記者会見
河野外務大臣会見記録
(平成30年9月18日(火曜日)17時16分 於:本省会見室)
冒頭発言
インターネットによる在外投票
【河野外務大臣】外務省としては,来年の参議院選挙に向けて,在外投票,インターネットでぜひ行ないたいと思っておりまして,総務省とこれまでいろいろ意見交換をしてまいりましたが,なかなか来年の参議院のインターネット投票の導入は難しいということでございますので,再来年の4月をめどに導入を図るということで,総務省と引き続き調整をしてまいりたいと思います。
今朝,野田総務大臣とも少しその話をいたしまして,総務大臣にも直接,私(大臣)から再来年度の4月をめどにお願いをしたいということを申し上げたところでございます。
南北首脳会談関連
【共同通信 斎藤記者】平壌で行なわれている南北首脳会談の関連で,2点お伺いしたいと思います。1点は,南北首脳会談では非核化交渉,これが大きなテーマになると思われますが,この非核化をめぐる議論,どのような進展,大臣は期待されているのか,この点についてお伺いしたい,これが1点目です。2点目は,南北首脳会談で日本人拉致問題の解決に向けた日朝首脳会談,これが議題に出るかどうか注目されるわけですが,大臣としてどのような議論を期待されているか,この点についてお伺いしたいと思います。
【河野外務大臣】拉致問題から申し上げれば,これまでも韓国側から拉致問題について北に問題提起をしてくださっておりますので,これは日本と北朝鮮の間で,これから様々,議論を進めていかなければならない問題だと思っております。
また非核化については,米朝で合意された朝鮮半島の非核化に向けて,北朝鮮が関連施設の申告といった具体的な行動を取ることにこの南北会談がつながっていけば,非常に国際社会としてもよろしいのではないかと考えております。
【毎日新聞 田辺記者】非核化の話もそうなんですけれども,どうも見ていると,経済協力の話が進んでいるようなところもありまして,非核化と経済協力の進展のバランス,大臣,どのように今お考えになっているでしょうか。
【河野外務大臣】経済協力については,これは安保理の決議の履行というのがありますので,北朝鮮が非核化に向けて前進し,安保理決議に関して新たな合意がなければ経済協力というのは行なわれないわけでありますが,他方,安保理決議による経済制裁がなくなって,北朝鮮に対して様々な経済協力,経済支援といったものが行なわれるようになったら,北朝鮮にこんな明るい未来が来るよという絵を描くというのは,北朝鮮が前へ出ることを後押しをするという意味で,これは意義があることだと思いますので,南北で制裁後,こういうことができて,その結果,北朝鮮に,こういう未来が来るよねというのは,これは大いにやっていただいて,北朝鮮の国内でもそれなら非核化を一生懸命やろうじゃないか,そういう機運が出てくることが望ましいのではないかと思います。
【朝日新聞 田嶋記者】先日,この場での大臣の記者会見で,大臣が朝鮮戦争の終戦宣言について時期尚早だと述べたことについて,朝鮮中央通信が「無分別なたわ言だ」と非難する論評を発表しましたけれども,これについて,大臣どのように受け止めていらっしゃいますか。
【河野外務大臣】これまでも様々ご批判は,北朝鮮のメディアからいただいておりますので,特に感慨はございません。
安倍総理の総裁選出馬にあたっての発言
【朝日新聞 鬼原記者】自民党の総裁選が続いておりますけれども,その機を捉えていうか,安倍政権の外交,これまでの外交,もちろん大臣,ご担当ですけれども,虚心坦懐にどう評価されますかということと,安倍さんが選挙戦の中で,戦後日本外交の総決算という言葉を使っておられます。一方で,拉致問題や日露の話でも,北方領土の話でも,具体的な進展,成果がないんじゃないかという指摘も一方であります。この指摘について,大臣は今どうお答えになるでしょうか。この2点,お願いします。
【河野外務大臣】やはり,政権が安定をしているということが外交にとって大きなプラスであるのは,これは間違いないと思います。そういう意味で,安定した政権をバックに外交をやれているというのは私(大臣)としては非常にありがたいことだと思っております。だからこそ,中東の問題ですとか,あるいは東南アジアの様々な開発の問題,あるいは中南米との関係強化,コーカサスとの関係強化,こうしたことがやれるわけで,これは政権が安定してなければ,日米同盟のマネージとか,そういうことに労力を使ってしまって,ほかのことができなくなる,ということにもなりかねない中で,そういうことは非常にありがたいと思っております。
確かに,拉致問題,北方領土の問題は残っておりますが,それ以外の問題はかなり前進をしてきている,韓国とも日韓合意というのができましたし,中国とも関係が改善されてきている,日米同盟は同盟という観点から見れば,非常に絆が強くなってきている,また貿易に関して問題が起きれば,EUなりなんなりが,最初に話をしてくれるのは日本だという状況にもなってきていますから,二つの問題は残っているかもしれませんけれども,それ以外の問題は,極めて大きく前進しているのではないかと考えております。
【ジャパンタイムズ 吉田記者昨日,防衛省が南シナ海での日本の潜水艦の訓練の方,実施していたと発表したんですけれども,日本としては,日中の関係改善を続けているこの時期に,こういう発表が,潜水艦に関しては珍しいと思うんですけれども,ある程度,日中関係に影響を与えかねないかと思うんですが,訓練そのものは特に国を想定してなくても,何かしら中国へのメッセージが送られかねないとは思うんですが,そこら辺はどういう意図があるのか,ないのか。
【河野外務大臣】詳しいことは,防衛省にお聞きいただけなければなりませんけれども,こうした訓練は,恐らく十数年前からやってきているもので,やりましたよという公開も,様々言っていることですから,別に何か新しいことを今,始めたというわけではないと理解しております。詳細は,防衛省にお聞きいただければと思います。
シリア情勢
【日本テレビ 天野記者】中東のシリアなんですけれども,17日にロシアとトルコがイドリブ県で非武装地帯,設置することで合意して,当面の大規模攻撃は避けられた形だと思いますが,これに対する評価と,この地域でフリージャーナリストの安田純平さんが,武装勢力に拘束されていると見られていますが,安田さんの解放に向けて,今回の大規模攻撃回避というのが何らか影響を与えるのか,このあたり日本政府として,どのように分析されていますでしょうか。
【河野外務大臣】大規模な攻撃が行われれば,それはもう安田さんを含め,その地域に計り知れない影響が及ぶわけですから,今回の非武装地帯の設置という合意が行われたということは,評価をしたいと思っております。
シリアについて,早く政治プロセスできちんと前に進めることができるように,努力をしていかなければいけないと思っております。トルコのチャヴシュオール外務大臣とは先般も電話で会談をいたしましたし,関係の外務大臣とは,恐らく国連総会でもお目にかかることになろうかと思いますので,日本としても,協力できるところはしっかり協力をしてまいりたいと思います。
平和条約締結に関するプーチン大統領の発言
【読売新聞 梁田記者】日露関係の件で伺いたんですけれども,先週のプーチン大統領の東方経済フォーラムでの平和条約に関する発言を受けてなんですけれども,識者の見立て等で,平和条約というものが指すプーチン大統領の意図として,領土確定を含まないというものも構想しているのではないかという見方があります。そういったものを法的にまとめることについて,日本政府としては,その可能性を持っていらっしゃるんでしょうか,もしないのであればその理由をお聞かせいただければと思います。
【河野外務大臣】この間の記者会見でも申し上げましたとおり,日本は,北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を結びたい,ロシアは,経済協力を確保して平和条約を結びたいという,双方の思惑の違いがありますので,それは両方が納得をできる形で合意して,平和条約を結ぶということになろうかと思います。日本側としては,北方四島の帰属の問題を解決して,平和条約を締結するという方針に何ら変わりはございません。
【朝日新聞 田嶋記者】総理が,この前NHKの番組で,プーチン大統領から提案があった後に二人で話をして,日本の原則を伝えたというふうにおっしゃっていましたけれども,一方で,ロシアの大統領報道官が,総理本人は態度表明をしなかったと,ここでちょっと食い違いが生じているんですけれども,これについて事実関係をお願いします。
【河野外務大臣】それは,当事者である総理が言っていることが正しいと思います。
【朝日新聞 田嶋記者】ロシア側の説明は間違っていると。
【河野外務大臣】それは別に,総理とプーチン大統領との話ですから,第三者の話より当事者の話の方が,より正確性が高いと思います。