記者会見

河野外務大臣臨時会見記録

(平成30年3月9日(金曜日)16時05分 於:本省中央玄関ホール)

質疑応答

【記者】米朝首脳会談が5月までに行われることが決まりましたが,政府の受け止めをお願いします。

【河野外務大臣】北朝鮮情勢に関して,今日の午前中の日米首脳電話会談でトランプ大統領から訪米中の鄭義溶(チョン・ウィヨン)韓国国家安保室長から「金正恩委員長自身が非核化にコミットし,トランプ大統領自身との対話を望んでいる」という説明がありました。こうした北朝鮮の動きはこれまでの厳しい制裁や米国の軍事力を含む,最大限の圧力の結果出てきた成果であるというトランプ大統領からの説明がありました。その上でトランプ大統領から今後状況を注視しつつ,金正恩委員長と会う用意があるとの説明がありました。我が国と致しましては,これに至る韓国政府の努力に敬意を表したいと思います。こうした北朝鮮の動きは日米韓が緊密に連携して実施してきた最大限の圧力の成果であるというわけでございます。同時に今後とも北朝鮮の完全な検証可能なかつ不可逆的な方法での核・ミサイルの放棄を実現するまで,最大限の圧力を当然に継続をして参ります。トランプ大統領からも今後も制裁と軍事的圧力を継続していくとの発言がありましたし,鄭義溶韓国国家安保室長も同様に,北朝鮮が具体的な行動を伴って非核化を実現するまで圧力を継続する旨,強調しております。また,韓国と緊密な連携を続けていくために徐薫(ソ・フン)国家情報院長が来週の12日(月曜日)から13日(火曜日)で訪日され,私との間で情報交換をしたいというふうに思っております。先般の韓国の特別使節団と北朝鮮との間とのやりとり,及び今後の対応について突っ込んだ意見交換をしたいと思っております。今後とも日米韓中心に国際社会の連携をしっかりと維持しながら,核・ミサイル,拉致問題の解決のために,しっかり政府として取り組んでいきたいと思います。

【記者】非核化に向けたコミットメントということで,具体的な行動が明らかにならないままに対話に臨むということに疑問は無いのでしょうか。

【河野外務大臣】経済的な制裁,及び軍事的な圧力は維持をするということで,何ら変わりはございません。核実験あるいはミサイルの発射といった安保理決議をはじめ,様々な国際的なルールに違反をしていることをやめたからといって,北朝鮮が何か対価を得ることはありません。

【記者】徐薫さんから具体的にどのようなことについて話を聞きたいとふうに思っているのでしょうか。

【河野外務大臣】様々な北朝鮮側のやりとりと今後の対応について意見交換をして参ります。

【記者】16日に日米韓外相会談が行われるという報道がありますが,事実関係と,もし行われるのであれば具体的にどのような話をされたいとお考えでしょうか。

【河野外務大臣】それは誤報だと思います。何も決まっておりません。

【記者】今誤報だとおっしゃいましたけど,訪米する意向はあるのかということと,日米韓外相会談をやりたいという意向はあるのか,その点をお願いします。

【河野外務大臣】何も決まっておりません。

【記者】先ほどの外務委員会の中で,非核化の意思があるというのは誰でも言えるというふうに言われています。具体的な行動を小野寺大臣も強調されましたが,一方で総理がぶら下がりで北朝鮮が非核化を前提に話し合いを始めると申し出たことは評価できるというふうにおっしゃっていますが,少し食い違いがあるように思うのですが。

【河野外務大臣】今までは,そんなそぶりすら見せなかった北朝鮮が,制裁の影響を受けて,そういう申し出をしてきたということは非核化に向けての具体的な行動につながりうるということを総理は評価された。そういうことであります。

【記者】1994年の六者協議の時にも核放棄を明確に言いながら反故にしてきました。意思表示をしただけで,それを評価するということは,誤ったメッセージになりませんか。

【河野外務大臣】意思表示があったからといって,何も北朝鮮は対価を得ることがないというのは日々申し上げているとおりでございます。非核化にコミットするというのは誰でも言えます。大切なことはそれを具体的な行動にするということであります。制裁がしっかりとかかる前はそうしたそぶりすら見せずに,言わば様々な国際法,国際ルールに反して核実験,ミサイルの発射を強行してきた北朝鮮が少なくとも非核化に向けてコミットをするという発言があったというのはこの制裁が効力を発しているという大きな表れだと思いますし,それを北朝鮮が認めつつあるということだと思います。そこはそういう意味で一歩前進したという評価ということであります。

【記者】また騙されるのではないかという疑念はないのですか。

【河野外務大臣】北朝鮮が具体的な行動をするまでは経済制裁,軍事的圧力は緩めませんから,それは北朝鮮が仮に騙したとしても北朝鮮が得るものは何も無いということになります。

【記者】具体的な行動というのは例えばどういうことを想定されますか。

【河野外務大臣】手の内を明かすことは致しません。

【記者】日本政府としてはこれまでは具体的な行動をするまでは制裁を緩和しないということだけではなく,本格的な対話交渉自体もしないと,そういう考えだったと西村副長官が一昨日の時点でテレビ番組でおっしゃっています。やはり態度が変わったのではないかと見えますけれど。

【河野外務大臣】向こうが非核化に向けてコミットをすると,北朝鮮の体制のトップがそう言っているわけですから,こちらから,それでは具体的にこういうことをやれということを伝えなければいけないのだろうと思います。そういうことをしっかり伝えた上で,今回言っているような完全な検証可能な不可逆的な非核化をやるかどうかということを国際社会全体でしっかりと見極めていきたいと思います。

【記者】そういう確認をするためだったりとか,拉致問題の話をするために日本も直接北朝鮮と首脳同士で話をする必要があるというふうにお考えですか。

【河野外務大臣】現在は,まず米朝がそうした条件の話をするということだろうと思います。

【記者】具体的な行動というというのは,米朝が首脳会談の中で実際にそれを約束させるということになると思うのですが,そこに向けて日本としてはどのような米国あるいは韓国への働きかけを行うのでしょうか。

【河野外務大臣】これは日米韓でこれまで緊密にすりあわせをしてきておりますので,それに基づいて粛々とやっていくということになろうかと思っています。

【記者】北朝鮮が言葉で前向きな姿勢を示すのは微笑み外交だというふうに日本政府は言ってきたと思うのですが,微笑み外交ではなくなったという認識なのですか。

【河野外務大臣】現時点では何も分かりません。具体的な行動をするかどうかというところを我々は評価をするのであって,誰でも言えるような言葉に対して対価を与えるつもりはありません。

【記者】日本政府はずっと対話のための対話では意味がないと言っていましたけど,今回の米朝は対話のための対話ではないということでしょうか。

【河野外務大臣】今回は具体的な非核化に向けての行動を促すための対話だと思っておりますので,それを実現するかどうかということが大事なのだと思います。それをしっかりと国際社会が注視をしていきたいと思います。

【記者】非核化を前提とした対話ではないということですか。それとも非核化に向けた対話だと思いますか。

【河野外務大臣】非核化に向けた対話でなければやる意味は全くありませんから。ただ口で非核化と言っているだけだという判断をすれば,そこで対話は打ち切られるということになります。

【記者】口で言っているだけではないという担保はまだ得られていないのですか。

【河野外務大臣】それは行動を示してもらわなければ,我々としては評価のしようがありません。行動が伴わなければ対価はありません。

【記者】米朝というバイの枠で対話が始まれば,米国は自国の利益を最大限にするということで交渉すると思うのですが,その時に日本にとって優先度が高い拉致問題が置き去りにされないかという懸念はありませんか。

【河野外務大臣】これは米朝という二国間の枠組みではなくて,国際社会を代表してのアメリカと北朝鮮との言わば話ということだと思います。

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