記者会見

岸田外務大臣会見記録

(平成29年5月26日(金曜日)9時12分 於:本省会見室)

冒頭発言

共同経済活動に関する官民調査団の派遣及び航空機を利用した元島民による特別墓参

【岸田外務大臣】先般の日露首脳会談を踏まえ,鋭意調整してきた結果,共同経済活動に関する官民調査団を5月30から6月1日にサハリンに派遣した上で,6月後半に北方四島において現地調査を行うこととなりました。
 なお,元島民による航空機を利用した特別墓参については,国後島と択捉島への訪問を6月中旬に実施するべくロシア側と調整を進めております。
 こうした取組を通じて,北方四島における日露の協力を進めることは,平和条約締結に向けたプロセスの一環です。引き続き,元島民や隣接地域の皆様のご要望を踏まえながら,着実に前進させていきたいと考えます。

共同経済活動に関する官民調査団の派遣等

【朝日新聞 笹川記者】今,大臣から発表のありました調査団ですけれども,これは最初に北方四島に入るのではなくて,まずサハリンに派遣されるという,この切り分けになった理由は,どういった理由なんでしょうか。

【岸田外務大臣】ロシア側と調整した結果,現地調査のプログラムをより充実したものにするためにも,まずサハリンを訪問し,そこで十分に情報収集を行い,調整を行った上で,四島を訪問することが適切であるという判断をした結果であります。そういったことで,まずサハリンに行き,その後,北方四島を訪問する,こうした方法を決定した次第であります。

【朝日新聞 笹川記者】具体的にサハリンでの情報収集というのは,どういったことを想定されているのか,また,政府側はトップはどなたが調査団の団長をされて行かれるのでしょうか。

【岸田外務大臣】サハリンへの調査団ですが,まず今申し上げたように,北方四島への官民調査団の視察プログラムをより充実したものにするため,ロシア側から情報収集を行う予定にしています。サハリン訪問の一行は,長谷川総理補佐官が団長を務め,漁業・観光・医療・その他の分野の専門家を含め,約30名の規模で,官民関係者で構成するということを予定しております。3月18日,日露次官級協議が行われました。この次官級協議で提示された双方の提案,双方が共同経済開発について提案を行っていますが,この双方の提案についての検討を深めるため,適切な構成となるよう,調整を行った次第であります。サハリンへの調査団の概要は以上です。

【読売新聞 森藤記者】当初,4月の首脳会談では共同記者発表の場で,総理が5月中にも四島への現地調査団を派遣することでロシア側と合意したとおっしゃっていたと思うんですが,6月後半ということで,四島への現地調査自体に,派遣時期の調整に時間がかかった理由についてお願いします。

【岸田外務大臣】3月18日の次官級協議で双方から出された提案,この提案をしっかりと検討し,そして現地の調査を行っていかなければなりません。そういった観点から,双方で調整を行ってきた次第です。より効果的な調査を行うために,先ほど申し上げたように,まずはサハリンに行き,その後,現地調査を行う,こうした方式も決定した次第です。四島における共同経済活動の調査として,より充実したものにする,より効果的なものにする,その観点からロシア側とも調整を続けていました。時期については,そうした観点から調整をした結果であります。首脳会談での意向も踏まえて,事務方においても努力を行い,このような日程を決定した次第であります。

【NHK 小林記者】現地では長谷川補佐官がサハリンに行かれて,誰とどのような協議をするのかということと,そこで具体的に,効果的な,有効的な調査を行われ,どのような話をするのかということ,それとあともう一点,6月の中旬の四島への調査団ですけれども,この日程だとか,団の規模ですね,30人と同じ人数なのか,この2点をお願いします。

【岸田外務大臣】まず,1点目はですね,長谷川総理補佐官が団長を務めるわけですが,具体的に誰と会うか等については,調整は当然してはいると思いますが,日程等が決まったということまでは,私(大臣)は聞いておりません。その中身については,3月18日双方から提案した案,この検討を深めるために意味のある調整,すなわち漁業ですとか,観光ですとか,医療ですとか,そうした専門分野の議論も含まれると思います。そのために,専門家も30名の中に含まれていると承知をしています。
 そして現地調査の方ですが,北方四島における視察プログラムについては,まずはサハリンでの調査等も踏まえながら,引き続き調整をしていくということになると考えます。サハリンでの調査等が行われ,その状況も見ながら,その次の段階の現地調査のありようも考えていかなければならないということですので,現地調査の調査団については,規模等についても,まだこれから調整していくということになるかと思います。いずれにせよ,日露双方の提案を検討していく上で,効果のある調査団の構成を考えていかなければならないと思います。

核兵器禁止条約関連

【フリーランス 上出氏】先般,国連の核兵器禁止条約の原案が公表されました。これに関連して質問させてください。これについては日本政府は反対の立場,取っております。一方,世界で唯一の被爆国の関係者として,例えば広島,長崎の両市長,被爆者団体などからは歓迎する声が聞かれます。広島出身の大臣として,こういった関係者の反応をどう受け止めるかというのが第1点,もう1点,非核保有国からは日本に対して失望の声も聴かれるんですが,今後,この条約に日本が参加する余地はないのかどうか,この2点についてお聞かせください。

【岸田外務大臣】様々な関係者の声について,どう受け止めるかということについては,被爆地をはじめ多くの国民の皆さま方の中に,様々な意見があるということは十分承知しておりますし,そしてそういった思い,これはしっかりと受け止めなければならないと考えます。そうした様々な意見をしっかり受け止めながら,政府として対応を考えていかなければならないわけですが,その際に,「核兵器のない世界」を目指すという,この大きな目標については,しっかりと共有をしているんだということは申し上げたいと思います。そして政府のこの「核兵器のない世界」を目指すための取組みは,従来からも,そしてこれからも一貫しているということをしっかり説明させていただきたいと思います。核兵器の非人道性に対する正確な認識とそして厳しい安全保障環境に対する冷静な認識,この2つの認識をしっかり持ちながら,核兵器国と非核兵器国がしっかり協力をし,その上で現実的な,実践的な取組みを進めていく,こうした方針は一貫しているということであります。
 こうした方針のもとに,核兵器禁止条約交渉についても我が国の対応を考えたわけですが,残念ながらこの核兵器禁止条約交渉においては,核兵器国は1国も参加をしていない,なおかつ,我が国とともに核兵器のない世界を目指すために努力をしてきた中道国といわれる非核兵器国,すなわちカナダですとか,オーストラリアですとか,ドイツですとか,こういった国も1国も参加していない,こういった現状を考えますときに,この交渉を推し進めると,この核兵器国と非各兵国の対立,これを一層深めてしまうのではないか,こういった判断の下に,核兵器禁止条約交渉,初日に我が国の基本的な考えをしっかり訴えた上で,それ以後,交渉に参加することは控えた,こういったことであります。
 我が国のこうした考え方は一貫しております。よって「核兵器のない世界」を目指すという大きな目標に向けては,NPTですとか,CTBTですとか,FMCTですとか,核兵器国と非核兵器国がともに参加する枠組みを辛抱強くしっかりと追求していく,これがあるべき姿であると思っています。そういった思いから,2020年のNPT運用検討会議の準備委員会にも,日本の外務大臣として初めて出席をし,我が国の基本的な考え方を訴える,こうしたことを先日5月の始めに行わせていただきました。是非,こうしたNPTあるいはCTBT,FMCT,こうした取組を進めることによって,全体の核兵器の数を少なくし,そして最小限ポイントと呼んでおりますが,この一定の水準まで全体の数を減らした上で,法的な枠組みを用いる,そして「核兵器のない世界」を実現する,こうした我が国の基本的な議論の進め方,これをしっかりと追求していきたいと思います。こうした考え方,先日,NPT運用検討会議の準備委員会でも,私(大臣)の方から明らかにさせていただきましたが,CTBTOのゼルボ事務局長を始め,多くの関係者からその日本の基本的な考え方を高く評価する,こうした評価をいただきました。是非,こうした考え方に基づいて,「核兵器のない世界」に向けて努力を続けていきたい,このように考えます。

【中国新聞 田中記者】今の関連で,条約への考え方についても伺ったんですが,6月に今回出た草案をベースにして第2回の交渉が行われます。大臣のご地元からも,改めて6月の交渉には参加してほしいという声がありますが,そちらについての,もう余地はないのかということを確認したいのと,草案そのものには,広島や長崎の被爆者の苦しみという言葉も書き込まれまして,核兵器の非人道性を強調して,核兵器を禁止するという内容になっていますが,その草案自体の評価と申しますか,受け止めをお聞かせ願えれば…。

【岸田外務大臣】まず,先ほど申し上げましたが,被爆者の方々あるいは多くの国民の皆さま方の様々な意見については,重たいものがあると思いますし,しっかり受け止めなければならないと思います。その上で政府の対応を考えていかなければなりません。そして慎重に検討した結果,先ほど申し上げた政府の方針を決定したわけであります。政府の基本的な考え方は一貫していると思っています。この一貫した考え方はブレてはならないと考えます。そういったことで,核兵器禁止条約交渉についても,先ほど申し上げました対応を続けることになると考えています。そして核兵器禁止条約の内容について,案が提示されたということは承知をしています。ただ,この交渉に参加してない立場からして,その内容について何か申し上げることは控えます。

G7タオルミーナ・サミット

【時事通信 市川記者】今日からG7サミット開幕しましたけれども,主なテーマとして,北朝鮮問題とか保護主義とかあるんでしょうが,どのような議論を期待されますでしょうか。

【岸田外務大臣】26日,27日にイタリア,シチリア島におきまして,G7タオルミーナ・サミット開催されます。その内容でありますが,世界の経済成長をいかに牽引していくのか,あるいは北朝鮮,テロ対策など,喫緊の課題について,どう対処していくべきなのか。また,昨今,G7のリーダーも多くの国で新しくなる,入れ替わりもありました。新たにサミットに参加するリーダーを迎えて,首脳間で胸襟を開いた,率直な議論が行われることを期待したいと思います。北朝鮮につきましても,核実験,あるいは相次ぐ弾道ミサイルの発射等によって,その脅威が益々高まっており,主要な課題の一つとして,G7として一致した対応が必要である,こうした認識を首脳間でしっかり共有していければと思っております。北朝鮮に対し,圧力をかけるべき時であることを踏まえて,G7として連携を確認するとともに,国際社会に対し,安保理決議の完全な履行を強く求めていくべく,G7サミットでの議論,是非,深めていただき,明確なメッセージを発出していただければと考えております。

安倍政権長期化の要因

【時事通信 市川記者】27日で,安倍総理の在職日数が1980日になって,小泉政権と並びます。安倍政権が長期政権になっている要因をどのように考えるかお聞かせください。

【岸田外務大臣】安倍政権が長期政権になっている要因について,私の立場から何か申し上げるのは,なかなか全体を把握する立場ではありませんので,難しいところがあると思いますが,例えば,外交・安全保障ということを考えましても,平和安全法制の議論をしっかり行う,あるいは日米の間においても様々な議論を深めていく,こうしたことを通じて,日米同盟の対応力や抑止力,こういったことを行う,一方で日韓合意ですとか,あるいはオバマ大統領の広島訪問ですとか,様々な課題について,和解の動き,協力の動き,こういったものを進めていく,さらにはグローバルな課題にもしっかりと取り組んでいくなど,やはりバランス感覚というものが重要だということを考えながら外交を進めてきました。こうしたバランス感覚が国民の安心感にもつながり,結果として高い支持率の維持にもつながっているのではないか,こんなことは感じます。長い期間にわたって,様々な課題に取り組んでいかなければなりません。その際のバランス感覚というのは,一つ大切な要素としてあるのではないか,外交を担当する立場からの受け止めではありますが,そんなことは感じます。

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