記者会見

茂木外務大臣臨時会見記録

(令和元年9月25日(水曜日)14時01分 於:米国・ニューヨーク)

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冒頭発言

【茂木外務大臣】本日12時から,まず20分,貿易協定の署名式を行いまして,そのあと70分,日米首脳会談を行ったところであります。両首脳は,日米貿易協定及び日米デジタル貿易協定について最終合意,final agreement,に達したことを確認しました。また両首脳は,今後,速やかにこれらの協定の署名を行い,それぞれの国内手続が完了した後,早期に発効させることで一致しまして,首脳共同声明に署名を行ったところであります。

 両首脳は,日米貿易協定が,世界のGDPの約3割を占める日米両国の二国間貿易を,強力かつ安定的で互恵的な形で拡大するものであること,また,日米デジタル貿易協定が,この分野での高い水準のルールを示すものであり,日米両国が引き続きデジタル貿易に関する世界的なルール作りにおいて主導的な役割を果たしていくことを改めて表明いたしました。

 それでは,私の方から,合意内容の概要,これを説明いたします。
 お手元にですね,Joint Statementとそれから関連する合意内容についての概要資料をお配りしてあると思いますが,それに沿って説明いたします。

 まず日米貿易協定でありますが,世界のGDPの約3割を占める,日米間の物品貿易に関する協定であります。発効済みのTPP11,そして日EU・EPAにこの日米協定を加えると,我が国は世界のGDPの約6割,人口で言いますと13.4億人の巨大な共通市場,これを構築することになります。

 具体的な合意内容に入りたいと思います。

 まず農産品にかかります日本側の関税は,すべてTPPの範囲内におさまっております。特に,コメは完全に除外。また,TPPにおいてTPPワイドの関税割当枠数量が設定されている,脱脂粉乳・バター等の33品目については,新たな米国枠は一切設けないことといたしました。譲許した品目については,TPPと同内容。発効時から,TPP11締約国と同じ税率を適用することといたしました。一方で,全ての林産品・水産品など,数多くの品目について,譲許を行わないことといたしました。

 資料の2ページ目以降に,今回合意しました主な内容を記載しております。コメは先ほどお話ししたとおりで,TPPでは,コメ及び米粉について,7万tの米国枠を認めたわけでありますが,今回は米国枠を設けず,コメ及び米粉,それだけではなく,それ以外の調製品も含めて,コメ関係はすべて完全除外といたしました。牛肉については,関税削減はTPPと同様であります。セーフガードについては,TPPではTPPワイドで発動基準が規定されていることから,米国にそのまま適用できないわけでありまして,交渉の末,米国に対する発動基準数量を,2020年度で24万2千tと,2018年度の米国からの輸入実績の25万5千tを下回る数字とすることで合意をいたしました。なお,2023年度以降については,TPP11協定が修正されていれば,米国とTPP11締約国からの輸入を合計して,TPP全体の発動基準数量を適用する方式に移行する方向で協議をすることとしております。

 3ページ目。豚肉,小麦,乳製品等の関税削減・撤廃はTPPと同内容であります。またワインについては,TPPと同内容で関税を撤廃します。その一方で,米国への日本産酒類の輸出を促進するため,TPPの時から日本が米国に求めていました,米国における酒類の容量規制の改正などの非関税措置について,今回,米国から約束を取り付けたところであります。

 また,我が国の農産品の輸出促進に資するため,日本から米国向けの牛肉について,現行の日本枠200tと現行で64,805tあります複数国(その他国)枠を合わせた,65,005tの低関税枠へのアクセスを確保いたしました。現状より300倍以上の拡大ということになるわけであります。

 4ページ目に工業品があります。自動車・自動車部品については,米国の譲許表に「更なる交渉による関税撤廃」,これを明記することになりました。具体的な関税撤廃時期は今後の交渉の中で決まっていくことになりますが,産業界が強く懸念をしておりました原産地規則も本協定では規定していません。自動車については,今後,電動化・自動走行によります大変革期にありまして,様々な部品構成であったりとかその重要度も今後当然変わっていくわけであります。そうした状況を見極めて引き続き協議を行っていくことが適切と判断したわけであります。

 また,自動車・自動車部品に係る通商拡大法232条の扱いについては,先ほど発出された日米首脳共同声明において,パラの4になりますが,「両国は,両協定の誠実な履行がなされている間,両協定及び本共同声明の精神に反する行動を取らない」旨を明記いたしました。そしてこれが日本の自動車・自動車部品に対して追加関税を課さないという趣旨であることは,先程の首脳会談で,安倍総理からトランプ大統領に明確に確認をいたしました。また,私とライトハイザー代表との間で,一昨日,23日の閣僚協議の場で改めて,日本からの自動車・自動車部品の輸出について,「数量規制,輸出自主規制等の措置を課すことはない」旨を明確に確認したところであります。また,このことを対外的に公表することについても米側から了解を得ております。

 その他の工業品については,日本企業の輸出関心が高く貿易量も多い品目を中心に,即時撤廃を含む,早期の関税撤廃,削減を実現をしております。いくつかの例をあげてみますと,我が国の高い「ものづくり」の力を体現する高性能な工作機械や部品,たとえば数値制御工作機械であるマシニングセンタは2年目に撤廃。また,日本企業によります米国現地生産で必要とされる関連資機材として,エアコンの部品,これは即時撤廃。今後市場規模が大きく伸びることが期待される先端技術の品目として,燃料電池は即時撤廃,などであります。

 以上が日米貿易協定に関する合意内容の概要であります。説明を聞いてご理解いただいたと思いますが,農産品と工業品について,バランスの取れた内容になっていると考えております。農家の皆さんにとって安心していただき,日本の自動車業界,産業界にとっても,十分,納得してもらえるものだと考えております。特に農産品について,昨年の共同声明で明記をしたとおり,過去の経済連携協定の内容が最大限とする日本の立場と,TPP国など他国に劣後した状況を一日も早く解消したいという米国の要求,この最終的な一致点が今回の合意内容だったと考えております。

 次に,資料の5ページ以降になりますが,日米デジタル貿易協定に係ります合意内容の概要を記載いたしております。この協定は,円滑で信頼性の高い自由なデジタル貿易を促進するためのルールの整備を目的とする協定でありまして,物品関税の撤廃・削減を規定する日米貿易協定とは性格が異なることから,別途の協定といたしました。

 具体的には資料に書かれているとおりでありますが,たとえば,電子的な送信に対して関税を賦課しないこと,デジタル・プロダクトの無差別待遇等,TPPにおける電子商取引章と同様の内容が期待されているものもあります。また,アルゴリズムの開示要求禁止や暗号の開示要求禁止など,この分野の状況の進展に応じて,TPPの規定を強化したものもあります。さらに,SNS等のサービス提供者に対する民事上の責任に関する規定等,昨今の状況を反映した新たな要素も盛り込んでおります。AI,eコマース,そしてビッグデータの活用など,これからのデータ駆動型経済のカギとなるデジタルデータを国際的にどのように利活用していくか,そのルールづくりが重要になってくる中で,本協定が日米間でまとまったこの意義は非常に大きい,こんなふうに考えております。

 なお,日米貿易協定及び日米デジタル貿易協定に関する今後のスケジュールとしては,協定本文,譲許表等の条文に係りますリーガル・スクラブを行った上で,速やかに協定の署名を行います。そして署名と同時に,サイドレターについても交換をいたします。その上で,日米双方で必要な国内手続を行い,早期に発効させる,こういったことになるわけであります。

 書いてある内容,詳細につきましてご質問がありましたら,この後,事務方から補足説明をしたいとあります。

 実質,半年で最終合意に至ることができましたが,日米交渉を始めるにあたって,昨年9月26日,ですから今日でちょうど丸一年になるわけでありますが,昨年9月26日の日米共同声明で,早期に成果が期待される分野から交渉を行うということで合意したことが大きいと考えております。実際に,今回の交渉では,物品貿易とデジタル貿易に分野を絞って,集中的な議論ができたわけであります。

 最後に,やはり日米の信頼関係,安倍総理とトランプ大統領の個人的な信頼関係があったからこそ,国益と国益がぶつかりあう厳しい交渉でも,どうにか最終的に一致点を見出すことができた,このように思っております。私からは以上です。

質疑応答

【記者】自動車について伺ってもよろしいですか。概要を見ると,最終的にいつ協議を,再協議となっておりますが,これいつをめどに最終的な撤廃をしたいのか目標などあるのか,今後の交渉スケジュールについて教えてください。

【茂木外務大臣】自動車や自動車部品についてですね,譲許内容,譲許表に書く内容は先ほど申し上げたところではありますが,そこの中ではですね,具体的な関税の撤廃時期であったりとか,原産地規則,本協定では規定しないことにしておりますが,自動車については,電動化自動走行によります大変革期にありまして,様々な部品構成やその重要度も変わっていく可能性が高い,そうした状況も見極めて引き続き協議を行っていくことが適切と判断したものでありますが,ご案内のとおり自動車,これはTPPにおきましてもかなり長いステージング,20年前後のステージングという形でありまして,これから関税撤廃について協議ということでありますので,そこの中でですね,どの時期が適切かということを協議していくことになります。
 一方自動車部品については,おそらくこれから自動走行の車がでてくる,電動化される車がでてくる,電動化によりましてはですね,かなり部品点数,エンジンの構成が全く変わってくるわけですから,それが違ってくる,部品点数もかなり減ってきます。そしてそれぞれの部品が持っているですね,重要度も変わってくる,そういったものを睨まずにですね,今どの部品ということを決めるよりも,こういった状況,おそらくこれから何年かで決まってくると思いますが,それを見極めて,どの部品についていちばん日本として関心が高いか,こういったものについてターゲットを絞って交渉していくことが適切だと考えて,今回のような形にさせてあります。

【記者】たとえば発効してすぐ一年目,農産品はTPPと同じ内容で日本が輸入することになると思うんですけれども,自動車に関しては,一年目はTPPより劣後する形の関税になるという理解でよろしいでしょうか。

【茂木外務大臣】たとえばですね,日本にとって農業分野で聖域とも言われるコメについては,完全に除外,こういう形になっております。さらには,TPPワイドの33品目,これについても全くアメリカにはですね,新たな枠というのは設けておりません。一方で牛肉等については他国に劣後した状況というのを他国と同じにするという形でありますけれど,先ほどその他部品,その他工業品,こういった中でも説明をさせていただきましたが,たとえばマシニングセンタであったりとか,エアコンの部品であったりとか,さらには燃料電池,こういう日本にとって極めて,今後ですね,攻めに入っていくと,重要であると,こういったその他工業品については即時撤廃,二年目撤廃,こういった形になっているわけでありまして,そういったことも含めてバランスのとれた内容になっていると考えております。

【記者】共同声明の3項目めにある,「関税や他の貿易上の制約,サービス貿易や投資に係る障壁,その他の課題についての交渉を開始する意図である」との表現がございますが,この交渉自体はどれぐらいのタイムスケジュールを考えてらっしゃいますでしょうか。また,交渉するとしたら枠組みは茂木大臣とライトハイザー通商代表の枠組みになるのでしょうか。

【茂木外務大臣】書いてあるとおりでありまして,まず何をするかというとですね,この日米両国は日米貿易協定の発効後4ヶ月以内に,じゃあ今後その後何について交渉しますか,そういう分野について協議を終えることを意図する,それを目標とする,intend toですから,そしてその後ですね,互恵的で公正かつ相互的な貿易を促進するため,関税や他の貿易上の制約,そしてサービス貿易や投資に係る障壁,その他の課題についての交渉を開始する意図である,これはすべてやるというよりも,まずある,こうなんと言うか,4ヶ月で終了することを意図する協議の中で,その下に書いてある中のどの部分をやりますか,ということを決めて交渉に入るという形になるわけでありますが,ちなみにこれ関税と書いてありますが,関税の中で書いてありますのは,今回の協定でさらなる協議を行います,明確に決めた項目を想定しておりまして,それ以外の項目というのは想定をいたしておりません。それ以外の品目というのは想定をいたしておりません。
 誰がやるか,少なくとも日米間でやるということは決まっておりますけれど,まずはその,協議ということですから,事務レベルでこの協議というのは行われる,このように思っております。

【記者】今のに付随して,トランプ大統領が署名式の冒頭に「team will continue negotiations on areas to reach comprehensive agreements」とおっしゃっていたんですが,この包括的な合意というのは,今おっしゃっていた部分に当たるという認識でよろしいでしょうか。

【茂木外務大臣】まず,トランプ大統領がチームとして何を意図しているかということについてですね,そういったこれまで交渉に関わってきた人たちというのが素直な受け取りだと思います。そして今回はですね,物品貿易,そしてさらにはですね,デジタル貿易,これにですね,交渉を絞った内容でありましたから,見てのとおりでありますけれど,トランプ大統領としては,その物品貿易,デジタル貿易からさらに広がった分野ということで「comprehensive」とこういう言葉を使われたんじゃないかなと思います。

【記者】共同声明の3項目めを踏まえた発言ととらえても齟齬はないのでしょうか。

【茂木外務大臣】もちろんこの共同声明は,安倍総理とトランプ大統領の共同声明でありますから,当然そうなります。

【記者】今回の貿易協定で農産品の関税水準はTPPの範囲内ということなんですけれども,今後もしアメリカ側が日本の農産品の市場開放をさらに求めてきた場合は交渉に応じる考えはあるのでしょうか。

【茂木外務大臣】先ほどお答えしましたが,関税についての交渉,だから先ほどの3番目ですね,そこの中で想定していること,これは協定の中で協議を続けると書かれている項目,読んでいただきましたら何についてというのをスペシフィックに書いておりますからわかると思うのですが,それを想定しておりまして,物品貿易について現段階でそれ以外に想定しているものはございません。

【記者】232条による自動車追加関税の件なんですけれども,共同声明には両協定の誠実な履行がなされている間というふうに入っているのですが,これはその貿易協定が発効している間はずっと232条が日本は対象外になるというふうな捉え方をしていいのか教えてください。

【茂木外務大臣】誠実に履行されていると,一般的に言ってですね,この協定に反するような対応をするということがなければ,誠実に履行されていると,こんなふうに考えておりまして,その間については232条が課されることはないということは首脳会談で直接安倍総理からトランプ大統領に確認をいたしております。

【記者】今回の貿易交渉での関税の双方の撤廃率,品目ベースで教えてください。また,牛肉の関税に関してTPPでオーストラリアやニュージーランドにアメリカは劣後してしまっていた状態だったと思うんですけど,一年目の発効が今スタートして,オーストラリアやニュージーランドに追いつけないと思うんですが,それは38.5%からどのように9%に落ちていくか教えてください。

【茂木外務大臣】まず一番目の数字についてはですね,精査の仕方がありますので,きちんと精査した上でですね,数字についてはお答えをどこかのタイミングでさせていただきたいと思っています。それからTPPと同様というのはどういった形かと言いますと,たとえばアメリカがTPPに仮に残っていた場合,もしくは今のTPP11にですね,新しい参加国が出た場合,何年目かはわかりませんけれど,このTPPの締約国,この税率が例えば仮に3年目に入っていたらですね,3年目に入ってくる国があるとしますと,TPP上は3年目の税率,つまりオーストラリアやニュージーランドやですね,カナダが3年目に入っていたとしたら,牛肉は下がっていくわけですけど,3年目の税率から適用されます。加盟した段階で。同じようなことをアメリカに対してやるという形でありまして,まさにTPPのルールと同じことを今回の日米貿易協定でやっていくということであります。

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