記者会見
河野外務大臣臨時会見記録
(平成29年12月27日(水曜日)16時10分 於:オマーン・マスカット)
冒頭発言
【河野外務大臣】25日のクリスマスの日に,イスラエル,パレスチナを訪問して,要人との会談に続いて,26日にはパレスチナ,ヨルダン,そして,今日27日には日本の外務大臣としては27年ぶり,最後に来られたのが中山太郎外務大臣が湾岸危機の時だったようですが,27年ぶりの外務大臣の訪問ということでオマーンに参りました。25日はもうみなさん取材をしてくださっているからいいと思いますが,26日はパレスチナのアルクドゥス大学の医学部に,これは2002年に日本がODAで支援をした機材がかなりありまして,大切に使っていただいていましたが,機材で使っているインクが製造中止になっていたり,部品が壊れたけどスペアパーツを作ってなかったりということで,相当長い間使っていただいて,残念ながら使えなくなってしまったものが多かったということで,これは少し優先順位をつけて更新できるものは更新をしていきたいと思っております。JAIP(ジェリコアグロインダストリアルパーク),これは10年前にまだ砂漠の中に道路が一本できましたという時に訪問して以来10年ぶりに参りましたが,本当に動き始めたなというのが実感でございます。10年を知っている人間からしてみると,こうなるとは絵は見ていましたが,夢にも思っていなかったというのが現実になりました。その間,様々なことがありましたけども,こういう息の長い取り組みを続けていくことができるというのが,日本らしさの一つかなという風に思っております。昨日キックオフをしたフェーズ2では,物流やICTといったものをしっかりと力を入れてグレードアップに努めていきたいと思います。それからヨルダン側に移動をして,サファディー外務大臣,ムルキー首相とお目にかかりました。短時間でしたが,中東和平についてかなり率直に突っ込んだ意見交換をすることが出来ました。和平プロセスを活性化することについて,ヨルダンと緊密に連携をしていきたいという風に思っております。今日はこのオマーンのマスカットで,まずヌウマニ国王事務所大臣,それからファハド副首相とお目にかかりまして,その後アラウィ外務担当大臣との間で外相会談並びに昼食会をやりました。今日の会談の中では,様々な分野の日本とオマーンの二国間問題,これは経済開発の問題もありますし,その他いろんな問題についての議論をして,日本とオマーンの二国間の関係をしっかり前に進めて行こうということで合意をいたしました。また,エルサレムの問題や,イエメン,カタールを含む最近の中東情勢について,オマーンはかなり独自の視点で外交をやられていますので,オマーンの視点というものを伺うことが出来ました。また,オマーンのこの戦略的な位置というのが,自由で開かれたインド太平洋戦略の中でも重要な役割を果たすと思いますので,この戦略について説明をし,協力を呼びかけ,しっかり一緒にやっていこうと,様々な協力の中身について今後連携をしていきたいと思っております。また,私(大臣)の方からは,北朝鮮問題を含むアジアの情勢について,少し説明をさせていただきました。北朝鮮の状況については,アラブ側の様々な支援についてもお話を申し上げました。今晩はこれから,アンカラへ行って,明日チャヴシュウォール外務大臣と外相会談をやる予定でございます。それから,話はがらっと変わりますが,今日韓国外交部の長官直属のタスクフォースから,一昨年の日韓合意についての検討結果なる報告書が発表されました。この報告書は合意に至るまでの韓国国内における交渉の体制ですとか,あるいは合意の内容について,批判をするものであって,すでに両国政府が最終的かつ不可逆的に合意をしているものについて,やや疑義を表すようなことが韓国政府に対して示されました。日韓合意は申し上げたように両国政府の合意でありますし,国際社会からも高く評価されているものです。この報告書は,韓国政府が日韓合意についてとるべき立場については触れておりませんが,最終的かつ不可逆的な合意として両国政府が合意をしたものですから,万が一にもこれが,合意が変更されるようなことがあれば,日韓関係は極めて管理不能な状態になるということは私(大臣)から康京和(カン・ギョンファ)長官にもすでに申し上げているとおりでございます。そうしたことはないという風に信じておりますし,仮にあるとしても受け入れることは出来ないというのが我々の立場でございます。日本政府として,この日韓合意が韓国政府によって着実に実施されるという風に思っておりますし,そう求めるものであります。政府の立場は外務大臣談話としてすでに発出しているところであります。それについては,韓国側に談話については伝えているという風に認識しています。私(大臣)からは以上です。
質疑応答
【記者】まず,日韓合意についてですけども,報告書の中では交渉の舞台裏が一部出ています。交渉事でこういう風に相手方から一方的に公表されたことについて大臣コメントを。
【河野外務大臣】先般の会談の中でもこういう合意の内容について,あるいは合意の交渉経過について一方的に明らかにされるべきではないということを申し上げております。非公表を前提としているものが一方的に公表されたというのはいかがなものかと思いますし,極めて遺憾と言わざるを得ないと思います。
【記者】もう一点,大臣がですね,ネタニヤフ首相とアッバース議長にお会いになった時に,双方のアッバースさんとネタニヤフさんを日本に招いてですね,アメリカ側もクシュナーさんを招いて和平交渉の再開を呼びかけという報道がなされています。これについて事実関係,呼びかけたのかどうか事実関係をお願いします。
【河野外務大臣】そういう会議が予定されているということはありません。何をどういう話をしたかということについては外交上のやりとりでございますので,これは差し控えたいと思います。
【記者】イスラエル政府はもう既に関係者ですね,喋り始めていますけれども呼びかけがあったかどうかだけ。
【河野外務大臣】これは外交上のやりとりですから,先方がどう言ったかに関わらず我々としては仁義を守りたいと思います。
【記者】話題変わりますが,外務大臣の専用機の件なんですけども,今回移動の日程がかなりタイトでして,今回の外遊を通じてですね,特に専用機導入の必要性というのを感じたタイミングですとか,そうしたエピソードみたいなものはありますでしょうか。
【河野外務大臣】専用機と申し上げたのは別に移動の楽をしようとかですね,そういう事ではなくて,日本の外務大臣,国会の対応が必要になっている中で,例えば中国の外務大臣並に動こうとすると相当効率的な移動をしなければならないという風に思います。先般,天皇誕生日のレセプションでも申し上げましたように,この5年間で岸田前外務大臣と私(大臣)で九十数か国延べで訪れておりますが,同じ期間に例えば中国の王毅外務大臣は260か国以上,3倍弱の国に延べで行っている,こういう状況の中で,かつてのように日本のODAが世界一ですという時には,それでもカバー出来ていたかもしれませんが,例えばこの中東アフリカに中国が出しているお金,投資というものが日本を遙かに凌ぐようになってきた現在,やはりもっときめ細かな外交というのをやらなければこの日本の主張を通すことが出来なくなっているという風に思っております。フィリピンのマニラでのASEANの会議,あるいはベトナムのダナンでのAPECの会議の議長声明,その他の取り纏めの交渉を見てもですね,日本の主張をどこまできっちり通せるかというのは,やっぱり相当難しい状況になっていると言わざるを得ないと思います。日本の国益を考えたときにきちんと日本の主張が通せるような外交をやるためには,マニラで初めてASEANの外務大臣たちとバイの会談をやったときに先方から,電話一本で外交が済むと思うな,と釘を刺されましたけども,やはり日本の外務大臣としてしっかり足を運ばなければいけない,特にこのオマーンのように自由で開かれたインド太平洋戦略の要になるような国にも外務大臣が来たのは27年ぶりです。この間のマナーマ対話でバーレーンに行った時は日本の外務大臣として初めてバーレーンにようこそという,こういう現実では中々日本の外交を前に進めることは出来ないという風に思いますので専用機を買うのが良いのか,あるいはレンタルするのが良いのか,あるいは今,あちこちへ行った時に社用機を持っていたら,空いている時間に金払うから貸してくださいと,相当本気でお願いをしていますが外務大臣あるいは外務大臣以外の閣僚もですね,効率的に海外へ移動出来る,そういう手段が必要になってくるんだと思います。
【記者】もう一点ですが,来年の総裁選については,この前は鬼が笑うということでしたけども,安倍総理が三選を目指して出馬された場合にですね,大臣としては支持するお考えでしょうか。
【河野外務大臣】来年のことについては鬼に聞いてください。
【記者】ポスト安倍と言われている人,何人かいらっしゃいますけども大臣ご自身は,ポスト安倍の一人だというご認識でしょうか。
【河野外務大臣】それはもう最初からポスト橋本だと思ってやってきましたから,もういつでもポスト,いつでもポストじゃ困っちゃうんであれですが,来年のことは鬼さんに聞いてください。
【記者】今日の外相会談についてですけども,先ほどちょっとご紹介のあった,自由で開かれたインド太平洋戦略についてご説明をされたと,先方の詳細な発言は無理だとしても,ある程度認識の共有は図れたという感触をお持ちでしょうか。
【河野外務大臣】元々オマーンはインドからアフリカの東海岸にかけて,相当広くインド洋を渡っていた人たちですから,自由で開かれた海の重要性というのは非常にこうストンと腑に落ちるところがあったんだろうという風に思います。そういう意味で最初にこうインド洋を中心として,こっちのザンジバルからムンバイまでその真ん中にドゥクムがあるよというような話でしたから,ドゥクムの港の開発に日本もしっかり関わってほしいというような話もありましたし,そういう港の戦略性ということについても良く理解を共有することが出来たという風に思います。
【記者】大臣,中東外交に力を入れると言われて5か月で3回目となります。今回は大臣ご自身も仰ったように,一丁目一番地のですね中東和平問題に関する話もありました。この今回の訪問,その中東へのコミットメント,改めて一丁目一番地の難しい問題,更にエルサレムのアメリカの対応,難しくなっていますけれども,総括してどういう風に捉えてらっしゃいますか。
【河野外務大臣】難しい問題だというのはその通りだと思います。もう一つはそういう難しい問題の当事者,イスラエル側,パレスチナ側,日本という国を快く思ってくれていて,良好な関係をこれからもしっかり築いていきたいという両側からの明確なメッセージもありましたし,日本としてこの問題にしっかりコミットしていくという明確なメッセージを出せたという風に思っております。イスラエルとパレスチナの間,あるいはイスラエルとヨルダンの間,様々,お互いが伝えようと思っていても伝えきれなかったものを少し伝えることが出来たのではないかと思いますので,そういう意味で対話の促進というのはこの中東の全てのプレイヤーから信頼を得ている日本がもっともっと出来ることではないかなと思っています。
【記者】日韓合意の件ですけれども,今日談話でですね,日韓関係がマネージ不能という,ちょっと強い言葉で談話を出されていると思うんですけれども,改めてどういうお気持ちでこの談話,この言葉を使われているのか教えてください。
【河野外務大臣】この日韓合意は,前の岸田大臣の時に両国の外務大臣同士で合意をして,最終的かつ不可逆的な合意だということを申し上げ,国際社会からもこれは非常に高い評価を得ていた,これを基にして日韓関係を前に進めようという時にですね,政権が変わったから前の政権がやったことは知りませんということでは,これから先,日韓が合意をするのが何事においても難しくなりますし,国民の支持という話もございましたが,それじゃあ韓国と取り決めをやる時には,毎回国民投票をやってもらわなきゃいかんということになるのでは何事も前に進みませんので,これを不可逆的かつ最終的と言ったものが変更されるようなことがあれば,なかなか日韓がこれから何をやるにも極めてマネージメント不能の状況になります,ということは,先般外務大臣にも直接申し上げましたので,そういうことがよもやないという風に思っております。
【記者】関連なんですけれども,今回の報告書なんですが,直接韓国政府の方針とはまた一応違うということになっていますけれども,2月に平昌オリンピックが控えている中で,総理にも来てほしいという文在寅(ムン・ジェイン)大統領の話もありますけれども,日本政府としてこの宙ぶらりんのような状況で,五輪への参加の可否というのはどのように判断していくのですか。
【河野外務大臣】オリンピックには選手団は間違いなく参加しますよ。それは,別にこれがオリンピックの参加とリンクするとは全く思いません。
【記者】もし河野大臣が招待を受けた場合は行かれますか。
【河野外務大臣】平昌オリンピックはちょうど国会,予算委員会の最中ですから,国会日程と様々なことを総理も検討されるんだろうと思います。
【記者】あと,関連でお伺いします。康京和(カン・ギョンファ)外相にですね,改めてこの検証結果について,問い合わせというか,説明を求めるお考えはありますでしょうか。
【河野外務大臣】昨日外交部の方から説明を頂戴しております。
【記者】説明内容はどのような説明が。
【河野外務大臣】それはもうやりとりですから,差し控えます。