記者会見

河野外務大臣臨時会見記録

(平成30年8月2日(木曜日)19時40分 於:シンガポール)

冒頭発言

【河野外務大臣】昨年外務大臣に就任直後に,このASEAN関連外相会議に参りましたが,2回目のASEAN関連外相会議になります。地域の様々な問題に関して,日本の立場をしっかりと発信し,参加国との間で議論を深めていきたいと思います。
 本日は,日ASEAN外相会議では,日ASEAN技術協力協定の実質合意について確認をいたしました。日ASEAN友好協力45周年という節目の年に,このような成果を得ることができて嬉しく思います。この協定が正式に締結されれば,今までの二国間支援に加えてASEAN全体に対する支援が可能となりますので,早期の署名に向け,引き続き努力をして参りたいと思います。また,これに加えて日ASEAN協力あるいは地域情勢などについて意見交換を行いました。ASEAN側から日本の支援に対して,高い評価を頂きました。
 本日は,トルコ,イラン,中国,ブルネイ,カナダ,韓国,ベトナムとの間でそれぞれ二国間の会談を行いました。
 まず,トルコとの会談では,チャヴシュオール外務大臣と政治対話を強化していこうということ,日トルコEPA交渉を含む経済面での協力を強化していこうということ,さらに防災分野における協力促進について確認をいたしました。
 イランとの会談では,私の方から,イランが核合意を継続的に履行していることを歓迎し,日本は核合意を引き続き,支持するということ,地域の安定を実現する上で,イランに求められている行動,役割は重要だということを申し上げました。
 中国との会談では,5月に李克強総理が訪日された成果を踏まえつつ,年内の安倍総理の訪中及びその後の習近平国家主席の訪日を見据え,改善基調にあります日中関係の今後の取り進め方について,王毅外務大臣と意見交換を行いました。
 対日調整国を3年務めていただいた,ブルネイとの会談では,エルワン第二外務貿易大臣に,これまでの貢献への感謝の意を表明いたしました。
 日韓外相会談では,北朝鮮を始めとする地域情勢に関する連携を確認すると同時に貿易を始め,経済問題についても様々な意見交換をいたしました。韓国との会談では,今年10月の日韓パートナーシップ宣言20周年に向けて,いかに日韓関係を盛り上げていくかということについて意見交換を行うとともに,日韓の間の困難な問題を適切にマネージしながら未来志向の関係構築に向け,協力を進めていくことを確認いたしました。北朝鮮問題については,日韓あるいは日韓米3か国の緊密な連携が必要であるということを確認いたしました。
 また,8月から対日調整国となりますベトナムとの会談においては,南シナ海問題を始め,今次外相会議で一層緊密に連携していくことを確認いたしました。
 外相就任してから明日でちょうど1年になりますが,訪問国が44カ国,延べにして59ですかね,外相会談190回以上,その他の会合を入れると440回以上の会合,会談を行ったことになります。
 また,この一年の間にすべてのASEANの国を訪問し,外相会談を続けてまいりました。去年のこの会合で,最初に日本は電話一本で外交が済むと思うのは,間違えだとかなり厳しいことを言われましたが,その批判に応えるように十分に努力をしてきたつもりでございます。今回参加をしている各国の外務大臣のほとんどと,これまで複数回の会合を重ね,個人的にも信頼関係を築いてくることができたという風に思っております。
 何度も繰り返しますが,かつてのODA世界一と言われていた時から状況は大きく変化をしている中で,やはり日本の主張を明確にし,日本の国益を守り,世界の中の平和と安定,そして,繁栄に日本として貢献していくために,やはり日本の外交が果たしていかなければいけない役割も大いにあると思いますし,そのために,やはり,外務大臣としてそれぞれの国の外務大臣としっかりとした信頼関係を確立していくということは大切だという風に実感しているところでございます。
 今日の会談も非常にスムーズに会談を始めることができ,様々困難な課題を話し合う場面はありましたけども,お互いの信頼関係を崩すことがないというのは,これまでの努力が多少なりとも実りつつあるということではないかという風に考えております。
 私からは以上です。

質疑応答

【記者】いくつか会談を重ねられた中で,北朝鮮問題というのが一つ取り上げられたテーマだと思いますが,米朝会談後の米朝のプロセスを一連の会談の中で各国どういう風に受け止めているのか,また非核化ということに関して大臣は安保理決議の履行を維持というのを立場として訴えられたと思いますが,どういった訴えられ方をされたのか,その成果についてどういう風にお考えでしょうか。

【河野外務大臣】各国とも安保理決議を履行していくことが米朝のプロセスの後押しになるという認識ではほぼ一致をしていると申し上げてよろしいかと思います。北朝鮮問題について各国も非常に強い関心を持ってくれておりますので,私からも日本が今見ているこの北朝鮮問題について少し日本側の見方を紹介させていただいて,意見交換をするという場面が全ての国ではありませんが,結構多くございました。しっかりとしたメッセージをこの会合を通じて出せるように引き続き努力して参りたいと思います。

【記者】制裁の維持ということに関して,緩みやほころび,結束の乱れを感じることは特になかったのでしょうか。

【河野外務大臣】特にありませんでした。

【記者】北朝鮮の事で言いますと,この一連の会議の中で,4日にARFがあります。北朝鮮の李容浩外相も参加することが予想されますけれども,改めて接触があった場合,日本としての考え方をどう打ち出すのかお聞かせください。

【河野外務大臣】特に北朝鮮との会談,その他何も決まっているものはございません。

【記者】先ほどカナダとの外相会談の中で,現在は米朝プロセスが成功するか否かの正念場であるという認識だったと思いますが,これは6月の米朝首脳会談の時から状況が後退しているという認識なのか,どういう認識でこの正念場というお考えなのでしょうか。

【河野外務大臣】米朝の会談がこのシンガポールで行われたということは一歩前進だという風に思います。それをしっかりと推し進めて朝鮮半島の非核化,あるいはミサイルを含む,大量破壊兵器のCVIDといったことを実現するためには,やはり国際社会の緊密な連携というのがこれからも以前に増して重要になってくるというふうに思います。

【記者】状況が後退しているから正念場だという表現を使った訳ではないのでしょうか。

【河野外務大臣】特にそういう訳ではありません。

【記者】今,CVIDを実現することが重要だという認識を示されましたが,これは本日の日ASEANの場でも,このCVIDという言葉は使って,非核化の実現は重要だということは説明されたのでしょうか。

【河野外務大臣】どういう言葉遣いをしたが思い出せませんが,各国が安保理決議に基づいた措置を履行することが重要だということは繰り返し,様々な場面で申し上げました。

【記者】日韓ですが,慰安婦について本日は問題提起されたのでしょうか。拠出金の問題がありますが。

【河野外務大臣】本日の日韓では,日韓間の様々な問題について触れましたが,この問題を適切にマネージしながら未来志向の関係を作っていくことが大事だということは一致いたしました。

【記者】先日の記者会見でASEANの中でも日本の主張だけを通すというのは難しくなっていると感じているというふうにおっしゃっておりましたけれども,今回の会合を通じてその辺いかが感じましたか。例えば今回の日ASEANで北朝鮮問題について言及する国と言及しない国とあったと思うのですが,そういった観点からもどう感じましたか。

【河野外務大臣】北朝鮮の問題というのは日本の主張という訳ではなくて,国際社会が共有している懸念という風に申し上げてよろしいかと思います。そうした問題はASEANの各国の間でも,あるいは本日シンガポールに来ている多くの国の外相の間で,おそらく共通の認識があるのではないかなと思っております。

【記者】日韓で康京和長官と拉致問題について何か言及,大臣の方からご発言されて康京和長官から何か受け止めみたいなものはあったのでしょうか。

【河野外務大臣】本日は日韓関係及び北朝鮮の問題について様々な意見交換をさせていただきました。一つ一つどういう反応だったかと言うことは差し控えたいと思いますが,北朝鮮に関連して日米韓が頻繁に認識を共有し,日米韓一つの力強いメッセージを出していくことが大事だということ,日韓関係においては先ほど申しましたように,困難な問題が両国であったとしてもそれを適切にマネージし,未来志向の関係を築いていくことが大事だということで認識を一致させ,文在寅大統領の訪日を私からも要請をいたしました。それを楽しみに待っていたいと思います。

【記者】拉致問題も含めて認識は一致しているということでしょうか。

【河野外務大臣】一致していると思っていただいてよろしいかと思います。

【記者】先ほど李容浩外相との会談とか全く決まっていないというお話があったのですが,米朝の後のタイミングで接触することの重要性と,大臣の意欲というのはどのようにお考えでしょうか。

【河野外務大臣】日頃様々なルートで北朝鮮とはやりとりをしております。特に何かということではないと思います。

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