記者会見

茂木外務大臣会見記録

(令和2年1月31日(金曜日)14時53分 於:本省会見室)

冒頭発言

新型コロナウイルスへの対応

【茂木外務大臣】今,様々なオペレーションのまさに真っ最中でありまして,同時に国会対応もありますので,限られた会見になりますことをまずご理解いただきたいと思っております。その上で,私(大臣)のほうから新型コロナウイルスへの対応について冒頭申し上げます。
 本日,午前10時20分,149名の邦人を乗せて3機目のチャーター機が羽田空港に到着し,これまでに3機で計565名の邦人の方々が帰国され,これで早急に帰国を希望していた武漢市内に滞在する方は,ほぼ全員が帰国出来ました。現地には,帰国の希望時期はそれぞれ異なるものの,帰国を希望する邦人がまだ約140名いると把握しておりまして,これらの邦人のご要望をそれぞれ聴取しつつ,チャーター機等を手配する方向で調整を行っているところであります。
 外務省におきましては,私(茂木外務大臣)の指揮の下,省をあげて,邦人の安全確保及び早期帰国に向けて,関係省庁とも緊密に連携して対応しております。また,在中国日本大使館では,横井大使をヘッドとする対策本部が対応に当たっており,27日からは,医務官や中国語を話せる館員を含みます同大使館職員10名が,1,200kmを17時間かけて武漢市に入りまして,全力で邦人退避,この支援に従事しております。
  この関連で,中国自身が感染拡大の防止に向けて懸命に努力している中,湖北省に在留する邦人の帰国のために,全面的に協力してくれていることを日本として高く評価しております。感染症拡大の防止に向け,中国政府の取組に日本としてこれからも全力で協力していきたいと考えております。

 また,本日未明,新型コロナウイルス感染症に関し,WHOが緊急事態宣言を発出いたしました。この宣言も踏まえた上で,今後,感染者数の更なる増大や,地理的拡大が懸念されていること,そして二つ目に,主要国が渡航の中止や撤退勧告を含む渡航情報の発信を行っていること,更に航空便の運休を含め交通の制約が更に拡大する可能性があること,これらを踏まえ,外務省から在留邦人に対して,本日の午前,一時帰国の検討を含め,改めて注意喚起のスポット情報を発出しました。
 更に本日午後,13時55分に,中国全土の感染症危険情報レベルを2に引き上げました。2というのは「不要不急の渡航は止めてください」,これに引き上げました。湖北省につきましてはレベル3「渡航は止めてください」に維持を致しております。
 引き続き,新型コロナウイルスによる感染症への対応に当たっては,現地政府及び関係機関と連携して情報収集や必要な調整を行い,在留邦人及び海外渡航者に適時適切に情報提供・注意喚起し,安全確保に努めていきたいと考えております。

中東情勢(米国による中東和平ビジョンの公表)

【パンオリエントニュース アズハリ記者】
(以下は英語にて発言)

 中東情勢について伺います。最近トランプ大統領が発表した中東和平案,いわゆる「世紀の取引」案に対する日本の立場を教えてください。同案は,併合されたシリアやパレスチナを含むアラブ諸国の土地の問題については解決していません。日本は,他国の領土の事実上の併合に反対との立場をとっていると承知しますが,この点について,大臣のお考えを教えてください。

【茂木外務大臣】
(以下は日本語にて発言)

 中東和平におけます米国の役割は大きく,トランプ大統領自身が本件に強く関与する姿勢を示していることを評価したいと思います。我が国としては「二国家解決」を支持しているわけであります。米国が本和平ビジョンを提案したことを契機として,イスラエル・パレスチナ間で直接交渉が再開され,公正で永続的かつ包括的な和平を早期に実現するための,具体的な動きが進展することを期待したいと思います。
 また我が国としては,引き続きイスラエル・パレスチナ双方に対して,和平への取組を働きかけるとともに,「平和と繁栄の回廊」構想や「パレスチナ開発のための東アジア協力促進会合(CEAPAD)」の取組等を通じて,中東和平実現に資する環境作りを支援していきたいと,このように考えております。

新型コロナウイルス(チャーター機派遣時期)

【NHK 山本記者】新型肺炎の関係ですが,チャーター便の第4便の派遣時期はいつ頃を考えていらっしゃいますでしょうか。

【茂木外務大臣】現在,中国側と各方面と鋭意調整中でありますが,先ほど申し上げたように,邦人の帰国の時期等,それぞれタイミングが違っておりまして,そういった要望の聞き取りであったり,武漢以外の方については,武漢までの移動手段も検討しなければならないということで,多分今週はないと,こんなふうに思いますが,あらゆる手段を追求しているところでありまして,いずれにしても帰国を希望する邦人全員が早急に帰国できるように,各方面と調整を進めていきたいと思います。

英国のEU離脱

【産経新聞 力武記者】英国のEU離脱についてお聞きしたいと思います。離脱の手続が31日をもって完了して,31日をもって離脱することになりますけれども,今後いずれかの段階で貿易交渉が日英間でも始まることになると思いますが,一方で安全保障面ですとか,政治レベルでも二国間関係の強化ということが今後大事になってくると思います。この二国間関係の強化に向けて,今後どのようにしていかれるかということについて,大臣のお考えをお聞かせいただけますでしょうか。

【茂木外務大臣】まず,英EU双方で離脱協定の議会承認が得られて,英EU双方の合意に基づく離脱の実現の道筋が立った,つまり合意なき離脱が回避できた,このことを評価したいと思っております。本協定の発効によりまして,本年1月末に英国はEUを離脱して,本年12月末まで移行期間が設定されることになるわけですが,日本政府としては,今後の英EU間の将来関係に関する交渉を経て,日本企業の経済活動であったりとか,世界経済への影響が最小限となることを期待しております。
 その上で政府として,今後英国との関係をどうしていくかということでありますが,日英首脳間で一致しておりますとおり,日EU・EPAを踏まえて,EU離脱後の英国との新たな経済的パートナーシップの構築に速やかに取り組んでいく考えであります。加えて,TPP11への英国の加入の可能性を支援すること等を通じて,更に強固な貿易・投資関係の構築を目指していきたいと考えております。

新型コロナウイルス(チャーター機搭乗人数)

【毎日新聞 田所記者】一つ前のチャーター機の関連質問なんですが,第3便が150人弱で,第1便,第2便が200人超えだったということで,50人くらいの差があるんですけれども,すぐに搭乗しやすい武漢市内の日本人以外の50人に,例えば中国籍の配偶者とか,武漢市以外の日本人とかを模索したけど,かなわなかったというような事情があるのか,どうして50人程度少ないのかという背景を教えていただければと思います。

【茂木外務大臣】冒頭申し上げたように,まずは早期に帰国を希望して,それが物理的に実現できる邦人の方の帰国,それに向けたオペレーションを行っていると,こういう状況であります。これまでチャーター機においては,搭乗可能な人数であったりとか,中国政府との調整等の結果を踏まえて,邦人のみが搭乗したという形でありまして,今後の事として,邦人と婚姻関係にある中国人配偶者についてどうするか等,中国政府の方針も踏まえつつ,調整する必要があると思っております。引き続き,何ができるのか,中国政府を含む各方面と調整を進めているところであります。
 こういった問題,スピードというのが極めて重要であります。チャーター機を二日待たせて,その間,みんなを待たせることがいいのか。私(大臣)はそういう判断に立ちません。

新型コロナウイルス(チャーター機費用負担)

【共同通信 高尾記者】新型肺炎の関係でチャーター機の費用負担について伺います。今日,安倍総理が衆議院予算委員会で,チャーター機の搭乗費用を政府が全額負担する方向で検討すると表明されました。一方,政府のチャーター機派遣前にですね,自らの意思によって自費で武漢から退避された方もおられると思います。公平性の観点から自費負担で帰国された方に対して,政府として何らかの保証、費用の補填などは考えられているんでしょうか。

【茂木外務大臣】まだもらってませんから。まだ,運賃もらってません。

【共同通信 高尾記者】分かりました。

感染症危険情報の引き上げ

【共同通信 高尾記者】すみません。また,ちょっと違う観点から,新型肺炎に関してお伺いします。大臣,冒頭でおっしゃった感染症危険情報の引き上げについてです。今回,結局最終的には、渡航するかどうかというのは国民側一人ひとりの判断に委ねられていると思うんですけれども,中国全土でレベル2に引き上げられたことにともなって,例えば観光とかっていうのも控えた方がいいというご認識なんでしょうか。

【茂木外務大臣】「不要不急の渡航は止めてください」というわけでありまして,不要不急の渡航の中にどういうものが入るのかというのは,ある程度,国民の皆さんにご理解いただけるんじゃないかなと思っております。また,日々のニュースを見ても,どういう状況にあるかという中でお考えいただきたいと思いますし,慎重に対応して欲しいと,こんなふうに思っております。

【ロイター通信 竹中記者】今回,湖北省除くところ,湖北省と並ぶ「3」まで引き上げずに,「2」に留めたところですが,感染は全土に広がっているということで,これの判断の背後にあった,どういうようなお考えで,なったのかということと,それから,例えばアメリカなどはレベル4で,Do not travelに引き上げているようですが,中国全土,この違いというのはどのあたりから出てくるのかなと,日本側の考え方を教えていただければと思います。

【茂木外務大臣】これまでに,WHO緊急事態宣言,二度にわたって過去出しております。その時に日本政府としてどういう対応をとったか,こういったものも考え,また,現地における情報等々も総合的に勘案して,先ほど申し上げたような三つのポイントも踏まえ,レベル2という形にしました。

新型コロナウイルス(チャーター機費用負担)

【朝日新聞 太田記者】チャーター機の費用負担の話に戻るんですけれども,これまでも過去の邦人救出において,エコノミー費用相当の部分を求めてきたと思うんですけれども,今回あくまで特例ということで理解を求めるんでしょうか。

【茂木外務大臣】特例と言いますか,今回の事態ですね,直近の動きとして,武漢市を含みます湖北省で感染者数の急激な増加,またそれにともなう周辺の交通規制の強化等の事態の急速な変化があったことと,さらに今回ご帰国された邦人の方々には,帰国後に医療機関での受診,一時退避施設での宿泊,自宅待機と,種々の対応をお願いしているところでありまして,これは今まで例えば退避をしてきた場合でも,感染症と違う場合は,そういう対応が必要なかったわけであります。
 同時に今回,WHOが国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態,これを今日,宣言をしたと。こういったことを考慮して方針の再検討を行いまして,結果として,今回のチャーター機による退避については,運賃についても政府が負担する方向で検討するということになったわけであります。
 元々,チャーター機の借り上げであったりとかですね,これは単にチャーター機の値段だけではなくて,現地における様々な輸送であったりとか,いろんな費用がかかるなかでチャーター機の片道分,そのエコノミーの運賃はお願いするという形でありましたが,こういった事情も考えて,その運賃についても政府で負担する方向で検討するということになったわけであります。

新型コロナウイルス(入国管理)

【共同通信 高尾記者】入国規制についてちょっと伺いたいんですけれども,安倍総理が今日の衆議院予算委員会で,「我が国に入国しようとする者が感染症である場合は入国を拒否する」と表明されました。入管管理自体は一義的には法務省だと思うんですけれども,具体的にどのような方法を想定されているのか,大臣のお考えをお聞かせください。

【茂木外務大臣】これまで我が国ではですね,入国に際して検疫の強化等,様々な水際対策,政府全体として今回とってきたわけであります。また,政府として,本日,指定感染症の指定の施行日を2月1日に前倒しをして,我が国に入国しようとする者が感染者である場合には入国を拒否すると,感染者であることが確認できない場合であっても,入国管理を強化すべく,入管法の運用について速やかに検討するということにしたわけであります。細かい入管法につきましては,当然,出入国管理庁にお問い合わせいただきたいと思っております。

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