記者会見
岸田外務大臣臨時会見記録
(平成29年4月3日(月曜日)15時00分 於:外務省)
冒頭発言
【岸田外務大臣】本年1月から一時帰国させていた長嶺駐韓大使及び森本在釜山総領事を明日4日,帰任させることと致しました。
こうした決定を行った理由としましては,まずは朴槿恵(パク・クネ)前大統領の罷免や逮捕といった状況が生じ,5月9日に大統領選挙が行われる予定であり,韓国が政権移行期にある中で情報収集等一層力を入れ,次期政権の誕生に十分備える必要があるということ,二つ目として北朝鮮問題に対処する上で,日韓間の高いレベルでの緊密な情報交換を行い,韓国政府との緊密な連携を図る必要があるということ,そしてそれに加えて,慰安婦問題についてはこれまで現政権に外交当局をつうじて抗議をし,日韓合意の遵守を強く働きかけてきたところでありますが,結果は出ておりません。よって,この慰安婦像の問題を長嶺大使から黄教安(ファン・ギョアン)大統領権限代行に直接合意の遵守を強く働きかけ,次の政権に継承してもらう必要があると判断したこと,こうした諸般の事情を総合的に検討した結果であり,更に邦人保護に万全を期するという観点を踏まえたものであります。慰安婦像の問題については,政府として韓国側に対し,粘り強く合意の着実な実施を求めていく方針に何ら変更はありません。帰任させる長嶺大使らをつうじて,引き続き強く韓国側に働きかけて参ります。私からは以上です。
質疑応答
【記者】最大の問題のポイントである,釜山の総領事館前の慰安婦像,これの撤去移転に関して,何か確約が得られたのでしょうか。
【岸田外務大臣】韓国側から様々な対応について説明を受けてきました。しかしながら今現状,結果には結びつくものではないと我々は考えております。よって長嶺大使を帰任させ,直接大統領権限代行に強く日本の考え方を伝えていく,こうしたことを行わなければならない,このように判断をし,今回の帰任の理由の一つとさせて頂きました。
【記者】何かしら具体的な行動を引き出す上での約束というか,そういったものぐらいまでは現段階であるのでしょうか。
【岸田外務大臣】韓国政府から様々な説明を受けてきました。しかし今現在,そうした対応は結果に結びつくものではないと判断をしております。だから直接大統領権限代行に日本の考え方を伝える,こうした役割を大使に担ってもらいたいと考えています。
【記者】まさに今政権移行期間に入ろうとしている中で,今現在の政権から聞いている説明というのが次の新しい政権になった場合どの程度生きるのかというところについてはどのようにお考えですか。
【岸田外務大臣】これは国と国との約束です。日本と韓国両国が国際社会の前で明らかにした合意であります。国際社会に対する責務でもあると思います。両国が誠実に履行することが大切だということ,これは政権が代わっても変わりはないと考えています。
【記者】それでもやはり今の状態で,状況に変化がない中で大使を戻すということに関して,これについて色んな意見がある中で,納得・理解を得られるものだとお考えですか。
【岸田外務大臣】今の韓国の対応,韓国政府の対応というものは結果に結びつくものではないと思っています。だから直接考えを伝える必要があると判断をしました。政権移行期において,しっかり準備をすること,更には北朝鮮問題に対応すること,こうしたこととあわせて考えた場合に今回の帰任は国民の皆様にもご理解頂けると考えます。
【記者】大使から黄教安さんに直接働きかけるということなんですが,働きかけた結果,像が撤去されないということになった場合に,再び一時帰国させるということでしょうか。
【岸田外務大臣】仮定の質問にお答えすることは出来ません。こうした今言った考えに基づいて直接大使に働きかけを行ってもらいたいと思っています。
【記者】大使が大統領代行にお会いになる日程は決まっているのでしょうか。
【岸田外務大臣】調整中です。
【記者】今回ですね,先方の対応がないまま変えると言うことは,慰安婦像がそのまま固定化されちゃうんじゃないかという懸念は・・・・
【岸田外務大臣】先ほど申し上げた通りであります。いままで韓国政府から様々な説明を受けてきました。そうした韓国側の現時点までの対応は直接結果に結びつくものではないと受け止めています。だから大使から,直接,大統領権限代行に日本の考え方を伝えさせます。
【記者】総理とも協議の上でこのような決断に至ったんだと思いますが,これまでどのような議論ややりとりがあったのでしょうか。
【岸田外務大臣】当然のことながら,総理を含め政府一体となって判断した結果であります。政府内のやりとりについては,申し上げることは控えます。
【記者】状況が動いてない中で大使を返すということは,日韓合意に対して日本があまりこだわっていないという誤ったメッセージになるのではないでしょうか。
【岸田外務大臣】全くそんなことはありません。今申し上げたように日本の強い意思を直接伝えるために大使に帰ってもらいます。併せて政権移行期に対する対応,北朝鮮問題に対する日韓両政府の高いレベルでの意思疎通の必要,こうしたことを総合的に勘案した結果であります。慰安婦問題についても強い意思,覚悟は再三韓国政府に伝えています。それを直接伝えるために大使を帰任させます。