記者会見

岸田外務大臣臨時会見記録

(平成29年2月17日(金曜日)14時30分 於:ドイツ・ボン)

冒頭発言

【岸田外務大臣】本日,日中,日韓,日露外相会談,及びマルムストローム欧州委員との会談を実施いたしました。
 まず,日中外相会談ですが,王毅外交部長とは,今後の日中関係の取り進めについて,諸懸案についての考えも含め,率直に話し合いを行いました。その上で,双方は,「日中国交正常化45周年」である本年,日中関係の重要性を再認識しながら,「戦略的互恵関係」の考えの下,関係改善に向け,引き続き,共に努力することで一致しました。
 北朝鮮問題についても,安保理決議の遵守等について議論し,私から,中国に対し,責任ある常任理事国としての建設的な対応を求めると共に,引き続き連携していくことを確認いたしました。
 続いて,日韓外相会談ですが,ユン長官との間においては,私から,昨年末に在釜山総領事館前に慰安婦像が設置されたことは極めて遺憾であり,撤去を求める旨を改めて強く申し入れを行いました。
 これに対し,ユン長官からは,「総領事館前の慰安婦像の設置は,国際礼譲に鑑み,適切で無い」旨の発言があり,韓国側が,可能な限りの努力をしているとして,執っている措置について説明がありました。今後,韓国側の対応を注視していくとともに,引き続き,慰安婦像の問題を含め,合意の着実な実施を求めて参ります。
 続いて,日露外相会談ですが,ラブロフ外相とは,3つの点で一致を見ました。
 第1は,山口において平和条約問題を解決するとの両首脳の真摯な決意が表明されたことを受け,外相間でも緊密に話し合うこと,四島における共同経済活動と旧島民の四島への往来について,協議の進展を図ることで一致をしました。
 このため,3月18日に東京で,共同経済活動等に関する次官級の公式協議を行うことといたしました。
第2に,3月20日,閣僚級の日露2+2を東京で開催することで一致をいたしました。厳しさを増す現下の地域情勢に鑑み,日露間の意思疎通を図るとの観点から,建設的な議論をしたいと考えています。また,3月30日,東京で杉山外務次官と,チトフ第一次官との間で,「日露戦略対話」を行うことでも一致いたしました。
 そして第3に,北朝鮮によるミサイル発射を受けて,北朝鮮によるさらなる挑発行動の自制や,安保理決議等の遵守を強く求めていくことで一致をし,国連の場を含め,緊密に連携していくことを確認しました。
 続いて,マルムストローム欧州委員との会談ですが,マルムストローム委員との会談においては,保護主義的な動きに対抗するために,日EU EPAの可能な限り早期の大枠合意が,極めて有意義であることを再確認しつつ,双方が強い意志を持って,交渉を継続し,モメンタムを維持していくことで一致をいたしました。次回会合について,早急に調整することでも合意をいたしました。そして,マルムストローム委員との間で,今後とも必要に応じ,直接連絡を取り合うということでも,一致をいたしました。私からは以上です。

質疑応答

(記者)日中外相会談についての質問なんですけども,日米首脳会談で,尖閣諸島は日米安保条約の第5条が適用されるということが言及されたんですけども,それについて,中国側とはどのようなやり取りがあったのか,簡単にご説明ください。

(岸田外務大臣)日中外相会談の中では,日中関係に関する様々な議題について,率直な話し合いをしましたが,その中で,東シナ海についても私から述べさせていただきました。ただ,それ以上の詳細については控えます。

(記者)東シナ海ということは,尖閣諸島という理解で・・・。

(岸田外務大臣)東シナ海について,私から説明をいたしました。

(記者)では,話題を移りまして,日韓外相会談なんですけども,ユンビョンセ長官からは,今朝,総領事館前に慰安婦像が設置されていることは儀礼上適切では無いとのことだったんですけども,撤去についての時間的な作業とか,デットライトか,そういったものの提示というのはあったのでしょうか。

(岸田外務大臣)今韓国側として,可能な限りの努力をしているとして,今とっている措置について説明がありました。我が国としては,それを注視したいと思います。いずれにせよ,結果が大事だと思っています。

(記者)今後の目処というものは示されなかったのでしょうか。

(岸田外務大臣)説明はありました。しかし,結果が大事だと思います。今後とも韓国側の対応について注視していきたいと思っています。

(記者)日露外相会談なんですけども,2+2を再開するということなんですけども,これはウクライナ危機を受けて,第一回目が開催されたあと中断されているものになっていると思うのですけども,そうした制裁を横に置いて再開するということになるかと思うのですけども,こうした国際的な批判が出た場合にはどのように説明していくんでしょうか。

(岸田外務大臣)日露の間においては,厳しい現下の安全保障環境の中で,隣国であるロシアとの間において,政治的な対話を行っていく,意思疎通を図っていく,これは大変重要なことだと思っています。一方,このウクライナ問題に関する制裁については,我が国は引き続き参加をしておりますし,G7の結束を重視していきたいと思います。こうした我が国の取り組みについては,米国をはじめ,関係国にしっかりと説明をし,意思疎通を図ってきております。いずれにせよ,ロシアとの政治対話,日露関係においても重要でありますし,ロシアが北朝鮮やシリアといった国際的な課題に建設的に関わるためにも,重要であると考えています。こうした,我が国の考え方につきまして,米国をはじめ,関係国に説明しております。

(記者)ウクライナについて,制裁に参加しながらも,2+2を再開するというのは整合性がとれると・・・。

(岸田外務大臣)制裁に直接関わる部分,これは去年の12月の日露首脳会談において,両国で進めることになった様々な協力の部分においても,この制裁に,触れる,関わる,制裁を損なう,こういった部分は無いと考えています。

(記者)大臣,日韓についてなんですが,今回韓国側から慰安婦像の措置について説明があったとのことなんですけども,これは,長嶺駐韓大使の帰任について帰任させる判断について前向きと受け止められることになりますか。

(岸田外務大臣)長嶺大使の帰任については,今具体的には全く決まっておりません。これは従来から申し上げているように,諸般の状況を総合的に検討して,判断していくことになると思っております。韓国側から,執っている措置について説明があったわけでありますが,これについては,引き続き注視をしていきたいと思っています。帰任については引き続き何も決まっていません。

(記者)日韓の関係で追加で,結果が大事だということですけども,詳細はここでは言えないとは思うのですが,韓国側が言うですね,行程の現実性だとかですね,ほんとにそれが実行できるのかという点では,大臣は韓国側提案についてどのようにコメント求められたのですか。

(岸田外務大臣)話は,説明はしっかり聞きました。話は伺いました。引き続き,結果につながるかどうか,これを注視していきたいと思います。

(記者)結果というのは,撤去という理解で良いでしょうか。

(岸田外務大臣)これは,一昨年の日韓合意の内容が損なわれていると理解しています。それとの関係において,韓国側がこの合意の中身を誠実に履行する,そのために必要な措置,ということだと思います。

(記者)日EU・EPAについて,これからヨーロッパは選挙の季節に入ると思うのですけども,そんな中で今後同意ができるのかどうか,その危機感についてのなんだかの共有ですとか・・・。

(岸田外務大臣)双方の国内事情については,昨年12月の電話会談,そして今日の会談においても,それぞれ説明はありました。しかし,それはあるものの,この交渉によって得られるものは,双方にとって誠に大きいものがあるとの認識を共有して,是非引き続きこの交渉を継続し,モメンタムを維持していこう,このことをしっかり確認した,これが今日の会議において,大変重要な点ではないかと思います。是非,このモメンタムを維持し,引き続きこの問題において大枠合意という結論に至るよう努力を続けていきたいと思います。我が国にとって,日EU関係において,最重要課題であると,我々は思っています。

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