記者会見

吉田外務報道官会見記録

(令和2年11月25日(水曜日)15時46分 於:本省会見室)

冒頭発言

児童の権利委員会委員選挙における大谷候補の当選

【吉田外務報道官】本日11月25日、現地時間で24日になりますけれども、ニューヨークの国連本部におきまして、児童の権利委員会の委員選挙が行われました。これは9名の委員が改選されたわけですが、14名が争う激戦となりました。この選挙の結果、日本から現職の大谷美紀子弁護士が、145票を獲得して再選を果たされました。
 今回の大谷候補の再選に関しては、大谷弁護士の1期目における活躍、それから日本のこれまでの取組が評価された結果だと受け止めており、喜ばしく思います。
 大谷弁護士は、家族法や国際人権法の分野で教鞭を取られるとともに、講演会あるいは弁護士活動を行いながら、国内外で特に女性や児童の人権の保護・促進に尽力をされてきています。2017年からは、児童の権利委員会の委員を務められて、今回再選を果たされたということです。
 私も北米局時代に、大谷弁護士にはハーグ条約の関係で、大変お世話になったと記憶しています。
 大谷弁護士が幅広い知見、経験を生かし、児童の権利委員会の活動に一層積極的に貢献されること、それから人権外交を推進する我が国にとって重要な意義を有しているというふうに考えます。私からは以上です。

日中外相会談

【朝日新聞 安倍記者】昨日、日中外相会談が行われました。このコロナ禍でも電話などで日中の外相同士、意思疎通を図ってきたということでしたけれども、この対面での会見を行ったことの意義と成果については、どのように考えておられますでしょうか。
 
【吉田外務報道官】昨日、茂木外務大臣、訪日されました王毅(おう・き)国務委員との間で、日中外相会談、それからワーキング・ディナーが行われました。日中外相会談は1時間半、それからワーキング・ディナーは1時間10分、また夕食会に先立ちまして、30分ほど通訳のみを同席させたテタテも行われています。
 今回はコロナ下におきまして、日中間のハイレベルの往来を再開して、初めての会談であったということで、昨日の両外相の共同発表でも、その点について意義を強調されていたと思います。
 今回の会談を通じまして、コロナ禍で非常に困難な国際状況にある中におきまして、安定した日中関係、そういったものが、地域あるいは国際社会の平和や安定・繁栄にとって重要であると。日中両国が、ともに責任ある大国として、こうした国際社会の諸課題に取り組んで貢献していくことが、一層、その日中関係そのものの強化にもつながるということが確認された意義は大きいと思います。
 双方の関心や方向性が一致している分野において、今後、実務協力を進めることで多くの成果があったかと思います。また今回の会談を通じまして、二国間の諸懸案につきましても、対面で直接日本の基本的立場に基づいて、しっかりしたやり取りがなされたということも付言しておきたいと思います。
 
【朝日新聞 安倍記者】今も報道官からお話がありましたように、諸懸案についてお話があったということでしたけれども、大臣からも、昨日は尖閣諸島問題についても前向きな行動を強く求めたというお話がありました。ただ、今日も尖閣諸島海域への接続水域に船が入ってきているようですが、こうした強い対応というのを求めているわけですが、少しは中国側の行動を変えることにつながっているのかどうか、疑問があるんですけれども、この点のお考えはいかがですか。
 
【吉田外務報道官】ご指摘の尖閣諸島につきましては、昨日も、共同発表でも大臣からご説明があったかと思いますけれども、日本の立場に基づいて、明確に先方に申し入れを行っています。
ご指摘のように、本日も午前8時の時点で、海上保安庁の巡視船が中国公船の航行を確認しています。これまで確認された中国公船の航行日数は計306日に至っておりまして、極めて深刻だと受け止めていますし、現場海域におきまして、巡視船より警告を実施するとともに、外交ルートを通じても厳重に抗議をしています。
 昨日の外相会談、それから本日、今朝、官房長官も王毅国務委員に会われていますけれども、その場でもこういった問題は取り上げられています。
 昨日の共同発表について申し上げますけれども、王毅国務委員からの発言がありましたけれども、中国側の独自の立場に基づくものであり、まったく受け入れられるものではありません。日本の立場につきまして、外相会談において明確に茂木外務大臣から先方に申し入れを行っています。
 外相会談におきまして、茂木大臣からは、王毅国務委員に対して、本年の過去最長の領海侵入、それから接続水域内の航行、我が国漁船への接近、こういった個別の事案を具体的に取り上げながら、日本としての強い懸念を伝達していますし、中国に行動を求めました。
 今後とも日本の領土・領海・領空、これを断固として守り抜くという決意の下、冷静かつ毅然と対応していきたいと、このように考えています。
 
【日本経済新聞 加藤記者】今のご発言で1点ご確認させていただきたいんですが、この王毅外相の立場、全く受入れられるものではないということも、その会談の中で大臣が、やり取りの中でおっしゃっているという理解でよろしいでしょうか。
 
【吉田外務報道官】今申し上げましたように、昨日の共同発表において、王毅国務委員からあったご発言につきましては、中国側の独自の立場であって、受け入れられないということを申し上げました。
 この共同発表におきまして、日中双方からそれぞれ1度ずつ発言をすると、こういう習わしになっておりまして、まずはホストである茂木大臣の発言が先に行われました。
 続いて、ゲストである王毅委員から発言を行い終了する、こういう次第になっていたということです。会談のどこで取り上げたかということは、申し上げないことになっていますけれども、今申し上げたように、茂木外務大臣からは、日本の立場について、個別具体的な事例にも言及しながら、中国の行動を強く求めると、こういった形で明確に先方に立場を伝えています。

ゴーン被告人案件

【NHK 渡辺記者】昨日でしたっけ、カルロス・ゴーン氏の件で、外務省から発表がありました。恣意的拘束であるという評価をされて、それはおかしいんじゃないかということで日本側から反論していると思うんですけれども、今後、こうした状況に対して日本側として取りうる手段といいましょうか、どういったことを考えてらっしゃるのかということと、現時点のカルロス・ゴーン氏の状況が、もし分かればなんですが、この問題と関連してですね、日本政府としてこれからどう対処していくのかと。
 今回、経緯の発表だけだったんですけども、経緯の発表というよりかは、例えば、それこそ外務報道官の談話を出すとかですね、そういう一定の何かメッセージ性をもっと強く打ち出して何かやるということも考えていらっしゃるのかなと思ったんですけど、その辺はどうでしょうか。
 
【吉田外務報道官】ご質問がありましたゴーン被告の事案につきましては、国連の恣意的拘禁作業部会が、この事案について、日本政府に対する意見書を公表したというものに対して、日本政府としての異議を申し上げたものです。これは、霞クラブにおきましても報道発表という形で、皆様に配布をしたかと思いますし、昨日、会見で上川法務大臣からもその内容について説明をされているかと思います。
 念のため申し上げますけれども、日本におきましては、個人の基本的人権を保証して事案の真相を明らかにするため、適正な刑事司法手続きを定めています。これを適切に運用してきております。日本における逮捕・勾留、こういった基本的人権を踏まえた刑事訴訟法等の手続き、それから関係法令に則って行われているものですから、恣意的拘禁に該当する行為には当たらないと考えております。
 この作業部会ですが、国連の人権理事会が、専門家のグループに調査の結果を報告するように諮問しているということですが、これはあくまで専門家の方々の独自の意見でして、国連そのものの見解ではありません。したがって、今回の意見書というものは、加盟国を拘束するものではありませんし、またその機関である人権理事会の見解でもありません。
 さはさりながら、この作業部会に対しては、現在、日本は訴訟関係人の権利の保護の観点から、法律上、捜査公判に関する情報が提供することができないということが法律で定めてあります。そうした中で、十分に日本から事情を重ねて説明をしてきたものです。
 それにも拘わらず、この作業部会はゴーン被告人側の一方的な意見のみに基づいて、今回の結論に至ったということで、この見解が到底受けられるものではないという異議を申し立てました。この異議が、我々としての、日本政府としての国際社会、そして、この作業部会に対するメッセージということになります。
 意見書に対する異議の申し立ての仕方については、いろいろと中で検討いたしましたけれども、それから関係省庁というか、本来の所管官庁である法務省と十分なすり合わせをした上で、即座に詳細な日本側の見解を示すということで、報道発表という形で、意見書の提出内容についてご説明をさせていただいたものです。
 ゴーン被告の事案につきましては、我が国としては、ゴーン被告が引き続きレバノンに滞在していることを認識しておりまして、また司法当局からは、これはもう既に日本での捜査は行われて起訴されている段階ですので、ゴーン被告が不適切な形で違法に国外に逃亡したことに対して、インターポールを通じて手配書の発行も要請しています。こういった形で、引き続き日本政府としての、考え方を国際的に発信していくとともに、この事案に対する司法当局の対処について、関係省庁で連携して対処していきたいと、このように考えております。

次期駐日韓国大使人事

【朝日新聞 安倍記者】韓国大統領府が新しい駐日大使を内定したと発表しています。大統領府によると、菅内閣が発足したことを受けたものということのようですけれども、日本側としては、日韓関係の改善に向けた動きというふうに見ておられるんでしょうか。
 
【吉田外務報道官】韓国政府が、次期大使人事として、姜昌一(カン・チャンイル)元韓日議連会長を内定したと、発表、報道されていることについては承知をしております。他方、こういった他国の駐在大使等の任命については、これに対して論評を加えることはしないというのが、国際的な慣わしになっていますので、現時点で、何らかのコメントをすることは差し控えたいと思います。
 
【朝日新聞 安倍記者】今、報道官は、報道は承知というお話でしたけども、韓国側がこういった内定を発表しているわけですが、日本側としては外交上のですね、アグレマンというような、人事の同意というのはしているんでしょうか。
 
【吉田外務報道官】繰り返しになるかもしれませんけれども、各国への、大使の任命、というか内定、接受国における同意の取り付け、これはアグレマンという形で通常やりますけれども、こういったものの手続きについて、あるかないか、あるいはどうするかについては、最終的にどうなったかということが確定するまで、申し上げないというのが国際標準ですので、申し訳ありませんけれども、お答えは控えたいと思います。

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