記者会見

岸田外務大臣会見記録

(平成28年10月28日(金曜日)8時20分 於:官邸エントランスホール)

冒頭発言

(1)三笠宮親王殿下薨去

 昨日の三笠宮崇仁(たかひと)親王殿下の御訃報に接し,皇室を始め御近親の方々の深いお悲しみを拝察申し上げます。ここに,慎んで心から哀悼の意を表し申し上げます。

(2)国連総会第一委員会関連

 日本時間の今朝,国連総会第一委員会で行われました決議の採択について申し上げさせていただきます。
 「核兵器のない世界」を実現するためには,核兵器の非人道性に対する正確な認識と,厳しい安全保障環境に対する冷静な認識に基づき,核兵器国と非核兵器国の協力による具体的・実践的措置を積み重ねていくことが不可欠です。これは私(大臣)からも繰り返し申し上げてきた我が国の基本的立場であります。
 今般の国連総会第一委員会においても,このような立場を踏まえ,国際社会に対し,我が国の核兵器廃絶決議への支持を強く訴えてきて参りました。その結果,我が国の決議には,米国を含む,今集計中ですが,約110か国の国が共同提案国となりました。そして全体では167か国の圧倒的多数の支持を得て採択されました。この数字は共に昨年を上回っております。このことが我が国の決議こそ,NPTを柱とする国際的な軍縮・不拡散体制の下で,核兵器国と非核兵器国双方が共に目指すべき「核兵器のない世界」への現実的な道筋を示すものであることを表していると考えます。
 一方,核兵器禁止条約の交渉開始を求める決議,この決議案についても投票が行われたわけですが,我が国としましては慎重な検討を重ねた結果,反対票を投じました。反対の理由は,この決議案が,(1)具体的・実践的措置を積み重ね,「核兵器のない世界」を目指すという我が国の基本的立場に合致せず,(2)北朝鮮の核・ミサイル開発への深刻化などに直面している中,核兵器国と非核兵器国の間の対立を一層助長し,その亀裂を深めるものであるからであります。こうした評価は,この決議に対する各国の投票行動,例えば北朝鮮はこの決議に賛成をしています。そして核兵器国は全てこの決議に対しては賛成をしておりません。こうした投票行動にも,こうした評価は表れているのではないか,このように考えます。
 他方,その上で,この核兵器禁止条約の交渉開始を始める決議については,結果としまして賛成多数で採択されました。明年このような条約交渉が行われること,これは確実となりました。交渉への参加・不参加を含め,今後の対応ぶりについては,交渉のあり方の詳細に関する今後の議論も踏まえ,また,これまで連携してきた豪,独など中道諸国の動向も見極めつつ,政府全体で検討していくことになりますが,私(大臣)としては,現段階では,交渉に積極的に参加をし,唯一の被爆国として,そして核兵器国,非核兵器国の協力を重視する立場から,主張すべきことはしっかりと主張していきたいと考えております。

国連総会第一委員会関連

【記者】賛成多数で採択されました核兵器を法的に禁止する条約締結を目指す決議案の方,これを反対したということですけれども,禁止する方向性について日本が反対するということについては,被爆者からもですね,反発も予想されると思います。こういう点については,政府としてはどういうふうに理解を得ていくお考えでしょうか。

【岸田外務大臣】我が国の行動・立場は一貫しております。核兵器国と非核兵器国の協力を重視する立場に立ち,だからこそ,まずは我が国の決議に核兵器国も非核兵器国も,より多くの国に賛成してもらう,こういった努力を続けてきました。結果として昨年を上回る多くの国々から共同提案国にもなってもらいましたし,米国を含む多くの国に共同提案国になってもらいましたし,そして多くの国に賛成もしてもらいました。そして核兵器国と非核兵器国の協力を重視する立場だからこそ,核兵器禁止条約の交渉開始を内容とする決議には反対をしたということであります。そしてこの交渉が始まるのであるならば,核兵器国と非核兵器国の協力を重視する立場から主張すべきことは主張すべきであると私(大臣)は考えているというふうに申し上げました。このようにどの観点からも我が国の立場は一貫しているということは,是非しっかりと訴えていきたい,説明していきたい,このように思っています。

日韓秘密情報保護協定

【記者】GSOMIAに関して,これについての締結に向けた政府のスケジュール感も含めた方針と,それから韓国・朴槿惠大統領の求心力の低下が指摘されていますけれども,そういった点どう考慮して今後臨んでいくお考えでしょうか。

【岸田外務大臣】日韓GSOMIAについては,韓国政府が我が国との交渉を再開する旨,発表したと承知をしております。この問題につきましては,我が国は従来から日韓協力,安全保障分野における日韓協力は重要であるということを訴え続けてきました。北朝鮮の核・ミサイル問題への対応のためにも,日韓協力は重要であり,政府としては本件協定の早期締結も含め,安全保障分野での日韓協力,しっかり進めていきたいと考えています。
 韓国の国内の事情について,何か申し上げる立場にはありませんが,是非,こうした交渉の再開,前向きに捉え,是非,協力を具体的な形で進めていきたい,このように思っています。

国連総会第一委員会関連

【記者】禁止条約とですね,廃絶決議,両方日米の足並みがそろった形になったと思うのですが,日本とアメリカの間で連携というのはあったのでしょうか。

【岸田外務大臣】日本とアメリカにおいて具体的なやり取りは,様々なやり取りは存在します。「核兵器のない世界」を目指すという共通の大きな目的は共有しているわけですので,意思疎通はしっかり図っておりました。

【記者】核廃絶案を賛成してもらう見返りに,日本が禁止条約に反対したという見方も出てたと思うのですが,それについては…。

【岸田外務大臣】そうした意思疎通は図ってきましたが,見返りとかですね,そういったご指摘は当たらないと考えます。

【記者】昨年,作業部会を作る際の決議に対して棄権という対応をされたと思うんですけども,今回,棄権ではなくて反対という明確な意思を表示したと,その辺りについてはどういう,先ほど理由を述べられていましたけれども,改めてその点についてお伺いしたいのが一つと,実際上ですと,大臣がご指摘になったことなんですけれども,今回の対応をめぐっては,漸進的アプローチを取っている日本などの対応に対して不満というのも,非核兵器国の中でもたまっていると思うんですけれども,その辺りについては…。

【岸田外務大臣】要するに,基本的には非核兵器国のみならず核兵器国も協力しなければ具体的な結果を作り上げることはできないという観点から,我が国は唯一の戦争被爆国として,「核兵器のない世界」を目指すために,この両者の協力,これをしっかり重視してきたということです。この観点からどうあるべきなのか,我が国の決議に対する賛成を得るための働きかけ,そして核兵器禁止条約の交渉開始に関する決議に対する対応,そして今後の交渉に対する対応,これも今申し上げた考え方で一貫しているということは,しっかり説明していきたいと思います。
 そしてその基本的な考え方に基づいて具体的な内容については,先ほど申し上げました,いろいろな点で我が国としては賛成しかねるということで,反対をさせていただきました。こういった考え方は先ほど申し上げましたけれど,核兵器禁止条約の交渉開始を内容とする決議に北朝鮮が賛成をするとか,それからアメリカを始め核兵器国はどこも賛成をしないとか,こういった各国の投票行動の中にも,こうした評価が表れているのではないか,このように思っています。こういったこともしっかりと示し,説明させていただきながら関係者の我が国の対応についてご理解をいただくべく努力をしていきたい,このように思っています。

【記者】今まで日本が掲げているCTBTなどの段階的核軍縮というのが,膠着してる状態があって不満があると言われていますけれども,では日本として次,進展がありそうなステップとしてどういうことを検討されているのでしょうか。

【岸田外務大臣】CTBT,それからFMCTの早期交渉開始ですとか,あるいはNPTの運用検討会議の去年のありようを見ましても,この体制の強化,まだまだやらなければならない,やはりこうした核兵器国,非核兵器国,全体の中で気運を高めていかなければならないと思います。どこからというのではなくして,NPT,FMCTそしてCTBT,こうした様々な枠組みを通じて努力をしていかなければなりません。我が国はNPDIという非核兵器国12か国の枠組みも重視しています。この枠組みを通じてしっかり具体的な提案をすることも大事です。こうした様々な枠組みがあり,今日までの努力があります。いずれにしましても,一部の国が主張したとしても,核兵器国,非核兵器国の協力なくして結果にはつながらないという厳しい現実,私(大臣)も3年10か月の間,本当に目の当たりにしてきました。だからこそ協力を重視する現実的,実践的な取組をしていかなければならない,そういった強い思いからそれぞれの取組について,我が国としてどうあるべきなのか,ぎりぎりの決断をした上で,今申し上げましたような様々な取組を行っているということ,これを是非,多くの関係者の皆様方にもご理解いただきながら,国際社会の議論をリードしていきたいと思います。現実は様々な事情があり,大変複雑な事情も存在いたしますが,何よりも我が国の立場,基本的な考え方をしっかり掲げることによって,我が国の立場を説明していくこと,これは大変重要なことではないかと思います。そういったことから,今回の国連総会第一委員会の決議の採択においても対応したんだということを,今日は説明をさせていただいた次第であります。

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