記者会見
吉田外務報道官会見記録
(令和3年9月30日(木曜日)15時45分 於:本省会見室)
冒頭発言
- (1)さいとう・たかを氏逝去
【吉田外務報道官】冒頭、私の方から、2点ほど発言させていただきたいと思います。
まず一点目ですが、皆さんご存じのように、『ゴルゴ13』の作者のさいとう・たかをさんが、9月24日に亡くなられたという訃報に接しましたので、外務省としてコメントと、それから心からのお悔やみを申し上げたいと思います。
さいとう・たかをさんには、2017年に作成をした『中堅・中小企業向け海外安全対策マニュアル』におきまして、『ゴルゴ13』を起用させていただくなど、海外に渡航・滞在する国民の安全対策強化のために、多大なお力添えをいただきました。
このマニュアルは、『ゴルゴ13』の非常に高い人気や知名度、それから読者層の広がり、『ゴルゴ13』の主人公であるデューク東郷という、危機管理のプロフェッショナルのキャラクターが安全対策を指南するということで、説得力を持つ内容になっていること等々から、海外安全対策に対する国民の皆様の関心を広く高めることができました。
実際、『ゴルゴ13』の単行本がギネス世界記録に認定されるなど、発行総数も3億部を超えているという幅広い読者層と高い知名度を有していますし、外務省で発行させていただいた2017年3月のマニュアル発行以降も、冊子版としては約19万冊以上を配布していますし、動画版におきましては累計97万回以上の再生、電子版累計307万回以上のアクセスを達成するという実績を示しています。
今年の3月にも、今度はコロナ禍におけるテロ対策ということで、新しいエピソードを制作発表することになりまして、この点についても、ご快諾・ご協力をいただきました。現在、なお、外務省海外安全ホームページでの公開をさせていただいています。
改めまして、さいとう・たかを氏の御功績と外務省を始めとする日本政府への御支援に、深い敬意と感謝の念を表しますとともに、改めて心からの哀悼の意を表したいと思います。 - (2)日米交流事業
【吉田外務報道官】2点目ですけれども、在日米軍の施設・区域を活用した日米交流事業について、ご報告をさせていただきます。
外務省は、昨年度から米国の国防省教育部との共催で、在日米軍施設・区域が所在する地域におきまして、地元の中高生と米国の軍人と子弟・子女との交流事業を実施しています。 昨年12月に青森県三沢市で第1回の事業を実施いたしました。その際には、複数のメディアにも取り上げていただいたと承知しています。
本年度は、10月2日及び3日に、岩国市におきまして第1回目を実施することとなりました。その後順次、佐世保、三沢、横須賀の各自治体におきまして、開催をしていく予定になっています。
もちろん、現在まだコロナの感染状況がありますので、参加者のマスクの着用、消毒の徹底、3密の防止などの新型コロナ対策は徹底いたします。その上で、在日米軍施設区域の中にある学校の施設を活用して、米軍の子女と英語で、地元の中高生に交流をしてもらうことにしています。
この交流事業は、在日米軍と地元社会との相互理解の促進に役立つものになるとともに、将来国際社会で活躍する人材の育成にも繋がることを外務省としては期待しています。冒頭、私の方からは以上です。
アフガニスタン情勢
【NHK 渡辺記者】まず、アフガニスタンからの米国軍の撤退から1か月が経ちまして、その間いろいろ日本としても、邦人退避オペレーションなどいろいろありましたけれども、この1か月を受けての、今後のタリバーンのこの権力が今どうなっているのか、それに対して日本として、これからどういうスタンスで関わっていくのか、という日本政府の対応と、それから、その後の日本関係、大使館やJICAなどで勤めていた現地のスタッフの方の国外の退避とか、あるいは日本に来られている方はいらっしゃるのかとか、そういった現状の状況について、ご説明いただければと思います。
【吉田外務報道官】8月15日、カブールが陥落して、その後、アフガニスタンにおいては、駐在していた外国人、それから退避を希望されるアフガニスタン人の国外の出国ということで、米軍が撤収した8月末までの間、大量の出国が行われるといった状況にございました。その退避オペレーションがひとまず終結してから、およそ1か月ということです。
ご案内のように、アフガニスタンの情勢は依然として流動的だと、このように認識しておりまして、最近いろいろ報道も、以前ほどではなくなってはきていますけれども、依然として予断は許さないということだと認識をしています。
9月の初めには、タリバーンが「暫定政権」を発足させて、閣僚の名簿等も公表されましたし、その後、追加的に部族出身者の閣僚を補充するといったような人事も行われておりました。
日本としては、どういう閣僚の構成であるかとか、あるいはどういう言葉でどう言っているかということよりも、タリバーンが実際に、行動でどう示していくのかということを注視をしています。
もとより、現在のタリバーンの暫定政権の構成については、包摂性や女性の政治参画という、発足前に、対外的に発言、あるいは期待されていたこと、そういったコミットメントは実現されていない状況だと言わざるを得ませんけれども、今後、タリバーンが実際にどうしていくのかということを注目しています。
特に、これまでも申し上げていますけれども、すべてのアフガニスタン人を含む、アフガニスタンにいる人々の生命及び財産の保護、それから社会秩序の回復、基本的な人権、特に女性の権利といったものの保護、それから多様な民族・宗派を含む包摂的な政治プロセスと、こういったものが保証されるような国造りということを求めてまいりたいと思っておりまして、引き続き、関係国と緊密に連携しながら、日本としても外交努力を続けていく、このような考えであります。
特に国連総会においても、様々な議論がございましたけれども、周辺国を含めて、アフガニスタンの人道支援のニーズが高まっていますので、こういったことについても、既に発表してありますように、日本政府としては保健・食料・農業・教育等の分野でも新規に人道支援を行うこと、それから、本年中には総額2億ドルの支援を行う用意があるという方針をこれまでも明らかにしています。
このような人道支援を国際機関等通じて行っていくにあたって、人道支援要員の安全なアクセスが確保される必要がありますので、関係国・国際社会と連携して、タリバーンに働きかけてまいりたいと、このように考えています。
それから、アフガニスタンにまだいらっしゃる、少数ですけれど邦人、それから現地職員等、大使館やJICAの現地職員等の安全確保、引き続き政府としては、必要な出国の支援に全力で取り組んでいきたいと考えています。特に米国、それからカタールを始めとする関係国、それからアフガニスタンに隣接する近隣諸国と緊密に連携をして、タリバーンとの交渉を含めて外交努力を行っています。
日本政府としては、これらの方々の最も安全で迅速な出国手段、これを追求していきたいと考えています。既にJICAの現地職員等で日本に来られた方、これは近隣諸国に陸路を通じて出てこられた方の、日本への入国に当たっての支援等を行っています。
今後の見通しについては、当事者の安全確保に影響を及ぼす恐れもありますので、事前に申し上げることはできませんけれども、安全がきちんと確認された段階で、引き続きしかるべき情報発信は行ってまいります。
現在ですが、引き続き、現地にいる現地職員と、在留されている在留邦人の方々とは日頃から連絡は取り合っています。安全等については確認をしておりますけれども、現在の状況は、先ほど申し上げたように、非常にまだ流動的な状況でありますし、引き続き、陸路を通じた出国というのは必ずしも安全ではないので、我々としては推奨することはできないという状況にあります。現地のそうした出国手段に関する情報収集・分析、これを進めつつ、必要な状況になれば、支援を行うという姿勢でおります。
現状は以上のような感じでありますけれども、引き続き、状況をしっかりと把握しながら、冒頭申し上げたような考え方で、出国支援、安全確保に努力してまいりたいと考えています。
さいとう・たかを氏逝去
【毎日新聞 宮島記者】さいとう・たかをさんの関係で教えてください。『ゴルゴ13』の本って今もまだ手に入るものだったのかというのと、ホームページへの掲載はされていると思うんですが、これ、亡くなられましたけど、このまま続けて見れる状況になるのかどうなのか、そこの2点をお伺いできますでしょうか。
【吉田外務報道官】まず、出版社としては、さいとう・たかを氏のご逝去の後も、個人のご遺志を踏まえて、『ゴルゴ13』について連載を継続する意向であるというふうに伺っていますので、そうした事情を踏まえまして、私どもとしても安全対策のマニュアルとして、引き続き活用させていただきたいと思っています。したがいまして、現状の出版物の形であるとか、あるいは電子媒体の形で提供している、国民の皆様に提供している情報提供、これは引き続き継続していきたいと、このように考えています。