記者会見

大鷹外務報道官会見記録

(令和元年9月18日(水曜日)16時33分 於:本省会見室)

冒頭発言

ブラジル・アマゾン森林火災に対する緊急援助

【大鷹外務報道官】外務報道官の大鷹でございます。先週,この任務を拝命しまして,副報道官の時から2年2か月ぶりに戻ってきました。ここであえて申し上げますと,私自身,そしてこの外務報道官の組織の最大の任務は,皆さんが正確な報道ができるように,そのために全面的に協力してご支援させていただくということでございます。それに則ってできること,私も部下の者と一緒に最大限やっていきたいと思っています。そしてこの定例の記者会見もその一環として定期的に行う。私が東京にいる限りは定期的にやっていきたいと思っています。
 そしてもちろん皆さまの業務に資するためのものでございますので,いろいろなご要望を,タイミングを含めていろいろなご要望があったら,どんどんおっしゃってください。そしてまた開催の日取りとかそういったことについても柔軟に対応してきたいと思います。よろしくお願いします。
 私の方から冒頭一つ申し上げたいのが,先週末の時点で発表されたのですが,ブラジルのアマゾンの森林火災に対する緊急援助というものを日本自身が決定し実施しております。今般,南米アマゾンの熱帯雨林で大規模な火災が発生しまして,G7,ビアリッツサミットでも取り上げられて,国際社会の注目を集めているところです。そして日本としてももちろんいまの状況をたいへん懸念して注視しているところです。ビアリッツ,G7サミットにおきましても,安倍総理からいま緊急に行うべきは消火への協力であって,日本としても必要な支援を検討する旨述べたところです。
 そういった中で9月13日にブラジル政府から要請があったということを踏まえて,JICAを通じ,直ちに供給できる消火活動に資する緊急援助物資の供与を決定したところです。明19日にも,早速物資が到着する予定です。同じアマゾン流域にあるボリビアに対してもすでに9月6日に緊急援助物資を供与しているところです。それぞれ1,000万円程度です。
 本件につきましては火災の消火だけではなく,森林消失の根本原因の対処が必要といわれています。なかなかディープな問題ですので,専門家あるいは現地の経済状況,そういうもの全体を見ながら取り組んでいく必要があるということですが,現状の焼き畑を含むアマゾン開発とか,森林の持続可能性を両立するために,関係国と連携しながらアマゾン流域全体に必要な支援を考えていくことは重要ですし,日本としてはそうしていきたいと思っております。
 それに完全に日本は森林消失の監視予測を行うための協力を行ってきておりまして,引き続き森林保全の協力を進めたいと思っております。ある意味で,それは日本のテクノロジーを利用したもので,違法活動によって森林の消失があったときにはそれを検知するようにする。このアマゾン森林の維持のための取組に,何らかの形で寄与したい,貢献したいという思いでやっております。

海外安全ホームページにおける旭日旗の扱い

【共同通信 江藤記者】旭日旗の関係なんですけれども,外務省は2010年に,海外安全ホームぺージで「広州アジア大会ならびに広州滞在上の注意事項」というお知らせを掲載しまして,「過去の歴史を容易に想起させるもの,例えば旭日旗を掲げるとトラブルを生じる可能性があります」という注意喚起をされています。外務省は現在もこの旭日旗を,過去の歴史を容易に想起させるものという見解を維持されているかどうか。またここで言う過去の歴史というのが,具体的に日本の歴史のどのような断面を指しているのか,ご説明をお願いします。

【大鷹外務報道官】旭日旗につきましては,そのような見解を有していない。つまり日本自身が旭日旗のデザインというのは日章旗と同様,太陽を形どって,大漁旗ですとか,出産,節句のお祝いの旗ですとか,国内外で現在も広く使用されていて,あるいは長い歴史を誇るものだと考えております。それが特定の政治的あるいは差別的主張であるかのように,いろいろ主張する方が海外にいらっしゃるという問題に直面しているわけです。
 海外安全ホームぺージでいろいろ注意喚起させていただいているのは,まさに2010年の頃ですけれども,まさに広州のアジア大会ですとか,アジアのパラ競技でいろいろ事案が今後更に起きかねないという文脈の中で,日本自身というよりは一部の若干特殊な理解をされた,あるいは誤った理解をされている方々のあいだで,過去の歴史を想起するということで,何か行動を起こすかもしれない。ですからそういうものとして,事実として日本国民の皆さんに注意喚起したと,そういうものだと考えてください。
 ですから日本自身が,おっしゃるような形で旭日旗を位置づけていることは一切ないということです。ただ世の中には,一部にはそういった誤った理解をお持ちの方がいるので,その事実も含めて注意喚起しなければいけないという主旨で,このホームぺージには掲載しております。

【共同通信 江藤記者】関連してなんですが,過去の歴史というものが何を指すのかという認識は,外務省としては有してはいないということなんでしょうか。

【大鷹外務報道官】いろいろおっしゃる方は,かなりいろいろなものについて指摘をする場合があるんです。かなり一般的な美術的なデザインについていろいろクレームを付けたりですね。ある意味でかなりずいぶんと広くそういう見方をしているなということがあります。日本自身は過去に実際に,日本の戦前の,戦中の陸軍あるいは海軍の軍旗のデザインとして採用したわけですけれども,それによって初めて出てきたデザインということではなくて,日本が長い間ずっと親しんできたデザイン,それを反映してそれに使ったということですので,そういうものとして今の日本人にとってもやはり大事な一種の伝統的なものという位置づけですので,そのこと自体にいろいろクレームを付けられるべきではないという立場でございます。

【共同通信 江藤記者】関連してなんですけど,2020年のオリンピックをめぐっては,旭日旗の競技会場持ち込みの是非が議論されています。旧日本軍の軍旗だった旭日旗に関してかつて日本の植民地だった韓国では,過去の日本の軍国主義を思い出させるとして,会場持ち込みに反対する声が挙がっているわけですけれども,平和の祭典である五輪の会場に旭日旗を持ち込むことに懸念を感じているのかどうか,外務省の見解はいかがでしょうか。

【大鷹外務報道官】そのような批判をする人,あるいはそういった主張をする人がいるのは現実です。ただ,先ほど申し上げたように,日本では長い間親しまれているデザインでございますので,そういった指摘は全く当たらない,そういった批判は全く当たらないという立場でございます。そういう意味におきまして,組織委員会におきましても,「旭日旗は日本国内で広く使用されており,旭日旗の掲示そのものが政治的宣伝とはならず,旭日旗を持ち込み禁止品とすることは想定していない」との方針であると,私どもは承知をしているところです。

【週刊金曜日 植松記者】私も旭日旗について質問させていただきます。外務省のホームページの方では日本語版と英語版で,今の旭日旗についての説明のPDFがそれぞれ3枚で掲載されております。その構成が(1)が日本文化としての旭日旗,(2)が自衛隊の公式な旗である。そして,(3)世界で広くされている旭日旗のデザインという説明になっておりまして,これは英語でも共通になっております。私が質問したいのは,この構成で,中に,今,他の方からも質問がありましたけれども,大日本帝国の軍旗であったということ,そしてただの軍旗だけではなく,戦前,戦争期に日本社会の国内においても広く使われていたという事実について,掲載しなかった理由といいますか,根拠について教えていただきたい。
 といいますのは(1)について,日本文化としての旭日旗がある。それで(3)で世界で広く使われている,これだけだったらまだ分かるんですが,2番で自衛隊の旗として使われているという項目がわざわざ入っています。つまり,今,戦後,国家機関である自衛隊が使っているとわざわざ掲載している。そうなってきたら,戦前の国家機関,大日本帝国の国家機関である陸軍と海軍が使っていたということを触れないわけにはいかないと思います,はずです。
 また,日本文化としての旭日旗というか,つまり旭日旗の歴史を考えるに当たっても,国家機関である陸軍と海軍が軍旗として使い,かつ,それが日本国内においても広く振りかざされていたという社会的な事実,これも日本文化としての事実だと思いますので,それがこの説明の掲載のホームページに,日本語版・英語版ともに載っていないというのは,社会的にはすごく不思議に思われる現象だと思いますので,わざわざ掲載していない理由について,ご説明をいただきたいと思います。

【大鷹外務報道官】ありがとうございます。ホームページに掲載している情報は,先ほどの質問にございましたように一部の方々からいろんなクレームがあるという状況の中でそれに対する一つの説明という位置づけでございますので,そこは多少,情報をそういう方々に,あるいはそういう主張を聞いている人たちが誤解を持たないように,我々として最大限工夫したものにしているつもりでございます。その意味で,先ほど申し上げたように,かつての陸軍・海軍での位置づけというのは,私どもは否定しませんが,ただそういった方々に対する一つの大事な情報の発信ということでは,むしろ長い歴史,長い間日本でそういうものとして親しまれてきたこととか,世界中でそういうデザインがあることとか,そういうことをきちんと発信することが大事なのではないかという判断で,そういうものにさせていただいたというふうにお考えください。

【週刊金曜日 植松記者】ご説明ありがとうございます。その上で今お聞きしてちょっと疑問に思ったのは,外務省の概算要求の中でもこれは第三国への情報発信だという位置づけがあると思うんです。そして英語でわざわざホームぺージの英語版を作っているということは,そのへんの歴史について十分理解していない国家地域の人間に向けての情報発信でもあると思うわけです。つまり,すでにいろんな議論が起こっている人に向けてと言いますけれども,その議論がない,そもそも知らない,あるいはよく知らない人間に向けて,英語圏に人間が全員知っていると思いませんので,それに向けても発信しているわけですから,そもそも前提がそのような特殊な理解をされている方,議論がある中でという前提があるんだったらば,ちょっと辻褄が合わないのは,ホームページにはそういう記載が一切ないことです。全くなんの前提条件もなく軍旗であることの説明がない説明ページが掲載されている。ということは非常に,今の説明で国民の納得を得られるとは思い難い部分があります。その説明で僕はちょっと納得はできませんでした。
 もう一つお伺いしたいのは,軍旗として使われていることというのは報道官も理解されていると,しかし日本文化としても使われているということも理解していると。でもやはりいくら日本文化として使われたといっても,ある時代に国家機関が使ったということの重みはでかいですよね。小さいとはとても私は思いませんし,それが小さいと思っているのか,小さくないと思っている人間が特殊な理解だということにはならないと思います。ですので,果たしてこの構成のままで続けるんでしょうか。外務省としての旭日旗のプレゼンテーションはこのままでよろしいと思っていて,この掲載のまま続けるんでしょうか。

【大鷹外務報道官】この件につきましては,世界の中でのこの議論をめぐる状況も見ながら,そしてまたいろいろな思惑で違う発信をする人たちもいるでしょうから,そういった方々の動きも見ながら,我々としてちゃんと発信しているのかということを,不断の努力として見直していかなければいけないと思っているところです。ですから,いただいたご指摘も非常に貴重なご指摘ですし,そのことも踏まえながら,それから今後の展開も見ながら,いろいろ考えていかなければいけないと思っています。

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