記者会見

河野外務大臣臨時会見記録

(平成29年9月12日(火曜日)15時55分 於:エジプト・カイロ・アラブ連盟内)

【記者】今回の中東5カ国歴訪を終えられたわけですけど,受け止めをお願いします。

【河野外務大臣】外務大臣に就任したときの記者会見で,5本柱の一つが中東へのコミットメントということを申し上げました。今回就任して30日あまりで中東へ来ることができたというのはやはりそれを明確に示すものになったかなと思います。特に日本とアラブの史上初めての政治対話,昨日無事に成果文書も出すことができましたし,今日色々な方と昨日のことを実現にしっかり移さなければいけないという話を頂きましたので,大きな一歩を踏み出すことができたかなというふうに思っています。それからカイロに来る前にカタール,サウジアラビア,それと仲介をしているクウェートをまわって参りまして,GCC,カタールもサウジアラビアも日本にとっては極めて大切な国ですので,是非しっかり対話を通じて問題解決をしてほしいということを申し上げて参りました。日本にできることはなんでもやろうということで,参加国と話をして参りましたし,また,カタールで仕事をしている邦人の方々にもお目にかかって,邦人企業へのどれぐらいの影響が出ているか,あるいは日本人の生活にどんな影響が出ているかということも伺って参りました。こうした地域の問題に少しずつ日本がコミットを強めていくことができるようになったらいいと思います。それと3つめとして北朝鮮の問題を取り上げさせて頂きました。北朝鮮の暴挙に対して今は国際社会で一致して圧力をかける時期だということはご理解を頂いたと思います。そして北朝鮮から来ている労働者,中東の中にはかなり多くの労働者を北朝鮮から受け入れている国もありますが,そうした国々に対してこの労働者を通じた送金が核やミサイルの資金源に十分になり得るもので,それをきちんと制限をして頂きたいということを申し上げ,かなり前向きな反応を頂いたというふう思っています。五日間で五カ国という非常に駆け足でしたけど,それなりの手応えを得ることができたのではないかと思います。

【記者】今回第一弾の中東歴訪を終えられましたけど,次に第二弾として中東に行かれるとしたら,どのあたりをお考えですか。

【河野外務大臣】まだ日本に帰ってないのに次の話は早いと思いますが,今回行けなかったところは,本当は全部まわりたいところではありますけども,イランというのはやはり大きなところだと思います。電話でお話はさせて頂きましたけども,実際に伺いたいと思っています。それからやはりイスラエルとパレスチナ,ここの和平プロセスがやはり中東の中では鍵を握っていますので,イスラエルとパレスチナもなるべく早く行きたいと思っています。早く行きたいというと,モロッコもアルジェリアもどこもかしこもということになってしましますが,折を見てきちんと足を運びたいと思いますし,いろんな国の皆さんには是非日本にも来てくださいということを申し上げましたので,受け入れもしっかりやっていきたいと思います。

【記者】日アラブ対話のスピーチで少し触れられましたけれども,中東地域からのシーレーンの重要性について大臣のお考えを改めてお伺いできますか。

【河野外務大臣】元々エネルギーをアジアに運ぶという大切な航路でもありますし,やはり経済成長著しいアジアとかなり大きな潜在能力を秘めているアフリカを結ぶ結節点が中東だと思いますので,このアジア,アフリカ,そして中東を自由で開かれた海で結んでいくというのは国際的にも経済発展を考えた上で重要だと思います。そういう意味で自由で開かれたインド太平洋戦略というのを打ち出しておりますので,その説明もかなりさせて頂きました。いい手応えもあったと思いますので,アジアからアフリカへかけての経済成長を実現するためにもこの自由で開かれたインド太平洋戦略というのをきっちりと打ち出していきたいと思います。

【記者】今日のバイ会談の中では,先ほどパレスチナの外相との会談をされてましたけど,大臣が発表された(平和と繁栄の回廊に関する)イニシアチブについて,先方からどのような評価があったのでしょうか。

【河野外務大臣】非常に心強いというお話いただきました。10年くらい前に私が行ったときはジェリコがここにアグロインダストリアルパークができますって何もないじゃないかというほとんど砂漠みたいな平らな,だだっ広いところが広がっているだけで,ちょっとびっくりしたんですけれども,10年たってもう百数十人雇用されるようになったということでやはり昨日申し上げましたけど,息の長い長期的な視野に立った支援,投資というのがやはり日本の持ち味だと思います。そしてこのジェリコのプロジェクトを拡大していくのはもちろんですけれども,やはりパレスチナは今一部壁に覆われたりというところがありますけれども,このパレスチナを世界につなぐ,ITを通じてパレスチナと世界をつないで,最先端の人工知能ですとかプログラミングですとかそういう技術をパレスチナの若者に学んでいただいて彼らの能力を世界中と繋げていくことを次にやらないといけないかなと思っています。パレスチナの若者に夢と希望を持ってもらえるような支援というのをしっかりやっていきたいと思います。

【記者】北朝鮮労働者の話が先ほどありましたけども,追加の制裁決議がでましたけども実行性というのが重要になると思いますが実行性を高めるために,どのような努力を今後されますか。

【河野外務大臣】各国これはやらなければいけない問題だという認識を持っていただいたと思いますし,北朝鮮の核が拡散するようなことがあってはならないという認識は多くの国が持ってくれていますので,これはしっかりやるぞという話を向こうからもいただきました。
 そういう意味で過去いろんな経済的な関係があったり,あるいは軍事的な関係があった国もですね,だんだんその関係を落としてきているというのははっきりしていますので、国際社会折に触れてそこは確認をしながら,また国連に報告書をしっかり出していただいてそれを確認する,ということはやっていきたいと思います。

【記者】昨日,エジプトの外相と会談した際にですね,エジプト側の報道によるとですね,北の核について,日本が協力を求めるのであれば,イスラエルの核開発についても日本にコミットしてくれというような発言があった,という報道があったんですが,日本が中東の問題にコミットすることのですね,困難さ,課題みたいなものも今回の歴訪で見えてきたのではないかと思いますが,もしそういった考えがあればお聞かせください。

【河野外務大臣】日本は中東の非核化構想を支援しています。支援,支持しています。そこについて,特に難しい立場になるということはないと思いますし,今回まわってみても,カタールとも日本は非常に深いつながりがありますし,サウジアラビアとも深いつながりがありますし,イスラエルともつながりがあれば,パレスチナに信頼をされている,という日本ほどすべてのプレーヤーから信頼を得ている国はないんではないか,と思います。そういう意味で,いただいている信頼をテコにして,お互いの信頼関係を今度は築いてもらう,という役割を日本は果たせると思いますし,中東には居ない中東の大きなプレーヤーであるアメリカともですね,日本は非常に率直に話しができる関係にありますから,そういう意味で日本が果たすべき役割は大きい,というふうに思っています。

【記者】関連してなんですけど,河野イニシアチブの中で掲げられた政治的関与を強めると,柱の一つに掲げられましたが,対立がある場合ですね,どちらか一方の国との関係が悪化するリスクということについてどのようにお考えですか。

【河野外務大臣】そういうリスクはない,と思ってます。今度のカタールの断交の問題もですね,サウジアラビアもカタールもあるいは仲介をしているクウェートも,日本がそれぞれの国と関係があるというのをわかった上で,自分の国と日本の関係は非常に大事だと言ってくれてますし,我々もそう思ってます。対立する中に入ってどちら一方につくのではなくて,両方と日本の信頼関係を使って,お互いの信頼関係を築いていく手伝いをする,というのが日本の役割だと思っていますので,難しい問題だからといって躊躇する必要は全くないと思っています。

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