記者会見
河野外務大臣臨時会見記録
(平成30年4月8日(日曜日)14時28分 於:カンボジア・プノンペン)
冒頭発言
【河野外務大臣】今回,日本とカンボジアの外交関係65周年という機会にプノンペンを訪問し,フン・セン首相及びプラック・ソコン上級相兼外務大臣と初めて会談をいたしました。短い滞在ではございましたが,お昼ご飯も挟んで様々意見を交わし,また,フン・セン首相からは和平にまつわる話を直接聞くことができましたし,信頼関係の構築をすることが出来たのではないかと思います。
カンボジアは,安倍内閣の掲げる積極的平和主義の原点でもありますし,私の父が宮沢内閣の官房長官の時代にUNTACへのPKO部隊派遣に尽力し,また,副総理・外務大臣の時代にフン・セン首相ともプノンペンで会談したこともあるということもあって,私個人としても思い入れが深いということをカンボジアのみなさまにお伝えをいたしました。
カンボジアから自由で開かれたインド太平洋戦略について,非常に早い段階でご支持をいただいておりましたが,その実現に向けて,具体的な協力を積み重ねていくことで一致をいたしました。メコン地域の要衝にあるカンボジアの発展を後押しすべく,物流の改善,人材の育成,そして都市機能の強化という3つの柱で引き続き支援を継続していくことをお伝えをいたしました。
また,今日,交換公文への署名が行われました,首都圏の送配電網拡張整備に対する円借款の供与,それから,税関の監視艇2隻の贈与も,こうした戦略の趣旨に一致するということであり,カンボジアからは,御礼の言葉とともに,更に協力を推進する意思が示されました。
また,日本・ASEAN,日本・メコンといったマルチの場でも協力を深めていくことで一致をいたしました。
このほか,北朝鮮の核・ミサイル・拉致問題の解決に向けて,圧力を最大化・維持していくという必要性で合意をいたしました。
内政面では,民主主義に基づく国造りを,日本は和平後から長年に亘り一貫して支援をしてきた友人という立場から,今年7月の国政選挙が民意が適正に反映できる選挙であってほしいということを改めて働きかけ,先方からは,この選挙が自由・公正かつ,民意を反映したものになる旨の話をいただきました。
また,今日は,国連のボランティアとしてカンボジアに来られた中田さんの御命日でもあり,UNTAC活動中に殉職された高田警視と,それぞれ慰霊碑を訪れ,献花をし,また,お参りをさせていただきました。また,職務中に亡くなられた共同通信の記者の方にも,お参りをさせていただきました。
日本とカンボジアの戦略的パートナーシップの下,この両国の協力関係を更に深めて参りたいというふうに思っております。私からは以上です。
質疑応答
【記者】選挙についてお尋ねします。今,大臣の方から,国民の意思が反映される形で選挙の実施を求めたということですけれども,カンボジアでは最大野党が解党されるなどの動きがあります。具体的に,国民の意思が反映されるようにどういうふうにしてほしい,という要望は大臣の方からなされたのでしょうか。
【河野外務大臣】これは,内政の話ですから,友人としてカンボジアを長年,日本は支えてきた,そのカンボジアがこうしたことで批判される,というのは日本にとっても本意ではありませんので,是非,国民の意思が反映される選挙にしていただきたいということを申し上げ,フン・セン首相からも,自分としては,国民の意思が反映される自由で公正な選挙にするつもりだ,というお話がありました。7月まで,まだ時間もありますので,日本として,しっかりと注意深く見守って参りたいと思いますし,選挙に対する信頼感を高めるために,投票箱など選挙に必要な機材というのは,しっかりと日本として協力をして参りたいと思っております。
【記者】フン・セン首相からは,適正に選挙が行われるようにしたい,というお話があったということですけれども,今のままで,たとえば野党が出ない,解党された状態で選挙に突入することは,日本政府としては,これは正当な形で選挙が行われているという認識なんでしょうか。
【河野外務大臣】内政の問題ですから,やりとりについて外に申し上げるのは控えたいというふうに思いますが,フン・セン首相が直接そのように言ってくださったことは,非常に重いと私たちは思っております。
【記者】今日は,先ほど二人の慰霊碑に伺われましたけれども,カンボジアの民主化にはですね,日本は二人の尊い命を犠牲に払ってこれまで関与してきました。その民主主義が今,懸念が示されるにあたって大臣個人としてはどういう思いをお持ちでしょうか。
【河野外務大臣】それぞれ,ASEANの国々の政治体系には,歴史的な背景,あるいは,様々な背景があって,こういう状況になっているわけでございます。日本としては,もちろん,この法の支配,基本的人権の尊重,あるいは民主主義というものが,国際的に根付いていくのが大切だというふうに思っております。それぞれの国に,それぞれの民主主義の段階というのがあると思いますので,大事なのは後戻りすることなく,確実に前に向かって進んでいることだろうというふうに思っておりますので,日本として,ASEANのそれぞれの国にしっかりとコミットし,また,支援できるところは,しっかり支援をしていきたい,そして,ASEANとともに,このアジアの平和と繁栄を築いていきたいというふうに思います。
【記者】今,カンボジアでは,NGOですとか市民活動家への弾圧という言い方をされたりですね,あるいは野党が解党されたことに心配する声が出ているんですが,このあたりの懸念というのは,友人としてはフン・センさんにはお伝えにはなられましたでしょうか。
【河野外務大臣】内政の話ですから,やりとりについて,公にするのは差し控えたいというふうに思いますが,フン・セン首相からは,しっかりと,自由で公正な,国民の意思が反映された選挙をやる,という意思表示をいただきましたので,日本として,カンボジアが,しっかりとそうした選挙ができるように,引き続き,友人として見守っていきたいというふうに思っております。
【記者】野党の解党をですね,支援引き揚げの理由としている国も一部ありますけれども,それでもやっぱり日本としては支援を続けるんだというふうに決めたのはなぜなのか,その背景をお伺いしてよろしいですか。
【河野外務大臣】ASEANを見ていきますと,それぞれ,民主主義,様々な段階があるというふうに思います。一党でやられているところもあれば,軍事政権からの移行をこれからしていかなければいけないようなところもありますし,様々な民主主義の段階がある中ですので,日本としては,しっかりと,そうした国々が後戻りすることなく,法の支配,あるいは基本的人権の尊重,民主主義といったことに向けて確実に進んでいけるように,日本としてしっかり支えていきたいというふうに思っておりますし,日本とASEANと,一緒になって,このアジアの平和と安定,そして繁栄というものを実現をしていきたいというふうに思っております。
【記者】北朝鮮については,対話ムードが出てくる中,友好国のカンボジアに対してはどのような,制裁について協力をしていきたいと。
【河野外務大臣】カンボジアも我々と認識はまったく同じであって,非核化をするために必要な圧力はかけていかなければいけない,国連の安保理の経済制裁ですから,国際社会の一員として,これはきっちり履行していかなければいけないということで,国連の安保理への制裁の履行の報告書をつくるために,省庁間で今,しっかりチームを作って準備をしてくれているところでございますので,そうした取り組みに感謝を申し上げ,必要なところがあれば日本として支援はしていきたいというふうに思っております。