記者会見

岸田外務大臣会見記録

(平成29年7月11日(火曜日)10時29分 於:官邸エントランスホール)

国際組織犯罪防止条約,人身取引議定書,密入国議定書及び国連腐敗防止条約の受諾について

【岸田外務大臣】本日,国際組織犯罪防止条約(TOC条約)を受諾することが閣議決定されました。
 国際組織犯罪防止条約は,既に187の国と地域が締結している極めて重要な条約であり,本条約の締結は,関連する国連の決議やG7/8サミットにおいても,繰り返し要請されてきたところであります。
 2019年のラグビー・ワールドカップ,そして2020年のオリンピック・パラリンピック競技大会を控え,我が国に対する国際社会の注目が集まる中,今般,我が国が国際組織犯罪防止条約を締結し,188番目の締約国になることは大きな意義を有すると考えます。
 我が国として,テロを含む組織犯罪対策において,国際社会と協力を一層強化していきたいと考えます。
 なお,本条約の受諾に加え,本条約を補足する人身取引議定書,及び密入国議定書,並びに国連腐敗防止条約を受諾することについても閣議決定が行われました。
 我が国としては,これらの条約の締結を契機に,人身取引,密入国を含む国際的な組織犯罪や,国際的な問題である公務員等に係る腐敗行為についても,国際社会と緊密に連携し,犯罪対策の更なる強化に努めていく所存です。

核兵器禁止条約の採択

【記者】今月7日に,国連で核兵器禁止条約が採択されました。政府としての受け止めをお願いします。

【岸田外務大臣】採択されたこと,承知をしております。この条約の背景には,核軍縮の進展の遅さに対する非核兵器国による不満,あるいは早急に実質的な前進を得たいという願いがあると受け止めています。こうした思いについては,我が国も強く共有をしております。我が国の基本的な考え方は従来から申し上げているように,二つの大切な認識に基づいて,核兵器国と非核兵器国の協力の下に,現実的・実践的な取組を積み重ねていくというものであります。
 今回採択された条約は,こうした我が国の「核兵器のない世界」を目指す我が国の考え方とアプローチを異にしている,このように考えています。我が国としましては,核兵器国と非核兵器国の対立が深刻化する中にあって,是非,両者の信頼関係の再構築が最大の課題であると考えています。そういった考えに基づいて現実的・実践的な取組をリードしていきたい,このように考えています。

テロ等準備罪関連

【記者】テロ等準備罪の方なんですけれども,法案審議中には国連特別報告者のカンナタチさんの方からですね,プライバシー権を担保する文言がないのではないかという質問状が届いていて,外務省の答弁では,我が国の立場については,追って回答したいというふうに答弁されていらっしゃいましたけれども,その回答というのはもうされたのでしょうか。

【岸田外務大臣】回答するべく準備をしていることは承知しておりますが,回答を発出したかどうか,確認いたします。

(注1)カンナタチ氏の公開書簡に示された懸念や指摘事項について,現在政府内でその内容を精査するとともに具体的な対応について検討しているところです。
 いずれにせよ,我が国の取組を国際社会に対して正確に説明するべく,同書簡の照会事項について,追ってしっかりと我が国の立場を正式に回答する予定です。

核兵器禁止条約の採択

【記者】核禁条約の関連ですが,現地では国連大使が署名はしないというふうに明言をされています。その対応が,理由とともにその対応でいいのかどうか,教えてください。

【岸田外務大臣】先ほど申し上げたとおりです。今回の核兵器禁止条約については「核兵器のない世界」を目指す我が国の考え方とはアプローチを異にすると考えています。核兵器国と非核兵器国の対立の深刻な状況を一層悪化させてはならないと我々は思っています。具体的には両者の参加する枠組み,NPTですとかCTBTですとかFMCTですとか,これまで努力してきた取組を辛抱強く追求していきたいと考えます。

【記者】署名はしないということで…。

【岸田外務大臣】我が国の対応は全く変わっておりません。ぶれてはならないと考えています。

【記者】それですと,条約は核兵器による威嚇も禁じておりまして,このまま批准する国が増えたら,被爆国である日本が核抑止力に依存するという政策自体が条約違反というふうにみなされることになりますが,これはどう考えますか。

【岸田外務大臣】条約の交渉には,我々は参加をしていません。中身については言及することは控えます。こうした核兵器禁止条約の交渉自体が,先ほど申し上げたように,我が国の基本的な考え方とは相いれない部分があると考えています。我が国は核兵器国と非核兵器国の協力が重要であるという考え方に基づいて,NPTを始めとする両者の参加する枠組みをしっかりと追求していきたいと考えています。

慰安婦問題関連

【記者】韓国の女性家族相が,日韓合意の再協議の意向を示しました。ユネスコの記憶遺産の登録に向けて政府は拠出金を出して,しかも慰安婦の博物館を設立するというところまで発言しました。これについての受け止めと対応をお願いします。

【岸田外務大臣】まず,報道は承知しております。一昨年の日韓合意については,慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な解決」について日韓間で解決したものであります。国際社会から高く評価された合意が着実に実施されることが重要です。こうした点においてこれまでも様々なルートで伝えてきております。
 そして世界の記憶への登録申請の話ですが,この申請は加盟国間の友好と相互理解の促進というユネスコ設立の本来の趣旨と目的に反しかねないというのが,我が国の認識であります。韓国政府に対しましては,一昨年の日韓合意も踏まえ,適切に対応するよう累次にわたり申入れてきたところであります。本件発言を受けて,韓国政府に我が国の立場,改めて強く申入れたところであります。
 博物館の話もありましたが,これについては,日韓合意が「最終的かつ不可逆的な解決」を確認したものであり,着実な実施が重要であるという考え方,これを引き続き粘り強く,あらゆる機会を捉えて合意の着実な実施を求めていきたいと考えています。

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