記者会見

岸田外務大臣臨時会見記録

(平成29年7月29日(土曜日)3時45分 於:本省中央玄関)

冒頭発言

【岸田外務大臣】北朝鮮は,昨日23時42分頃,北朝鮮中部のムピョンリ付近から弾道ミサイルを北東方向に発射した模様です。詳細については現在分析中ですが,現時点で発射が確認された弾道ミサイルは一発で,3,500キロを大きく越える高度に達し,約45分間,約1,000キロ飛翔し,北海道積丹半島の西約200キロ,同奥尻島の北西約150キロの我が国のEEZ内の日本海に落下したものと推定されます。今回の弾道ミサイルの発射は,我が国の安全保障に対する深刻な脅威であり,関連の安保理決議にも明白に違反しています。断じて容認はできません。また,何らの事前の通報もなく,同水域内に着弾させたことは,航空機や船舶の安全確保の観点からも極めて問題のある危険な行為です。
 今回の発射を受け,外交面では,我が国は,直ちに北京の大使館ルートを通じて北朝鮮に対して厳重に抗議し,最も強い表現で非難を行いました。
 今回の北朝鮮が発射した弾道ミサイルの種類については,現時点において詳細は分析中ですが,その上で申し上げれば,今回発射された弾道ミサイルが約45分間程度飛翔し,3,500キロを大きく越える高度に達したものと推定されること等を踏まえれば,最大射程は少なくとも5,500キロを超えるとみられることから,ICBM級の弾道ミサイルであったと考えられます。何れにせよ,総合的,専門的な分析を慎重に行う必要があり,現時点において詳細は分析中です。なお。引き続き確認中ですが,現時点において付近を航行する航空機や船舶への被害報告等の情報は確認されておりません。
 外交面の対応ですが,北朝鮮が国際社会による度重なる警告を無視して挑発行動を繰り返す以上,今は最大限の圧力をかける必要があり,対話の時ではありません。こうした考えから,今般,我が国独自の対北朝鮮措置として資産凍結措置等の対象を追加指定したところです。また8月上旬からフィリピン・マニラにおいてASEAN関連外相会合が開催されますが,これは北朝鮮に対する圧力強化に向けた連携を強化する機会として最大限活用したいと考えています。また,国連安保理におきましては,緊急会合の要請を含めた対応を,米国及び韓国等の関係国と協議するよう指示を出しました。さらに,厳しい措置を含む新たな国連安保理決議の採択に向けて,引き続き日米韓で連携・協力するとともに,中国やロシアが建設的な役割を果たすよう働きかけを行っていきます。
 そして,さらなる挑発行動の可能性は十分考えられます。引き続き重大な関心を持って情報収集・分析に努め,米国や韓国とも緊密に連携しながら,高度の警戒態勢を維持し,我が国の平和と安全の確保に万全を期す所存であります。

質疑応答

【記者】今回の発射を受けて,大臣の電話会談のご予定はあるのでしょうか。

【岸田外務大臣】先ほど言いましたが,米国,韓国とは国連の場等も通じ緊密に連携していかなければなりません。その連携において必要な対応を適切に考えていかなければなりません。電話会談等については今現在何も決まっていませんが,適切な対応の中で考えていきたいと思います。

【記者】今回の発射は異例の深夜の発射でしたが,この意図についてはどのように..

【岸田外務大臣】深夜の発射の北朝鮮の意図については,確たることを申し上げる立場にはありませんが,過去を振り返りますと,2014年にこうした深夜の発射を複数回行っているという記録があると承知をしています。何れにせよ確たる意図について申し上げる立場にはありませんが,情勢の分析等については引き続き努力をしていきたいと思います。

【記者】大臣が,今回,防衛大臣を兼務された直後の発射になったわけですけども,対応等に特に問題はなかったのでしょうか。

【岸田外務大臣】安倍総理も今日(28日)日中のぶら下がりの中で,安全保障に一刻も空白があってはならない,こうした考え方を示されました。その上で私の兼務を指示されたわけです。今回の事態に当たって外務省,防衛省一体となって対応を行いました。結果,空白があったとか,支障が生じたということはないと考えています。引き続き,国民の命や暮らしを守るために万全の体制を政府一体となって敷いていきたいと考えます。

【記者】推定飛距離が少なくとも5,500キロということは,ICBMに該当すると思うんですけれど,あくまで現段階では「ICBM級」という認定なんですか。

【岸田外務大臣】飛距離から言いますと,今申し上げた判断になります。ICBMには再突入技術など様々な技術が伴わなければなりません。そういったことも勘案して,ICBM級という表現を用いていると承知しています。

【記者】空白はないというふうに仰いましたが,NSCが終わってから外務省に入るまで,大臣は2時間半ぐらいかかってしまっていると,この時間というのは外交の面でおろそかになったということはないでしょうか。

【岸田外務大臣】私自身は両省を移動していますが,その間も両省の幹部が緊密に連携をしています。少なくとも今回の事案について情報収集や警戒態勢において何か支障があったという認識はもっておりません。引き続き緊張感を持って対応していきたい,このように思っています。

【記者】日米韓で圧力を強化していくとの方針だと思うのですが,影響力を持つ中国に対してどのように働きかけるお考えでしょうか。

【岸田外務大臣】中国に対しては,例えば,先般もG20サミットの際に,7月8日に日中首脳会談を行っています。この際に,中国に対しまして建設的な役割を果たしてもらうべく,しっかりと働きかけを行ったわけですが,双方は朝鮮半島の非核化は日中共通の目標である,こうした確認をし,一層緊密に取り組んでいく,こういったことで一致をしてます。引き続き様々なレベルで,日中間において意思疎通を図り,我が国としてはしっかり働きかけを行い,具体的に中国の建設的な対応を求めていきたいと思います。こうした考え方は米国ともしっかり共有していると思います。米国とも連携しながら中国の建設的な役割を求めていきたいと思っています。

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