記者会見
岸田外務大臣臨時会見記録
(平成28年9月20日(火曜日)22時10分 於:米国ニューヨーク)
冒頭発言
【岸田外務大臣】先ほど,G7外相会合を開催しました。一方的行動による既存の国際秩序への挑戦,世界情勢の不透明さが継続する中,アジア情勢,そしてテロ・暴力的過激主義,この二つのテーマについて,普遍的価値を共有するG7ならではの率直な議論を行い,G7が継続的に連携を深めていくことの重要性を再確認しました。北朝鮮については,先日の核実験や度重なるミサイル発射が,従来とは異なるレベルの脅威をもたらしていることを踏まえ,G7で連携して,新たな制裁措置を含む国連安保理決議の採択等を通じ,圧力を強化していくことで一致をいたしました。さらに,拉致問題をはじめとする人権・人道問題についても,私からその解決に向けて理解と協力を呼びかけ,各国の賛同を得ました。また,海洋安全保障についても議論を行いました。エスカレートする東シナ海および南シナ海の状況への懸念を共有し,法の支配を重視するG7の立場を再確認するとともに,法の支配の貫徹に向け,引き続きG7として連携して声を上げていくことで一致をしました。テロ・暴力的過激主義については,G7として,伊勢志摩サミットで発出した行動計画を踏まえ着実に取り組みを進めていくことを確認いたしました。この関連で,シリア情勢についても議論を行い,今月9日のシリアにおける敵対的行為の停止に関する米露合意を国際社会が支え,及び現場の当事者にこれをのませる努力が緊急に必要であるということについて一致をいたしました。本日の議論を踏まえ,最近のアジア情勢,テロ・暴力的過激主義に関する二つのG7外相声明を発出することができました。広島,伊勢志摩に引き続き,G7として力強いメッセージを国際社会に発信することができ,議長として大変喜ばしく思っています。そして,G7外相会合に先立って,本年7月に就任したジョンソン英外相と初めての外相会談を実施し,日英関係を一層強化するため緊密に協力していくことを確認しました。特に,日英間の安全保障・防衛協力を一層推進していくことで合意し,次回の日英「2+2」を来年早い時期に開催すべく調整を進めることで一致をいたしました。英国のEU離脱については,私から,日系企業の英国での事業継続のためにも,予測可能性を高める等,伝達済みの日系企業の要望に配慮を求めたのに対し,ジョンソン大臣からは,日本の出したBrexitに関するメッセージを高く評価した上で,予測可能性を高めるべきとの私の考え方に完全に同意する旨の発言がありました。
質疑応答
【記者】今回大臣のイニシアチブで外相会合を開いて成果文書まで出された,その狙いと,安倍総理大臣は制裁措置,断固たる措置が必要だと言っていますけれども,日本政府としてどういった具体的な制裁が必要だとお考えなのでしょうか。
【岸田外務大臣】まず今回の会議は,アジア情勢,テロ・暴力的過激主義この二つのテーマについて,最近様々な動きがあります,大きな動きもたくさんありました。こうした動きを受けて,是非G7,基本的な価値を共有するG7の枠組みの中で議論をし,そして明確なメッセージを出すことの重要性に鑑みて,日本が主導して開催を呼びかけたということです。実際,大変率直な,活発なやりとりが行われたと感じていますし,今回は,共同声明,外相声明という形で,文書という形で明確なメッセージをこの二つのテーマについて,国際社会に発することができた,このことは大変有意義であった,このように思っています。
【記者】具体的な制裁の内容…
【岸田外務大臣】制裁の内容,これはですね,まずは今,国連安保理の枠組みの中で,新たな制裁措置を含む決議の採択に向けて,議論が行われています。それに加えて我が国は,独自の措置についても検討を行っているわけです。独自の措置については,今現在,カネ・ヒト・モノ,こういったものを制限する強い内容の措置をすでに我が国は実施をしています。安保理での議論,それから国際社会の動向等もしっかり見極めた上で,我が国としては,内容についても,内容を強化するなど,様々なことを検討していかなければならないと思います。加えてタイミングも重要ではないかこのように考えます。いずれにしましても,国際社会の動向を見ながら我が国としての対応,しっかり検討していきたいと考えています。
【記者】北朝鮮に強い影響力を持つ中国,この協力を得る手応えは,今大臣どのようにお考えでしょうか。
【岸田外務大臣】中国,さらにはロシア,こういった国の協力,これも大変重要であると思います。それを考えますときに,今回G7の外相会談を行って,共同声明をまとめることができました。この共同声明の中にありますように,G7として一致した内容をしっかり確認した上で,中国,そしてロシアにも働きかけを続けていきたいと思います。この共同声明を活用する形で中国・ロシアに働きかけていく,こうした取り組みも重要なのではないか,このように思います。
【記者】今回のG7外相会合でですね,南シナ海に加えて,東シナ海情勢でも懸念を共有されたということなんですけど,これについて大臣からG7各国にどのような説明をして,懸念を共有した意義について改めてお願いします。
【岸田外務大臣】東シナ海についても議論を行いました。そして私の方からエスカレートしている最近の東シナ海の状況について説明を行いました。その上でG7として,地域の緊張を高める,あらゆる一方的な行動に対して改めて反対をするということ,そして最近発生した事案への懸念を表明すること,こういったことで一致をしました。これらが共同声明の中にしっかりと盛り込まれたということです。こうした東シナ海の情勢についても意思疎通を図ることができた。そしてなおかつ,G7の外相として,対外的にこの共同声明,文書を発出することができた,明確なメッセージを国際社会に発するという意味で,有意義である,このように感じます。
【記者】南シナ海に関して,共同声明の方であるんですけれども,仲裁裁判所の判断について,紛争の平和的解決に向けた更なる取り組みのための有用な基盤になるものだという文面がありますが,これはG7として判断に対しての評価を下した,評価しているということでよろしいのでしょうか。
【岸田外務大臣】共同声明に盛り込まれたとおり,比中仲裁判断,これは,南シナ海における紛争の平和的解決に向けた更なる取り組みのための有益な基盤であるという考え方,これが明確に発信をされたわけです。比中仲裁判断が発出された後,初めてG7の外相会談が行われた,これが今回の外相会談です。その外相会談において,今言ったような形でG7の一致した見解を示すことができた,このことは大変意義が大きいと思っています。こうした共同声明等もしっかり活用しながら,国際社会に対して比中仲裁裁判,あるいは国際法,法の支配の重要性を訴えていく取り組みは続けていかなければならないのではないか,このように思います。
【記者】先ほどロシアの協力も得ていきたいとおっしゃいましたが,ニューヨーク滞在中の日露外相会談の調整状況と,会談が実現した場合,北方領土交渉を含めてどのような会談にされたいか,お願いします。
【岸田外務大臣】日露の外相会談については,調整ができました。明日開催したいと思っています。4月に日露の外相会談を行いました。5月にソチで日露首脳会談を行いました。そして9月にウラジオストクで日露首脳会談を行いました。こうした議論の積み重ねをしっかり踏まえた上で,首脳間で合意をしています,12月のプーチン大統領の訪日に向けて,平和条約締結交渉を含めてしっかりと準備をしていく,こういったことを確認する機会に今回の外相会談,したいと思っています。また併せて北朝鮮問題についても,北朝鮮の核実験の実施を受けた対応について,改めて連携を確認したいとも思っています。とりあえずその二つは,しっかりと確認する会議にしたいと考えています。
【記者】制裁のことに戻らせていただくのですが,G7の中にはかつては新しい内容の新しい決議というよりは,今までの3月の決議の完全履行の方に重きを置いた方がいいというような意見を持っていた国もあると思うんですけれども,新しい内容の新しい決議というところでは7カ国全部一致したんですか。
【岸田外務大臣】一致したから文書に盛り込んだわけです。明らかに文書に盛り込まれています,明記されていますから,これは一致いたしました。