記者会見
岸田外務大臣臨時会見記録
(平成28年8月24日(水曜日)17時24分 於:大臣接見室前)
冒頭発言
【岸田外務大臣】午前中,日中韓の外相会談については申し上げたので,午後行われました日韓外相会談,そして日中外相会談,この二つについてこちらから発言します。まず,日韓外相会談では,私の方から,本日の閣議で,昨年末の日韓合意に基づく日本側の支出について,予備費で10億円を支出することを決定したことをユン長官に伝えました。また,韓国側に対し,少女像の問題の適切な解決のための努力を含め,日韓合意の着実な実施を求めるとともに,双方が合意を誠実に実施していくことで一致いたしました。さらに,私の方から,先般の韓国の国会議員の竹島上陸に遺憾の意を示し,抗議をいたしました。北朝鮮問題については,今朝のSLBMと考えられる弾道ミサイル発射を含め,北朝鮮の挑発行動は断じて容認できず,北朝鮮への圧力強化などを通じ,拉致・核・ミサイルといった諸懸案の解決に向け,日韓・日米韓で緊密に連携していくことを確認いたしました。そして日中外相会談の方ですが,こちらでは,まず私から王毅部長に対し,最近の尖閣諸島情勢についての日本側の考えを改めて明確に,かつ直接伝え,事態の完全なる沈静化,そして再発防止,東シナ海全体の状況の改善等を強く求めました。これに対し,王毅部長からは,尖閣諸島情勢について中国側の見解を説明した上で,東シナ海情勢の悪化を防ぎ,不測の事態を回避することが重要,日中間で意思疎通を積み重ね,日中関係を改善していきたいとの趣旨の発言がありました。これを受け,私からは,東シナ海の状況が改善すれば,大局的な観点から,G20サミットの際の安倍総理と習近平主席との会談を含め,対話を通じて日中関係の改善を進めていきたい旨述べました。また,北朝鮮問題については,今朝の弾道ミサイル発射も踏まえて意見交換を行い,中国側の一層の対応を求めるとともに,引き続き緊密な連絡を保っていくことで一致をいたしました。今後とも我が国としては,対話のドアはオープンとの立場から,中国側と意思疎通を保ちつつ,中国側の行動を注視していきたいと思います。以上です。
質疑応答
【記者】日中のバイ会談で,大臣の方から王毅外相に対して,冒頭,尖閣のことに触れられたというふうに仰ってましたけれど,具体的に大臣の方からどのように懸念といいますか,伝えられたのでしょうか。
【岸田外務大臣】まず,東シナ海,尖閣諸島周辺の状況につきましては,これまでもたびたび中国側に様々なレベルで抗議を行い,説明を求めてきました。こうした日本の立場を改めて中国側に伝えると同時に先ほど申しましたように事態の沈静化,そして再発防止,そして東シナ海全体の状況の改善,こういったものについて強く求めた,こういったことを私の方から発言いたしました。
【記者】それに対する王毅外相からの発言に対して,それは日本政府として受け入れられるものであるというふうにお考えですか。
【岸田外務大臣】まずは沈静化,これが重要であるということを伝えました。しっかり状況を注視していきたいと思っています。
【記者】G20を含めですね,ハイレベルでの会談について大臣の方から事態の推移を見た上で検討したいと,対話についても考えたいとおっしゃっているのですけれども,それに対して王毅長官の反応は。
【岸田外務大臣】要は,状況が改善すれば,G20の…
【記者】それは大臣が仰った?
【岸田外務大臣】はい,いきたいという旨を申しましたが,基本的に話合いを通じて事態をコントロールするという趣旨の発言はありました。私の方から,まずは事態の沈静化が重要だということも申し上げました。こういったやり取りがありました。それ以上の詳細は控えます。
【記者】大臣の方から東シナ海全体の状況の改善ということを求めたということですけれども,具体的にどういう点が見られれば,日本政府としては改善した,あるいは状況は戻ったというふうに認定できるのでしょうか。
【岸田外務大臣】東シナ海全体というのは,尖閣諸島だけではなくして,東シナ海の資源開発など,東シナ海全体の問題を指しています。こうした全体について改善を,従来から求めていましたし,これからも求めていきたいと思っています。
【記者】日中間でですね,連絡メカニズムについての議論,これはあったのでしょうか。
【岸田外務大臣】日中間での意思疎通が重要であるということでは一致をしています。海空連絡メカニズムの重要性については,私の方から指摘をしております。いずれにせよ事態が沈静化した上で,こうした話合いをしていくということは大切なことであると考えます。
【記者】東シナ海の状況が改善すれば,G20の日中首脳会談を含め,日中間の関係を改善していきたいと大臣から仰ったということなんですけれども,逆に言うと,東シナ海の状況が沈静化に向かわなければG20での日中首脳会談は難しいというご認識でよろしいでしょうか。
【岸田外務大臣】東シナ海の情勢沈静化は重要である,ということをしっかり伝えました。そしてそれに対して,中国側からも,こうした事態をコントロールしていくというこの発言がありました。まずは,状況をしっかりと注視していきたいと思っています。
【記者】このところ日中関係は,尖閣諸島の問題を巡って大分ぎくしゃくしてきたと思うんですけれども,今日の会談によって,日中関係の改善につながる,そういったきっかけとなるというような認識はありますでしょうか。
【岸田外務大臣】こうした外交当局,そして外相レベルでのこの意思疎通というのは,絶えず重要であると認識をしております。こうした意思疎通を通じて,状況が改善され,そして結果として両国関係が改善されていく,こうした道筋を作っていくことを期待をしています。今日の話し合い,この意思疎通も,意義ある意思疎通であったと思いますが,これが是非,今後につながっていくことを期待していきたいと思っています。