記者会見

河野外務大臣臨時会見記録

(平成30年1月28日(日曜日)18時20分 於:中国・北京)

冒頭発言

【河野外務大臣】今回,日中平和友好条約締結40周年の年頭となりますこのタイミングで中国に来ることが出来ました。今日,王毅外交部長,楊潔チ国務委員,そして李克強総理と会談を行いました。それぞれの会談で中国の「改革・開放」40周年でもある今年,これまでの日中の平和・友好・協力関係の原点を振り返り,安定的なこれからの関係構築を進めていくことの重要性をお互いに確認し合いました。いずれの会談でも,日中関係の改善を進めていこうという中国側の強い意志を感じることが出来ました。非常に全体的に充実した,前向きな明るい雰囲気の中での訪問となったというふうに思います。
 王毅外交部長とは3時間半,4時間弱ですかね,かなり長時間会談,ワーキングランチを含め意見交換をいたしました。全面的に関係改善を進めていくということに向けて,胸襟を開いて,かなり率直に色々なことをお互い,意見交換が出来たのではないかというふうに思っております。その中で日中韓サミットの際の,李克強総理の訪日について,王毅さんからも早期実現を目指したいという発言がございましたので,今年の首脳往来を着実に実現していく,その第一歩として日中韓サミットの調整を,これ三カ国で日程調整をやらなければいけないものですから,引き続きしっかり調整をしていきたいという風に思います。
 また,日中両国におけるビジネス環境の整備や日中協力して,第三国におけるビジネスの展開などについての議論も行いました。特に日中の社会保障協定が実質合意に至ったということを共に歓迎し,早期の署名に向けて,お互いに努力していこうということで一致をいたしました。
 また今年,日中40周年ということで様々な事業が予定,計画されておりますが,日中両国政府としても,後押しをしっかりやっていこうということでございます。
 それから例えば東シナ海を「平和・協力・友好の海」とすべきであるという観点から,11日でしたか,潜水艦,水上艦艇が尖閣諸島の接続水域に入ってきた事案について,改めて再発防止を求めるといった懸案事項についても様々,やりとりをさせていただきました。
 喫緊の課題であります北朝鮮については,日中両国で朝鮮半島の非核化という原則をお互い確認できたということは良かったのではないか,また累次の安保理決議に基づく制裁を完全に履行していくということについても,お互いに連携していくことを確認いたしました。私からは,北朝鮮を対話の場に引っ張り出すためにも圧力をしっかりとかけていくということが大切だということを申し上げました。
 楊潔チ国務委員とは,初めての会談でございましたが今回の訪中を弾みとして,今後の首脳の往来に弾みをつけていきたい,早期に様々な往来を実現すべく双方で努力していくという必要性を提起いたしました。先方からも前向きなご発言がございました。
 李克強総理との会談は,李克強総理が河南省の書記だった2004年に,私が議員団の団長として仲間と一緒に河南省の鄭州にお邪魔をして,その時に昼食会をやっていただいた,それ以来でございますが,日本政府として日中韓サミットの機会に,李克強総理の訪日をしていただく,早期に実現をしたいということを申し上げ,ご本人からも極めて前向きなご発言をいただきました。また,日中両国が経済面での相互の補完関係を更に強化していく重要性についても意見交換をし,企業間の交流・協力を両国政府でしっかり後押ししていく重要性についても一致をいたしました。私からは以上でございます。

質疑応答

【記者】日中韓サミットの早期開催や日中首脳の相互の往来についてですけれども,先ほど楊潔チさんからも前向きな発言があったということですけれども,時期的な面での進展というか,ある程度詰められたものはあったのでしょうか。また,李克強首相については日中韓サミットの当事者でもあられると思いますけれども,具体的に自分としては,いつ頃という,そういった目処についてのお話というのはあったのでしょうか。

【河野外務大臣】早期にしっかり実現しようというところで,これはもう三つの会談の中で,それぞれ確認をいたしました。これは三か国のサミットですから,日中韓で日程の調整を様々,やっていかなければなりませんので,そこは色々なオリンピックがあったり,パラリンピックがあったり,全人代があったり,色々なことがありますので,うまく三か国で調整をして,早期に実現をしていきたいと思います。また,先方から早期に訪日ということに前向きなご発言もいただきましたので,そこはしっかり調整をして参りたいと思います。

【記者】懸案の一つとしてあります,中国軍の潜水艦による尖閣接続水域への航行の問題ですけれども,再発防止について,どのように具体的な表現として求められたのでしょうか。また,中国側からのこうした行為についての説明について,お聞きになられて納得された面はあったのでしょうか。また,「海空連絡メカニズム」の運用開始時期について,早期の運用について努力していくというお話でしたけれども,これの具体的な今後のスケジュール感,進展等についてはいかがでしょうか。

【河野外務大臣】東シナ海を「平和・友好・協力の海」としようという首脳間の合意がありましたが,今度の事案はそれに反するような事案でございますので,私の方から再発の防止ということについて強く申し入れをいたしました。中国側の独自の主張がございましたが,独自の主張やあるいは,事案をエスカレートするようなことは,日本としては受け入れられないということを申し上げ,中国からの対応について,しっかりしていただくように申し上げました。海空連絡メカニズムについては,日中の防衛当局間が更に案文,その他について詰めるということだろうというふうに思いますので,これも早期に運用が開始出来るように努力をして参りたいという風に思っております。

【記者】北朝鮮ですけれど,日本の立場というのは最大限圧力をかけていくということが方針だと思うんですけれども,それについて中国側と一致した面はあったのでしょうか。また,大臣もかねて指摘されていた「瀬取り」の問題ですね,これについて監視強化と中国側の対応について,今回の会談を通じてですね,中国側から協力は得られるものというふうにお考えでしょうか。

【河野外務大臣】この北朝鮮の問題につきましては,まず朝鮮半島の非核化というのが大原則だと,北朝鮮の核保有国,北朝鮮を核保有国として認めるということはない,黙認することもない,ということで両国が全く立場を一緒にしているということも改めて確認をいたしましたし,安保理決議に基づいた制裁を,完全に履行していくということで北朝鮮を対話の席に着かせるように努力をしていくということでも一致をしております。「瀬取り」の問題を含め,この安保理決議に基づいた制裁逃れが巧妙になってきているという問題提起は私の方からもさせていただきました。基本的にこの北朝鮮の問題について,日本と中国,向いている方向は全く同じだということを確認出来たのではないかと思います。方向は同じ方向を向いていますが,若干,様々なことについてのタイミングが,両国想定をしているところが違うのかなということはあるかもしれませんけども,ここはこれから幅広く北朝鮮問題についても,様々な場面で意見交換をし,連携を強めていきたいというふうに思っておりますし,それが十分出来るなというふうに今日思いました。

【記者】王毅外相との冒頭で,王毅外相の表情に笑いが,笑顔がなかったように見受けられたんですけれども,会談の中ではどのような様子だったのでしょうか。

【河野外務大臣】ワーキングランチなどでは爆笑されていました。

【記者】今日,今ですね,日中が肩を並べて地球規模課題に取り組んでいくということを今日も仰られていましたけれども,こういった協力を進めることで日中関係に及ぼす,与える効果,どういったものを期待していらっしゃいますでしょうか。

【河野外務大臣】今まで,日中向き合って日中関係をどう深めていこうか,あるいはどう懸案をマネージしていこうかということが多かったかもしれませんけども,やはり世界第二,第三の経済大国ですから,日本と中国がむしろ日中関係をどうするかということだけでなく,この地球規模の課題に日中が責任を持って,協力しながら,地球規模の課題を解決する,それが大事なのではないかと思います。むしろ,日中関係どうこうというよりは,様々,地球全体の問題になっていることを日中でどう責任を分担しながら,あるいは他の国を巻き込みながら,その問題の解決にあたっていくかということをそろそろ日中で考えていく時期だと思いますので,これから少し様々,具体的な議論に入っていきたいというふうに思っております。

【記者】先ほどシャンシャンの名前を出した際に,李克強総理が笑顔になっていましたけれども,王毅さんがワーキングランチの中で爆笑したというのは,どういう文脈で爆笑されたのでしょうか。

【河野外務大臣】ジョークの解説をしても面白くないと思いますから,それはやめておきます。

【記者】潜水艦の尖閣周辺の航行について,中国側の独自の主張があったということですけれども,中国側はどういった意図で潜水艦を航行させたのか説明はあったのでしょうか。

【河野外務大臣】中国側の発言について,私から申し上げるのは適切ではないと思いますので,中国側のことについては,中国側にお聞きいただきたいと思います。

【記者】中国側から一帯一路に関する発言,何かございましたでしょうか。それで大臣としてはどのようにお答えになったのでしょうか。

【河野外務大臣】一帯一路について,中国側の考え方の説明というのがございました。私どもとしては,このインフラの開放性,透明性,あるいはそれぞれのインフラの事業としての経済性,あるいは融資の受け手の財政の健全性,こういったものが国際的なスタンダードにあっているかどうか,それぞれのプロジェクトを見ながら,協力出来るところはしっかり協力していきたいということを申し上げました。

【記者】王毅さんとの会談で,王毅さんが日中関係の改善を阻害する要因があるというような発言をされていたんですけれども,それについて具体的にどのようなものだということをお感じになられましたでしょうか。

【河野外務大臣】色々な懸案事項というのは隣同士の国ですから,それはありますけれども,関係を改善していこうという政治的な意思が両側にありますから,懸案についてはしっかりマネージしていかなければいけないというふうに思っております。日中の友好関係を阻害しようという動きにそれらを利用されることがないように,そこはしっかりマネージメントしていきたいと思います。

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