記者会見
岸田外務大臣会見記録
(平成28年11月11日(金曜日)9時20分 於:官邸エントランスホール)
冒頭発言
(1)トランプ陣営との協議
11月17日にニューヨークで行う方向で調整をすることになった総理とトランプ次期大統領との会談の準備を含め,米国新政権の発足に向けて,これまで構築したトランプ陣営との関係を更に強化するため,秋葉外務審議官を米国に派遣し,来週,新政権関係者と協議させることといたしました。
今回の大統領選挙は接戦が予想されたことから,外務省としては,早い時期から両陣営の関係者との関係を構築してきたところです。
その結果,ワシントンの我が方大使館が,トランプ候補の側近や有力アドバイザーとも緊密な関係を既に築いており,昨日,総理とトランプ次期大統領との電話会談が,世界各国首脳との電話会談の中で最も早いものの一つとして実施されたことは,良かったと受け止めています。
引き続き,トランプ陣営との間で緊密な意思疎通を図っていきたいと考えます。
(2)貿易経済日露政府間委員会の実施
11月15日,火曜日,ロシアのシュヴァロフ第一副首相との間で,貿易経済に関する日露政府間委員会第12回会合を東京において開催する予定にしております。
本年の5月のソチ,そして9月のウラジオストクにおける日露首脳会談を経て,日露関係は更なる発展に向けた流れにあり,経済分野では8項目の「協力プラン」の具体化を始め,様々な分野で協力が進展しています。
経済分野に関し,日露の政治レベルで包括的に議論する場がこの政府間委員会であり,今回の会合でも充実した議論を行いたいと思っています。
なお,平和条約締結問題に関しては,6月及び8月に行われた交渉,そして9月の日露首脳会談の結果を踏まえ,プーチン大統領訪日に向けて,日露間で精力的なやり取りを行っているところであります。
TPP
【記者】TPPについてお伺いしたいと思います。昨日,衆議院の方通過しまして,今日から参議院で審議入りされます。一方アメリカの方ではですね,強く反対するトランプ氏が次期大統領に決まり,議会でも上院・下院共に共和党が過半数を占める中で,発効自体が大変厳しい,見通せない状況になってきています。こういった状況の中での審議入りについてのお考えをお聞かせください。
【岸田外務大臣】まずTPPですが,21世紀型の経済連携のルールを作る,そうしたものであり,そして経済的にも戦略的にも重要な意味がある協定であると認識をしています。そして今現在,参加12か国の首脳が一致して早期発効に向けて努力をしているところであり,米国においてもオバマ現大統領が締結に向けて努力を続けています。我が国としまして,他の11か国とともに発効に向けて努力をしなければならない,これは当然のことであると思っています。
そして更にこのTPPは,今後議論が続けられる他の経済連携,日EU・EPA,あるいはRCEP,そして更にはFTAAPというような議論もあるわけですが,こうした経済連携のモデルになるものであると考えます。今後のこうしたメガFTAの議論のモデルになるのが,TPPであると考えておりますので,将来の経済連携の議論を日本がリードしていくためにも,日本がTPPを重視するという姿勢は今後も変わらないと考えます。
トランプ陣営との協議
【記者】次期アメリカの大統領に決まりましたトランプ氏についてですけれども,秋葉審議官が行って事務協議が始まると思いますが,これまでトランプ氏はですね,在日米軍の駐留経費の負担増を日本に強く求めるなど,やはり日米同盟の根本的な見直しを迫られる可能性もあるかと思います。昨日,安倍総理との電話会談は行われましたけれども,次期大統領に決まってから2日経ちますけれども,この状況の中で,改めてトランプ氏が大統領になって日本の外交姿勢ですとか,今後どのように対応していくのかという姿勢をお伺いします。
【岸田外務大臣】来年発足する次期政権の具体的な政策,安全保障を始めとする様々な具体的な政策について,予断を持って申し上げるのは,まだ早いと思います。ただ,幸い先ほど申し上げました,昨日早々に電話会談が成立しました。そして17日にも早々に直接の会談も予定されています。是非,こうしたチャンスを捉えて,我が国の考え方,これをしっかりと先方に伝える,こうした取組を行うべきだと思います。こうしたチャンスを生かして我が国の考え方を先方に伝える,こういった姿勢は大事であると考えます。
日露関係
【記者】米大統領選の話がありましたけれども,トランプ氏はプーチン氏に対してとても好意的な発言をしています。今後は日露でですね,北方領土交渉など開かれると思いますけれども,それが影響する可能性をどのようにお考えでしょうか。
【岸田外務大臣】次期政権の外交政策について予断を持って申し上げるのは,今の段階では控えます。ただ,日露関係については戦後71年経っても平和条約が結ばれていない,こういった状況は異常な状況であるということで両国の首脳が一致をし,そしてこの問題について,今,取組を行っています。そしてこれまでもこうした日露間の政治対話については,米国側,大統領,副大統領を始め,様々なレベルで我が国の考え方,そして取組について説明を続けてきました。今後新政権がスタートしたとしても,我が国のこうした取組については,引き続き丁寧に説明をしていかなければならないと思います。是非,しっかりとした意思疎通を図るべく努力を続けていきたい,このように思います。
トランプ陣営との協議
【記者】秋葉審議官を派遣するとのことなんですけど,具体的な派遣する時期と相手方は…。
【岸田外務大臣】今,詳細は詰めていますが,来週,向こうで活動するということになると思っています。詳細については,今,調整中です。
日印首脳会談
【記者】日印関係についてお伺いします。今日モディ首相との首脳会談予定されていますが,懸案であった原子力協定について署名するのではないかという一部報道もあります。現在の検討状況,またあるいは署名についての閣議決定の有無について伺いたいのが一つと,あと原子力協定については,地元広島からもNPT非加盟国に対して協定を結ぶことに対して,批判あるいは懸念等もありますけれども,その点,大臣としての懸念は払拭されたのでしょうか。
【岸田外務大臣】本日,日印首脳会談を行うことを予定しています。首脳会談ですので,私の立場から内容について予断を持って申し上げることは控えます。ご指摘の点についても首脳間で話し合われることであると思っています。原子力協定についてもまだ何も明らかになっていない段階で,私(大臣)の方から何か評価するのは控えます。
【記者】今日の日印の原子力協定については控えるということですけれども,日本政府として原子力協定,ほかの国とも進めてて,更に先週はニューヨークで核兵器禁止条約に関する決議にも反対しています。唯一の戦争被爆国で,福島の過酷な事故も経験しているのに,こういったことが国民に理解されるというふうにお考えですか。
【岸田外務大臣】我が国の核軍縮・不拡散に対する考え方,これは今日までも丁寧に説明をしていますし,一貫をしていると考えています。そして原子力協定を結ぶということについて,原子力協定は何なのかということを是非,しっかりとご理解いただきたいと思います。これは原子力の平和利用についてのルールを取り決めるものであります。こうした原子力協定のそもそもの意味合いについても理解を得ながら,我が国の政策は進めていかなければならないと思っています。引き続き丁寧な説明を続けていきたい,このように思っています。
秋の年次公開検証「秋のレビュー」:旅券関連業務
【記者】パスポートに関する質問なんですけれども,内閣官房が主催する行政事業レベルで,パスポート作成の手数料が高いという問題が取り上げられることになっていますが,旅券の発行機関の外務省の長として受け止めをお願いします。
【岸田外務大臣】「秋の年次公開検証『秋のレビュー』」において,明日12日,旅券関連業務について議論されると承知をしています。旅券関連業務のあり方についてもしっかりご議論いただければというふうに思っています。旅券の手数料についてのご指摘かと思いますが,公共サービスの利用の有無に係る公平性などの観点から妥当である額はどうであるのかとか,こういったことについては国会の審議も受けて定められていると承知をしていますので,こうした議論を見ながら,そして絶えず見直し,検討をしていく姿勢というのは大事なことではないかと思います。是非,議論の行方を見守りたいと思います。
トランプ陣営との協議
【記者】先ほどの日米経済研究会の提言の時に,新しい日米の経済関係の構築のチャンスというふうに先ほどおっしゃいましたが,それの具体的なイメージというものはあるのでしょうか。
【岸田外務大臣】これは先ほどの安全保障の話にも通ずるところもありますが,新政権の具体的な政策については,今の段階では予断を持って確たるものを申し上げることは難しいわけですが,いずれにせよ我が国の考え方をしっかり伝えていくということが重要であると思います。それは安全保障においても経済政策においても同じではないか,そういった思いから,先ほど発言したつもりであります。
【記者】それはTPPも含めてですか。
【岸田外務大臣】これはあらゆる課題について,我が国の考え方をしっかり伝えていくことが大事だということを先ほどの発言の中に込めたつもりであります。いずれにせよ意思疎通を,まず新政権との間において信頼関係を構築していく,そしてしっかり日本の考え方を伝えていく,これは重要だと思います。今の段階では,まず我が国の考え方をしっかり伝えていくのが重要だ,このように考えます。