記者会見
河野外務大臣会見記録
(平成29年12月19日(火曜日)10時38分 於:官邸エントランスホール)
冒頭発言
【河野外務大臣】2013年1月から5年間で,日本の外務大臣,私(大臣)の前任の岸田さん,それから私(大臣),併せてこの5年間で97か国を訪問をいたしましたが,同じ時期に例えば,中国の王毅(おう・き)外務大臣は延べ262か国を訪問をしております。ほぼ3倍近い訪問国の差がついている。日本の外務大臣は国会の対応がございますが,中国の外務大臣は特に国会対応がないというスタート時点での大きな差がある中で,この差をどう埋めるかということをやはり真剣に考えていかなければいけない時期に来ているのだろうと思います。かつてのように日本のODAが抜群に多いというわけではなくて,アフリカを始め様々な所で中国の投資・援助が日本をはるかに上回るという中で,外務大臣の訪問数も延べでこれだけの差がついているという現状を考えると,やはり少しどういうふうにやっていったらいいのか,国会の対応は別として,ロジの効率化というところは真剣に考えていく必要があると思っております。
そういう中で,例えば島嶼国を回ろうとすれば,民間の商用ルートで行けば,いちいちハブまで戻らなければなりませんから,島嶼国を全部回るというのは,これはかなり困難であります。そういう中で必要な時に,専用機を使えるというのは訪問国を増やす上でも非常に大きな役割を果たすと思いますし,中東を訪問しているときなどは,相手の王室から突然会談の申入れがあったり,あるいは今回のエルサレムのような問題が起きると,突然中東でアラブの諸外国の外務大臣の会合が開催をされるなど,日程の変更が度々ある中で,やはりどう機動的に対応していくかということを真剣に考えていく必要があると思っております。そういう中で,外務大臣あるいはそのスタッフが移動する際,すべて民間の商用機を使わなければいけないというのは,かなり日本の国益を考えるとハンディキャップとして大きいのだろうと思います。専用機を購入するという手もあるでしょうし,あるいはレンタル,リースをする,あるいは日本の企業が持っているビジネスジェットを空いているときにお借りをする,これはもちろん対価を払ってというやり方,様々なやり方があると思いますので,これはやはり真剣に検討しなければいけないと思っております。
これまで外遊に同行してくださった記者団の方は,恐らくそういうことを理解されているのだと思いますが,今日の産経新聞のような,それを揶揄するような報道には,私(大臣)は極めて遺憾だと思っております。国益を考え,どうやったら外務省の足腰予算が限られている中で,経費を削減しながら訪問国を一つでも増やし,あるいは会談の数を一つでも増やそうと外務省一丸となって努力をしているときに,おねだりなどというふざけた言葉をメディアが報道に使うというのは,私(大臣)にはちょっと信じられない,理解をして書いているなら倫理にもとると思いますし,理解しないで書いているなら能力に問題があると言わざるを得ないと思います。そこはこれからこの日本の国益をしっかり貫徹する外交をやっていく中で,外務省として今年は足腰予算をしっかり付けていこうという努力をしてまいりました。来年以降も外交のために必要な予算はODAを削ってでも足腰予算を付けるということをやってきたわけで,そういうことをやはりしっかり我々としても発信をしていきたいと思っております。
日韓外相会談
【記者】今日,訪日される韓国の康京和(カン・ギョンファ)外相と,この後外相会談を行うことになりますが,大臣が期待する今回の成果についてお聞かせください。
【河野外務大臣】日韓関係,非常に隣国で重要な関係でございます。その日韓関係をどうこれから伸ばしていくか,両国の間の課題をどうマネージしていくか,康京和長官といろいろ話をしていきたいと思っております。
【記者】韓国側は慰安婦問題をめぐる日韓合意について,交渉過程についてですね,検証を行っています。年内にも検証の結果を公表すると見られていますが,今日の会談の中でも検証の状況についてですね,大臣,説明があるかなと思うんですが,大臣はどのように臨まれるおつもりでしょうか。
【河野外務大臣】会談でどういう説明があるかというのは,予断をもって私(大臣)が申し上げることは差し控えたいと思いますが,日韓合意について言えば,「最終的かつ不可逆的な合意」ということで,両国政府が合意をしておりますので,それについて特に問題になるとは思っておりませんし,韓国政府には誠実に履行していただきたいと思います。
【記者】軍艦島を始めとするですね,明治日本の産業遺産の一部施設で働かされていた徴用工の説明についてですね,韓国側は強制労働の犠牲者を偲ぶための措置を速やかに講じるべきだと日本側に求めていて,今日の日韓外相会談にも議題に上ると思われますが,日本として取るべき対応というのはどのようにお考えでしょうか。
【河野外務大臣】今日の会談で何が議題になるか予断をもって私(大臣)が申し上げるのは,今の時点では差し控えたいと思います。
【記者】関連してなんですけれども,強制労働の有無について軍艦島を始めとする明治日本の産業遺産の一部施設で,強制労働があったかどうかについての大臣のご認識はどうでしょうか。
【河野外務大臣】それは今,一次資料を当たって調査をしているのだろうと思いますので,2019年に設立されるセンター,その他でこの産業遺産について説明をきちんと日本政府として出していくという予定だと思います。
外務大臣専用機の導入
【記者】専用機の件なんですけれども,いつ頃までに導入したいとかですね,今想定している時期はあるのでしょうか。
【河野外務大臣】次の概算要求の中でどういうやり方がいいのかというのを検討した上で,今外務大臣が移動すると,そのスタッフ,警備その他移動しているわけですから,コストを削減しながら効率的・効果的な移動ができるようにするために,多分いろんなやり方があると思いますし,民間企業の協力を得られれば,そういうやり方もあるのだろうと思いますので,いろんなことを検討していきたいと思っています。
日韓外相会談
【記者】今日の康京和さんとの会談の中で,当然北朝鮮の問題については話題になると思いますが,丁度タイミングとしては,大臣,国連の閣僚会合の議長として出席されました。また,韓国側は訪中して習近平さんと会談しました。そういった中で,今回の会談ではどういった話をもっていきたいとお考えですか。
【河野外務大臣】北朝鮮については,当然意見交換をすることになると思いますので,それぞれの認識をすり合わせ,しっかり圧力をかけて,北朝鮮の非核化を目指していきたいと思います。
米国「国家安全保障戦略」の公表
【記者】今日はアメリカがですね,国家安全保障戦略を発表しまして,強いアメリカといった内容だと思いますが,どう受け止められましたでしょうか。
【河野外務大臣】しっかりとした国際秩序を守っていくためのリーダーシップをアメリカが発揮するということだろうと思っております。
ミャンマー政府による外国人記者逮捕
【記者】先週ミャンマーでロイターの記者二人が,国家機密法違反の疑いで逮捕されました。アメリカ,イギリスなどは即時釈放,解放を求めているのですが,この件に関して何かコメントはおありでしょうか。そして今後日本政府が,ミャンマー政府側とコンタクトをしていく中で,この件について取り上げていくお考えというのはおありでしょうか。
【河野外務大臣】報道の自由というのは,非常に基本的人権を守っていく上でも大事なことだと思いますので,日本政府も注視をしていきたいと思っています。