記者会見
河野外務大臣臨時会見記録
(平成29年12月12日(火曜日)19時50分 於:フランス・パリ)
冒頭発言
【河野外務大臣】気候変動サミット,朝のセッション,それから昼食会,午後のセッション,参加をいたしましたが,ちょうどパリ協定から2年目で,フランスのマクロン大統領の肝いりでこうした会合が開催をされて,パリ協定,みんなでやっていこうというモメンタムを高めるということができたのは非常に有意義だったのではないかと思います。特に今回は,気候変動対策のための資金の手当てをどういうふうにしようかという,かなりファイナンスに焦点を当てたものになりました。日本としては,GPIFが非常にこの方面をリードしてくれていますが,金融市場を活用するだけでなく,企業としっかり連携をしていく,あるいはイノベーションを通じた技術力も活用して,気候変動に関する資金のスケールアップを目指していきたいというふうに思っております。特に企業版の2度目標,なんとか2度に抑えようという目標のScience Based Target,SBTを東京オリンピックまでに認定される企業を100社にしたいというふうに思っております。今現在は手を挙げているところが40社ぐらいだと思いますが,手を挙げるだけではなくて認定される企業が100社になんとかいきたいと思っています。それからもう一つは,フランスが主導しているCREWSに参加をしていきたいというふうに思っています。観測衛星を二つ打ち上げますが,これを活用して島嶼国の言わばハザードマップを作るようなことをしっかり支援をしていきたいと思います。それからもう一つは,東京オリンピックで水素を活用した水素社会というもののなんとか入り口までたどり着きたいというふうに思っております。2度目標というのをしっかりやらなければいけないと思っておりますが,IPCCが来年の10月にも,1.5度目標のためのレポートを出すという動きもありますので,国際社会で気候変動対策,もう少しスケールアップをして,しっかり取り組んでいかなければいけないというふうに思っております。
質疑応答
【記者】温暖化対策の資金拡大,今回の最大のテーマだったかと思うんですけれども,この資金の拠出ですね,アメリカは拠出しない方針を決めておりますけれども,河野大臣のお立場としてですね,今後アメリカにどういう役割を果たしてもらいたいか,あるいは働きかけ,どのような働きかけを行うのか,この点ではいかがでしょうか。
【河野外務大臣】昨日の夜の夕食会はブルームバーグ元ニューヨーク市長が主催をされておりましたが,カリフォルニアの州知事もいらっしゃっていたように,アメリカの連邦政府は少しパリ協定に背を向けていますけれども,州,それから各自治体,それから企業が非常にパリ協定を重視して,あるいは気候変動対策を重視しているというのはアメリカの特徴だと思います。連邦政府がパリ協定に背を向けたとしても,アメリカの企業は非常にこの分野,活発に取り組んでいますし,自治体,州政府,非常に頑張っていると思いますので,むしろアメリカにどう呼びかけるかというよりも,アメリカの企業や自治体に負けないように日本も走って行かなければいけないと思いますので,日本の企業あるいは日本政府,自治体,しっかり取り組んでいきたいと思います。
【記者】温室効果ガス削減のために,大臣はかねてより原発の代替として再生可能エネルギーの重要性を訴えてこられていましたけれども,今日気候変動サミットに参加されて,改めて将来の日本のエネルギー・ミックスどうあるべきとお考えですか。
【河野外務大臣】昨日ブルームバーグ元市長とも話をしたり,あるいは参加している大勢の方から,やはり化石燃料に頼ることへの危機感というのは相当強くありました。そういう意味でも,再生可能エネルギーを日本としてやはりしっかりやっていかないといけないと思います。どうも再生可能エネルギーは,ポジショントークが多くてですね,最初からこの方向でと決めつけて,それに合うようなデータをチェリーピッキングしているような,そういう声が多いのが少し気になっていますので,外務省としてきちんとした情報を発信できるようにしていきたいと思っています。外国はこうだと言って,10年ぐらい前の話をしている人もいたりしますので,やっぱり最新の情報,最新のデータというのをきちんと発信して,それに基づいて政策形成ができるように,外務省としてもしっかりリーダーシップをとっていきたいと思っています。
【記者】昨日のブルームバーグ元市長とのお話に関してなんですけれども,日本の化石燃料由来の発電所への投資ですとか,開発ですとか,それから途上国向けの支援などについて,批判的な意見というか,方針の転換を求めるような発言が先方からあったのかどうかというのを知りたいのと,あったのだとすれば,どのようにお答えになられたのかというのを教えていただきたい。
【河野外務大臣】日本のと言うよりは,化石燃料を少し押さえていかないといけない,その代替となるのは再生可能エネルギーで,再生可能エネルギー,特に今度の中東での太陽光発電なんていうのは,かつてからは考えられないほど無茶苦茶安い価格が提示されるようになりましたので,再生可能エネルギーの経済性というのを正当に評価していかなければいけないということと,やはり技術革新がすごいスピードで進んでいるという話はブルームバーグさんからもありました。ただ発電するだけでなく,蓄電あるいはグリッドの技術といったものも日進月歩と言っていいんだと思います。そういうものをしっかり各国取り入れていく必要がある,そんな話をいたしました。
【記者】北朝鮮の拉致問題についてお伺いしたいのですが,国連の安保理で北朝鮮の人権問題に関する会合が開かれまして,かなり多くの国からですね,日本の拉致問題について言及があったかと思います。イギリスですとかフランスも含めてですね,言及があったかと思うんですけれども,それについてのお受け止めと,あと拉致被害者の増本るみ子さんのお母様と,拉致被害者同じく曽我ひとみさんの夫のジェンキンスさん,お亡くなりになりましたけれども,お受け止めをお願いいたします。
【河野外務大臣】お二人のご冥福をお祈りしたいと思います。とにかくこの政権のうちに拉致問題を解決するという,総理も強い意志を持っておりますから,しっかりそれに向けて努力をしていかなければならないと思いますが,国連の場で拉致問題に関して,国際社会から強いメッセージを出すことができたというのは非常に良かったと思っています。ただ,会合を開くためには安保理15か国のうち9か国が手続き投票で賛成をしなければならないという,これが実は一時結構厳しいという状況で,おかげさまで10か国が最終的に賛成をしてくれて,開くことができましたけれども,国際社会に向けて,やはりきちんと情報発信をしていく重要性というのを改めて認識したところです。
【記者】ちょっと話変わってしまうんですが,日本ではですね,今年の漢字が発表されて,「北」という,東西南北の「北」になりました。それは北朝鮮の問題を理由に挙げる人も多かったんですけれども,国民が北朝鮮問題を強く思って今年の漢字が「北」に選ばれたということをどう受け止めているかということと,大臣にとっての今年の漢字があれば教えてください。
【河野外務大臣】それこそ核実験,ミサイル,これだけ頻繁に行われて,若干市民生活にも影響が出ているということを考えると,「北」というのもあるのかなという気がしております。私は何かと言われると,今日のお昼ご飯,あるいはお昼ご飯戻ってくるときの船,やっぱり首脳や外務大臣と様々いろんな話をしてですね,外交というのはみんなそれぞれ国を背負っていますけども,人間関係でやっぱり成り立つ部分が非常に多いなというのを今日も改めて感じましたので,一字選べと言われると「人」という字に,人間関係という意味で「人」という字かなというふうに思います。
【記者】マクロン大統領の肝いりということで今回のサミット開催されたんですけれども,ヨーロッパでの存在感,非常に増してきていると思いますが,今回のリーダーシップどのように見ていらっしゃいますでしょうか。
【河野外務大臣】新しい協定がパリ協定と言われている訳ですから,そういう意味でフランスの大統領として思い入れは非常にあるんだろうというふうに思います。非常に経済を活性化させるための様々な改革を一生懸命やってこられている訳ですから,気候変動への投資がやはり経済を活性化させるための投資になっていかなければ,民間からの資金というのも出てこない訳ですから,そういう意味で,マクロン大統領が気候変動への資金をどうするんだというテーマでこの会合をやったというのは,大統領の改革の方向性と合っているんじゃないかというふうに思います。日本の企業もですね,負けないように,気候変動の防止を達成すると同時に,それをビジネスに日本もしっかり結びつけていかなければいけない,先ほど申し上げましたように,再生可能エネルギーをはじめ,新しい技術をどれだけ取り入れていくことができるかというのが,世界の戦いになってくると思いますので,協力するところはお互い各国協力していかなければなりませんけども,やっぱり競争するべきところはしっかり日本の企業も競争してもらって,勝ってもらわないといけないというふうに思います。