記者会見

河野外務大臣臨時会見記録

(平成30年5月21日(月曜日)21時43分 於:アルゼンチン・ブエノスアイレス)

冒頭発言

【河野外務大臣】今回はブラジル,アルゼンチン,米国,メキシコを訪問することになります。中南米の訪問は個人的にも外務大臣としても初めてになりますが,経済的な潜在力が非常に大きいと思いますし,基本的価値観を中南米と日本は共有している,そういう関係を強化していきたいと思います。
 まず最初に,ブラジル・サンパウロを訪問して,ジャパンハウス・サンパウロを視察致しました。非常に,想像以上に素晴らしい物ができていると思います。また,ジャパンハウスをお借りして日本の中南米外交に関する講演を行いました。今年はブラジルへ日本人が移住して110周年になりますので,日系社会がブラジル国内で築いてきた信頼というのが,そのまま日本に対する信頼になっていると思います。そういう意味で日系社会の皆様が果たしてこられた役割に御礼を申し上げたいと思います。
 今回のG20の外相会合では各国外相と率直にいろんな意見交換ができたと思います。今日,夕方の記者会見で,来年もG20外相会合を行うということを申し上げました。これまで外相会合は,たぶん,三回くらいしかG20では開催されていないと思いますけども,もちろん,経済を議論する場として,G20は展開をしてきましたが,経済だけでは解決できない問題というのがあるのも現実でございますので,来年も外相会合を開催をしようと,11月の22,23の二日間,愛知県の名古屋市で開催を致します。来年の議長国として,おそらく外相会合が最後の締めくくりの会合になるのではないかと思います。日本のG20の議長国としての総括をやる場にしたいというふうに思います。
 また,今回イギリス,オランダ,インドネシア,南アフリカ及びオーストラリアとバイの会談を行いました。地域の問題,あるいは二国間関係について議論をし,また国連をはじめとする,国際場裏に関する問題についても意見交換をし,中には北朝鮮問題での意見交換もございました。ルワンダ,シンガポールをはじめ,その他の国々とも,場内あるいはコーヒーブレイクで,いろんな話をさせていただきました。サウジアラビアもそうですし,イタリアの外務大臣,G20の外務大臣と既に顔なじみであったり,日本に来ていただいていたり,そういう意味で今回は非常によかったかな,というふうに思います。
 マクリ大統領への表敬をさせていただいて,今年は日本アルゼンチンの外交関係樹立120周年ということで大変喜ばしいことと,マクリ大統領が進める,自由,開放的な改革を日本として支持して参りたいということをお伝え致しました。マクリ大統領は,ボカジュニアーズの元会長ですし,私も湘南ベルマーレの元会長で,笑われるかもしれませんけども,そのうち戦いたい,というふうに思います。ちょっと言い過ぎかもしれません。
 日本・アルゼンチンの外相会談を明日,行わせていただきます。両国間の貿易投資の促進を通じた戦略的なパートナーシップを,さらに深めていきたいというふうに考えております。私からは以上です。

質疑応答

【記者】G20の外相会合ですが,非常に今回も議論が多岐に渡って,テーマも多岐に渡りました。そうした中で,成果文書というものを作るものではないのかもしれませんが,そうした中でですね,日本として発信していく,特に外相会合の場で発信していく意義,ちょっと重ねてになるかもしれませんが,どういうふうにお考えでしょうか。

【河野外務大臣】もともと国際的な経済政策をどう協調していくかという2008年の経済危機をスタートに,かなりこのG20というものを活用していこうという動きになりました。今の経済情勢を考えても,例えばガバナンスの問題ですとか,あるいは民主主義の問題といったものは,経済だけではなかなか解決ができないものが多々ございます。かつては経済成長が民主主義の発展につながると言われていましたけども,最近経済の発展と民主主義というのがリンクしないというところも増えている中で,やはり政治の分野,外交の分野で意見交換をしていくというのが大事なことだというふうに思っております。今回はトロイカの一員ということを受け,ずいぶんアルゼンチンの外務大臣に気を遣っていただいて,昨日のワーキングディナー,あるいは今回のワーキングセッション,かなり最初に発言をさせていただいて,最後のワーキングセッションは,締めで一番最後に発言をさせていただきました。ディナーやワーキングセッションの最初では,民主主義の問題を取り上げたり,あるいはマルチラテラリズムの中で国連改革が必要だということ,あるいは民主主義ということをもう少しきちんと議論した方がいいのではないか,そういうトーンセッティングをやらせていただきまして,そういう意味で,非常にトロイカの一員として参加できたことはありがたかったというふうに思っています。来年また新しいトロイカになりますけれども,しっかり3カ国連携して,どういう議論をするか,少し準備に入りたいというふうに思います。

【記者】重ねまして,まさに来年のG20ですが,今度は議長国として旗を振るわけですが,非常に北朝鮮を巡る安全保障や,保護主義的な動きっていうのが非常に不安定さを抱えたままでですね,多岐に渡る議論,どういうふうにリーダーシップをとってまとめていきたいというふうに考えますか。

【河野外務大臣】つい先日トロントの外相会合,G7の外相会合に出席をして,7か国プラスEUですから,かなり自由に,丁々発止,いろんな議論をすることができました。それと比べると,今度はG20プラスアウトリーチの国々がいて,なかなかこうキャッチボールというわけにはいかない中で,アルゼンチン,ずいぶん時間をぴしっとこう発言の時間を切らせて,非常にスムーズな議事進行の運びをされておりました。そういうところは見習いながら,少しどういう形で議論したらいいかというのは来年に向けて真剣に考えていかないといけないかなと。全員をまとめてさあどうぞというやり方のセッションも必要でしょうし,もう少し緊密な議論をするにはどうしたらいいのかということも考えていかなければいけないと思いますので,少し前例にとらわれずやり方を考えていきたいというふうに思ってます。どういう中身になるか,来年のG7までには北朝鮮問題,何らかの目処が立っているかもしれませんし,自由貿易の問題,あるいは,今日ポンペオ国務長官が発言されておりましたが,イランの問題,様々な問題もあるでしょうし,民主主義あるいは,ガバナンス,腐敗,汚職,そういった常に考えていかなければいけないような大きなテーマもあると思います。パリ協定,気候変動の問題のようなものもあるでしょうから,どういうセッティングにするかというのを含め,しっかり考えていきたいと思います。

【記者】来年のG20の関係で,先ほどのトロイカの記者会見でもご発言ありましたけれども,政治や外交といったテーマというのにも前向きに検討したいと。記者会見中の英語のやりとりでは,ポリティカル,それからストラテジック,それからセキュリティといった発言あったかと思うのですけれども,そういった観点に関して,他の国からの反応というのはどのようにお感じになったかということ。特にあの今お話が出たイランのような情勢なんかは,特に欧州の国なんかはかなりG20の場でも関心をもっていたのではないかと思いますので,それも踏まえて,他国からは提案に対しては前向きに反応を得られそうかというところの感触を伺いたいと思います。

【河野外務大臣】G7と違ってG20は特にコミュニケを出すわけでもありませんので,非常に率直なやりとりができると思います。特に世界のGDPの中で相当大きな割合を占める20カ国が集まるわけですから,JCPOAをはじめとする問題を議論する場というのは非常に大切だと思います。また,いろんな国の外務大臣から,意見は違うけれどもそれぞれの意見に耳を傾けることは大切だというような発言もありましたので,何かまとめるというよりは,いろんな議論をする場として,G20のフォーラムは一つ大事なのではないかなというふうに思います。もちろん国連の安保理のようなところがセキュリティとか政治というのではメインのフォーラムになるんだろうと思いますが,このG20というのは少なくとも20か国はずっと参加をし,それに様々アウトリーチでASEANとかAUの議長国のようなところもおそらく入ってくるだろうと思いますので,G20の外相会合というのが一つのそういう議論をする場としてこれから有効になってくるのではないのかなというのが私の率直な感想でございます。

【記者】大臣ツイッターで弊社(共同通信)の記事を批判されていますけれども,1点お伺いしたいのですが,具体的にどこがどのように問題があるというふうにお考えなのか。そして問題があるとお感じになるのであれば,正式に弊社に抗議をすればよろしいかと思うのですが,抗議されるお考えはありますでしょうか。

【河野外務大臣】昨日のジャパンハウスの講演というのは,一つは日系社会に対する感謝の気持ちというのをしっかり表したというふうに思っております。また,日系社会が築いてきた信頼というのが,日本という国に対する中南米の信頼にもつながっているということを申し上げました。また,日本と中南米の間のこれから様々な経済のやりとり,TPPというのがいよいよ発効間近になってきましたけども,パシフィックという言葉は入っていますが,太平洋にとらわれずこのTPPを広く広げていくという意味で,メルコスールという地域とのTPPのやりとりというのも当然期待されるんだろうというふうに思います。そういう中南米に対するメッセージというのを広く申し上げた上で,おそらくこういう時期ですから,参加された聴衆は多少なりとも北朝鮮の問題にご興味があるだろうと思って,北朝鮮問題についても解説を加えた,そういうつもりでありますが,もう最近の記事というのは北朝鮮について触れるとそれだけ,見出しも北朝鮮というのはいかがなものかと正直思っております。そういう意味で,マスコミの皆さんにはもっともっと勉強していただいて,奮起して,様々,日本をとりまく国際情勢,あるいはやはり国際化している中で国際問題について日本人が考える,その考えるためにやはり必要な情報をどこから得るのかと言えば,それはやっぱりインターネットの時代だと言っても,マスコミが大事なんだと思います。様々な情報を咀嚼して,わかりやすく解説をし,それをいろんな視点で読者の皆さんに,視聴者の皆様に伝えて,いろんなことを考えてもらうというのがマスコミの役割だと思います。残念ながら何かあるとすぐ北朝鮮,何かあるとすぐ拉致問題,それは大事なのかもしれませんけども,それ以外の部分というのがある,特にこのG20というのは,申し上げてきたようにそもそも国際経済協調の場ということでスタートしたわけですし,この中南米,多くの日系の方々がこの日本から遠く離れた地で頑張って,それぞれ様々な立場を築いてこられ,そうした方々の得た信頼というのがやはり日本と中南米の橋渡しをしている,そういうことをやっぱり普段考えていないかもしれないけども,日本の方にああ,こういうこともあるんだなというのを,何しろ,日本の外務大臣がそうしょっちゅう来ている地域ではありませんから,せっかくの機会にもっともっと中南米とか,あるいはそこの日系の社会,あるいはこれからの日本との経済関係というところにしっかり焦点をあてていただきたいというふうに思っております。

【記者】抗議されるお考えありますか。

【河野外務大臣】それはこれから考えます。

【記者】時事通信の記事についてもツイッターで触れられたかと思いますが,なぜ直接ではなくツイッターで記事を批判するようなことをするのでしょうか。

【河野外務大臣】いや,ツイッターで直接言っていると思います。

【記者】直接私たちには何の話も無かったですが。

【河野外務大臣】そりゃ,マスコミが直接言われなかったらっていうのはおかしいでしょ。自分たちがこれだけきちんと情報を発信してるんだから。やっぱりそこは,自信を持ってしっかり記事を書いてもらいたいと思います。一々ツイッターで批判されたから記者会見で文句を言うって言うのは大人気ないと私は思います。しっかり頑張ってほしいと思いますね。

【記者】そうした中ですみません。

【河野外務大臣】はい。

【記者】この後の日程でアメリカに向かわれると思いますが,そのアメリカの日程,このタイミングでですね,22日は米韓中の会談があります,来月の米朝というのも控えているなかで,色々な応酬もありますが,そういったタイミングで訪れて意見交換する意義というのは今の段階でどのようにお考えですか。

【河野外務大臣】北朝鮮問題については,日々アメリカ,韓国とやりとりをしていますが,機会があるごとに少し最近の進展あるいは情勢というものを意見交換をしながら,6月12日に向けて,日米韓それぞれどういう状況にあるのかということをしっかり認識し,役割を考えていきたいという風に思っております。また,今回特にイランの核合意についてのアメリカの立場というのがはっきりしましたから,それについても,少し日米の間で意見交換をしていきたいという風に思っております。それ以外にも中東の問題ですとか,時間があれば地域の問題を議論したいと思っております。

【記者】不確実性ですとは不安定性が増してきたとお考えですか。

【河野外務大臣】イランの核合意に関して言えば,多少不安定さはあるかなという風に思いますが,北朝鮮の問題について言えば,6月12日に向けて粛々と物事が動いているという風に思っております。

【記者】昨日ですね,ベネズエラでマドゥロ大統領が再選されました。民主主義の重要性であるとか,自由や共通の価値を持っているとか中南米の国々に昨日協力を呼びかけておりましたが,再選についてどのようにお考えでしょうか。

【河野外務大臣】この選挙に至るプロセスは,非常に残念だという風に思っております。ベネズエラの国民の中から,おそらく150万人を超える方がもう既に他国へ出て行かざるを得ないというような状況があります。そういう中で,ベネズエラ政府の政策がきちっとしたものになっているかというと,そこは大いに疑問があるのであろうと思っております。当然に,ベネズエラの国民が,国民の意思を反映する選挙というものを求める権利があるという風に思っておりますが,この選挙に至るプロセスというのは,残念ながら,問題があると言わざるを得ないだろうという風に思っております。様々,リマグループですとか,色々な国々が声を上げ始めておりますので,日本としても,少し諸外国と協調して,メッセージを出していきたいという風に思っております。

記者会見へ戻る