記者会見
河野外務大臣臨時会見記録
(平成30年8月4日(土曜日)19時02分 於:シンガポール)
冒頭発言
【河野外務大臣】今日はEAS参加国外相会議及びARF閣僚会合がございました。特に地域の安全保障上の課題に関して,日本の立場を強く訴え,関係国との連携強化を図りました。
北朝鮮については,北朝鮮による全ての大量破壊兵器及びあらゆる射程の弾道ミサイルの完全,検証可能,かつ不可逆的な廃棄の実現に向けて,瀬取り対策を含め,緊密な連携を呼びかけました。
南シナ海問題につきましては,その状況に深刻な懸念を共有しており,一方的な現状変更は航行の自由を損ねかねないものであると強く反対する旨,申し上げました。
また,ASEANによる取組が現場の非軍事化,そして平和で開かれた南シナ海に繋がるべきだと言うことを訴えました。
加えて,日本が推進している自由で開かれたインド太平洋戦略をはじめ,関係国によるインド太平洋に関する様々なビジョンは,基本的に原則を共有しているという風に思われますので,連携を強めていきたいということを呼びかけました。
また,ASEAN+3外相会合がありました。21年間にわたる実務協力の進展を評価するとともに,RCEPの交渉の早期妥結を実現したい旨申し上げ,また,アジア健康構想など,日本の様々な取組について紹介をいたしました。
今日は,アメリカ及びカンボジアとの二国間会談それから日米豪の閣僚級の戦略対話もありました。
アメリカとの会談では,北朝鮮問題についての方針のすり合わせを行うとともに,自由で開かれたインド太平洋戦略の実現に向けた連携を確認しました。また,地域情勢などについての意見交換を行いました。
日米豪閣僚級戦略対話(TSD)では,自由で開かれたインド太平洋の実現に向け,協力を進めるとともに,北朝鮮,南シナ海の地域情勢について,3か国で緊密に連携していくことを確認し,共同声明をとりまとめました。
カンボジアとの会談では,先月の国政選挙も踏まえた今後の両国関係を中心に議論をいたしました。日本は先月の選挙が国民の意思を適切に反映した形で実施されることを望み,必要な支援,働きかけを行って参りましたが,無効票が多く出るなど様々,残念な結果になったことを伝えました。その上で,日本は,カンボジアの和平以来,復興・開発,民主的発展の道のりを友人として支えて参りましたので,カンボジアが,そうした道を進むことを望んでいる旨申し上げ,カンボジアの国内政治の関係者が対話を持ち,国民の自由・権利を守り,民主的プロセスを促進していくことで全ての国民が団結し,更に力強く国の開発を進めていくよう働きかけをいたしました。今回の会談を踏まえ,今後も,カンボジアとの関係を適切に進めていきたい旨,申し上げました。
今回の一連の会合は,5件のマルチの会合,日ASEAN,日メコン外相会議に加えまして,ASEAN+3外相会議,EAS外相会議それからARF閣僚会合,5件のマルチの会合がありました。
それから,二国間及び三カ国の会談あわせて「14」,トルコ,イラン,中国,ブルネイ,カナダ,韓国,ベトナム,東ティモール,オーストラリア,EU,インドネシア,アメリカ,カンボジア,それと日米豪戦略対話,明日の朝は,シンガポール外相との朝食会を予定しております。
ASEANと日本の友好協力45周年という年ですので,日ASEANの更なる友好協力を強化するということで一致出来たと思います。
また,北朝鮮と南シナ海,ほとんどの国がそれぞれの会合で発言をしておりましたが,北朝鮮,南シナ海といった地域情勢,国際情勢について,日本の立場を申し上げ,多くの国と連携をすることが出来たのではないか,法の支配に基づく,自由で開かれたインド太平洋の実現に向けても,かなり力強い情報発信が出来たのではないかと思います。参加国の全てとは申しませんが,かなり多くの国がこのインド太平洋について,発言がございました。
昨年は,外相就任4日目ぐらいにマニラでこの会合に出席をしましたので,ほとんどの外相とは初に,お目にかかりますとのことでしたし,勝手もよく分からないまま日程をこなすのが精一杯でしたけども,今回は,あれからちょうど1年経ちまして,ほぼ全ての外務大臣と複数回会談をし,また,様々な協力をしておりましたので,個人的な信頼関係を築いた上で,いろんな議論をすることが出来たというのは,非常に良かったと思いますし,カンボジアあるいはミャンマーをはじめとする,様々な地域情勢についても,色んな国とサイドで,腹割った話をすることが出来たというのは,非常に良かったのではないかという風に思います。私からはとりあえず,以上です。
質疑応答
【記者】カンボジアとの外相会談ですが,日本側の申し出に対する先方からどういった反応があったのでしょうか。
【河野外務大臣】カンボジアのオフィシャルな見方という発言はありましたが,我々の方から日本としては少し見方が違いますねということを申し上げ,対外的に申し上げる訳ではありませんけれども,日本政府の見方はこういうことだということを直接友人として伝えたいということで,かなりはっきり我々の主張というか,我々の見方を直接申し上げました。
【記者】違いについては特段今後問題になっていかないのでしょうか。
【河野外務大臣】日本とカンボジアの関係について今後我々も検討しなければいけないし,カンボジア側もこれで選挙が終わって良かったねということではなくて,国をしっかりまとめ,国民がもう一度一致団結出来るような方策をカンボジアとしてもしっかり取って欲しいということは申し上げました。
【記者】今日は特にマルチの会合が多かったかと思いますが,特に北朝鮮の制裁ですけれども,常々緩みのないように制裁の維持・履行ということを主張されているかと思いますが,協調出来たとするならば,どういったことをもって協調出来たとお考えですか。
【河野外務大臣】北朝鮮の外務大臣が来られて,正式なバイ会談をいくつも行っていたようですが,北朝鮮とバイ会談を行った多くの外務大臣と今日一日話をする機会がありまして,かなり多くの外務大臣が北朝鮮に対してほぼ同じメッセージを出していたようです。北朝鮮に国際社会として国連の安保理決議に基づいた大量破壊兵器,あるいはミサイルのCVIDに向けて確固たる歩みを進めて欲しいという諸外国からのメッセージは十分伝わったのではないかと思いますし,そのために瀬取りをはじめとする抜け穴をしっかり塞ぐ努力を国際社会でしなければいけないということと,国連の安保理決議を国際社会としてきちんと履行していくことが,今の段階で非常に大事だという認識の共有というのは今日一日を通じて様々な形で出来たという風に考えております。
【記者】昨日,李容浩外相と接触がございましたが,今日の日米外相会談の中でも拉致問題について今後あらゆる手段を使って直接の協議も含めてと言うことですが,昨日のことも踏まえて今後どういう風な接触なり,どういったレベルの接触,またどういう風に進めていくとお考えですか。
【河野外務大臣】様々なレベルで北朝鮮とはやりとりをしておりますので,別に今回どうということではないという風に思っております。日本としては様々な問題を解決し,国交正常化するという日朝平壌宣言の立場から何も変わっておりませんので,然るべく対応して参りたいと思います。
【記者】一部報道で,昨日の日朝外相接触で大臣が李容浩外相に総理と金正恩委員長による直接対話を提案されたということですが。
【河野外務大臣】誤報です。完全な誤報です。
【記者】今日はリトリートとかで李容浩外相と握手なりお話したことはありますか。
【河野外務大臣】ありません。
【記者】北朝鮮の今回来ている代表団が昨日の会談相手国として7か国名前を挙げて,ここに日本は含まれずに日本とは接触しただけだと説明して,具体的な協議はなかったという認識を示しましたけれども,こうした北朝鮮の認識についてはどうお考えですか。
【河野外務大臣】我々と同じです。我々も二国間の外相会談の数に含めておりません。
【記者】カンボジアの選挙について確認したいのですが,先方のオフィシャルな見方というのは自由で公正な選挙が実施されたという原則的な立場を言われたのでしょうか。
【河野外務大臣】カンボジア政府の原則的な立場をおっしゃっておりました。
【記者】先ほど北朝鮮に対して各国が同じメッセージを発したということですが,大臣これまで色んな各国と会談をされてきたかと思いますが,その関連をどのようにお考えですか。これまで大臣が会談を重ねてきていると思いますが,大臣ご自身のメッセージは伝わったという風にお考えですか。
【河野外務大臣】国際社会で共有認識を持っていると思いますし,国連安保理決議の履行について,あるいは北朝鮮に対して会談をした各国が出したメッセージ,非常に協調は取れていたかと思います。
【記者】就任から一年経って,去年も李容浩外相とお会いしたかと思いますが,今年は何か表情とか態度に何か変わった点についてはどのように感じましたでしょうか。
【河野外務大臣】日朝の関係で申し上げたのは,昨日申したことに尽きますので,あれ以上申し上げることはございません。
【記者】今日はポンペオ長官とお話しした時に,拉致問題について大臣の方から決意を述べられたかと思いますが,それについてポンペオ長官はどのようなご回答・受け止めだったのでしょうか。
【河野外務大臣】特に拉致問題だけでなく,様々な問題についてやりとりをいたしました。
【記者】それについては,ポンペオ長官は,支援するとか共有するとかあったのでしょうか。
【河野外務大臣】日米これまでも緊密に連携しておりますので,特に変わりはありません。
【記者】カンボジアに戻ります。これまで官房長官会見などでも内政については差し控えたいという態度でしたが,このタイミングで先方にきちっと日本の立場を伝えると判断に至った理由というのを教えてください。
【河野外務大臣】今回がカンボジアのハイレベルと直接お目にかかる時期でしたので,日本側としてこれまでのこの選挙がカンボジア国民の意思を明確に反映されるものになるように,様々な努力・働きかけをやって参りましたが,そのことについて日本側の見方を対外的に発表することではないのかもしれませんけれども,カンボジア側に直接きちんと伝える必要があると思いましたので,先方がこの会合にいらっしゃいましたので,外相会談をしました。
【記者】日米のバイで北朝鮮について方針のすり合わせをしたということですが,具体的に制裁を今後どうしていくとか,どのような非核化をいつ実現していくかという観点でどういうすり合わせをしたのでしょうか。
【河野外務大臣】今までの方針とそう大きく違うものはございませんが,瀬取り対策を含め様々な具体的なことについて今後こうやっていこうということをすり合わせしました。
【記者】制裁についてはどのようにすると。
【河野外務大臣】今までどおり国際社会で協調して安保理決議をしっかり履行していこうということに何ら変わりもございません。
【記者】今日,日米ではあらゆる手を尽くすと強い決意を示されましたけれども,昨日の李容浩外相と接触では拉致問題の進展に向けて何か手応えを得られたとか評価についてはいかがですか。
【河野外務大臣】昨日申し上げたこと以上のことを申し上げるつもりはございません。
【記者】日米豪ではステートメントの中に国際社会に圧力の維持を要請したという部分があったのですが,そのような形の合意というのは日米の中ではなかったのでしょうか。
【河野外務大臣】日米豪で出したステートメントですから,それは日米豪で了解をしたものです。
【記者】日米ではなかったのでしょうか。
【河野外務大臣】別に日米の会談ではステートメントを出しておりません。