記者会見
岸田外務大臣会見記録
(平成29年3月21日(火曜日)8時51分 於:官邸エントランスホール)
冒頭発言
2016年版 開発協力白書の公表
【岸田外務大臣】本日の閣議において,「2016年版 開発協力白書」の公表について報告しました。
本白書では,「G7伊勢志摩サミットと開発協力大綱」を特集のテーマとして,G7議長国として世界が直面する開発課題やグローバルな課題に真摯に向き合い,国際社会の議論をリードしたことなどに焦点を当てました。
本白書を通じ,日本の開発協力に対する国民の皆様の関心と理解が更に深まり,一層の支持が得られることを期待いたします。
「テロ等準備罪」法案の閣議決定
【記者】本日,閣議でですね,「テロ等準備罪」の方が閣議決定されていますが,野党の反発も強いこの法案をですね,成立させることの意義を改めてお願いいたします。
【岸田外務大臣】ご指摘のように,本日の閣議で国際組織犯罪防止条約の国内担保法が閣議決定されました。この条約は,既に187か国が締結をしています。こうした条約を我が国も締結し,テロを含む組織犯罪と闘うことは,2019年のラグビーワールドカップ,2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控える我が国にとって,重要なことであると考えます。
この条約締結に必要な「テロ等準備罪」を創設することで,テロを含む組織犯罪を未然に防ぐことが可能になるほか,国際協力が促進され,深刻化するテロを含む国際的な組織犯罪に対する取組が強化されることになります。このことは大変大きな意義があると考えております。
日露関係
北朝鮮による弾道ミサイル発射の示唆
【記者】そういった協議が行われている中ではありますけれども,北朝鮮が改めて弾道ミサイルの発射を予告するような発言ですとか,高出力エンジン,ロケットエンジンの実験にも成功したというような発表をしていますけれども,この辺りの受け止めはいかがでしょうか。
【岸田外務大臣】ご指摘のように,北朝鮮の動きが報じられています。こうした度重なる挑発行動,これは断じて容認はできないと考えます。米国,韓国を始めとする関係国としっかり連携しながら,安保理決議等の遵守ですとか,挑発行動の自制を,これからもしっかり働きかけていかなければならない,このように考えます。そして併せて我が国自身としても,いかなる事態にも対応できるように,高度の警戒態勢をしっかり備えておかなければならないと思います。国民の命や暮らしを守るために,万全の体制を敷いていかなければならない,このようにも考えます。
「テロ等準備罪」法案の閣議決定
【記者】「テロ等準備罪」についていくつかお尋ねしたいのですが,対象とする犯罪の数が,当初案に比べると半分以下に減らされたと思うんですが,これを減らした条件というか,理屈について改めてお尋ねしたいのと,あと,2005年の政府答弁の中では,犯罪の内容に応じて選別することは条約上できないというですね,答弁書を出されたと思うんですが,それとの整合性についてどうお考えでしょうか。
【岸田外務大臣】これも度々委員会で答弁させていただいておりますが,これはTOC条約の担保法については,これまで何度となく国会へ法案を提出させていただいてきました。確か3度提出していたと思います。その際に,一般の方々が対象になるのではないかなど,様々な指摘があり,不安も示されていたわけです。そして結果的に法案の承認はいただけませんでした。ただ,TOC条約の重要性については先ほどもお話しさせていただいたとおりであります。どうあるべきなのか,特に一般の方々が対象にならないということをより明確にすることができないのか,こういったことで新たな法律の準備を行ったわけであります。そしてその際に,TOC条約の第5条の中でオプションが示されており,そのオプションを使うことができるという内容になっておりますので,そのオプションを使うことによって,一般的な方々が対象にならないことを明らかにすることができないか,こういった検討を行った次第であります。そのオプションを使うことによって対象を組織犯罪を行う団体,要するにそうした団体に限定するということによって,一般の方々が対象にならないことを明らかにすることができないか,こういった作業を行った次第であります。そしてその結果として対象犯罪も限定的になったということであります。
そうした今までの様々な審議の経過等を踏まえて,今申し上げましたような検討を行い,そしてこの新しい法律を作り,今日,閣議決定に至った次第であります。対象犯罪が限定的になったということについては,今申し上げたような理屈によって行われたということであります。いずれにしましても,この法律の重要性,そのTOC条約という重要な条約を締結するために,重要な法律だと考えています。政府としましても,この法律の成立に向けて努力を続けたい,このように思っています。
【記者】過去の答弁書との整合性については,当初のものと同じなんでしょうか。
【岸田外務大臣】ですから,今言った理屈で,過去の法律においてはTOC条約第5条そのまま解釈し,そしてそれに基づいて対象法律を考えたというのが過去の法律です。今度は全く新しい法律を用意しました。この法律は第5条のオプションを使うことによって,対象を限定する法律になっています。結果として,過去の法律との比較において対象犯罪が限定的になるということだと考えています。
元外交官の再就職関連
【記者】文科省の天下りあっせんの関係でですけれども,外務省ではですね,元外交官の方があっせんされたのではないかと指摘がありまして,文科省の方では,今日ですね,再就職等監視委員会の方に報告をされるという報道もありますが,外務省としての調査の結果等は出ているのでしょうか。
【岸田外務大臣】ご指摘の件について指摘を受け,外務省としても調査を進めてきました。そして指摘を受けた案件については,東京外国語大学と外務省の間に直接やり取りがあったという事実は,今のところ確認されていません。そして,ポイントは文科省と外務省の間でどんなやり取りがあったかというところでありますが,これは文科省の方も今,正式の発表に向けてぎりぎりの調査を行っていると思います。
文科省と外務省とのやり取りですので,我々外務省の方もそれと合わせて今,ぎりぎりの調査,詰めを行っているということであります。その点,しっかり確認された段階で,外務省としましても結果を明らかにしたい,このように思っています。引き続き調査を続けます。