記者会見

吉田外務報道官会見記録

(令和2年10月14日(水曜日)15時47分 於:本省会見室)

尖閣諸島周辺における中国公船の領海侵入

【朝日新聞 安倍記者】尖閣諸島付近で、中国公船が57時間以上にわたって領海に侵入する事案がありました。過去最長となる時間となったわけですが、この時間について、政府としてどのように捉えていますでしょうか。

【吉田外務報道官】今、お尋ねのありました、尖閣諸島周辺における中国公船の我が国領海への侵入事案でありますけれども、10月11日から中国の公船が2隻、13日午後8時26分頃に領海から退去したわけですが、その間、領海内にいた時間は57時間39分ということで、これまでの滞留時間を大幅に更新する形になったことを認識しています。こういった状況が長時間にわたって継続したことは、誠に遺憾と言わざるを得ないと思っています。
 こういった中国の公船の領海への侵入事案につきましては、これまでも繰り返しご説明をさせていただいていると思いますけれども、海上保安当局におきまして、領海からの退去について、退去要求の呼びかけを繰り返し実施してきています。
 それから、今回、近海にいた日本漁船の安全という観点から、これらの漁船等の周囲に巡視船を配備するといった形で、漁船の安全な走行を確保する最大限の努力を行ったということであります。
 私ども外務省としては、今回の事態、連日、東京、北京両方におきまして、中国側に厳重な抗議を行ってきています。こういった形の長期間の滞留を行ったことについて、その背景であるとか、そういった意図については、鋭意情報収集、それから分析をしておりますけれども、これについて申し上げると、手の内を曝すことになりますので、コメントは控えさせていただきます。

【朝日新聞 安倍記者】今お話がありました、東京と北京で厳重に抗議を行ったということですが、ここでいう抗議というのは、どのレベルで具体的には何を伝えたという事なのでしょうか。

【吉田外務報道官】私、手元にレベルについての資料がないので、その点については、また別途事務的に報告させていただきます。東京と北京においてということなので、東京では当然外務省の幹部が中国大使館幹部に対して、それから北京におきましても、大使館の幹部から中国当局に対して申入れを行っていることと認識していますけれども、尖閣諸島につきましては、歴史的にも我が国の固有の領土であって、中国のこういった行為は受け入れることができないという、日本の原則的な立場を踏まえて、申入れを行ったと認識しています。

【朝日新聞 安倍記者】こうした問題が起きるたびに、政府としては、常に冷静かつ毅然とした対応を取ってきたという説明をいつもされていますけれども、実際には中国公船の領海侵入というのは常態化している現実があるわけで、日本側の対応というのが、実効力を伴ってないようにも見えるのですけれども、この点の認識はいかがでしょうか。

【吉田外務報道官】先ほどもご説明申し上げましたけれども、今回も付近には日本の漁船などがいたりして、中国の公船の動きというものもあります。政府としては、まずは日本の漁船の安全の確保を最大限保証していく、そういった観点から適切な行動を行うとともに、中国の公船に対する対応、これも同時並行でやってきているということでありまして、政府の対応としては、最大限のことをやってきていると思います。
 当然我々、外務省外交ルートとしても、一貫して日本の立場というものは何ら変わりがないわけですから、あらゆる機会を捉え、また、単に個別の事案において、大使館や外交ルートを通じて抗議・申入れを行うにとどまらず、我々の原則的な立場は、ハイレベルな往来、こういった機会も通じて、中国の中枢にも説明をしてきているということで、我々のそういった対応については、今後もしっかりと行っていきたいと、このように考えています。

独ベルリン市ミッテ区における慰安婦像の設置

【NHK 渡辺記者】ドイツのベルリンに設置された慰安婦を象徴する少女像の問題ですが、現地だと、今、結局撤去要請が出ていましたけれども、期限を過ぎても撤去されないままになっていて、実際もうその撤去の要請は無効になったということで、実際問題として設置されたままの状態になっていますけれども、今後の日本政府の対応としては、どういったことを考えていらっしゃるのか、その点をお願いします。

【吉田外務報道官】お尋ねにありましたベルリン市における少女像の設置事案でありますが、ご指摘にありましたけれども、本日10月14日が設置場所を管轄するミッテ区から出されていました、撤去の期限になっていたかと思います。
 これに対して像の設置団体、「コリア評議会」という現地の団体から、ドイツの行政裁判所に仮処分の申立てがございました。確か昨日行われたのではなかったかと認識しておりますけれども、それに対してミッテ区としては、この14日に設定されていた像の撤去期限が無効になったということであって、これは裁判所の判断が下されるまでの間、その効力がなくなったと発表しているものと認識しております。
 したがいまして、付け加えますと、像の撤去期限が裁判所の判断が下されるまでの間に停止されているということであって、像の撤去そのものが無効になったということではないと考えております。
 その根拠になっている行政裁判所に対する申立て、これ自体はドイツ国内における司法手続ですので、これはこういったものの常道でありますけれども、基本的にはその状況は注視せざるを得ないということだろうと思っております。
 また他方におきまして、この慰安婦の問題、それからこういった像の設置に関する日本政府の取組、この考え方については一切、何ら変更はございませんので、今後ともそのように一貫した態度に基づいて、国際社会に対して日本の立場を説明をしていき、正当な評価が得られるように取り組んでいきたいと、このように考えています。

在日米軍駐留経費(協定改正交渉)

【朝日新聞 北見記者】ホストネーションサポートの交渉に関してお伺いします。連日、近く事前協議入りという報道が出ておりますが、調整状況はどうなっておりますでしょうか。またトランプ政権、以前からですね、同盟国への負担増を求めているわけですけれども、改めてどういう姿勢で、今後、いずれにしろ交渉始まるわけですから、どういう姿勢で、日本政府として交渉に入っていくお考えでしょうか。

【吉田外務報道官】お尋ねのありました、在日米軍駐留経費に関する特別協定ですけれども、これは現行の協定は、2021年3月末に効力が切れることになっております。したがいまして、その期限までに必要な国内手続を含めて、この改定については交渉を行っていく必要があります。
 特別協定そのものは、現状、非常に厳しさを増します安全保障環境、そういった中で、日米安保体制、従前以上に重要、日本の安全、それから地域の平和と安定にとり、欠かせない要になっていると認識しています。さらにその安全保障政策の領域というものも、サイバーや宇宙、いろいろな新しい領域にも広がっております。したがいまして、その中において、日米安保体制に基づいて、日米両国双方が果たすべき役割、こういったものも、時代とともに変わってきているかと思います。
 そういったことも踏まえまして、この駐留経費負担特別協定につきましては、日米間において議論をしていく必要がありますけれども、交渉をどういう形でどういう時期に開始していくかと、これについて現在事務レベルで意思疎通は図っておりますけれども、具体的な段取りそのものについては、双方の事情を踏まえて今後判断していくことになろうかと思います。

【朝日新聞 北見記者】先ほどお聞きしたことで重複するのですけれども、トランプ政権が掲げる負担増の方針、それに対してどう取り組むかという点は、もう一度、いかがでしょうか。

【吉田外務報道官】トランプ政権が、これは一般論だと思いますけれども、同盟国に対して、防衛費であるとか、安全保障に係る経費についての負担を求めていることは、十分承知しております。他方において、今申し上げたように、まだ正式な交渉は始まっておりませんので、その中で米国がどのような対応をしてくるかということは、十分議論をして対応していくべきものですし、それに対して我々としてどういう考え方をするかというのは、交渉も始まってない時点ですので、これはある意味、手の内を明かす部分もありますから、この時点でコメントするのは適切ではないというふうに考えます。

インドネシア大使館領事部の対応(河野行政改革大臣のツイート)

【朝日新聞 安倍記者】前の外務大臣でした河野行革担当大臣が、インドネシアの日本大使館で、窓口業務時間外でメールを受け付けてないということを指摘されておりまして、要は、時間外にメールを送ることができない、そういうシステムになっているという指摘なんですけども、不親切な対応にも思えるわけですけど、なぜこういうことが起きているのか、また他の大使館でこういった事例があるのかないのか、把握されていることあったら教えてください。

【吉田外務報道官】今お尋ねのあった、河野行革大臣のツイッターで、在インドネシア大使館の、自動返信みたいな形になっているのですけれども、そのメールシステムについて、ご指摘があったと承知しています。
 在インドネシア大使館は新型コロナウイルスの感染拡大ということで、3月下旬から全ての窓口業務、事前予約制を導入しています。このために、この関連で予約受付のための専用メールアドレスというものを開設しています。この予約専用メールアドレスに送信されたメールの中には、予約以外の領事業務に関する諸々のご相談事項、こういったものも届くようになっていったという事情があります。
 こういったことを踏まえまして、メールに対してあった、それ以外の相談事項にもきちんと対応する観点から、9月4日から受付時間に限定して送信をお願いしますという、ご協力をお願いする自動応答メールを設定しておりました。これについてご指摘があったのかなと思います。
 今後は、やはり領事サービス、これは邦人の方に対する外務省の重要な業務ですので、まず予約専用メールアドレスは本来の目的どおり、予約を24時間受け付けるように、改善することといたします。同時に、領事業務に関する種々のご照会については、業務時間内ではありますけれども、メールではなくて電話で受付をするということで改善をすることといたしました。この旨、在留邦人の方々にもご案内をするように、大使館に指示をしたところです。
 他の在外公館の状況については、いろいろご指摘もあったので、まだ現在確認をしているところで、今具体的にどうだということを申し上げる情報はありませんけれども、いずれにしましても、今回と同様なケース、問題があるということであれば、是正するように指示をいたしております。したがって順次改善していく段取りになっております。

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