記者会見
河野外務大臣臨時会見記録
(平成30年1月6日(土曜日)14時00分 於:モルディブ・クルンバ島)
冒頭発言
【河野外務大臣】日本の外務大臣として初めてモルディブを訪問いたしました。昨年外交関係50周年という記念すべき年を迎えまして,昨年日本のビザをモルディブで発給することも始まって,アーシム外務大臣がモルディブで発給される日本のビザの取得第一号として日本を訪問されたわけです。その時に,私の方もモルディブを訪問したいということを申し上げ,その訪問が早く実現をしたことを喜ばしく思っております。アーシム外務大臣と外務省で会談をし,ここでワーキングランチをいたしました。「自由で開かれたインド太平洋戦略」について,法の支配に基づく自由で開かれた海洋秩序をというのが,モルディブを含む国際社会全体の平和と経済の繁栄に欠かせないものだという認識で一致し,海上に於ける法執行能力の強化,その他モルディブに必要な協力をしてまいりたいと思っております。
また北朝鮮の問題については核・ミサイルの問題を解決し,拉致問題を解決をする,そのために圧力の強化が今必要だというところで一致を致しました。
また二国間の問題では気候変動を中心とする環境の問題,防災あるいは日本から年間4万人が訪れておりますが,観光のさらなる促進,そういったことに日本としても様々協力をしてまいたいと思いますし,両国間の民間のプロジェクトをさらに発展をさせていきたいと思っております。特にモルディブは地デジの日本方式の導入を決めて,それが防災などにも役に立つと思っております。スリランカをはじめ,周辺の国々に地デジで何ができるのかというのを見ていただだいて,周辺国に地デジの日本方式の導入を促進する,そういう材料にもしていきたいという風に思っております。次の日・モルディブの両国関係の50年に向けて礎となる会談が出来たのではないかと思っております。
質疑応答
【記者】モルディブは,先月大統領が中国を訪問して,習近平国家主席と会談を行うなど,かなり中国との結びつきを近年強めているように思うんですが,インド太平洋戦略でも要衝のこの地に対して,日本政府は今後どう関与していきたいと思っていますか。
【河野外務大臣】モルディブは位置的にも非常に戦略的な要衝にもあるということで,今,二国間の議論をするために局長級の会合を立ち上げました。そうしたメカニズムを使って,両国の関係をしっかりと強化をしていきたいと思っております。また,モルディブはひとりあたりGDPが,この観光産業の発展で,かなりひとりあたりGDPが高くなりましたので,様々な支援の枠組みから外れることになります。今の国際的なルールだと,頑張って努力をして経済発展をした国が,そうした国際ルールから外れることになってしまいますので,それに対して,少し,日本としても,アメリカその他の国々と協力をして,引き続き,きちんとそうした国々の経済発展をサポートしていけるような枠組みを新たにつくりたい,というふうに思っております。
モルディブとしては,頑張って努力をして,ここまできて,さぁ次の段階,と思ったら,国際ルールの枠組みから外れるよ,ということで,その枠組みにとらわれない中国の支援を経済的に求めている,ということだと思いますので,日本は,少し,欧米をはじめ,様々な国々とこの問題について,根本的なルールメイキングをしていきたいというふうに思っております。
【記者】大臣もおっしゃったように,モルディブはシーレーン上の要衝ということですが,今回の訪問が日本の外務大臣として初めてというふうになったことの受け止めをお願いします。
【河野外務大臣】モルディブが戦略的な要衝であって,日本も,一昨年でしたか,大使館を開設をし,ここでビザの発給をすることをスタートいたしました。かつて1980年代は,日本が世界の中でも最もODAが多いということで,多少ODA任せというようなところがありましたけども,今,例えば,中国の投資,あるいは中国の様々なプロジェクトの金額は,日本のODA,民間投資を併せても,さらにそれを数倍上回っているという状況になりましたので,ODAだけに頼るのではなく,やはり外務大臣がしっかり,まず足を運んで,両国間のコミュニケーションを強化していくと同時に,民間企業の投資,あるいは日本の金融機関のファイナンス,こういうものを含めた,オールジャパンでしっかり対応していく必要があるのではないかと思います。
【記者】モルディブ以外にも,外務大臣がまだ行ったことがない国とか,世界にはあると思うんですが,そういった所も積極的に行きたいというふうな考えはありますか。
【河野外務大臣】この間のマナーマ対話に行ったバーレーンも外務大臣として初めて訪問することになりましたが,外務大臣として行ったことがない所だけでなく,やはり,しばらく間が開いてしまっている国もありますし,それだけでなく,やはり,日頃からいろんなレベルでコミュニケーションをとっていく,そして,やはり外交力そのものを高めていく必要というのがあるのではないかと思います。
【記者】中国の勢いが随所にみられたと思うんですが,この三カ国の訪問を終えての大臣の率直なご感想をお聞かせください。
【河野外務大臣】工事現場に行くと,中国語の看板がかかっている,というようなことも確かにありましたし,モルディブは,空港とマレの間の大きな橋も中国が支援をしてやっている,ということで,中国が積極的に様々な国に官民挙げて出ている,というのは現実としてあるだろう,というふうに思います。日本も,国際社会の中で,日本のしっかりとした主張を受け入れてもらうような外交努力というのは必要だと思いますし,法の支配,あるいは基本的人権,様々な共通の価値観に基づいた外交を出来る国々との連携をしっかり深めていく必要がある,というふうに思います。
【記者】話題が変わるんですけれども,外相会談の最中だったとは思うんですが,今日午後4時半頃にですね,沖縄県の伊計島で米軍ヘリが海岸に不時着するというふうなトラブルがあったという情報があるんですけれども,被害など,そういった話は出ていますでしょうか。
【河野外務大臣】不時着したという情報は聞いております。被害の情報についてはまだ入ってきておりませんが,今,様々な情報の収集をしているところでございます。
【記者】米軍機を巡ってはですね,先月にもヘリの窓が落下するような事案も起きていると思うんですが,そういったトラブルが相次いでいることに対してはどう。
【河野外務大臣】安全運航というのは,沖縄の県民の皆様の安全もそうですし,実際にヘリを飛ばしている米軍にとっても,安全運航というのは大事なことだと思いますので,しっかり,安全運航ができるように心がけていただきたいというふうに思っておりますし,そこについてはしっかりと申し入れはしていきたいと思っております。
【記者】中国とモルディブの間でFTAを締結されましたけれども,それについて大臣から言及をされたとか,あるいはそれについてのお考えというのをうかがえますか。
【河野外務大臣】日本としては,まず,アジア太平洋における,TPP11を発効する,それから,日本とEUの間のEPAをきちんと進めていくという基本路線がありますので,これをまずしっかりやっていきたい,そして,その後,このTPPの枠組みを広げていく,そして今議論が始まりました,RCEPについてもしっかりやっていきたいと思ってますんで,日本としては,質の高い経済協定を広げていくことを目指していきたい,というふうに思ってます。