記者会見

茂木外務大臣会見記録

(令和元年9月17日(火曜日)11時07分 於:本省会見室)

冒頭発言

日米外相電話会談

【茂木外務大臣】まず私(大臣)のほうから1点。昨晩ぶら下がりでも申し上げましたが,日米外相電話会談を20分程度行いました。結構テンポ良く話が進みまして,日米同盟の強化,北朝鮮問題,中東情勢について有意義な意見交換をすることができました。また来週,国連総会の際に日米外相会談を行おうということで一致をしております。

サウジアラビアの石油施設攻撃

【共同通信 丹羽記者】サウジの石油施設攻撃についてお聞きします。米国のトランプ大統領は攻撃の背後にはイランがいるようだと述べて,イランの関与を示唆しました。日本の分析でも同じようにイランの関与が疑われるとみているのでしょうか。教えてください。

【茂木外務大臣】中東の平和と安定は,国際社会全体の平和と安定にとってきわめて重要でありまして,またサウジを含みます中東地域からの石油の安定供給,これは我が国を含む世界経済の安定と繁栄にとっても不可欠であります。政府,おととい,私(大臣)は談話も発表させていただきましたが,今回のテロ攻撃を強く非難しておりまして,15日にこうした談話を発表したわけでありますが,昨日の日米外相会談では,ポンペオ長官の方から「この談話を評価する」,こういう発言があったところであります。
 我が国は,中東地域の緊張緩和および情勢の安定化に向け外交努力を継続していく考えでありまして,イエメンに関しても当事者であったり,サウジアラビアを含む関係国による和平に向けた取組,および国連による仲介努力を後押ししていく考えであります。
 それからご指摘の,どういう事実関係であるかということですが,本事案についての様々な情報,米国をはじめ関係諸国と連携しながら,情報の収集・分析を今進めているところであります。

【毎日新聞 秋山記者】今の質疑に関連して伺います。大臣,15日付の談話で「ホーシー派によるサウジアラビア東部石油施設に対するテロ攻撃について」という表題で談話を出されているのですけれども,これは日本政府としてすでにイエメンのホーシー派による攻撃だと断定されているからこうされているのでしょうか。それとも事実関係はあいまいなままで,こういった表題を使っていらっしゃるのでしょうか。

【茂木外務大臣】後者です。あいまいなままと言いますか,攻撃があった事実,それからまたイエメンの方で発表した,その事実を踏まえて発表した談話でありまして,大切なことは内容にどう書いてあるか,テロについては厳しく非難する,そういったことがしっかりと談話には盛り込まれていると思っています。

【毎日新聞 秋山記者】ちょっとですね,談話の表題として,内容は大臣おっしゃるとおりだと思うんですけれども,表題としてこうやって断定的な表現を使うことは不適切じゃないかと思うんですが,そのあたりはいかがでしょうか。

【茂木外務大臣】気をつけましょう。

日米貿易交渉(署名への動き)

【テレビ東京 坂井田記者】ホワイトハウスが日米貿易協定について署名する意向を議会に通知をしました。これについて担当大臣として受け止めと,今後の展望をお願いいたします。

【茂木外務大臣】米国時間の16日に,トランプ大統領が日米貿易協定および日米デジタル貿易協定の署名に関する意向を有している旨の通知を,米国議会に行ったわけでありますが,今回の議会通知,2015年のPTA法,ここで改正されるわけでありますけれども,ここで定められている米国政府による国内手続は,こんなふうに承知をいたしております。

海洋安全保障イニシアチブ

【NHK 渡辺記者】先ほどのイランの,サウジアラビアの石油施設の攻撃の関係の質問に戻りたいと思うのですが。米国が呼びかけております海洋安全保障イニシアチブに関連しまして,今回のこうした事態を受けて日本政府の意思決定,今後どう対応していくかという議論については,今回の状況はどう影響するとみていらっしゃいますでしょうか。現時点での検討状況を含めまして,その辺お話しいただければと思います。

【茂木外務大臣】昨日,ポンペオ長官の方には,米国の今の立場,そういったものは日本として十分理解しているし,イニシアチブについても理解しているつもりだ,そしてこの中東地域の平和と安定,こういったものは日本にとってもきわめて重要でありまして,日本としてもどういったことができるか,今後,総合的に判断したい,いずれにしてもまたニューヨークで話をしよう,こういうことになっています。

日米貿易交渉(自動車への追加関税)

【ロイター通信 竹中記者】日米貿易交渉に関してなのですが,トランプ大統領がそういった書簡を議会に送ったということで,車,日本車に関しての追加関税に関しては現在どういったふうになっているのか。それは適用しないというような約束・合意になったのかどうか,そういったことも含めてお伺いできればと思います。

【茂木外務大臣】232に基づきます車への追加関税につきましては,昨年9月26日の日米首脳会談におきます日米共同声明におきまして,最後のパラグラフの7で,今後交渉を進めるに当たって,両国は信頼関係に基づいて交渉を行っていく。そして,この精神に反する行動はとらない。こういったことがパラグラフの7で明記されているわけです。
 そしてその26日の首脳会談におきまして,その趣旨というものは,日本の自動車に対して,232の追加関税は課さないということを,私(大臣)も同席しておりましたが,安倍総理からトランプ大統領に直接確認をしているところであります。
 今回,日米貿易協定,仕上がりの段階で同じような形で232の問題について,改めて確認をしたいと思っております。

【ロイター通信 竹中記者】追加関税を課さないというのは,交渉中はということでよろしかったでしょうか。

【茂木外務大臣】昨年の9月26日の表現ではそういう形であります。しかしその交渉に関しては,今回,全ての交渉ということではありませんけれども,物品貿易それからデジタル貿易についての交渉は終わるとなると,その仕上がりの段階で232は課さないということを改めて確認するということになるわけでありますけれども。パラのいくつになるか分かりませんけれども,私(大臣)が作っているわけじゃないので,改めて何らかの文章を考えて,そういった趣旨としては同じようなことになるというようなものを作ってございます。

【ロイター通信 竹中記者】課さないということで合意ということでよろしいのですね。

【茂木外務大臣】だから先ほど言ったような表現になるということです。昨年のパラ7を見てください。

IAEA総会における韓国の政府代表演説

【東亜日報 キム記者】日韓関係について伺いたいのですが。昨日オーストリアで開かれたIAEA会議で,韓国政府から福島汚染水の海洋放流について問題を提起しました。これについて大臣はどう受け止めているんですか,伺いたいです。

【茂木外務大臣】ウィーン時間の16日午後ですね,IAEAの総会におきまして,韓国が我が国の東京電力,福島第一原発に関する取組について批判する政府代表演説を行ったことを受けまして,引原在ウィーン日本国政府代表部大使から,ALPS処理水の今後の取り扱いについては検討中であること,IAEAによる報告書では我が国の取組が肯定的に評価されていること等の点について,答弁権を行使してしかるべく反論を行いました。我が国としては,今次,IAEA総会の機会等を通じて,韓国が事実関係および科学的根拠に基づく主張を行うよう改めて求めていきます。また,今後とも国際社会に対して透明性を持って丁寧に説明していく予定であります。

日米外相電話会談(日韓関係)

【朝日新聞 竹下記者】昨日,行われたポンペオ長官との電話協議の関係なんですけど,アメリカ側の発表で日韓関係に関して,ポンペオ氏が日本の韓国の間の建設的な対話の必要性を強調したというふうに書かれておりますけれども,事実関係としてポンペオ氏からこういった対話を促されたのかどうか,また,国連総会の場で韓国の康京和(カン・ギョンファ)長官と会談は検討されているかお願いします。

【茂木外務大臣】会談においては,私(大臣)の方から,北朝鮮をめぐる問題と,日米,そして日米韓の連携がこれほど重要な時期はなく,こうした中で安全保障に係る情報共有が損なわれるといいますか,円滑に行われなくなることは重大な問題である,こういう認識を示しまして,それについてはポンペオ長官も'completely agree',何というか,全く認識を共有したところでありまして,ご指摘の国務省の発表も,私とポンペオ長官のこのような認識の一致を踏まえてなされているものと承知をいたしております。

ローマ法王の訪日

【中国新聞 河野記者】先日,ローマ法王が来日されるというのを外務省が発表されました。平和のメッセージを発信される広島,長崎を訪れるということですが,大臣の受け止めをまずお願いします。

【茂木外務大臣】11月23日から26日まで,ローマ法王,フランシスコ台下が東京,長崎,広島を訪問されることになったわけであります。今回の法王の訪日が日本とバチカンの二国間関係を一層強化する契機となることを期待したいと思います。詳細な訪日日程,バチカン側に調整中と承知をいたしておりますが,国際平和を希求する法王が,被爆地である広島と長崎を訪問することは,国際社会に被爆の実相に関する正確な発信を行う上でも大変重要である,このように考えております。

核兵器廃絶に向けた茂木大臣の考え

【中国新聞 河野記者】関連して,大臣,変わりまして,核兵器廃絶への考えをお伺いしたいと思います。核兵器禁止条約というのを求める声もあるんですが,大臣,どのように核兵器を無くすように取り組んでいかれるかお聞かせください。

【茂木外務大臣】我が国はご案内のとおりですね,唯一の被爆国であります。そして,唯一の被爆国として,核兵器のない世界の実現に向けた国際社会の取組をリードしていく使命を有していると考えております。これがまず,我が国の確固たる方針であります。一方,国際社会では核軍縮の進め方をめぐる国家間の立場の違いが見られるわけでありまして,その中で,核軍縮を進めていくには,透明性であったり核軍縮検証と,各国が共に取り組むことのできる共通の基盤となりうる具体的な措置を見いだす努力を,粘り強く続けていくことが重要であると考えております。
 こうした観点も踏まえて,政府としては,核軍縮の実施的な進展のための賢人会議における議論の成果も活用しながら,各国間の信頼関係の再構築,そして相互の関与や対話を促すなど,核軍縮の進展に向けた国際的な議論に積極的に貢献していく考えであります。特に来年,5年に1度のNPT運用会議が開催される年になるわけでありまして,政府としてこの会議が意義ある成果を収めるものとなるよう,軍縮・不拡散イニシアチブ,この取組を通じて提案を続けていきたいと思っております。

日米貿易交渉

【テレビ朝日 大石記者】日米貿易交渉について,お伺いします。今月末に協定署名ということで,正に最終段階となりますが,改めてですが,どのような協定を担当大臣として目指していかれたいかという,ご所感をお聞かせください。

【茂木外務大臣】一言で言いましたら,日米双方にとって,ウィン・ウィンになるような,そういった協定,この早期発効,こういったものを目指していきたいということです。

北朝鮮情勢(拉致問題,対北関係)

【NHK 高島記者】きょうで日朝平壌宣言から17年という日になりましたが,大臣としては,拉致問題,対北関係,どういうふうに取り組んでいきたいとお考えでしょうか。

【茂木外務大臣】日本として,この日朝平壌宣言を基礎としながら,核,あらゆる弾道のミサイル,さらには日本にとって最も重要な問題である拉致,こういった諸懸案を包括的に解決する,こういう基本方針の下でこれからもこの問題には対応していきたい,そんなふうに思っております。
 今,米朝プロセスが進んでいるわけでありまして,日本としてはこの米朝プロセスの後押しをしながら,米国,さらには韓国,そして関係国としっかり連携しながら,問題に取り組んでいきたいと思っております。その中で,拉致問題,正にこれは日本自身に係る問題でありまして,総理も条件を付けずに,金(キム)委員長と向き合う,こういう話をしているわけでありまして,あらゆるチャンスを逃さないという形で対応していきたいと思っております。

中東情勢

【パンオリエントニュース アズハリ記者】
(以下は英語にて発言)

 茂木大臣はポンペオ米国務長官と,イランに対して開戦する可能性についてお話しになったでしょうか。報道によれば,トランプ大統領は,米国は攻撃の準備ができていると述べている他,米国は,イランがサウジアラムコの石油施設に対する攻撃の背後にいるとして,半ば公式に非難しています。一方で日本は,外交的アプローチを追求していますが,状況が戦争にまで発展した場合,このようなアプローチはどのように機能するとお考えでしょうか。

【茂木外務大臣】まず,昨日の電話会談におきまして,中東における緊張緩和と情勢の安定化に向けた意見の交換を行ったところであります。ポンペオ長官の方からも情報は共有をしていただいているところであります。その上でですね,まず,サウジの対応,サウジアラビア政府は復旧に努めておりまして,また,国際エネルギー機関,現時点では市場は潤沢な商用備蓄により十分供給されている,こういう発表も行なっているところでありますが,今後,アメリカも外交的な努力によってこの問題を解決したい,こういう基本的な立場であると思っております。そういった中で,状況がどう進んでいくか,そのことも注視をしてまいりますし,また,日本としても米国や関係国ともしっかり連携をとっていきたい,このように思っております。

日米貿易交渉

【読売新聞 寺島記者】日米貿易協定の話に戻ります。トランプ大統領が議会に送った書簡には,包括的な日米の貿易協定に向けて更なる交渉を行う意向も示しています。これはどういった認識に,この発言に対する現状認識と,もし交渉するとすれば,枠組みは従来の茂木大臣とライトハイザー通商代表という枠組みでよろしいでしょうか。お考えを願いします。

【茂木外務大臣】まず,今回の議会への通知は正に昨年9月26日,この共同声明に沿ったものであると思っております。早期に成果が期待できる分野について交渉を行う,そして,それ以外の分野については,その交渉が終わった後に協議をするという形でありまして,正にそのことを通知をされたんだと,このように理解いたしております。

【読売新聞 寺島記者】共同声明の4番という捉え方でよろしいでしょうか。

【茂木外務大臣】Article 4で結構です。

記者会見へ戻る