記者会見

岸田外務大臣会見記録

(平成29年6月27日(火曜日)12時22分 於:本省会見室)

冒頭発言

貨物検査特別措置法施行令改正

【岸田外務大臣】本日,貨物検査法施行令の一部を改正し,北朝鮮と第三国との間のモノの流れを更に厳しく規制する,いわゆる「キャッチオール規制」等を導入する政令を閣議決定いたしました。
 北朝鮮による挑発行動が続く現在の状況に鑑み,北朝鮮の核・ミサイル開発を阻止するため,関連物資・技術の移転を防止するとともに,北朝鮮の外貨収入を減少させることが重要です。
 このような観点から,今回の政令改正では,安保理決議に基づき,北朝鮮との間での移転が禁止される品目を追加するとともに,規制対象として明示的に指定されていない品目であっても,核・弾道ミサイル計画や軍隊の運用能力の向上等に資するおそれがあると判断されれば,提出命令等を可能にする,いわゆる「キャッチオール規制」を導入いたしました。
 今回の政令改正は,北朝鮮の核・ミサイル開発関連物資の移転を防止する上で大変重要な措置であり,これをしっかり実施をしていきたいと考えます。

共同経済活動に関する官民調査団の四島訪問

【北海道新聞 水野記者】今日から,北方四島における共同経済活動のための調査団の派遣が始まったと思うんですけれども,その件で教えてください。地元の根室の長谷川市長が派遣団のメンバーから外れたと思うのですけれども,地元ではこれまで北方領土問題などで発信してきたことが,ロシア側から拒否されたのではないかという懸念の声も上がっています。これに関する事実関係を教えてください。

【岸田外務大臣】今回の官民調査団のメンバーにつきましては,充実した調査を行い,日露双方の提案について検討を深めるために適切な構成とする,こうした観点から,関係各方面と調整を行ってきました。
 そして結果的には,ご指摘のように,根室市長にはご参加いただけない形となりましたが,今回の調査の主たる目的がプロジェクトの経済性の確認にあるというところ,根室からも漁業,観光,小売などの各分野を代表する専門家には加わっていただいております。地元の観点は適切に反映していただけると考えております。いずれにしましても,関係各方面と種々調整をしてきた結果だと認識をしております。

【記者】外務省としては,根室市長に行ってもらいたいと思って,元々にはリストに入っていたのか,それとも当初から想定になかったのか,そこを教えてください。

【岸田外務大臣】これは,関係各方面と調整をした結果であります。こうした調整の結果は尊重したいと考えております。

核兵器禁止条約関連

【フリーランス 上出氏】核兵器禁止条約について改めて質問させていただきます。今,国連でいわゆる交渉会議が本格的に始まっているところです。この間,日本から広島市長や被爆者団体のメンバーらが多数訪れています。最近2,3日前報道であったんですけども,今の交渉会議に欠席している核保有国,それから日本の空席になった国連の席に,抗議の意思を込めてか,あるいは条約成立を期待してか,折り鶴が置かれているという写真が掲載されております。こうした被爆者メンバーたちの思いに,広島出身の大臣としては改めてどう受け止めているのか,そのへんをお聞かせいただきたいのが第1点と,やっぱり日本は,絶対に交渉の場に戻ることは再びないのか,このへんについてお聞かせいただきたいと思います。

【岸田外務大臣】まず,ご指摘のような被爆地,そして被爆者の方々の思いというものは大変貴重なものであり,そして重たいものがあると思います。そしてこうした関係者,政府も含めて,「核兵器のない世界」を目指すという大きな目標については,共有していると考えます。「核兵器のない世界」を目指すという目的のために,それぞれの立場から努力をしていかなければならないと思います。そしてその中で,政府としてどうあるべきなのか,政府としても慎重に検討をした次第です。
 そしてご指摘の核兵器禁止条約の交渉については,会議のありようを考えた場合に,核兵器国は1国も参加をしない,あるいは日本とともに核軍縮・不拡散に取り組んできたドイツ,カナダ,オーストラリアといった,中道国と言われる国々も参加をしていない,こういった現状を考えますときに,交渉会議自体,核兵器国と非核兵器国の対立を一層深めることになってしまうのではないか,こういったことで交渉への参加を見合せた次第です。
 こうした核兵器国と非核兵器国の協力を重視する立場,この立場はこれからもぶれてはならないと考えております。是非,我が国としては,核兵器国と非核兵器国の協力の下に現実的・実践的な取組を行っていく,こうした基本的な立場をこれからもしっかり維持していきたいと思います。こういった立場があるからこそ,米国の現職大統領に広島を訪問をしていただく,こういった取組も進めたわけですし,G7の外相会合において米国,英国,フランス,こういった核兵器を持っている国の外務大臣にも被爆地を訪問していただく,原爆資料館を見てもらう,こういったことも行ったわけでありますし,また先般,NPT運用検討会議の第1回の準備委員会にも私(大臣)自身,直接出席をして核兵器国と非核兵器国の協力を呼び掛けたということであります。是非,この核兵器国もしっかり巻き込む形で「核兵器のない世界」に向けて努力を続けていく,こうした政府の立場をしっかりと維持しながら,政府としての「核兵器のない世界」という大きな目標に向けての役割を果たしていきたい,このように考えております。

【フリーランス 上出氏】ただ,どうしてもですね,皆さんから出てくる言葉は,日本は唯一の被爆国だと,それが欠けたということに関して残念だ,失望したというような声が出ています。この点については,どのように国民の方に説明するんでしょうか。

【岸田外務大臣】唯一の戦争被爆国だからこそ核兵器国と非核兵器国,この両者の協力を得るべく,橋渡し役としてしっかり役割を果たしていかなければならない,このように思います。
 核兵器国と非核兵器国の対立の深刻さ,2015年のNPT運用検討会議においても成果文書すらまとめることができなかった。誠に深刻な状況にあります。こういった深刻な時だからこそ,唯一の戦争被爆国として核兵器国と非核兵器国の協力の下に現実的・実践的な取組を行う。こうした取組を辛抱強く,粘り強く行っていく,これこそ我が国として取るべき対応なのではないかと考えます。唯一の戦争被爆国としての責任の下に,国際社会の議論をリードしていきたい,このように思っています。

ダッカ襲撃テロ事件から間もなく1年

【朝日新聞 笹川記者】バングラデシュのダッカでレストランが襲撃されて,日本人7人を含む20人が犠牲になったテロ事件から間もなく1年となります。改めてではありますが,この事件の教訓,どういったところにあったかということ,それからこの1年で邦人保護の安全対策,様々な取組進められてきたと思いますが,今後,更にどういった分野への取組が必要だとお考えでしょうか。

【岸田外務大臣】昨年7月のダッカ襲撃テロ事件で尊い人命が多数奪われたこと,このことは痛恨の極みであります。このような悲劇が二度と繰り返さない,二度と起こさせないようにする,こういった強い思いを持って,昨年8月には「在外邦人の安全対策強化に係る検討チーム」の提言の点検報告書というものをまとめ,その方針に従って中堅,中小企業について「安全対策ネットワーク」の立ち上げ,あるいは「ゴルゴ13」を活用した「マニュアル」を作成した,こういったことも行いました。さらには在外教育施設,留学生,そして短期渡航者のそれぞれについて,安全対策を強化してきた次第です。
 また国民の皆様に,適時適切な情報発信を行うことを重視し,「たびレジ」にはこの1年間で,最初の1年間の約6倍に当たる,約132万人に登録していただいた,こうしたこともありました。
 さらには国際協力事業関係者の安全対策も強化していかなければならないということで,「国際協力事業安全対策会議」の常設化,さらには安全対策,テロ対策に関する研修の実施,そして防弾車を始めとする安全対策機材の配備,こういったものにも取り組んでいます。
 こうした取組は行っていますが,現実の状況を見ますと,海外で活動する邦人,日本企業の数,これは増加する一方です。そして一方で国際テロ情勢,これは一段と厳しさを増しています。こういった状況を考えますと,引き続き,政府としても,外務省としても邦人の安全確保のために全力で取り組んでいかなければなりません。引き続き,様々な状況をしっかり勘案しながら,何をやるべきなのかということについて不断の検討を続けていきたい,このように考えます。

第7回日中高級事務レベル海洋協議

【NHK 瀧川記者】日中の海洋協議についてお聞きしたいんですけども,去年の12月に中国で開催されて,その際に,今年の前半にということで合意してたと思いますが,調整状況と,それから注目されるのがガス田の,東シナ海のガス田あるいは「海空連絡メカニズム」等々と注目されますが,こういった案件について,どういった成果を,近々開催されるのであれば,期待されるのかお聞かせください。

【岸田外務大臣】第7回日中高級事務レベル海洋協議,これは今月29日から30日まで,福岡市で開催されます。同協議は日中両国の海洋問題全般に関する定期的な協議メカニズムであり,両国の海洋関係機関の間で,共に関心を有する幅広い問題について意見交換を行う予定にしております。今回のこの協議を通じて,日中双方の信頼が増進され,協力が強化されることを期待したいと思います。
 そしてご指摘の「海空連絡メカニズム」あるいは東シナ海の資源開発,こうした問題についてですが,今の段階で,議題の具体的な一つ一つについて明らかにすることは控えますが,今回の海洋協議においては,ご指摘の点も含めて両国が関心を有する海洋に関する問題について,幅広く意見交換を行う,こうしたことを予定しております。是非,双方の信頼増進,協力の強化につながることを期待したいと思っています。

日EU・EPAの交渉状況

【NHK 佐藤記者】日EU・EPAについて2点お尋ねしたいんですが。EUのマルムストローム委員が,今週,必要があれば来日して会談を行う用意があるという,言及されました。この調整状況について1点と,もう1点,今回の交渉に対しては,直近のメガFTAであるTPP以上に,個別の品目では譲歩を迫られるのではないかという懸念も広がっています。こうした懸念に対してどういう方針で交渉に望まれるか,改めてお聞かせください。

【岸田外務大臣】まず1点目ですが,先日6月21日だったと思いますが,私はマルムストローム委員と電話会談を行いました。電話でのやり取りを行ったわけですが,その中で引き続き,直接連絡を取り合う,こういったことでは一致をしています。ただ,現時点でこのマルムストローム欧州委員の訪日について,具体的な予定が決まったということは承知をしておりません。
 そして交渉の中身については,当然のことながら,今の段階で具体的に申し上げることは控えなければならないわけですが,首席交渉官同士の交渉,もう先々週から2週間にわたって白熱した交渉が続いています。今日現在も,厳しい交渉が続いています。引き続き,G20の際の日EU首脳会談の開催も念頭に置きながら,交渉を進めていかなければならないと思っていますが,お互いのセンシティビティにも配慮しながら,国益の観点に基づいて全力で交渉を続けていきたい,このように考えております。

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