記者会見

岸田外務大臣臨時会見記録

(平成29年1月9日(月曜日)19時50分 於:アイルランド・ダブリン)

冒頭発言

【岸田外務大臣】本日,外務大臣として26年ぶりにアイルランドを訪問させていただきました。そして,フラナガン外相と初の外相会談を行いました。その後,外交関係樹立60周年記念式典に出席をし,60周年のスタートをフラナガン外相と共に盛大に祝福することができました。
 外相会談では,英国のEU離脱への対応について,自由貿易体制や欧州における企業活動への悪影響を最小限に留めるべく,緊密に連携することで一致をいたしました。
 また,世界に保護主義への懸念が拡がる中,日EU・EPAの可能な限り早期の大枠合意を目指し,両国で自由貿易を主導していくことで一致したことは重要な成果であったと考えます。
 そして,国連改革,あるいは核軍縮をはじめとする,国際場裏における緊密な連携を確認することもできました。
 この後,夕食会が予定されていますが,夕食会におきましては,地域情勢についても率直な議論を行い,アジア太平洋地域の厳しい安全保障環境に対する認識あるいは懸念を共有し,緊密な連携を確認したいと考えています。

質疑応答

【記者】英国のEU離脱に関する部分なんですけど,連携を確認したということで影響を最小限にするために具体的にどういう協力の方策というのが考えられるのでしょうか。

【岸田外務大臣】昨年9月ですが,「日本からのメッセージ」というものをEUそして英国の双方に伝えさせていただきました。日系企業への影響を最小限に留めるためには,制度変更時の移行あるいは周知期間の設定を含め,予測可能性がしっかり確保されることが重要だと考えています。英・EU間の離脱交渉の中で,そうした日本の要望に配慮がなされるように,アイルランドとも緊密に連携しながら,日本としても,対話の機会等を通じて引き続き様々なレベルで働きかけを行っていかなければならないと思います。こうした意思疎通や働きかけを通じて今申し上げた移行・周知期間の設定などですね,具体的に予測可能性が高まり,結果として悪影響を最小限に抑えていく,こういったことにつなげていきたいと考えます。こういった点,今日のアイルランド外相との間でも確認できたことは,意義あることであったと思います。

【記者】今回の欧州訪問全体に関してなんですけれど,欧州でもアジアでも力による現状変更の試み,これに対して法の支配の重要性を確認するという場面があったと思うんですけれど,この認識の共有についての大臣の手応えは如何でしょうか。

【岸田外務大臣】手応えは十分感じています。今年は,ご案内の通り米国での政権交替及び欧州各国において大変大きな選挙が予定されています。変化の可能性を秘めた一年だと考えていますが,それに加えて,今国際社会において保護主義の台頭あるいは内向き傾向が強まっている懸念が生じています。法の支配に基づく国際秩序が挑戦にさらされている,こうした現状があると感じています。こうした不透明な時だからこそ,自由とか民主主義とか,法の支配あるいは人権といった基本的価値を共有する国々との連携は重要だと考えています。そういった思いから欧州の重要性に着目して,今年最初の訪問先を欧州を選択したということであります。今回,フランス,チェコ,アイルランドの三か国を訪問させていただきましたが,欧州諸国の中でもとりわけ,今申し上げました基本的価値に対するコミットメント,これを有しているのがこの三カ国だと思います。この三カ国と法の支配の徹底に向けた協力の強化を確認できた,このことは大変意義あることだったと思いますし,こういった面で大きな手応えを感じている次第です。

【記者】最後に,欧州とは離れる質問なのですが,慰安婦問題について日本時間の9日に,大使と釜山総領事が帰国しました。大臣の方には既に報告が入っているのか,あるいは,大臣は11日に帰国される予定ですけども,実際いつ頃お会いになる予定なのか,それから,今回協議のための一時帰国ですけども,どのくらいの期間日本に大使達はいらっしゃる予定なのか,そのあたりお願いいたします。

【岸田外務大臣】ご指摘のとおり,駐韓国大使,そして,在釜山総領事,9日に一時帰国をいたしました。様々な動き,情報については,逐次,私は受けていますが,是非私自身,帰国した後,直接二人からも報告を受けたいと思っています。そして,大使及び総領事の帰任日については,これはまだ未定です。しっかりと報告を受け,そして,諸般の状況,これを総合的に検討した上で判断していくことであると思っています。まずは,私自身帰国してから,しっかりと報告を受けたいと考えています。

【記者】大臣,諸般の事情を勘案してというのが,帰任の一つの条件となると思うのですが,これは,現状より何らかの具体的改善が見られるまでは帰任はないということですか。

【岸田外務大臣】状況をまず把握し,それを総合的に判断するということです。具体的に一つ一つの動きがあるかもしれませんけども,あくまでも総合的に判断する事柄であると思っています。

【記者】その関連で,韓国の国内では,次期大統領候補とされる人達の中でも,日韓合意の破棄だとか,再交渉を求める声が高まっています。長嶺大使はいずれまた韓国に帰任されるとは思うのですが,どのように韓国政府や,また,大統領候補とされる人達に働きかけをしていくように期待されますか。

【岸田外務大臣】これは,一昨年の日韓合意については,発表された後,世界の多くの国々が,高く評価しています。こうした,世界が評価している合意について,しっかり履行していくというのは,日本,韓国両国にとりまして大きな責任ある事柄であると思っています。日本は,合意の内容を履行いたしました。韓国も是非しっかりと履行してもらいたいと思います。ぜひ,世界が注目しています。韓国政府にもこの合意の内容,履行をしっかりと働きかけ続けていきたいと思います。

【記者】(韓国の)政権が交代してもということですか。

【岸田外務大臣】これは,日本と韓国両国の間での合意であります。これを,世界に向けて合意したことを明らかにした両国は,その内容を履行する責任をもっていると思っています。

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