記者会見

河野外務大臣臨時会見記録

(平成30年4月7日(土曜日)17時48分 於:ラオス・ビエンチャン)

冒頭発言

【河野外務大臣】今年はラオス観光年という年にあたって,しかもラオスのお正月が来週という中で,初めてラオスを訪問することができました。この訪問を日本とラオスの関係の強化に有意義につなげていきたいというふうに思います。
 今回の訪問の主な目的は,この3月に外相会談を行いましたが,それに引き続いて,「戦略的パートナー」としての,ラオスと日本の関係を更に強化をしようということでございます。
 今年は,日本・ASEAN45周年という周年でもありますし,日本・メコン首脳会議を日本で開催をする,そういう,弾みをつけるには節目の年になるのではないかと思っております。
 まず,パンカム国家副主席とは,日本の支援の柱のひとつであります,人材育成に関わるプロジェクトの進捗状況について,報告をしました。副主席は,教育スポーツ大臣も経験され,人材育成に非常に熱心に取り組まれておりまして,そういう意味で,日本がラオスの人材育成にこれからも努力をしっかりやっていきたいということをお伝えすることができました。
 サルムサイ外務大臣とは,3月に外相会談,ワーキングディナーをやったばかりでございますが,「自由で開かれたインド太平洋戦略」の下,ビエンチャン-ハノイの高速道路のような,連結性の向上,ということ,あるいは,ラオスの不発弾処理といった問題について,日本の支援を加速することをお伝えをいたしました。
 トンルン首相にもお目にかかりまして,首相が喫緊の課題とされているラオスの財政安定化,あるいは,連結性の強化といった取組についてお伝えを申し上げるとともに,地域情勢についての意見交換も行いました。
 ラオスからの日本に対する期待は大変大きいものがあります。JICAやJETROなどオールジャパンでこのラオスの支援にしっかりと取り組んでいきたいというふうに思います。ラオスがランドロックからランドリンクというふうに掲げていますが,それをしっかり支えていきたいと思います。
 また,南シナ海,あるいは北朝鮮といった,地域情勢についても意見交換をさせていただきました。今後も緊密に連携をしていこうということで一致をいたしましたし,北朝鮮問題に関して,北朝鮮が本当に非核化に向けて,きちんと行動に移すまで,圧力の最大化を維持しなければいけない,というところでは一致をいたしました。
 また,今日は,ワッタイ国際空港,日本の企業が行っている空港の拡張工事を視察をし,目に見える形で,この空の連結性を高めるということを期待をしておりますが,せっかく日本が,この玄関口の空港を整備をしているわけですから,日本とラオスの直行便をしっかりと飛ばせるように,日本としても協力をして参りたいというふうに思います。
 また,ラオスの懸案事項のひとつであります不発弾処理を進めているビジターセンターを視察をし,八千万個残っていると言われているクラスター爆弾の処理について,日本もこれからも引き続き,しっかりと,財政支援だけでなく,少し技術的に様々な開発をして,この八千万個のクラスター爆弾の処理の加速化というのを,これはやはり,しっかりやっていかなければならない,というふうに思いました。また,日本人が監督をしていて,2020年の東京パラリンピックへの出場を目指している,ラオスのブラインドサッカーの代表チームの練習ぶりを見せていただきました。その後,自分も,目隠しをしてブラインドサッカー挑戦をしてみましたが,相当大変でした。本当に,代表選手の試合ぶりというのは,本当に驚嘆でした。そういうことで,この日本とラオスの関係の更なる強化に努めて参りたいというふうに思っております。私からは以上です。

質疑応答

【記者】今朝,大臣は日本の支援で拡張されている空港を視察されましたけれども,日本の存在感という意味でですね,中国はこのラオスで鉄道を建設して両国にまたがる大規模な鉄道を建設しています。インド太平洋戦略のもとで,日本の存在感をどういうふうに一層示していきたいですか。

【河野外務大臣】空港の拡張工事の支援ですとか,あるいは,ハノイ-ビエンチャン間の高速道路の支援といった,連結性の向上,質の高いインフラをつくっていきたい,というふうに思っておりますが,それに加えてやはり,日本の支援の特徴は,人材育成,人への投資というところにあるのではないか,というふうに思っております。
 不発弾処理に,日本はそれこそトップドナーとして,支援を続けて参りましたし,今日のブラインドサッカーのような,スポーツの交流,それから,ラオスの外交官,行政官,あるいは党の幹部の人材研修といったことをやって参りましたので,ラオスに対する,人への投資,人材育成,ということで,日本はしっかり努めていきたい,というふうに思います。

【記者】ともすればですね,中国の存在感に日本の存在感が押され気味なんじゃないかという見方もあると思うんですけれども。

【河野外務大臣】それぞれ,得意分野というのもあるかと思いますし,財政の制約がある中で,日本として,有償,無償,あるいは技協,いろんな支援をやって参りました。特に,この日本の支援は,息長く,人への投資というものを中心に,非常に丁寧にやって参りましたし,ラオスの財政にも気を配りながらやってきた,という特徴があると思います。こうした日本の支援,非常に信頼を得ていますので,この日本への信頼感というのを大事にしていきたい,というふうに思います。

【記者】ラオスは伝統的に北朝鮮の友好国です。今日も南北や米朝を控える中でですね,北朝鮮が具体的な行動を示すまでは,圧力を維持し続けるべきだというふうにお伝えされたと思いますけれども,ラオス側の反応とですね,そういう友好国に対してどういうふうに協力を求めていくか,この2点をお伺いします。

【河野外務大臣】ラオス側は,国際社会の一員として,国連の安保理決議は完全に履行してきてくれておりますし,これからも,国際社会の一員として,ラオスはしっかり行動していくというお話がありました。やはり,朝鮮半島の非核化のために,国際社会が一致するということが大切だ,という共通認識があるというふうに考えております。

【記者】今日,南シナ海問題も話されたとのことですが,今,中国とASEANの間での南シナ海問題の取り扱いはなんとなく中国ペースになってきているという指摘もあり,特にラオスは中国よりではないかという指摘もASEANの中で出ているのですが,今日の話の中で南シナ海問題はどのような話をしたのでしょうか。

【河野外務大臣】今,南シナ海でASEANと中国はCOCの交渉が行われておりますが,先日のASEANのリトリート会合では,非常に良い,ASEANの基本的な考え方をきっちり出していただきました。この4月の25から28日に,ASEANの首脳会議が行われますが,そこでもASEANとしての立場を明確に出していただきたいということをお願いいたしました。

【記者】開かれたインド太平洋戦略について,これまでも大臣,シンガポールやいろいろなASEANの国を回ってそれぞれ説明していると思うのですけれども,中には認識を共有しているだとか,これからもっと研究を続けたいとかさまざまな反応があると思いますが,今回ラオスに関してはどのような反応があったでしょうか。

【河野外務大臣】ラオスというよりはサルムサイ外務大臣から,ASEANでの会合で議論をするときに,ASEAN各国の自由で開かれたインド太平洋戦略に対する認識が高いレベルで共有されている必要がある,だからASEAN各国にきちんと日本から戦略の説明をして各国が高いレベルで理解を共有できるようにしてほしいとの話がありましたので,先日のジャカルタですとかこれからのハノイで丁寧にセミナーを開催して説明をしていきたいということを申し上げました。きちんとASEAN各国の理解というのが共有されるように日本としても努力してまいりたいと思います。

【記者】ラオスとの二国間では戦略に基づいて連携を深めていくことで一致したということでしょうか?

【河野外務大臣】ラオスにはしっかりと戦略の説明をして,そのプロジェクトの例としてハノイ-ビエンチャンの間の高速道路の基礎調査が7月にも報告が上がって参りますし,またベトナムとの国境沿いの不発弾の多い地域の不発弾処理というのを進めることによって,この連結性を高めるということができますので,こうしたことに日本はしっかり取り組んでいきたいということを申し上げました。

【記者】会談でもラオスとの直行便の話を何度かされていましたけれども,具体的に直行便ができたとした場合のメリットがどうなのかを,具体的にもう一度大臣の口からうかがえればと思います。

【河野外務大臣】たとえばソウルの仁川,金浦の二つの空港からでている直行便の数あるいは行き先と,羽田,成田の直行便の数を比べるとやはり相当まだ負けている,負けているというか数が少ないというのが現実だろうというふうに思っています。ラオスには韓国からの観光客が,直行便が始まってから相当増えたわけでございますから,そういう意味でやはり両国関係を,絆を強めていくためにも直行便でいけるというのが非常に大きいと思いますし,直行便があるからこそ様々な旅行のパッケージといったものが進められるんだろうというふうに思っております。そういう意味でラオスの国営航空に直行便を飛ばそうという意志があるようでございますので,財政その他様々な制約はあるのかもしれませんけれども,日本としても支援できるところはきっちりやって参りたいというふうに思っております。

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