記者会見

河野外務大臣臨時会見記録

(平成30年4月29日(日曜日)21時20分 於:ヨルダン・マダバ)

冒頭発言

【河野外務大臣】中東和平は,引き続き楽観できる状況にはなく,関係当事者間の対話も容易ではない状況が続いている中で,イスラエル,パレスチナ,そして日本の閣僚が「平和と繁栄の回廊」構想のために,こうして一同に会うことができたのは,非常に大きな意義があると思っています。これも,イスラエル,パレスチナ,ヨルダンのすべての関係当事者と良好な関係を構築してきた日本だからこそ出来た,また,10年以上にわたって平和と繁栄の回廊構想のために着実に地道な努力を重ねてきたということがあったからこそ,本日の会合を開催できたのではないかと自負しています。
 日本は,ジェリコ農産加工団地(JAIP)を育て,また,キングフセイン橋,あるいはアレンビー橋の架け替えを平成11年に支援して参りました。本日は,JAIPからそのキングフセイン橋までの専用道路の建設について,合意をいたしました。この道路が建設されれば,JAIPで製造された製品のヨルダンへの輸出,あるいは,ヨルダン経由での国際社会への輸出が大いに強化されることにつながると期待をいたします。
 このJAIPは常にパレスチナに夢と希望を与えてきたといってよろしいかと思いますが,また新たな夢と希望を今日示すことができたのではないかというふうに思っております。昨年12月に私がJAIPを訪問した際にも申し上げましたように,物流の円滑化,そして,同時に,ICT分野の支援の展開といったことをJAIPで新たにやっていきたいというふうに思っております。
 こうした協力を通じてこそ信頼が醸成され,和平の実現に向けた雰囲気を少しでも創り出していくことが可能なのではないかと信じています。地域のヒトやモノをつないで,当事者間の交流や意思疎通の橋渡しに今後とも貢献していきたいというふうに思っております。
 また,今回の訪問にあたり,アブドッラー・ヨルダン国王に表敬し,二国間関係に加えて中東和平問題,あるいは地域情勢等について意見交換をさせていただきました。また,本日は,アブドッラー国王と共に,テロ・暴力的過激主義対策の意見交換の場であるアカバ・プロセス会合で共同議長を務めて戻って参りました。
 私からは以上です。<・P>

質疑応答

【記者】大臣,冒頭でも非常に中東和平を巡る状況は容易ではないと言われる中で,今回,道路の建設というものを通じて後押しをしていく,ということが,果たして本当に和平に寄与するものなのか,お考えをお聞かせください。

【河野外務大臣】このJAIPのプロジェクトはパレスチナの経済発展,そして,この地域の融和と活性化に大いに寄与しているというふうに思っております。また,今日のような会合を通じてイスラエル,パレスチナ,ヨルダン,そして日本の閣僚レベルでの会合を行うことが出来るというのは,やはり融和あるいは意思疎通の大きな一歩になっているのではないかというふうに思います。会合の中で,あるいは会合の後で,こうした国・地域の閣僚が,にこやかに握手をしながら話をするというのは,最近のこの状況の中で,これまでこの中東で信頼を築いてきた日本が仲介をしたからこそできたのではいか,というふうに申し上げてもよろしいのではないかと思います。こういう小さな地道な取組を積み重ねながら,日本なりの中東外交というものを前に進めていきたいというふうに思っております。

【記者】話題は変わりますが,北朝鮮関連についてお伺いしたいんですが,先日の南北首脳会談で,文在寅(ムン・ジェイン)大統領に対して,金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が,日本との関係について,日本との対話につて,いつでもやる用意があると,きわめて前向きな姿勢を示したと発表がありましたが,まず,これに対する受け止め,また,常々,拉致,核,ミサイルの包括的な解決ということをおっしゃっていましたが,日朝の直接的な対話を含めて,進展についてどのようにお考えですか。

【河野外務大臣】今回の南北首脳会談は一歩前進といってよろしいかと思います。この後,米朝の首脳会談も予定されており,その中で朝鮮半島の非核化,あるいは北朝鮮のミサイルの放棄,そして日本として懸案の拉致問題の解決に向けて実際の行動が出てくるかどうかということを注視していきたいと思っております。そして,米朝の首脳会談でどういう議論が行われるか,そして,北朝鮮が実際どういう行動をとるか,そうしたことを注視しながら日本としての対応を決めていきたいと思います。

【記者】日朝の関係においては,今までより進んだ考え方ができるのか,日本政府の方針としてはどうでしょう。

【河野外務大臣】日本政府は,核,ミサイル,拉致問題を包括的に解決して国交を正常化するという日朝平壌宣言の立場を変えていないというのは,昨年の夏にマニラで私が先方に伝えた,あるいはピョンチャンオリンピックで総理から先方に伝えたということもあり,日本政府の立場は変わらない,ということは,一貫して先方に様々なルートで伝えているところであります。日本としては,まず,米朝の首脳会談,そして北朝鮮が非核化,あるいはミサイルの放棄に向けて具体的にどのような行動に出るかというところをしっかり見極めながら日本としての対応を決めていきたいと思います。

【記者】引き続き,北朝鮮に関連してお伺いします。同様に南北首脳会談で,北朝鮮は5月中に豊渓里の核実験場を閉鎖すると,さらに米韓のメディアや専門家にもその様子を公開する用意があると,この点に関して,大臣は,不可逆的な核廃棄という,掲げている目標について,どのように評価をされますでしょうか。

【河野外務大臣】非核化に向けての一歩であると言ってもよろしいかと思いますが,少なくともこの核兵器,あるいはその他の核関連施設について,どのような行動に北朝鮮がでるのか,というところをしっかり併せて見極めていきたいと思います。

【記者】中東和平について,お伺いしたいのですが,大臣がおっしゃったように,今とても当事者間が話すのは難しい状況だと思うのですが,特にトランプ大統領のエルサレム宣言以降,パレスチナ側はアメリカとの接触を拒否しているような状況下で,日本として,経済支援はさることながら,政治的なイニシアティブとして,たとえば東京など,どこかの場所に当事者を招いて和平の機会を探るといったような考えはありますでしょうか。

【河野外務大臣】日本は少し政治的にも中東への関与を強めていきたいというふうに考えております。ただ,和平についていえば,やはりアメリカの関与が不可欠だと思いますので,日本としては様々な地域の当事者の信頼醸成が出来るようなことをこつこつと積み上げていきたいと思っております。

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