記者会見

川村外務報道官会見記録

(平成28年10月12日(水曜日)16時37分 於:本省会見室)

東シナ海資源開発問題

【毎日新聞 小田中記者】今日なんですけれども,外務省のホームページで,東シナ海での中国にあるガス田開発の現状についての写真が更新されました。概略で,その更新されたところで,どういう点が変わったのかという点をお伺いしたいのと,変更された点について政府対応等,どのようにされているのかという点をお伺いできますでしょうか。フレアが出ていると思うんですけど,何基新しく出ていて,これまで確認されたのも含めて何基になったのかという点もあればお伺いできますでしょうか。

【川村外務報道官】中国が東シナ海で設置した油ガス田プラットフォームの内,10月上旬,新たに2か所,第11基と第12基の2か所で,フレア,すなわち炎が発生しているということを確認しました。第11基は日中の地理的中間線から約60キロ離れた所にあり,第12基はこの中間線から約67キロ離れた所にあります。フレアが確認されている当該ガス田の構造物は,今回の2基を合わせて計12か所になりました。
 それ以前では「平湖」油ガス田,樫ガス田,「八角亭」油ガス田,及び2013年6月以降に設置された第1基,第2基,第4基,第5基,第6基,第7基,第8基,そして今回の第11基と第12基でフレアが確認されています。
 日本の対応ぶりについては,直ちに外交ルートを通じて,中国側に抗議を行いました。すなわちフレアを確認した後,速やかに局長レベルで抗議を中国側に対して行いました。我が国としては,累次の申し入れにも関わらず,中国側が東シナ海における日中間の海洋の境界が未だ確定していない状況において,この海域において,一方的に開発を進めているということは極めて遺憾であります。この考え方に基づいて,局長レベルで中国側に対して抗議を行いました。
 我が国はこれまでも中国側による関連の動向を把握するたびに,その都度,中国側に対して一方的な開発行為を中止するようにと,強く求めてきています。今後とも我が国として強く中国側に求めていく所存です。
 昨年11月の安倍首相と李克強首相との間の日中首脳会談で「2008年合意」に基づく協議再開を目指すということで一致しています。「2008年合意」に基づく,国際約束締結に係る日中間の協議を早期に再開して,この合意を早期に実施できるよう,引き続き中国側に対して強く求めていきたいと思います。

【日経新聞 酒井記者】首脳会談受けて,広島で海洋ハイレベル協議をやって,もう一回開くというような段取りになっていたと思うんですけれども,その日程の調整状況と,あとは今回の事案が協議再開と年内に予定される日中首脳会談に与える影響をお願いします。あとですね,今回,中国側の意図というのは,どのように外務省として見ているのか,つまり交渉再開をすると言っている段階で,こういう開発を進めるということに対して,何らかの中国の意図なり分析があればお願いします。

【川村外務報道官】ご指摘のとおり,9月14日及び15日に広島において日中高級事務レベル海洋協議を開催して,「2008年合意」についても率直な意見交換を実施したところであります。引き続き,中国側に対して「2008年合意」に基づく,国際約束締結に係る協議,これを早期に再開し,この「合意」を早期に実施するよう,引続き強く求めていくという立場には変わりはなく継続して求めていきたいと思います。次回の具体的な協議の開催の日程についてはまだ決まってないので,引き続き中国側と調整をしていきたいと思います。
 日中韓首脳会議への本件の影響についてのご質問ですが,日中韓首脳会議は,今回は,日本において開催をするということで,現在,調整を進めています。他方でこのガス田開発の件につきましては,この段階で問題が確認されたので,中国側に対して強く抗議をしたところであり,引き続き,前述の日本側の立場を主張し,日中間の「2008年の合意」に基づく,国際約束締結に向けての協議を早期に再開できるように強く求めていきたいと思います。
 次に,中国側の「意図」についてのご質問ですが,フレアが出ているということの解釈について言えば,これは地中から採取した余剰のガスの燃焼を行っていることになりますので,生産の可能性が高いと考えられます。これは客観的な分析ですが,中国側が具体的にどのような意図を持っているかについて申し上げることは差し控えたいと思います。今回の第11基及び第12基におけるフレアの確認と,それに基づく中国側に対する抗議の際に,当然ながら中国側からも独自の反応があったわけですが,どのような反応をしたかということについては,差し控えさせていただきたいと思います。

日露関係

【共同通信 大熊記者】日本とロシアの戦略対話が13日に始まると思うんですが,これで北方領土交渉がいよいよ本格化すると思うんですけども,どのような成果を期待するかというのを改めてお伺いしたいというのと,あと,シリア情勢をめぐって米露の対立が今深まっている中で,こうしたことが日露の交渉とか,関係構築にどういう影響を与えるのかというのをお伺いします。

【川村外務報道官】13日から予定されている日露戦略対話は,モスクワにおいて杉山次官とチトフ露外務省第一次官との間で行われることになっています。議題としては,日露双方の戦略的な関心を有する議題,喫緊の国際問題及び二国間関係です。もちろんシリア情勢,北朝鮮情勢も議題に挙がってくると思います。また二国間関係の問題ということで,日露平和条約締結問題,そして日露間の様々な経済の協力プラン,8項目の協力プランにも当然,言及はあるものと思っています。
 ただ,本会合は戦略的な対話を大所高所から行うという趣旨のものであり,平和条約締結交渉そのものではないので,突っ込んだやり取りをこの場で行うということまでは期待をしているわけではありません。また,8項目の協力プランについても同様のことが言えると思います。詳しく,突っ込んで議論するということは想定をしていません。
 日露の平和条約締結問題に関する我が国の基本的立場は,四島の帰属問題を解決して平和条約を締結するという基本方針の下で交渉を進めていくという立場で,変更はありません。

パリ協定

【朝日新聞 下司記者】パリ協定のことでお伺いします。日本の締結を待たずにパリ協定の発効が決まりました。マラケシュでのパリ協定の締約国会合では,日本は恐らく意思決定には関われない見通しになっています。外務省の見通し,判断の甘さが指摘されていますけれども,それに対する認識と,あと今後の見通しについて教えてください。

【川村外務報道官】まず現在の状況としては,11月4日にパリ協定が発効すれば,パリ協定を締結済みにしている国がメンバーとなるパリ協定締約国会合が立ち上がることになります。
 見通しや判断の甘さというご指摘がありましたが,パリ協定の実施指針策定に係る交渉が,締約国会合の前に既に立ち上がっており,これまでその交渉が行われてきたという経緯があります。この交渉はまさにパリ協定の実施の指針などを策定するための交渉ですが,ここに我が国は参加をしてきました。さらにこの交渉は国連気候変動枠組条約の全締約国の参加を得て行われてきているという実態があります。パリ協定自体が発効した場合においても,引き続き実施指針の策定に係る交渉は,その場で行われていくということが検討されています。
 とは申しても,次回のCOP22における様々な議論で,日本の意向をより良く反映させるために,我が国がパリ協定の締結手続を一日も早く終えて,説得力を持って交渉に参加することが重要であることは間違いありません。まさに岸田大臣も言われたとおり,政府としては一日も早くパリ協定に関する国会のご承認をいただけるように,全力を尽くして参りたいと思います。

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