞれにおいて内々検討はして、その場合にどうするかということは決めております。
引き続き、そういったことが必要になっていくだろうと思いますし、その時々の状況に応じて、最適な選択肢を取っていくことになろうかと思います。
ミャンマー情勢
【NHK 渡辺記者】ミャンマーの情勢についてお伺いします。その後、いろいろ緊迫した状況が続いていると思うんですが、現時点での現地の状況に対する日本政府としての評価と邦人保護の状況について、現状どういったことを考えていらっしゃるのか、先日スポット情報が出ましたけども、今後の見通しというのは、今、どんな感じなんでしょうか。
【吉田外務報道官】ミャンマー情勢ですけれども、依然として大規模な抗議活動、デモ活動が断続的に行われておりますし、大規模なデモ隊と治安当局が対峙をして、衝突が各地で展開されていると、そういった中で、極めて残念なことではありますけれども、多数の死傷者が継続的に発生しているという状況だと認識をしています。
こういった状況に対しては、これまでも申し上げてきておりますけれども、平和的なデモ活動に対して、治安部隊が実力を行使することは許されるものではなく、日本のみならず国際社会が、繰り返し、暴力を停止するように当局側に呼び掛けている状況にも関わらず、状況が改善しないということを強く非難している状況です。
現地にも、日系の企業に勤められている邦人の方々は、依然として多数残っておられます。現時点では、警官隊が発砲した催涙弾が自宅に着弾した邦人の方がいらっしゃるとか、一時拘束されたジャーナリストの方がいらっしゃったとか、そういったことはありましたけれども、怪我であるとか、大事に至るような被害があったという情報には接してはおりません。
現地の日本大使館からは、スポット情報、それから随時、領事メールで、デモに関する情報を発出しておりますし、在留邦人の方には引き続き注意をお願いをして、不要不急の外出を控えるよう、呼びかけているところです。また、3月9日には、スポット情報を出して、ある意味、速報的に注意を促すものですけれども、商用便による帰国の是非を検討するように呼びかけています。
また、この一両日、デモ隊が、外国企業が運営する工場の周辺でデモ活動を行っていることによって、出火や放火といった事態が起きているという情報にも接しております。日系企業の中には操業停止であるとか在宅勤務、こういった自衛措置をとっておられるところも多数ありますけれども、万全を期す観点から、現地のジェトロとも連携をして、引き続き、日系企業の状況把握に努めていくと、こういった姿勢で臨んでいるところであります。