記者会見
吉田外務報道官会見記録
(令和3年9月1日(水曜日)15時45分 於:本省会見室)
アフガニスタン情勢(在アフガニスタン日本国大使館臨時事務所)
【産経新聞 田村記者】先ほど、イスタンブールに移っていたアフガニスタン日本大使館の現地事務所をドーハに移転するという発表があったんですけれども、改めて、この狙いと期待することをお伺いできますでしょうか。
【吉田外務報道官】昨日も茂木外務大臣の記者会見におきまして、ご質問に対するお答えの中で、今後の体制ということで、現在イスタンブールにある退避中のアフガニスタンの日本大使館の機能を、カタール、ドーハに移すという方向で検討しているということを発言されたかと思います。
これまでもご説明させていただいていますように、アフガニスタンにおける退避活動の詳細については申し上げませんけれども、昨日をもって自衛隊機によるオペレーションが終了をいたしました。これから米軍も撤収する中で、間もなく、タリバーンによる新しい政権枠組みというものも構築されてくるだろうと想定されます。
そういう中にあっても、ごく少数ではありますし、それぞれのご事情があって残留されているということでありますが、引き続き少数の邦人の方がいらっしゃると。その安全確保や、ご希望される場合の必要な出国の支援、これは日本政府として、継続していかなければなりません。
更にアフガン人の現地職員等の方々安全の確保、それから安全な国外への退避に向けては、今後、そういった新しく政権に就くであろうタリバーンとの間で交渉を含む、今後はそういった働きかけ、交渉といった取組を通じるなどして、その退避の方途を探っていく必要があります。
おそらくそのやり方については、これまで同様に米国等の関係国と、連携して対応していくことになりますけれども、同時に、日本としてもタリバーンとの一定のパイプがありますので、そういったものを並行して取り組んでいく必要があろうかと思います。
そうした中で、ドーハというかカタールですね、従来からアフガニスタンとは極めて緊密な関係を有していると。我々も、今回いろいろなオペレーションの中で、カタールという国には大変お世話になりましたし、緊密に連携をしてきた日本としても、極めて良好な関係を維持しています。
こうやって、この地にはタリバーンの代表事務所があると、幹部が所在するということであります。そういったことを総合的に勘案して、在アフガニスタン大使館の臨時事務所をドーハに移転するという考え方をとっていると考えていただければと思います。
今後どういう形になるか分かりませんけれども、様々な方途を検討していく中で、そのカタールのみならず、近隣諸国との連携も、必要になる局面も多々出てくるかと思います。そうしたことも念頭に、アフガニスタンの近隣諸国の公館に対する体制支援、こういったことも整えていく必要があるかなと、このように考えています。
アフガニスタン情勢(在アフガニスタン日本国大使館現地職員による証言)
【テレビ朝日 澤井記者】弊社がカブールのアフガニスタン大使館の現地職員の方にインタビューをしておりまして、その中で、その職員の方が情勢の悪化で最悪の事態が起きる可能性というのを、高位の日本の外交官を含めて進言したが、タリバーンがカブールを陥落させることはないと当時言われていたと。現地職員は、この退避が遅れた問題について、声を上げないように、メディアに話さないように言われていますというような証言をしているんですね。このことの事実関係を教えてください。
【吉田外務報道官】お尋ねがあったインタビューの内容について、私どもはよく承知をしておりません。御社の方で直接取材をされたということですので、その内容について、現時点で公式にコメントすることは控えたいと思います。
これまで、昨日など、記者の皆さんにこの間のオペレーションについてご説明をさせていただきましたけれども、このアフガニスタンの治安状況については、そもそも7月に、米国が「8月末までの撤収」ということを発表して、その中で必要な邦人の退避や、そういった、その後大使館の体制をどうするかということは、随時、検討していたわけであります。
そういう中で、タリバーンの侵攻が急速に進展する中で、8月の前半には、しかるべきタイミングで邦人の方を安全に退避していただくこと、これを徹底した上で、大使館の現地職員等も含めて、国外に退避して、大使館を撤収するという可能性、様々なオプションを、本格的に検討をしておりました。
どの段階で、どういう認識であったかということは、アフガニスタンの治安状況、これが、ある意味、一日一日、刻々と変化すると。ご案内のように、15日にカブールが陥落するという、これ自体は、撤収を決めた米国を含めて、いずれの国も予想しなかった急激な変化であったと認識をしていますので、そういった急激な変化、あるいは刻々と変化する中で、どういうふうな安全状況、治安状況かという認識についても、個々の館員においては、様々な認識だったかもしれませんけれども、全体としては、8月の前半には、そういった不測の事態に備えて、検討には入っておりましたし、それから、現地職員の方々を含めた退避ということを念頭に準備を進めておりました。
結果として、今回、自衛隊機にも、ご協力をいただいて、退避オペレーションを全力で検討したわけですが、残念ながら現地職員等の方々の退避には至らなかったということで、大変残念には思っています。私どもとしては、今申し上げたことが、この間の情勢に対する、外務省、政府としての認識ということです。
アフガニスタン情勢(米国の対アフガン戦争の評価)
【時事通信 近藤記者】アフガニスタン情勢に関してですが、米国が完全にアフガン戦争の終結を宣言しまして、今回の撤退についても正しく賢明な判断だったと、バイデン米大統領がおっしゃいました。この撤退のタイミングの判断を含めて、その20年間の米国のアフガン戦争そのものの評価を、今、日本政府としては、どのように捉えていらっしゃるんでしょうか。
【吉田外務報道官】まず、お尋ねがありましたように、バイデン米大統領、米国時間で昨日8月31日に、20年に亘る長い戦争の終結、それから駐留米軍の撤収が完了したということを演説で表明されました。同時に、喫緊の課題である出国を希望する人々の引き続いての退避の支援、それから、この20年間に亘るアフガニスタンへの関与の中で継続してきたテロとの戦い、これはアフガニスタンということではなくて、より広い文脈でテロとの戦いを継続するという考え方、これも示されたと、このように承知をしています。
日本政府としては、本来、アフガニスタンという国の安定、これは国際社会の平和と安定にとって極めて重要であると考えておりまして、そういう観点から、2001年のアフガン戦争以降、この国の持続的・自立的な発展のために、様々な支援・関与をしてまいりました。そういった考え方は、引き続き変わらないというふうに認識をしています。そのような観点から、日本としても、米国を含む国際社会と連携して取り組んできていますけれども、その間のアフガニスタンにおける米国の取組は評価したいと思います。
当面は、出国を希望する人々の退避、これを最優先課題と考えていますし、今後の情勢の中で必至と思われます人道問題への対応、それから、この退避オペレーション期間中にもテロ攻撃がありましたけれども、引き続きテロ対策、とりわけタリバーンがテロ組織との関係を断ち切ることは不可欠だと考えますので、この点について国際社会が一致連携して、タリバーンに働きかけを行っていく必要があると認識をしています。
引き続き、こういった考え方の下、アフガニスタンの平和と安定に向けて、米国を含む国際社会と連携して取り組んでいきたいと、このように考えます。