記者会見
河野外務大臣臨時会見記録
(平成30年2月17日(土曜日)15時40分 於:ドイツ・ミュンヘン)
冒頭発言
【河野外務大臣】第54回になるミュンヘン安保会議に出席をいたしました。昨晩深夜の「脅威に晒される自由な国際秩序」をテーマとするセッションに参加をして,まず,核武装した北朝鮮はNPT体制への挑戦であり認められない,北朝鮮の微笑み外交に惑わされず,安保理決議を厳格に履行することへの重要性を訴えました。第二に,力を背景とした一方的な現状変更の試みが様々な場面で国際秩序を揺るがしていることに懸念を表明し,開かれて,透明で,環境や社会に責任を持った,国際的に健全なスタンダードが重要であるということを申し上げました。
それから第三に,法の支配に基づく国際秩序の維持と発展に引き続きアメリカが果たす役割が大きいということ,そしてそうではあるが国際社会全体が負担をしっかりと分担して協力していくことが重要であり,そういった観点から日本とヨーロッパの協力が非常に重要であるということを申し上げました。
こうしたことは北朝鮮の話にしろ,一方的な現状変更の試みに反対すること,あるいはこのリベラルな国際秩序を維持していくというのは日本外交にとってどれも重要な点であります。そういうことを発信すると同時に,様々な意見交換をすることができたのは非常に有意義であったと思います。
また,このミュンヘン安保会議では,ロシアのラヴロフ大臣と会談をいたしましたがそれに加えてヨーロッパのバルト,西バルカン,それからコーカサスというこれまでなかなか外相レベルで十分なコミュニケーションを取ることができなかった国の外務大臣と一連の会談を行うことができました。それぞれの地域との日本の関係を強化していくということで非常によかったのではないかと思います。
また最初に訪問したウィーンでは,OSCEという欧州の安全保障で長年信頼醸成の観点から大きな貢献をしてきた組織に日本の外務大臣として初めて訪問をすることができました。
経済や難民の問題,様々な課題を抱えて多層化する今日のヨーロッパに対して,より複眼的な外交を展開すべきという私の意図に合った会談をすることができました。また,先月の安倍総理の欧州訪問の際に立ち上げたバルト協力対話,あるいは西バルカンイニシアティヴもフォローすることができました。
EUに対しては,法の支配や民主主義,基本的人権といった様々な基本的価値を共有する強い欧州が必要だということを常々申し上げてきましたが,モゲリーニ上級代表と電話会談をして,SPAに関する合意を確認することができたことも大きな意義があったと思います。カボレ・ブルキナファソ大統領,タバン・デン南スーダン第一副大統領と会談しました。私からは以上です。
質疑応答
【記者】ミュンヘン安保会議でも北朝鮮への圧力を最大化する,圧力をかけ続けるということを訴えられましたけれども,アメリカの国務省は13日に北朝鮮と本格的な協議に入る前の予備的協議について言及をしたわけですけれども,日本政府としてこの予備的協議についても慎重であるべきだとお考えでしょうか。
【河野外務大臣】北朝鮮に対して今圧力をかけるというのが大事なことだと思います。ただ,北朝鮮に対して,きちんと核とミサイルを放棄して対話のテーブルに着けということを伝える,あるいはそれに対する北朝鮮の反応を聞くという意味で,接触というのは大事だと思います。ペンス副大統領は「talk」と言ったものを「対話」と訳したメディアがありましたが,あれは正確には「接触」というふうに日本語では訳すものだというふうに思っております。そういう「接触」を否定するものではありませんが,今,対話をすることで得るものは無いというのが日米韓共通の認識であるということでは変わりはありません。
【記者】ミュンヘンの安全保障会議で大臣が出席されていたセッションで中国の話が少し出ていましたけれども,中国に関する議論を通じて何かお感じになったことはあるのでしょうか。
【河野外務大臣】中国が国際秩序の中で法の支配に基づいた健全な経済発展を遂げるというのは世界経済にとって非常に有益だというふうに思っています。そういう認識はしっかりと共有されているのではないかと思います。
【記者】安保会議の中で大臣が出席なさったセッションで,かなり欧州ということでロシアに対しての脅威であるとか不安感というのはかなり肌でお感じになったのではないかと思います。また,中国の話もあったのですが,その中で日本政府として今,日中での関係改善,また日露の交渉の前進というのを目指している中で,価値観を同じにしている欧州との間にどのようなバランスをこれからとっていけばいいというふうにお考えでしょうか。
【河野外務大臣】欧州と中国,ロシアとの関係について私が申し上げることは特にすべきではないというふうに思いますけども,これまで戦後世界経済の発展に寄与してきたリベラルな国際秩序というものが,大事だということでは日本とヨーロッパ,共通認識があるというふうに思っております。特に今までは経済成長が民主化につながるんだという意見がありましたけども,最近の経済成長,特に国家資本主義による経済成長が必ずしも民主化につながっていないという現実がある中で,やはりしっかりとした自由で開かれた資本主義というのが大事なのではないかと,自由で開かれた資本主義が民主化,あるいは法の支配,基本的人権といったものにつながるのではないかという,そういう認識ヨーロッパとしっかり共有をしていきたいというふうに思っております。
【記者】日露関係についてお伺いします。3月にまたラヴロフ外相と再会談されるという合意をされましたが,日露間の安保問題についてはいろいろと認識の違いもありまして,北方領土にも日米安保条約が適用されるのか否かについては,ラヴロフ外相はその部分の理解ができないと平和条約の交渉を進めるのは難しいというような発言をされました。これについては今回の会談でロシア側が納得できるような状況になったのでしょうか。
【河野外務大臣】認識のずれというのは今回の会談に全くなかったとうふうに思っております。
【記者】重ねてですけども,立場の違いは当然あると思いますけども,そこは日本の立場として安保条約は日本の同意に基づいて基地ができるというようなことも含めて説明をされて,そこについて理解を得たということでしょうか。
【河野外務大臣】交渉の内容について申し上げるつもりはございませんが,理解に違いは無いというふうに思います。
【記者】冒頭でも発言頂いた北朝鮮のところなのですが,安保会議で瀬取りなど,北朝鮮の制裁逃れの現状を,パネルも示して大臣は厳しく訴えられましたけれども,圧力強化に向けて国際社会の理解が深まったかどうか,その手応えなどの部分で少しお話を伺えますでしょうか。
【河野外務大臣】瀬取りに使われた船はドミニカ船籍だったり,ベリーズの船籍だったりということで,それぞれの国が北朝鮮とは貿易はないよという認識であっても,実は北朝鮮の制裁逃れに間接的な形で関与するということがあり得るということは認識をしてもらえたのではないかというふうに思っております。