記者会見
岸田外務大臣臨時会見記録
(平成29年4月23日(日曜日)17時09分 於:北海道大学)
【岸田外務大臣】日本の魅力は地方にあるとの強い思いから,地方の魅力を世界に発信する「地方を世界へ」プロジェクト第4弾で青森そして北海道に来させていただきました。2日目は午前中,青森県八戸市にて朝市あるいは種差海岸,厳島神社を訪問し,八戸の魅力を体感してまいりました。午後は,ここ北海道大学でシンポジウムを開催するとともに,学生の方々とも懇談を行い,草の根レベルでの北海道の魅力発信について議論を行いました。この後,地元経済界の方々とも懇談する予定にしております。外務省としては今般のこの青森,北海道訪問にあわせ,中国の更なる観光促進を目指し,ビザ緩和のパッケージを発表したところです。今回の訪問で実感した北海道,青森の魅力をはじめ,地方の魅力を世界に発信する取組みを今後とも私,外務大臣が先頭に立って推し進めていきたいと考えております。また本日は,元島民の方々との意見交換を行い,また高橋北海道知事にもお会いいたしました。今回,外務大臣として北海道を訪れ,元島民の方々とお会いをし,大変有意義な意見交換を行うことができ,北方領土問題解決への思いを新たにいたしました。政府としては,元島民の方々から伺った思いを胸に,今月下旬の総理訪露において,前進を図ることができるよう、ロシアとの交渉に粘り強く取り組んでいきたいと考えております。私からは以上です。
【記者】今日,大臣も元島民の方と懇談されたかと思うんですが,元島民の方は具体的に進展を求めている現状の中で,今年度のビザなし交流など具体的に何か変わるのかというところと,また,ビザなしで行う墓参について,航空機活用に向けた検討ですとか,現在,国後島の古釜布沖に限られている出入域手続きの複数化に向けた調整など四島訪問の仕組み自体の改善という過程の中で進捗状況,スケジュール感などどうなるのか。また先ほどお話しがありましたが,安倍総理がロシアを訪問するという過程の中で,どの程度煮詰められるのかというところをまず教えていただけたらと思います。
【岸田外務大臣】今日は島民の皆さまがたの思いを聞かせていただきました。北方四島の墓地を訪問する際の元島民の方々の負担軽減に具体的につながるような手続きの改善を今目指しており,その実現に向けて私自身も今年に入ってラヴロフ外相とすでに2回外相会談を行っています。精力的にロシアとの協議を進めているわけですが,今月末の安倍総理の訪露の成果については予断をもって申し上げることを控えますが,5月には今年の四島への訪問事業,始まります。これはしっかり念頭に置きながら、ご指摘の出入域手続き地点の複数化,そして航空機の活用,これを実現するように全力で取り組みたいと考えます。
【記者】先月,世耕経産業大臣が,北方領土の共同経済活動に関して,特に道東地区との連携が重要という認識を示されました。四島の共同経済活動について,地元の要望を踏まえて,北海道側の振興にもつながる活動としてどのような活動を想定しているのか,具体化に向けた進捗具合ということも踏まえてなんですけども,今後もしロシア側と折り合えそうな活動もあれば,具体的に例示いただければというふうに思うんですが。
【岸田外務大臣】まず北方四島での共同経済活動ですが,昨年12月の首脳会談を受けて,漁業,海面養殖,観光,医療あるいは環境その他の分野で協議するということになっています。その上で,いろいろな関係者の意見を聞きながら,政府としては共同経済活動のこの関連協議会の議論等も経て,3月20日の日露外相会談において,我が国のプロジェクトの案,これをリストにしてロシア側に渡しました。そして逆にロシア側からロシア側のプロジェクト案,これ示されました。そのリスト,プロジェクト案を双方が今検討しているという段階です。そういう段階ですので,そのリストの中,プロジェクト案の中,どれが採用されるかというのはまだ予断を持って申し上げることはできない,こういった状況にありますが,この北方領土,隣接地域,1市4町の経済活性化にも資するようなプロジェクトを是非進めたいと考えております。双方の法的立場を害さない形でしっかりと,しかしスピード感をもって取り組んでいきたい,ロシアと協議していきたい,このように考えます。
【記者】共同経済活動の協議は今進められているということですけど,一方で平和条約締結交渉というのが昨年の8月以降行われていません。領土問題が置き去りにされないようにというふうに,今日は元島民の方もおっしゃっていましたが,その平和条約締結交渉いつ再開するお考えでしょうか。また来年はロシア大統領選を迎えます。そうした中で,こうした交渉,進展が難しいんじゃないかという見方もあるんですけども,領土問題が実質的な進展を図るためにどのような道筋を描いていらっしゃるのかお聞かせください。
【岸田外務大臣】まず昨年12月の山口での首脳会談においては,両首脳が平和条約交渉に向けての真摯な決意を明らかにし,そしてそのあとの会見においてプーチン大統領は,最も大事なのは平和条約交渉であると,要はこれは後回しすることはない,これははっきり述べました。その上で共同経済活動,そして四島訪問の負担軽減への議論を行っているわけですが,これは日本人とロシア人が,ともに北方領土の未来を描く信頼関係と理解を醸成する,こういった意味でこれは大変重要な取組みであり,これは平和条約締結にしっかり結びつけていかなければならないと思っています。平和条約交渉,昨年8月から開かれていないではないか,こういったご指摘はありましたが,今年2月も今年3月も日露外相会談開いております。当然のことながら平和条約についてもしっかり議論を行っているわけです。来るべき総理の訪露もあります。平和条約交渉,決して容易なものだろうとは思ってはおりませんが,しっかりと取組は続けていきたい,このように思っています。
【記者】続いてですが,シリア問題を巡っては米露関係,非常に悪化しています。大臣は,北朝鮮の万景峰号について,ロシア側が定期便の就航を認めたことについて,安全保障理事国,常任理事国として責任ある行動をロシアに求めたいと発言されましたけれども,今月下旬の総理のロシア訪問でそういったことですとか,また28日の国連での北朝鮮に関する閣僚会合でどのようにロシア側にこうしたことについて働きかけていく考えでしょうか。また,米露関係が悪化する中で,日本の今後果たすべき役割というのはどのようなものだとお考えでしょうか。
【岸田外務大臣】まず,北朝鮮問題において,国連安保理の常任理事国であり,六者会合のメンバーであるロシアの役割,これは重要であると思いますし,その対応を注視しています。よって,今月末の総理の訪露,その際にはプーチン大統領との首脳会談も行われると思いますが,その機会にロシアに対して我が国のこうした考え方,しっかり伝え,安保理常任理事国として責任ある建設的な対応を求めていきたいと考えます。28日の国連安保理の関係閣僚会合の機会も活用しながらロシアへの働きかけは行いたいと思います。日露両国の間でどんな役割を果たすかという話がありましたが,ロシアに対して,北朝鮮問題,それからシリア問題,こうした問題において,しっかりと役割を果たすべく政治対話を続けていくこと,これは重要だと思います。一方,米国との間においてもトランプ新政権との間において,今,様々な政策のすりあわせを行い,また,信頼関係を作りつつあります。やはり,この米露双方としっかりとした対話,意思疎通を図ることによって,北朝鮮問題,あるいはシリア問題,こうした問題についても,国際社会のあるべき姿を考えていかければならないと思いますし,日本もしっかり貢献していきたい,このように思っています。