記者会見

岸田外務大臣臨時会見記録

(平成29年5月2日(火曜日)15時30分 於:オーストリア・ウィーン国際センター)

冒頭発言

【岸田外務大臣】今回,日本の外務大臣として14年ぶりにウィーンを訪問し,2020年NPT運用検討会議の第1回準備委員会に出席をし,一般討論演説を行いました。また,この機会にオーストリアのクルツ外相,IAEAの天野事務局長,CTBTOのゼルボ事務局長,UNODCのフェドートフ事務局長,そして、NPDIの各国代表と有意義な会談を行うことが出来ました。
 現在,北朝鮮の核・ミサイルの脅威が一層深刻化するという厳しい安全保障環境の中,核軍縮・不拡散の進め方をめぐり,核兵器国と非核兵器国の対立が先鋭化するという厳しい状況になっています。
 そのような厳しい状況であるからこそ,私自身がNPT運用検討会議の第1回準備委員会に日本の外務大臣として初めて出席をし,日本の考えを直接訴えることと致しました。私からは,核兵器国と非核兵器国の信頼関係を再構築し,再び核兵器国と非核兵器国の協力と協調を取り戻し,核兵器のない世界に向け現実的かつ実践的な歩みを進めるべきであること,そしてそのための具体的な方策を示しました。
 NPT運用検討会議をはじめとする核兵器国と非核兵器国の双方が参加する枠組を大切にしながら,NPDIの諸国とも協力をして,核兵器のない世界に向けて更に努力をしていきたいと考えています。

質疑応答

【記者】大臣がおっしゃられましたように,NPT準備委員会に初めて日本の外相として出席され,先ほどスピーチを行いました。CTBTO事務局長もスピーチの内容について高く評価をされていたが,そのスピーチを行った手応えについてお願いします。

【岸田外務大臣】核軍縮・不拡散をどのように進めていくかということをめぐりましては,現在,核兵器国と非核兵器国の対立,極めて先鋭化しており,厳しい状況になっていると感じています。こうした厳しい状況にあるからこそ,唯一の戦争被爆国として,核兵器国と非核兵器国の信頼関係を再構築して,再び両者の協力と協調を取り戻すべく,「核兵器のない世界」に向けた現実的かつ実践的な道筋をしっかり示す必要がある,こういった考えから出席を決定いたしました。

 私としては,核兵器国及び非核兵器国が集まる核軍縮・不拡散にとって最も普遍的な場であるNPTの場で演説をし,我が国の考える「核兵器のない世界」の実現に向けた道筋を示したということについて手応えは感じています。その後,会談を行ったNPDIの各国代表からも,また,他の関係者との会合においても私の演説については多くの方々から評価をいただきました。唯一の戦争被爆国として,今後とも核兵器国と非核兵器国の橋渡しを果たすべく引き続き取り組んでいきたいと考えます。

【記者】演説の中で核兵器禁止条約について,タイミングを間違えてはならないと述べられたが,6月からまた新たな協議が始まるが,推進国に対して日本としてどういった働きかけをしていくお考えか。

【岸田外務大臣】核兵器のない世界を実現するためには,核兵器国の参加を得た形で議論を着実に進めて,現実的かつ実践的な核軍縮措置を積み上げていくことが必要であると申し上げております。核兵器禁止条約をめぐっては,核兵器国と非核兵器国の対立,一層先鋭化することを懸念しています。そういったことから私としては,今回の一般討論演説の中で,核兵器国と非核兵器国の信頼を取り戻すための取り組みついてどうするべきなのか,こういった日本の考え方を明らかにさせていただきました。こうした信頼関係再構築の具体的な取り組みを進めることによって是非2020年NPT運用検討会議の成功に向けて,NPDIの枠組みもしっかり活用しながら貢献をしていきたい,このように考えています。

【記者北朝鮮問題であるが,ニューヨークでは北朝鮮がさらなる挑発行動に出たら今後一層厳しい安保理採決をと言う意見がでていたが,その直後にミサイルを発射しました。今後安保理の採択や独自の制裁強化などどういった対応を考えているのか。

【岸田外務大臣】4月28日に行われました,国連安保理における北朝鮮の非核化に関する閣僚級会議の場におきまして,私の方から北朝鮮の核・弾道ミサイル開発は新たな段階の脅威に至っているということを指摘するとともに,対話のための対話では意味がない,真剣に対話に応じるよう,今は圧力を強化していくことが必要である,こういったことを訴えさせていただきました。各国から,北朝鮮の非核化を求めるこうした声があがる中,会合の直後,6時間後には,北朝鮮が弾道ミサイルを発射したということでありました。これは正面からの国際社会に対する挑戦であり,緊張をいたずらに高める行為であり,断じて容認することはできないと考えています。
 我が国としては,米国,韓国等と連携しながら,北朝鮮からの石炭の輸入規制を含め,各国に安保理決議の厳格な履行を働きかけるとともに,我が国独自の措置,これをしっかりと実施を徹底していきたいと考えます。
 そしてその上で,今後の対応については,北朝鮮の反応・対応をしっかり見極めながら,諸懸案の包括的な解決のためには何が最も効果的なのか,こうしたことを不断に検討していかなければならないと思っています。

【記者】話は変わるのですが,韓国ですが長嶺駐韓大使が韓国に帰任して初めて尹炳世(ユン・ビョンセ)外相と会談をしました。しかし,その席は1対1ではなく米国の代理大使も同席し,結局,日米韓の3カ国での協議となりましたけれども,この会談が実現したこと,またそれが3カ国でということについての受け止めをお願いします。

【岸田外務大臣】私への報告は違っておりまして,二日,まずナッパー駐韓米国臨時代理大使も交えた形で北朝鮮問題に対する日米韓の緊密な連携を確認した。要は,長嶺大使と尹炳世(ユン・ビョンセ)長官とナッパー駐韓米国臨時代理大使,3人で会合を行った後,長嶺大使は尹炳世(ユン・ビョンセ)外交部長官と二人で面会をしたということを聞いております。二者の間で意見交換を行ったということであります。そういった会合が行われ,日本の立場について改めて申し入れを行わさせていただきました。

【記者】当初,目的としていた大統領代行との面会ですけれども,大統領選挙まであと一週間となりましたけれども,大統領代行との面会の実現性については,どう受け止めていますか。

【岸田外務大臣】黄教安(ファン・ギョアン)大統領権限代行との表敬ですが,これは引き続き調整中であると聞いております。引き続き調整を続けます。

【記者】確認ですが,日本の立場についても申し入れをしたというのは慰安婦についてのかねてからの立場ということでしょうか。

【岸田外務大臣】日本の立場です。皆様方ご存じのような日本の立場について申し入れを行いました。

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