記者会見

岸田外務大臣臨時会見記録

(平成29年4月11日(火曜日)12時40分 於:イタリア・ルッカ)

冒頭発言

【岸田外務大臣】昨日,本日とG7外相会合に出席致しました。シリア,北朝鮮といった喫緊の課題について,率直かつ白熱した議論を行うことが出来ました。
 緊迫するシリア情勢については,化学兵器による被害が二度と起きないよう連携を強化していくということについて一致するとともに,この困難な状況からいかに政治プロセスの進展につなげていくのか,非常に活発な議論を行いました。昨晩の2時間半に亘るワーキングディナーはほとんどシリア問題の議論でありました。そして,加えて今日の朝のシリアの関心国会合ということでアラブ諸国も参加した形でシリア問題を1時間以上に亘って議論をしましたが,その場での議論も含めて,この二日間,シリア問題については,大変白熱した議論が行われたと認識をしています。そして,G7として,ロシアに強く協力を促していく,こうしたことで一致を致しました。
 私からは,化学兵器の拡散と使用は絶対に許さないとの米国の決意を支持する,米国の行動はこれ以上の事態の深刻化を食い止めるための措置として理解をする,日本は,政治プロセスの進展につなげる観点からも,困難に直面する全てのシリア人に対する人道支援を最大限行っていく,こうした説明を行いました。政治プロセスの進展のためには人道支援とそして,停戦合意の履行,これが重要だということを強調致しました。
 また,アジア唯一のG7のメンバーとして,私から,厳しさを増すアジアの安全保障環境について改めて説明をし,議論をリード致しました。北朝鮮については,G7として核実験や劇的に増加している弾道ミサイル発射等の挑発行為が新たな段階に至ったとの認識を共有致しました。東シナ海,南シナ海の状況についてもG7として引き続き懸念し,法の支配の貫徹に向け,連携して声を上げていくことで一致を致しました。
 そして,「核兵器のない世界」については,私から,その希求はG7が共有する変わらぬ目標であり,しっかり守っていくべき旨強調し,核兵器国及び非核兵器国双方の協力を得て,現実的かつ実践的な措置を積み重ねていく以外に道はないとの認識を米国を含むG7で改めて確認を致しました。「核兵器のない世界」について,今回,G7で改めて共通の目標であるということを確認した意義は大きいと考えています。
 主要国での政権交代あるいは選挙等「変化の時」を迎える中,今回のこのG7外相会合はG7にとって「試金石」ともいうべき会合であったと思いますが,この会合において,自由で開かれた,ルールに基づく国際秩序の牽引役としてのG7の連帯を確認し,力強いメッセージを発出できたことに満足をしています。今回の会合での議論を土台に,5月のタオルミーナ・サミットにつなげていきたいと考えてます。

質疑応答

【記者】主要な議題の一つになりました,シリアについてですが,G7として,ロシアに強く協力を促すことで一致したとのことですが,今後,具体的にロシアに対して,G7の一員として、あるいはロシアとこれまで日本は関係を築いてきてますが,そういった立場としてどのように具体的に働きかけていくか。

【岸田外務大臣】今回の会合では,シリア情勢について,長時間に亘り活発な議論を行いました。その中で,シリア問題を解決する上でロシアが果たし得る役割について認識を共有し,G7として,ロシアに対し,シリアの政治プロセスの進展に真に寄与するために協力するよう強く促していくことで一致をしました。そして,具体的な働きかけとしては,本日から早速ティラソン米国務長官がロシアを訪問致します。その訪問の際にG7のメッセージをロシアにしっかりと伝達するということ,そして,ロシア側の話をしっかりと聞き,建設的な議論を行うということ,こういったことを確認しています。日本を含むG7としても,ロシアに対し,建設的な対応を促していく,こうしたことを確認した次第です。まずは,ティラソン国務長官のロシア訪問をしっかり注目し,その後引き続き,G7でこの情報やこの意思を共有していきたいと思っております。

【記者】もう一つの大きな課題である北朝鮮について,日米の間では既に中国の役割が重要であるという認識で一致されてたと思いますが,今回のG7の中では,その点についてどのような確認がなされたのか,そして,中国に対して日本として,今後どう働きかけていくか。

【岸田外務大臣】北朝鮮問題に関して,申し上げるならば,冒頭申し上げたように,今次会合で,G7として,北朝鮮による挑戦が新たな段階に至ったことを共有し,国際社会による断固とした効果的な対応を求めていくことでG7で一致を致しました。その上で,北朝鮮問題の対処に当たっては中国の役割が重要であるということ,私から改めて指摘を致しました。中国に対してさらに大きな役割を果たすよう働きかける必要がある,こういった旨私から説明をし,その上で各国とも認識が一致致しました。我が国としては,従来から日米,日米韓の協力が重要であると申し上げてきましたが,更にG7とも緊密に連携する形で北朝鮮問題に取り組み,中国にも働きかけていきたいと思います。

【記者】今回,前回の議長国且つ最古参の外相として参加されましたが,様々なテーマで議論をリード出来たとお考えでしょうか。

【岸田外務大臣】十分手応えを感じています。北朝鮮問題,シリア問題,こうした喫緊の深刻な課題に直面し,そして米国自身も様々な政策の見直しを行っている中で,先ほど紹介しました核軍縮不拡散における「核兵器のない世界」という目標を改めて確認する等,基本的な方向性を確認出来たことは大変重要なことであったと思います。不透明な状況の中で,米国を始め,各国の政策についても色々な議論がある中にあって,G7においては基本的な課題について大きな方向性を確認し,一致をすることが出来た,このことは大変大きな成果であったと思いますし,北朝鮮問題,シリア問題,核軍縮不拡散の問題等,こういったテーマにおいて,しっかりと日本の立場を明らかにし,議論をリード出来たと手応えを感じております。

【記者】昨年の広島でのG7の際の広島宣言ですが,今回の会合ではどのように引き継がれたかとの認識か。

【岸田外務大臣】基本的には,軍縮不拡散の分野における議論はしっかりG7の中で引き継がれ,認識を共有できたと思っています。私の方から核兵器のない世界への希求,これはG7が共有する変わらぬ目標である,そして,守っていくべきである,こういったことをしっかり強調致しました。核兵器国と非核兵器国の協力の下で現実的,実践的な取り組みを重ねていく以外に道は無いということを説明し,こうしたことを米国を含むG7で確認をすることが出来た,このことは大変大きかったと思います。こうした点は,従来から我が国が強く主張してきたことであり,昨年の広島宣言においても主要なメッセージとして,盛り込まれた点であります。こういった点が今回の共同コミニュケ,成果文書の中においてもこの趣旨が改めて確認された,これは重要な成果であったと思っています。そういった点から昨年の広島宣言の基本的な考え方はしっかりと引き継がれていると思いますし,G7各国の中で認識は共有されていると考えております。

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