記者会見

岸田外務大臣会見記録

(平成29年1月13日(金曜日)10時05分 於:本省会見室)

キャロライン・ケネディ駐日米国大使の離任

【ジャパンタイムズ 三重記者】来週の水曜日に,アメリカのキャロライン・ケネディ大使が離任の見通しとなっておりますが,大臣はこの3年余り,キャロライン・ケネディさんと直接の交渉相手として相対していたわけですが,先日のニューヨーク・タイムズのEメールでですね,大臣は非常に手強い交渉相手であったというふうにキャロラインさんのことを語っていらっしゃいました。どういったところで手強かったのか,あるいは離任に対する所見をお願いします。

【岸田外務大臣】ケネディ大使との在任中のやり取りですが,基本的に大使の仕事ぶりに対して我々は高く評価しております。今,手強いという表現を使いましたが,それは実に中身のある,しっかりとしたやり取りが行われたという前向きな意味で,手強いという言葉を使わせていただきました。
 内容をしっかり把握し,そして本国との意思疎通等についても,大変精力的に,そしてスムーズに行っていただきましたし,具体的な成果としましても,オバマ大統領の広島訪問ですとか,沖縄の負担軽減ですとか,様々な課題においてしっかりとした成果を出していただいたと,我々も高く評価している次第であります。手強いという言葉遣いも含めて,ケネディ大使の在任されました3年余りの期間,取組,我々は評価し,前向きに捉えている次第です。

日EU・EPA

【共同通信 野崎記者】日EUのEPA交渉についてお伺いしたいと思います。来週17日からですかね,首席交渉官会合を予定されているかと思いますけれども,3月にはオランダの議会の選挙もあるということで,非常に時間もないとは思うんですけれども,交渉の見通しとですね,大臣自らマルムストローム委員とですね,閣僚間で交渉されるご予定があるかどうか,それについてお伺いしたいと思います。

【岸田外務大臣】日EU・EPAについては,昨年12月,EUのマルムストローム欧州委員(貿易担当委員)と,電話会談を行いました。その中で可能な限り早期に大枠合意を目指し,ですからその時点で年明け,今月ですが,今月速やかに交渉を開始するということで一致をしております。そして既に様々なレベル,電話会議等を活用しながら,EUとの間において継続して交渉を行っているという現状にあります。そしてその上で,ご指摘のように17日から首席交渉官会合を再開することになっています。是非,こうした取組を通じて議論を更に深めて論点を整理し,大枠合意に向けて努力を続けていきたいと思います。
 そしてご質問の閣僚級の会合については,そうした議論の結果,適切な時期を考えていくということになるわけですが,今のところ,この閣僚級の会合について具体的な日程はまだ決まっていないということです。いずれにしましても,昨年のマルムストローム委員との合意に基づいて,年明けから精力的な議論を続けていますし,引き続き,首席交渉官会合についても努力を重ねて状況を判断していきたい,このように思っています。

在韓国大使等の帰任

【時事通信 市川記者】在韓国大使の帰任についてなんですが,帰任の時期についていつ頃を考えていらっしゃるのか,また帰任に当たってですね,官房長官は総合的に判断するというふうにおっしゃっていますが,その総合的な判断の中に,釜山の少女像の撤去というのは入るのでしょうか。

【岸田外務大臣】まず長嶺韓国大使,そして森本在釜山総領事の一時帰国ですが,この一時帰国は我が国の抗議の意志を示すとともに,本国での打合せ等を行うために行っているものであります。そして帰任の時期については,今現在,未定であります。ご指摘のように官房長官が発言したとおり,諸般の事情を総合的に判断し,検討していきたいと考えています。 そして慰安婦の少女像の撤去等の関係についてご質問がありましたが,総合的に判断するということでありますので,仮定に基づいた話は控えたいと思います。いずれにしましても,様々な観点から総合的な判断をこれからしていきたいと考えています。

【時事通信 市川記者】そうしたらですね,少女像が撤去されなくても大使は帰任することはあるということでしょうか。

【岸田外務大臣】仮定の話は控えます。

【TBS 深井記者】大使の帰任にあたっては,韓国側からの何らかの目に見えるようなアクションみたいなものがないと,そういった帰任の判断には至らないというようなお考えでしょうか。

【岸田外務大臣】先ほどの質問と同じような趣旨で,仮定に基づいた質問にはお答えすることは,現時点では控えたいと思います。いずれにせよ,これから総理も含めて政府全体として,総合的に判断していきたいと考えます。

トランプ次期米国大統領

【NHK 及川記者】アメリカのトランプ次期大統領についてお伺いします。先に,記者会見しまして,貿易の関係でですね,日本という国の名前も挙げた発言がありました。また更にその前には,トヨタという実名を挙げてツイッターで発信したという経緯もあります。この一連の言動ですね,まだ就任前ではありますけれども,次期大統領の発言としてどのように受け止めていらっしゃいますでしょうか。

【岸田外務大臣】トランプ次期大統領の会見ですが,今,現時点においては,現オバマ政権の在任期間中ですので,次期大統領の発言について,具体的にコメントするのは控えなければならないと思います。
 その上で申し上げますが,日米の経済関係,活発な貿易,あるいは投資,これは日米の経済関係の活力の源泉であると考えます。是非,トランプ政権との間においても日米経済関係の更なる発展・深化につながる取組を進めていきたいと強く願っております。こうした思いで引き続き,次期大統領の発言等を注視していきたい,このように考えます。

日露関係

【日本テレビ 矢岡記者】日露関係で伺います。日露首脳会談からまもなく一か月になりますけども,共同経済活動の交渉開始で合意をされているわけですけれども,この交渉の現状とですね,今後の見通しについてお伺いをしたいと思います。

【岸田外務大臣】昨年,12月に行われました日露首脳会談において,北方領土における共同経済活動,あるいは日露間の経済協力等について合意がなされました。この会談の成果は,日露関係にとっても,そして平和条約交渉においても,大変な重要な一歩であったと認識をしています。そして年が明けた今,様々なレベルで,様々なルートでこの議論は続いているものだと承知をしています。世耕大臣も訪露するということであります。是非,昨年12月の日露首脳会談の成果,様々なルートで引続き,しっかりフォローしていかなければならないと思います。そうしたフォローによって,これから具体的な成果が見えてくることを期待したいと思っています。

【日本テレビ 矢岡記者】安倍総理大臣はですね,早期の訪露を,今年前半の訪露,4月とも言われていますけれど,ロシア側からそういった話も出ていますけれども,訪露の意味合いと言いますか,そこで目指すものというのはどういったものになるんでしょうか。

【岸田外務大臣】まず安倍総理は,本年,早い時期にロシアを訪問したいという希望をもっていると承知をしています。本年早い時期ということではありますが,具体的な訪問時期については,今現在まだ調整中であり,何ら決まっていないと考えています。安倍総理が訪露される,そして,すなわち,次の首脳会談が行われるということになったならば,当然のことながら,昨年12月の首脳会談のフォローアップという意味合いもあるわけでありますので,今後の日露間の様々なレベル,ルートにおける議論の成果を踏まえたものになると考えます。いずれにしましても,日露間の様々なやり取りの状況も時期等に逆に影響することも考えられるのではないか,いずれにせよ,状況を見ながら,適切な時期を判断するということになるのではないかと考えます。いずれにせよ,まだ調整中であり,安倍総理の具体的な訪露の時期は決まってはおりません。

日米地位協定

【NHK 小林記者】日米の関係に戻るんですけれども,昨年大筋で合意した日米地位協定についてなんですが,大臣,その際に,オバマ政権中に署名できるように発言をされました。アメリカの軍属の範囲を見直す内容についてなんですけども,その後の進捗状況と署名に向けた見通しをお願いします。

【岸田外務大臣】ご指摘の軍属に関する補足協定の合意についてですが,現在,調整を行っていますが,来週早々にも署名をできるように,今鋭意調整中であります。確定次第,ご連絡をしたいと思っています。

【NHK 小林記者】改めて今回署名に至る,事件を受けてなんですけれども,その意義をお願いします。

【岸田外務大臣】この意義は,これは去年4月ですか,沖縄で米軍属による重大な事件が発生しました。それを受けて,去年7月に日米共同発表を行い,こうした取組を行うことを明らかにしたわけです。今回,実質合意に至り,署名をするということができたならば,軍属の範囲をより明確化することによって,この軍属と言われる方々に対する米側の管理・対応というものも明らかになるわけでありますから,結果として沖縄における米軍属等の絡む事件の発生を抑制する,こういった結果につながることを期待したいと思っています。

日中韓サミット

【朝日新聞 武田記者】日本が今年も議長国として日中韓首脳会談の開催を目指すと思うんですが,現在の調整状況とですね,日中韓首脳会談の開催日程を決めるに当たってはですね,釜山の少女像問題というのが影響してくるのか,全く関係ないところで,次元で調整されるのか,その点をご教示ください。

【岸田外務大臣】まず日中韓サミットにつきましては,本来,昨年内に開催すべき調整してきたところですが,諸般の事情によってこれを再調整し,本年しかるべき時期に日本で開催することといたしました。そして釜山における慰安婦の少女像設置の問題との関係というご質問を頂きましたが,日中韓サミットは3か国の枠組みです。そして3か国の協力の議論の枠組みでありますので,在釜山日本総領事館前の慰安婦の少女像設置の問題と関連づける考えはありません。具体的な日程は決まっていませんが,是非,引き続き本年のしかるべき時期に,日本で開催するべく調整を続けていきたいと考えております。

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