記者会見
河野外務大臣会見記録
(平成30年4月10日(火曜日)9時12分 於:官邸エントランスホール)
冒頭発言
北方四島における共同経済活動に関する局長級作業部会日程
【河野外務大臣】北方四島における共同経済活動に関する局長級作業部会について,先月の日露外相会談を受け,調整をしてきた結果,4月11日に人の移動に関する局長級作業部会,4月24日,プロジェクトの内容に関する局長級作業部会を東京で開催をすることといたしました。昨年12月にモスクワで開催されて以来2度目の会合となります。 本年5月の総理の訪露に向けて,準備を加速化していきたいと思っております。
河野外務大臣の韓国訪問
【河野外務大臣】諸般の事情が許せば,今晩,韓国へ行って,明日,康京和(カン・ギョンファ)外務大臣と外相会談をやろうという予定にしております。南北の首脳会談に向けて韓国側の準備も整っていると思いますので,北朝鮮問題についてしっかり意見交換をしてまいりたいと思っております。
【記者】拉致問題についてはいかがでしょうか。
【河野外務大臣】核・ミサイル,拉致問題というのが,一つ解決すべき問題ですので,そこも議論してまいりたいと思っております。
【記者】北朝鮮がアメリカ政府に対して米朝会談の場で,非核化の協議に応じる意思を初めて伝えました。これについてどのように分析されていますでしょうか。
【河野外務大臣】米朝の首脳会談に向けて,しっかりと準備をしてもらいたいと思っております。
【記者】ほほ笑み外交の延長線上ではないと。
【河野外務大臣】北朝鮮がどういう意図を持っているか,そこはしっかり分析をしながら,国際社会としては北朝鮮が言葉で言っているだけではなく,しっかりと完全かつ不可逆的,そして検証可能な核・ミサイルの放棄,そして拉致問題,拘束者の問題の包括的な解決に向けた行動を取るかどうか,というところをしっかりと見極めていきたいと思っております。
拉致問題
【記者】拉致問題についてお伺いしたいのですが,韓国でも政府認定で516人の拉致被害者がいらっしゃいます。この量は日本よりはるかに多い数字なんですけれど,この数字の受け止めと,日本人拉致問題と一括解決に向けた意気込みを教えてください。
【河野外務大臣】日韓だけではなく,そのほかの国の拉致の被害者もいらっしゃいますし,またアメリカの拘束者の事案もございますので,国際社会における人権の問題として,今回の北朝鮮危機で解決をしなければならない問題だと認識しております。
【記者】韓国国内では拉致に関して,世論の関心があまり高くないという現状もあります。その世論の喚起に向けてどういう取組が必要だというふうに大臣は考えていますか。
【河野外務大臣】韓国の内政のことを我々がとやかく言ういわれはないと思いますが,これは韓国,あるいは日本といった二つの国の問題に限られているわけではないと思っておりますので,これから国際社会としてしっかり取り組んでまいりたいと思います。
二重国籍関連
【記者】当社(ジャパンタイムズ)では二重国籍について,改めて読者アンケートをしているんですが,この国際化の現状にですね,国籍法は合わないのではないかという意見が多いのですが,大臣,自民党時代に国籍法の改正を検討していらっしゃいましたけれど,この問題について改めてどうお考えになっていますか。
【河野外務大臣】法務省にお聞きください。
【記者】個人的な見解でもかまわないんですけれど。
【河野外務大臣】閣僚は個人的な見解は申し上げません。
北方四島における共同経済活動に関する局長級作業部会
【記者】冒頭の局長級作業部会についてお尋ねしたいのですけれども,元々は先月の外相会談の前に開きたいということだったと思うのですが,約1か月ずれ込んだことになります。影響なく進んでいるというご認識でしょうか。また11日と24日,二日に分けてというのはそれだけじっくり話したいということの表れでしょうか。
【河野外務大臣】あり得べき総理の訪露に向けて,しっかり準備をしていこうというのが,日露外相会談の結論でございますので,それに向けてしっかりやっていきたいと思います。
日露関係
【記者】今,シリア情勢ですとか,あるいは一月前の襲撃事件等をめぐって,特に米露関係,欧州とロシアの関係というのが悪化しています。その中で日本は,今度,局長級作業部会ですとか,来週には次官級の戦略対話も控えていると思います。そういった対話を続けていくという,その方針には変わりはないのかということと,またそれであればそうすることの意義というのをどのようにお考えでしょうか。
【河野外務大臣】まず化学兵器の問題で言えば,化学兵器の使用は許されるものではなく,使った者は処罰されなければならないというのが日本政府の立場でございます。イギリス,OPCWの捜査の状況を見た上で日本としては対応していきたいと考えております。
ロシアの問題で言えば,ウクライナの問題などで日本は国際社会と共同歩調を取っているところもございます。その一方で,日本は平和条約の締結に向けて様々作業を行っておりますので,それについてはしっかりと準備をしてまいりたいと考えております。
化学兵器の問題で一言付け加えさせていただければ,化学兵器を使用することに対する敷居が下がってきていると認識をしておりまして,やはりこの化学兵器の使用に対してしっかりと国際社会から,化学兵器を使用することに対するコストというものを,使用する者が感じられるような対応をしていかなければならないと思っております。どのようにやるか,少し日本政府としても様々議論に加わって,化学兵器の使用,あるいは保有というものは許されないという,そういう国際環境の形成に日本としても尽力をしていきたいと思っております。
化学兵器の使用
【記者】化学兵器の使用の敷居が下がっていると,ヘイリー国連大使も国連の場で同様のことをおっしゃっていますけれども,スクリパリさんに関しても,今回のシリアに関しても,まだ化学兵器が使われたという結論はどこにも出ていませんけれども,大臣が,今敷居が下がってきているというふうにお話になった理由はどこに。
【河野外務大臣】ここ最近,化学兵器が使われた,あるいは使われたと推定される事案が非常に増えてきていると思います。ABC兵器というのは,本来使われてはならないわけですから,その中で,化学兵器の使用頻度が非常に高くなっているというのは,この件については少し危機的状況にあるのではないかと思っています。
拉致問題
【記者】日本人拉致問題に関して,南北首脳会談で提議するように韓国側に働きかけるということの確認をさせていただきたいのですが。
【河野外務大臣】南北あるいは米朝で,拉致の問題を取り上げてもらえるように働きかけをしたいと思います。拉致問題についてはあらゆる機会を通じて問題を提起し,これを解決していきたいと考えております。
米国の知的財産権侵害による提訴
【記者】米国が知的財産権の侵害で中国をWTOに提訴している関係で,日本も第三国として協議に参加表明というところなんですが,この狙いを教えてください。
【河野外務大臣】知的財産権というのはしっかり確立をされていかなければならないものだと思っております。米国の懸念を日本としても理解できるところはございますので,まず第三国として,しっかりこの議論に意見を申し上げたいと思っております。これは今の時点では,中国側の了解が必要だと理解していますが,これはパネルということになれば第三国としてしっかり意見を言うこともできると思います。状況の推移を見ながら対応していきたいと思っております。
米朝首脳会談関連
【記者】米朝会談に関連して,トランプ大統領が5月までにと言っていたのが,6月上旬も含めてちょっと時期に幅を持たせた感じがあります。今,米朝の間で,水面下でいろいろ交渉をやり取りしている話があります。この時期がずれるかもしれないということは,その交渉の下準備が進んでいるということだと思いますけれど,これについて大臣の評価は。
【河野外務大臣】様々米朝のやり取りがあるということは,我々もブリーフを受けております。それについて,特に今の時点でコメントすることはありません。
財務省森友問題及び防衛省日報問題関連
【記者】財務省の森友問題で国有地売却をめぐる文書改ざん問題ですとか,また今回,防衛省で国会でないと言っていた日報が次々に出てくるなど,行政の信頼を揺るがす事態になっていると思いますが,内閣の一員でいらっしゃる大臣,どのように受け止めていらっしゃるでしょうか。
【河野外務大臣】外務省としてそのようなことがないように,公文書の管理をしっかりやってまいりたいと思っております。国立公文書館もございますが,外務省も外交史料館を持っております。公文書の管理という観点で,公文書館と外交史料館がどのように協力・連携ができるかというのを今模索をしているところでございますので,特に外務省は,機密性の高い外交文書を多く保有をしております。公文書の管理,あるいは適切な公文書の開示といったことがしっかりできるようにしていきたいと思っております。
ただ,かつて公文書担当大臣を拝命しておりましたときに,日本の公文書館と海外のアーカイブの人員に大きな差があるというのも現実でございます。なかなか公務員制度も担当しておりましたので,人員を増やすのが難しいということは良く理解しておりますが,業務をしっかり遂行するということと,公文書を管理するということ,これをそれぞれの省庁が全て全部やるのがいいのか,あるいは公文書館,公文書担当をしっかり増やしてやるのがいいのか,ここは公務員の人数ということもありますので,しっかりとした議論が必要なのではないかと思っておりますが,外務省として公文書の管理がしっかりできるように引き続き指導してまいりたいと思います。