記者会見
岸田外務大臣会見記録
(平成28年9月16日(金曜日)10時16分 於:本省会見室)
冒頭発言
(1)岸田大臣の国連総会出席
【岸田外務大臣】18日から23日までニューヨークを訪問し,国連総会に出席をいたします。G7外相会合を議長として開催するほか,日米韓外相会合,G4外相会合,包括的核実験禁止条約(CTBT)フレンズ会合,日・カリコム外相会合等に出席をし,先般の核実験への対応を含む北朝鮮の核・ミサイル問題を始め,国際社会が直面するグローバルな課題に対する日本の考え方を積極的に発信したいと考えます。
また,ニューヨークでは韓国,豪州,パキスタン及びインドネシア等の外相と二国間会談を予定しております。それ以外の外相とも調整中であります。北朝鮮を含む東アジア情勢,あるいは中東情勢といった地域情勢やグローバルな課題についても,日本の立場への理解を求めていきたいと考えます。
(2)「中堅・中小企業海外安全対策ネットワーク」
【岸田外務大臣】7月のダッカ襲撃テロ事件を受け,外務省と日本商工会議所の間で立ち上げた「海外安全対策タスクフォース」の議論を踏まえて,海外の中堅・中小企業の安全対策を強化するため,「中堅・中小企業海外安全対策ネットワーク」を立ち上げます。第1回会合は9月下旬に開催することとしたいと考えています。
米国の核の先制不使用
【フリーランス 上出氏】核の問題なんですけども,核先制不使用の問題についてちょっとご質問いたします。8月にですね,アメリカの新聞が,安倍首相がオバマ大統領が核先制不使用を表明したことに対して異議を唱えているというような報道をされて,それに対して安倍首相が反対いたしました。その後9月に入って,オバマ大統領が核先制不使用そのものの見直しをするんだという報道もされております。そういった事実関係も含めまして,外務省としてはそれに対して反対だという,核先制不使用に対して反対だという報道もされていますが,そのことも含めまして,事実確認を含めまして大臣のご所見を,この問題についてのご所見をお伺いできればと思います。
【岸田外務大臣】ご指摘の核の先制不使用の問題ですが,ご指摘のように様々な報道が出ていることは承知をしています。ただその報道について,一つ一つについてコメントすることは控えたいと思いますし,いずれにしましても,米国は核の先制不使用について何ら正式な決定は行っていないと承知をしています。こうした決定が行われていない段階でありますので,このことについてコメントは控えなければならないと考えています。こうした問題についても,平素から日米間で,様々な緊密な意思疎通を図っております。引き続き意思疎通には努めていきたい,このように考えます。
【フリーランス 上出氏】そうしますと報道にありますように,外務省も反対の意向だということについては,今の段階ではそういうことはないというふうに受け止めてよろしいですか。
【岸田外務大臣】報道についてコメントすることは控えますと,今申し上げました。日米両国は様々な機会を通じて,日米安保体制の強化に努めておりますし,「核兵器のない世界」を目指すという,この目標については共有していると考えます。引き続き緊密に意思疎通を図っていきたい,このように考えています。
北朝鮮の核実験関連
【時事通信 市川記者】一部報道なんですけれども,北朝鮮の制裁について日米韓で原油の全面禁輸と,北朝鮮からの石炭・鉱物資源の輸入を禁止する方向で働きかけるという報道があったんですけれども,事実関係を確認させてください。
【岸田外務大臣】北朝鮮に対する対応,特に9月9日,5回目の核実験が行われた後の対応ですが,まずは国連安保理におきまして緊急会合が招集され,報道ステートメントが発出され,そして更なる制裁措置を含む新たな決議の議論を開始する,こういった点で一致をしたということであります。是非,これは議論をしっかり進めていかなければならないと思いますし,そして各国の独自の措置については,我が国の措置として従来からヒト・カネ・モノ,こうした流れを実効的に規制する厳しい措置を課しております。今後の取組については,こうした措置の拡充・強化を含む,あらゆる可能性を検討しているところです。今ご指摘のようなですね,具体的なことについては,まだ様々な議論があるところでありますし,何も決まってはおりません。安保理の場においてもしっかりと議論に貢献していきたいというふうに思いますし,我が国としても様々な可能性を検討していきたい,このように思っています。
岸田大臣の国連総会出席
【中国新聞 田中記者】国連総会に関連して伺いたいのですけれども,先般の作業部会で核兵器の法的禁止に向けて来年の交渉を開始するという決議が採択されましたけれども,これを受けて今回の総会でも,同じように来年の交渉開始に向けた決議が出され,また採択に向けた決を取ることもあるんじゃないかと思うんですが,これについて日本はどういう対応を取られるお考えか,また,そもそも法的禁止に向けては時期尚早だということを公的な場で外務省としても発表されてこられましたけれども,これについて変わりがないのか,またその理由についても改めて教えてください。
【岸田外務大臣】国連の場においても様々な場で核軍縮・不拡散の議論は行われるというふうに考えます。そして法的な禁止の議論についてのご質問ですが,我が国としましては従来から申しあげているように,核軍縮・不拡散において,具体的な結果を出すためには,核兵器国と非核兵器国の協力がなければならない,協力なくして具体的な結果を出すことはできないという考え方に基づいて,現実的・実践的な取組を求めています。
こうした考え方に基づいて核兵器のない世界に向けて議論を前進させるためにはどうあるべきなのか,こうした考えに基づいて取組を続けています。個々具体的な会議,あるいは様々な判断につきましては,今申し上げた基本的な考え方に基づいて,それぞれ対応していかなければならないと考えます。具体的な議論をしっかりと確認した上で我が国としてあるべき対応をしっかり判断していきたい,このように考えます。
日中外相電話会談
【テレビ朝日 小池記者】先般の日中外相電話会談の後なんですけれども,中国外務省のホームぺージにはですね,一方的な制裁に反対するですとか,対話を重視するといった姿勢,今までと変わらないのかとも受け止められるような姿勢がですね,ホームページに出ていたんですけれども,そのことに対する会談,電話会談の後になんですけれども,そのことに対する中国側の姿勢に対する受け止めとですね,来週からの国連でどのようなことを中国に期待をされるかということをお願いいたします。
【岸田外務大臣】日中外相会談につきましては,30分にわたって様々な率直な意見交換を行いました。詳細については控えなければなりませんが,更なる制裁を含む新たな安保理決議の採択に向けて,安保理において連携していく,こういったことについては両者の間で確認ができたと考えています。
そして安保理の議論は,引き続き続いています。その中で責任ある安保理常任理事国としての対応を中国に求めていきたいと思いますし,我が国も非常任理事国の一国でありますので,しっかりと貢献をしていきたいと思います。具体的にはこうした議論の結果,どのような結論に達するかということです。是非,これからしっかりとした議論を続けていきたい,このように考えます。
岸田大臣の国連総会出席
【中国新聞 田中記者】先ほどの関連で,核兵器保有国と非核兵器保有国の協力が必要だということ,確かにおっしゃってこられたと思うんですが,今回の決議でも100か国以上がですね,賛成にまわっているという実態があって,かなりその溝が深いというのは大臣おっしゃるとおりだと思うんですが,この現状はどう受けとめていらっしゃいますでしょうか。
【岸田外務大臣】核兵器国と非核兵器国の意見の相違,対立ということについては,昨年のNPT運用検討会議など様々な場で感じる場面があります。しかし,だからこそ日本は唯一の戦争被爆国として,こうした議論を進めるべく,そして具体的な結果を出すべく,しっかりと汗をかく責務を担っていると認識をいたします。こうした現状を見るにつけても,より一層核兵器国と非核兵器国の協力を得るためにはどうあるべきなのか,日本としてより現実的で実践的な取組が求められるということを強く感じています。是非,日本のこうした役割をしっかり自覚しながら,国際的な議論をしっかりリードできるよう努力を続けていきたい,このように考えます。
平和安全法制
【西日本新聞 田中記者】19日に安全保障法が成立して1年を迎えますけれども,平和安全保障法ですね,改めてなんですが,その意義とですね,あと日本を取り巻く安全保障環境,なかなか厳しい状況が続いていますけれども,今後の課題などありましたら教えてください。
【岸田外務大臣】この平和安全法制の議論は,日本が厳しい安全保障環境の中で自らの国民の命や暮らしを守るためには,どのような対応が求められるのかという議論を,平和憲法との関係において,日本としてどこまで対応できるのかという議論との兼ね合いにおいて,国会において200時間を超える長時間にわたって議論を行い,国民の皆様に対して説明を行ってきました。法律は成立しましたが,引き続きこうしたこの法律の意義は説明していかなければならないと思います。そしてこの法律の意味については,国内の反応ももちろんしっかりと注視し,説明努力を続けていかなければなりませんが,国際社会の反応,多くの国々から日本のこうした取組みに対して評価するという声が寄せられている,こうしたこともしっかりと説明しながら,法律に対する理解を得るべく努力を続けていく,こうしたことは大事なのではないかと思います。
日本がこの厳しい安全保障環境の中で国民の命や暮らしを守る,そして国際社会の平和や安定にしっかり貢献をしていく,こうしたことは大変重要な取組みであるということ,政治の取組として重要な取組であるということ,このことについて引き続きしっかりと説明を行っていきたい,このように考えます。
自民党総裁任期延長論
【NHK 瀧川記者】外交とはちょっと離れるんですけれど,自民党の総裁に関して,総裁任期について2点お聞きします。自民党内では来週から総裁任期延長をめぐって議論が始まるわけですけれども,これについて大臣はどう受け止めていらっしゃいますでしょうか。
【岸田外務大臣】自民党において様々な議題について,自由に,そしてじっくりと議論をする,これは結構なことではないかと思っています。この議論,どういった議論になるのか,引き続き見守っていきたい,このように思っています。
【NHK 瀧川記者】大臣はですね,ポスト安倍の候補者の一人ですし,先日の宏池会の研修会でもですね,いつの日か宏池会政権を目指すとおっしゃって,ポスト安倍に意欲を示されていると思います。2年後に総裁選があるわけですけれども,次の総裁選に向けて,大臣としては準備は進めていかれるというお考えなんでしょうか。
【岸田外務大臣】先日の宏池会の研修会でも申し上げたように,バランスのある政治というのが重要だということ,バランスのある政治が国民の安心感につながり,国民の安心感が政治に対する信頼感につながる,こうしたことは重要であるということを申し上げました。そしていつの日か,宏池会としても自らバランスある政治を実現する役割を担いたい,こういったことを申し上げたわけです。そのように申し上げたわけですが,2年先の話,2年先の状況についてはどんな状況になるのか,今から予断することは難しいと思います。2年先の話を今からすることは難しい,現状はそのぐらいしか申し上げられません。