記者会見
茂木外務大臣会見記録
(令和2年2月10日(月曜日)10時00分 於:本省会見室)
冒頭発言-新型コロナウイルスへの対応
(1)武漢市肺炎患者へのお悔やみ
【茂木外務大臣】これまでチャーター機の運航によりまして,武漢を始めとする湖北省から合計で763名の帰国が実現したわけでありますが,そのような中,既に発表させていただいているとおり,日本時間8日,土曜日の未明に,武漢市において重度の肺炎を発症して入院していた60代の邦人男性が御逝去されました。御本人の御冥福をお祈り申し上げるとともに,御家族の皆さまに心からお悔やみを申し上げたいと思います。
現地大使館では,同邦人の入院当初から,医務官や領事部が御家族に寄り添いながら,丁寧に支援を行ってまいりました。例えば,中国政府当局や中国側医療機関に対して,同邦人が適切な医療を受けられるよう要請をし,これを受けて同人の治療には中国政府が派遣した専門医が加わっていたと,このように承知いたしております。引き続き,御家族に対してご相談もしながら,最大限の支援を行っていきたいと考えております。
(2)クルーズ船への対応
【茂木外務大臣】現在,横浜港で停泊中の「ダイヤモンド・プリンセス」号には,多数の外国籍の乗員・乗客が乗船しております。外務省としては,関係国の大使館等と連絡を密にして,例えば外国籍の乗員・乗客から医療品の緊急ニーズが出された場合には,これに対応すべく支援を行っています。引き続き,厚生労働省を始めとする関係省庁や,関係国の大使館等と緊密に連携しつつ,外国籍の乗客・乗員についても必要とされるサポートを行うべく,できる限り努力をしていきたいと思っております。
(3)国内感染者数とクルーズ船の感染者数
【茂木外務大臣】なお,新型コロナウイルス感染症対策の実施に当たっては,正確な事実に基づく情報発信が重要だと考えておりまして,この関連で,先週,日本国政府からはWHO事務局に対して,日本国内の感染者数と日本上陸前のクルーズ船の感染者数を区別して報告していたところ,これを受けてWHOの報告書でも双方を区別して正確に記載することとなりました。
報道各社の皆さんにおかれましても,WHO事務局の方針も踏まえて,日本国内の感染者と日本上陸前のクルーズ船の感染者を区別して,より適切な事実関係を発信していただければありがたい,このように思っております。
政府としては,感染拡大の防止に全力を尽くしていくとともに,日本での感染防止の徹底や安全性等について,引き続き適時適切な情報発信等を行っていきたいと思います。
新型コロナウイルス(チャーター機第5便運行の可能性)
【朝日新聞 楢崎記者】新型コロナウイルスに関連して,先週の会見で,邦人の帰国希望者は全員帰国できるように,中国側と調整するというお話だったんですけれども,第5便の運行や,現時点での配偶者などを含めた日本人と何らかの関係を持つ中国籍の人も含めて帰国希望者の人数など,最新の状況についてお聞かせください。
【茂木外務大臣】これまで帰国,派遣をしまして4機のチャーター便で,在外邦人及び日本国籍保持者の配偶者,並びに親・子の合計763人の帰国をしたと申し上げました。この中で日本国籍の方が684人,外国籍の方が79人という内訳であります。帰国の意思,これは率直に申し上げて毎日変わっております,人によって。こういった意思が変わりうるなど,人数に変動はありますが,湖北省には未だ帰国を希望される邦人及びその家族が一定数いらっしゃる,承知をいたしております。ただ,一定数と申し上げるのは,おそらく飛行機を何便も飛ばさなければならないという数ではないという一定数であります。
政府としては,帰国を希望される方々が全員帰国できるように,引き続き中国政府・関係省庁と緊密に連携をしていきたいと思っておりまして,今後のチャーター機の派遣について具体的なことが,今決まっているというわけではありませんが,政府としてはあらゆる手段を追及して,希望される方々全員が帰国できるように取り組んでいきたいと思っております。
【NHK 渡辺記者】今の質問に関連してなんですけれども,そうしますと,今までのチャーター機のキャパシティーを考えますと,1機の,全員が乗るような人数の方というよりも,逆に今度は現地に行っている大使館の方々の引き上げとか,そういったものとタイミングを合わせるとか,これからどうやって時期を見極めていくのでしょうか。
【茂木外務大臣】北京大使館から武漢に入った方,それから第1便で邦人の方々の帰国の支援で武漢に入った方,これは第4便で交替して日本に戻ってきまして,第4便で新たな7名の本省の職員が,今,現地で様々な調整であったりとか,邦人との連絡等々に当たっているということでありますが,おそらく次のチャーター便,いつになるかとか,今後調整ということになると思うんですが,その際には,帰国を希望される邦人もしくはその親族の方と一緒に,現地に入っている職員も帰国することになるのではないかな,こう想定しております。
習近平中国国家主席の訪日
【朝日新聞 竹下記者】関連なんですけれども,中国の習近平(しゅう・きんぺい)国家主席の訪日に関連して,今月,楊潔篪(よう・けつち)政治局員が訪日する方向で調整していたのが延期されるのではないかという報道もありますけれども,習近平主席の訪日に向けた調整状況に関してお尋ねします。
【茂木外務大臣】楊潔篪さん,今月来るということが決まっていて,それが延期された,それは事実ではありません。そのことをまず申し上げたいと思っております。
まず,新型コロナウイルスについては,これまで我が国は入国に際した検疫の強化等,様々な水際対策を政府全体としてとってきており,今後とも全力で取り組んでいきたいと思っております。また,中国側でも,中国自身が感染症の防止に向けて国を挙げて懸命に取り組んでいるところでありまして,一日も早い事態の収束に向けて,日本政府としても協力できることは何でも協力する,全力で協力をしているところであります。
そして,現時点では,習近平国家主席の訪日は,予定通りでありまして,それに向けた準備を粛々と進めていきたいと考えております。
ミュンヘン安全保障会議(ロシア等との会談)
【NHK 渡辺記者】今週末,ミュンヘンでの安全保障会議があると思いますけれども,その中で,現時点で,二国間の会談,あるいはマルチの会談含めてですね,どういったものが現在調整されているのか,予定されているのか。それから日露の交渉もあると思いますが,会談もあると思いますが,大臣としてそこではどういったことを主に扱いたいと考えていらっしゃるのか,どういった位置づけにしているのか,その点をお話しいただければと思います。
【茂木外務大臣】まず,諸般の情勢が許せば,今週末のミュンヘンでの安全保障会議,これに出席をしたい,その調整をしておりまして,恐らくそこの中で,何らかの重要なセッションで,パネリストとして参加をさせていただくということになるのではないかなと思っております。
更には,バイの会談そしてマルチの会談につきましては,まずはロシアでありますが,昨年12月の日露の外相会談で,ミュンヘンでお互いが行くようだったら会談をしようということで一致をしておりまして,具体的な日時については,今,外交ルートを通じて調整中であります。昨年末のモスクワでの会談で,平和条約交渉について,ラヴロフ外相と相当長い時間をかけて,じっくりと議論を行って,本格的な協議に入ることができたわけでありまして,その後の様々な事務方の打ち合わせ等々も深めて,更に議論を深める,進める,そういう機会にできればと,そんなふうに思っております。
あとは,来るメンバーといいますか,海外の外相等々によると思いますが,アメリカがどうなるのか,韓国がどうなるのか,イランがどうなるのか,こういったことも踏まえながら,限られた日程の中で適切に会談等,調整をしていきたいと思っています。
新型コロナウイルス(帰国者人数)
【毎日新聞 成沢記者】先ほど,新型コロナウイルスに関連して,チャーター便で帰国された方,日本国籍684人,外国籍79人というご説明がありましたが,厚労省が第4便で戻った人数についてですね,外国籍について,ちょっと数字が違うようなんですが,厚労省は外務省と調整したと言っているんですが,そのへん。
【茂木外務大臣】ごめんなさい。どう違うんですか。
【毎日新聞 成沢記者】日本国籍についてですね,118人と厚労省は説明しているんですが。
【茂木外務大臣】それは第4便だけでしょう。
【毎日新聞 成沢記者】第4便ですね。
【茂木外務大臣】先ほど言ったのは,全体の数字を言った,だからですね,763名の内訳を申し上げましたけど。
【毎日新聞 成沢記者】これでいくと,119人と計算。当初の説明のとおりの数字でいくと,この684人で。
【茂木外務大臣】ごめんなさい。今,手元に第4便の数字を持っていません。事務方に聞いてください。
【毎日新聞 成沢記者】分かりました。
ミュンヘン安全保障会議(ロシア等との会談)
【NHK 高野記者】ドイツのミュンヘンの会議に関連して,お伺いします。ロシアとの会談があると,調整しているという話でしたけれども,首脳会談については,どのようなお話をされたいと考えているのか。あともう一点はですね,全体を通して,新型肺炎の関連で,どこかの国と連携を強化とか,そういう形の議論はされる予定はあるかどうか教えてください。
【茂木外務大臣】日露の首脳会談,これについては,今,モスクワで5月9日に行われます,対独戦勝75周年記念式典に出席するかどうかと,これについて安倍総理,出席について検討中である,このように承知をいたしております。
それから,会談の中で,例えばイランの外相と会談した時に,コロナウイルスの話が出るかというと,分かりませんけれども,出る可能性はそんなに高くないんじゃないかなと思っておりますけれど,国内で感染者が確認されている国の外相と会談をするようなケースであったら,お互いの水際対策がどうであるとか,国際連携をどうしようと,こういう議論になる可能性はあると思っています。
在日米軍駐留経費
【朝日新聞 竹下記者】先週の話になって恐縮なんですけれども,トランプ大統領が一般教書演説を行いまして,外交安全保障政策の中で,「我々はようやく同盟国に公平な負担を支払わせるようになった」というような発言がありました。改めて同盟国に負担増を求める考えを示したものと思いますけれども,この大統領の演説をどう受け止めるかということと,今年予定される駐留経費をめぐる新たな特別協定の交渉に,大臣としてどのように臨みたいか,お聞かせいただければと思います。
【茂木外務大臣】大統領の一般教書演説の中で,今ご指摘の関連の項目で,具体的に日本という話がなかったと,このように承知をしておりますが,その上で,我が国を取り巻きます安全保障環境が一層厳しさを増す中で,日米安全保障体制に基づく日米同盟,これは我が国の防衛のみならず,アジア太平洋地域の平和と安定のために,なくてはならない存在だと考えております。
更にその安全保障政策の対象と,先日申し上げましたが,これがサイバーや宇宙といった新たな領域に広がって,その脅威が拡大する中,日米双方が果たすべき役割は大きくなってきている,このように感じております。
その上で,在日米軍の駐留経費負担につきましては,米軍の駐留が日米安保体制の中核的要素である中,在日米軍の円滑かつ効果的な活動を確保する上で,重要な役割を果たしてきていると考えております。次期の交渉を行う際にはこういった一層厳しさを増す地域の安全保障環境や,我が国の厳しい財政状況等を踏まえて,適切に対応していきたいと考えております。