記者会見
河野外務大臣会見記録
(平成30年10月5日(金曜日)12時40分 於:本省会見室)
冒頭発言
(1)ポンペオ米国国務長官の訪日
(2)河野外務大臣のオーストラリア・東ティモール・ニュージーランド訪問
【河野外務大臣】10月9日から16日まで,オーストラリア・東ティモール・ニュージーランドを訪問いたします。
オーストラリアでは,日豪「2+2」を行なう予定にしております。首相が交代され,外務大臣も代わられましたので,連携をしっかり確認してまいりたいと思います。
東ティモールは,2002年の独立回復以降,外務大臣としては初めての訪問になろうかと思います。前回,外務大臣が東ティモールを訪問したのは,独立前2000年に,当時の河野洋平外務大臣が行っております。東ティモールとは基本的価値を共有する間柄でございますので,政治・経済・インフラ・文化・人的交流,あるいは海洋,エネルギー,こういった分野で協力関係をしっかり確認をすると同時に,インド太平洋,あるいは北朝鮮といった地域情勢についても意見交換をしてまいりたいと思います。
ニュージーランドは,日本の外務大臣としては2013年以来5年ぶりということになろうかと思いますが,「戦略的協力パートナー」であり,基本的価値を共有している大切なパートナーでもありますので,政治・安全保障,経済,文化・人的交流そうした面での協力をしっかり推進するとともに,自由で開かれたインド太平洋についても意見交換したいと思います。
(3)第57回アジア・アフリカ法律諮問委員会(AALCO)年次総会
【河野外務大臣】10月8日から12日まで,東京において,第57回アジア・アフリカ法律諮問委員会(AALCO)が開催されます。
9日の開会セッションで,ご挨拶をしたいと思いますが, この会議では, 海洋法,紛争の平和的解決といったアジア・アフリカ地域における重要なテーマについて議論される予定で,日本の取組についてしっかり発信をしたいと思います。
日本での総会は5回目です。56年だったか,創立以来,日本はオリジナルのメンバーでございますので,ホスト国として,また創立以来のメンバー国として,このアジア・アフリカ地域における法の支配を,一層推進してまいりたいと思います。
ポンペオ米国国務長官の訪日
【共同通信 福田記者】冒頭,発言のあったポンペオ氏の来日に関して伺います。終戦宣言に関しては,日本政府は朝鮮半島の平和と安全に資するものでなければならず,時期尚早だとの立場だと思いますが,この認識をポンペオ氏と,改めてすり合わせるお考えでしょうか。
【河野外務大臣】日米,同じ考えですので特にすり合わせる必要もございません。
韓国康京和外交部長官の発言
【朝日新聞 清宮記者】韓国の康京和(カン・ギョンファ)外務大臣がインタビューの中で,終戦宣言について寧辺の核施設の廃棄でできると,申告は求めないという立場を進められているということなんですが,日本政府の立場と異なると思うのですが,その辺りについてはどのように対処されていくのでしょうか。
【河野外務大臣】申告を求められたとは,何の申告・・・・。
【朝日新聞 清宮記者】核施設の申告を先に求めるわけではないという・・・。
【河野外務大臣】ちょっとそこは,どういう意思でおっしゃったのかよく分かりませんので,確認をしたいと思います。
日韓パートナーシップ宣言20周年
【朝日新聞 清宮記者】8日に日韓パートナーシップ宣言の20周年を迎えると思うのですが,改めてその宣言の意義についてと,現在,日韓間で歴史問題など懸案事項もあると思うのですが,未来志向の日韓関係を目指すとしたその宣言の精神について,今も生かされているか,などについてご見解をお願いします。
【河野外務大臣】当時の小渕,金大中(キム・デジュン),二人の首脳が非常に日韓関係を将来にわたって前向きにやっていこうという,勇気ある決断をされた宣言と理解をしております。いろんなことがこの20年ありましたけれども,やはり日韓というのが隣同士の重要なパートナーであるということには何ら変わりはありませんので,20年という節目の年に,かつての小渕,金大中,お二人のこうした決断を再確認し,日韓,しっかり前向きに進めてまいりたいと思っております。
【NHK 石井記者】日韓の関係なんですけど,慰安婦とか徴用工とか度々話題になっていますけれども,未来志向関係構築に特に障壁がないとお考えになるのか,未来志向関係構築の一環として,首脳間の往来というのもあるかと思うんですが,この調整が今どういうふうに進んでいるのか,今後,どういうふうに進めていくのか,その辺をお聞かせいただけますか。
【河野外務大臣】日韓関係,今,韓国から日本に来られる方,非常に増えておりますし,日本からも韓国にかなり大勢行かれているという中で,国民の間での交流は非常に活発なんだろうと思います。KPOPの人気というのは,日本でかなり定着しておりますし,様々な韓国のテレビドラマが日本でも放映され,それなりの人気を博しているということもあろうかと思いますし,日本の文化が韓国でも広く行き渡っているという状況はあるんだと思いますので,基本的に日本と韓国の国民の交流というのは,多いに前に進んでいると思います。
若干,政治的な,あるいはマスコミなどの報道によって波風が立つことはあろうかと思いますけれども,こうしたものを適切にマネージしながら,この日韓の国民が築き上げてきた交流というのを前にしっかり進めていきたいと思っております。往来については,文在寅(ムン・ジェイン)大統領に,適切な時期に訪日をしていただきたいと考えております。
日米物品貿易協定
【共同通信 池田記者】日米の通商交渉について伺いたいんですが,アメリカの農務長官が日本との通商交渉に関して,日本とEUのEPA以上に農産品の関税引き下げを求める考えを示しています。また,ペンス副大統領も日本とこれからFTAの交渉を間もなく始めるという発言をしています。日本政府はこの間の日米の交渉に関して,TPPの水準というのを最大限にするであるとか,これはFTAとは全く違う交渉であるという説明をしていて,日米間の認識にずれがあるように見受けられるんですが,どのようにお考えでしょうか。
【河野外務大臣】農産物についてはTPPですよ,というのは首脳の間で合意をされていることですから,認識のずれがあるのはアメリカの政府内の認識のずれだと思っております。我々としてはFTAというのは,物・サービスその他を含めた一連の枠組みの協定のこととして,これまでずっとやってまいりましたので,物品のみについて,できるものからやっていきましょうというレベルのものはそう呼んでおりません。ペンス副大統領がFTAをどのように定義されているかというのはわかりませんから,先方にお聞きをいただくしかないと思いますが,首脳間で合意をされた,物品に関しての協定ついて議論していきましょうというのは,首脳間で合意をされていることでございますので,アメリカ政府の中の認識のずれについては,先方にお聞きいただくしかないと思います。
【共同通信 池田記者】日本側の説明というのは,交渉の実態に即しているということでしょうか。
【河野外務大臣】首脳会談の中で合意されたことでございます。
大阪市,米国サンフランシスコ市との姉妹都市解消
【AFP通信 伊藤記者】大阪市がサンフランシスコと姉妹都市を解消するという話なんですけれども,大臣の見解と,何らかのチャネルで日本側の立場をアメリカ側に伝えるような,そういった考えはございますか。
【河野外務大臣】姉妹都市ですから,これは大阪市がやられていることなので大阪市にお聞きいただきたいと思います。
外務大臣留任に当たって
【産経新聞 力武記者】来週から,また,オーストラリアその他の国を訪れられるということですけれども,大臣,外務大臣に就任されて1年目からかなりいろんな国に行っておられますが,留任されて2年目に入って,今後の海外への訪問,どのように進めていかれるか,戦略のようなものがありましたらお聞かせください。
【河野外務大臣】やはり日本にとって重要性の高い国々を訪問し,連携を確認するというのは非常に大切なことだと思いますけれども,これだけ国際化が進んでおり,また国連の安保理を現代化していかなければならないというようことになりますと,これはもうほぼ全ての国の賛成を頂かなければいけないということでございますので,可能な限り足を運んで,しっかりと日本との二国間の連携を確認しながら,北朝鮮問題ですとか,あるいは国連の安保理改革といったものについて,日本の意見をしっかりと先方にお伝えすると同時に,連携を確認するということはやっていきたいと思っております。
また,様々な国際会議の場において,日本の主張を支持してもらう,あるいは日本の何というんでしょうか,戦略,その会議に臨む臨み方について支援をしてもらうというためには,これはやはり外務大臣同士の人間関係というのが非常に大事だということを改めて感じておりますので,いざというときに国際会議の場で,その場でしっかり連携を組み立てることができるような人間関係を,一人でも多くのカウンターパートと築いてまいりたいと思っております。
大阪市,米国サンフランシスコ市との姉妹都市解消
【毎日新聞 田辺記者】先ほどの大阪とサンフランシスコの話なんですけれども,先日,日韓の有識者の会合で,国家間でうまくいかないことがあっても,市民同士,個人同士の交流を大事にしようという話でした。今回,大阪市とサンフランシスコなので行政同士かもしれませんが,その下には市民の交流がありまして,そういう観点から,今回の大阪市,サンフランシスコの関係,どうご覧になりますか。
【河野外務大臣】大阪の皆さんとサンフランシスコの皆さんというのは,これまでも長い間,様々な交流をやってこられたと思います。そういうことを誇りに思っている方もいらっしゃると思いますし,大切に思ってくださる方も大勢いらっしゃるのだろうと思います。是非,そうした市民同士の交流は続けていっていただきたいと思います。
日朝外相会談
【日経新聞 林記者】一部報道で9月の日朝外相会談の際に,北朝鮮の李永浩(リ・ヨンホ)外相が首脳会談を急ぐ必要はないと,過去の清算に言及して,両外相の議論がかみ合わなかったというものがありましたが,大臣は先日の外相会談の意義について,日朝交渉が一歩前進したと思われていますか,あるいは平行線をたどったとお考えでしょうか。
【河野外務大臣】内容について申し上げるのは差し控えるというふうに言っておりましたが,今のような明らかな誤報については,否定はさせていただきたいと思います。ただこれ以上,これはどうなのだ,あれはどうなのだと言われて,それを否定も肯定もしていると内容がどうだったということになりますので,これを最後にしたいと思いますが,このような誤報を垂れ流すというのは,日本の国益にもなりませんので厳に慎んでいただきたいと思います。
【日経新聞 林記者】内容については今のようなことだったと思うんですけれども,会談をしたこと自体が何か局面の打開になったですとか,その意義についてはどうお考えですか。
【河野外務大臣】日朝間,これまでも様々なルートでやり取りはしておりますので,その一環というように考えていただいてもよろしいかと思いますが,外相同士が会談という形をとったのは,恐らく数年ぶりということですから,それはそういう意義はあったと受け止めております。
朝鮮半島情勢(終戦宣言)
【共同通信 斉藤記者】朝鮮戦争の終戦宣言の関連で1点補足してお伺いしたい。大臣は先ほども質問にありましたけど,時期尚早というお考えを示しているということですが,終戦宣言,当事国がこれを出すための環境整備,何が必要なのか。例えばこれまで,その核施設に関する申告について大臣言及されたこともあったと思うんですが,具体的な条件ですね,これだけは譲れないという条件があればお示しいただきたいと思います。
【河野外務大臣】この北朝鮮とのやり取りについて,具体的なことに触れるつもりは一切ございませんが,適切な時期,あるいは適切な内容というのが必要だろうと思います。
日米物品貿易協定
【共同通信 福田記者】先ほどのTAGの関係なんですが,ジョイントステイトメントを読むと,物品だけじゃなくてas well as serviceとなっていて,物品に限定しない包括的な交渉とも読めるのですが,これは明らかに日本政府はそうとは解釈していないという理解でいいでしょうか。
【河野外務大臣】物品の協定の交渉ではありますが,その中で,例えば物品の協定と同じようなタイミングで合意が出来る,例えば通関の問題とか,そういう問題については排除しないということでございます。