記者会見
岸田外務大臣会見記録
(平成28年7月12日(火曜日)10時30分 於:官邸エントランスホール)
冒頭発言
(1)南スーダンの首都ジュバの危険情報の引き上げ
7月7日以降,南スーダンの首都ジュバ市において,政府軍と反政府軍との間で銃撃戦が相次ぐなど,治安情勢が急激に悪化しております。
このような情勢を踏まえて,首都ジュバ市の危険情報を「レベル3:渡航は止めてください。(渡航中止勧告)」から,「レベル4:退避してください。渡航は止めてください。(退避勧告)」へ引き上げました。これにより,南スーダン全土の危険情報がレベル4(退避勧告)となりました。
昨晩,南スーダン政府,そして第一副大統領側,双方が敵対行為の停止を命令いたしました。双方がこれを遵守し,即時停戦を呼びかけていきたいと考えます。
引き続き,最新の情勢を注視しつつ,邦人の安全確保に万全を期して参りたいと思います。
(2)「在外邦人の安全対策強化にかかる検討チーム」の点検
ダッカ襲撃テロ事件を受け,海外邦人全般の安全対策につきまして,濱地外務大臣政務官を長として,昨年5月に発表した「在外邦人の安全対策強化にかかる検討チーム」の提言の実施状況を点検するよう指示をいたしました。
第一回会合は,15日(金曜日)に開催いたします。在外邦人の安全をめぐる最近の状況の変化を踏まえながら,8月中に点検の報告書を公表できるよう,しっかり議論を進めて参りたいと思います。
(3)サイバー安全保障政策室の設置
本日,外務省の総合外交政策局安全保障政策課の下に,新たにサイバー安全保障政策室を設置いたしました。
分野において,各国との連携をより一層強化し,国際的な議論をリードすべく,外交的な取組を更に力強く推進して参ります。
南スーダン情勢
【記者】先ほどの南スーダンの状況が,今大変緊迫した状態になっているというお話がありましたけれども,現段階で邦人は現地に何人いるのか,また安全確保というのは確認されているのか,教えてください。
【岸田外務大臣】まず,現地にいる邦人の数ですが,自衛隊施設部隊約350名のほか,大使館関係者及びJICA等の南スーダン復興支援のために滞在している経済協力関係者,合わせて約80名が南スーダンにおられます。
そして在留邦人につきましては,7日中に在南スーダン日本国大使館からジュバ市内の在留邦人約70人全員の安全を確認いたしました。また,同大使館から国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)に派遣されている自衛隊施設隊に連絡を取り,異状がないことも確認をいたしました。その後も同館から随時,在留邦人に連絡を取っており,現在のところ全員の無事を確認している,こうした状況にあります。
【記者】防衛省の方でC130輸送機を現地に,隣国に派遣して,安全に戻れるように手配をしているところですけれども,具体的にどれぐらいの時間をかけて,安全に日本に送り届ける予定でいらっしゃるのか,お伝えください。
【岸田外務大臣】まず政府としましては,経済協力関係者を含めた在留邦人の迅速かつ安全な避難のために,他国軍による輸送も含めて,あらゆる可能性を検討しています。その中にあって,安全を確保した上で,自衛隊による陸上輸送及び自衛隊が保有するC130輸送機のジブチへの展開の準備を進めているということであります。
現地の状況につきましても,大統領側,第一副大統領側,双方が停戦を呼びかけるなど,様々な動きが存在いたします。こうした状況もしっかり確認した上で,この対応を考えていかなければなりません。いずれにしましても,在留邦人の安全が第一です。この安全を第一に考えながら,具体的な対応はこれから状況をしっかり確認しつつ,進めていかなければならないと考えます。よってあと何日で,何をすると,まだ現在,確定したものを申し上げるのはまだ早いと思っています。
南シナ海に関する比中仲裁裁判
【記者】南シナ海問題なんですけれども,仲裁裁判の判断が,今日午後にも出るというふうになっているんですけれども,日本の立場を声明として表明するかと思うんですけれども,日本政府としては今回の判断というのは,国際ルールを遵守する,その重要性を再確認するような機会になるととらえているのでしょうか。
【岸田外務大臣】まず,オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所は,フィリピンが中国を相手に開始した,国連海洋法条約に基づく仲裁手続に関する最終判断を,本日7月12日に発出する旨,公表しております。
我が国としては,国際法に基づく紛争の平和的な解決を目指すことは,地域における法の支配に立脚した国際的な秩序の維持・発展に資する,こういった考え方に基づいて,フィリピンによる国連海洋法条約に基づく仲裁手続の活用を支持しているというのが我が国の立場です。
そして,ご指摘の声明の発出ですが,声明の発出については,現時点では,まだ決まってはおりませんが,法の支配の貫徹に向けて関係国と協力を進めていくということ,そして外交を通じた平和的な解決を行うということ,こうした取組はしっかり促していかなければならない,このように考えます。
【記者】大臣自ら会見を,今日,判断を受けて行うような用意はございますでしょうか。
【岸田外務大臣】今申し上げたように,声明の発出等を含めて,具体的な我が国の反応,行動については,現時点では何も決まっておりません。しっかりと判断の発出,最終判断の発出,これを確認したいと思います。
米国の核兵器先制不使用報道
【記者】アメリカのオバマ大統領が,現地報道ですが,核兵器の先制不使用を検討していると,報道がありますけれども,核軍縮に向けて,大臣としてはこの件については期待されることがあったら,是非,一度お伺いしたいのですが。
【岸田外務大臣】まず,ご指摘の報道については,私(大臣)も見ました。承知をしております。ただ,これはそういった議論が行われているという報道内容だったと思います。米国政府として何か決めたとかですね,こういうことが決まったという内容ではなかったと思いますので,それについて私(大臣)の立場から,今コメントするのは控えるべきではないかと思います。そういった議論,引き続き注視していきたいと考えます。
南シナ海に関する比中仲裁裁判
【記者】中比の仲裁裁判に関して,中国は既に,どんな判断が示されようと,それに従うつもりはないというふうな立場を表明しているのですけれども,それについてどういうふうに,強制力というのはなかなか難しいところなんですけれども,どのように実効性を持たせられるのか,いかがでしょうか。
【岸田外務大臣】ご指摘の中国政府による意見,考え方,これは承知はしております。ただ一方で,本件の仲裁手続の最終判断,これは紛争当事国間において拘束力を有するものであると考えております。
参議院選挙結果
【記者】週末に参議院選挙が行われまして,大臣も全国,遊説行かれたと思うのですが,今回の選挙の結果についての受け止めとですね,あるいは今後の外交,選挙はあまり直接的には関係はないですけれども,今後の自民党政権への影響についてはどのように受け止めておられるかということについて,お伺いできますでしょうか。
【岸田外務大臣】まず,選挙の結果については,総理も勝敗ラインは改選議員数の過半数ということを言っておられたと記憶しています。すなわち61議席だったと思いますが,今回70議席に達しております。そのラインは大きく越えているということですし,また自民党に対する比例の投票も2,000万票を越えたと聞いております。多くの国民の皆様方から,この選挙を通じて自民党,さらには与党に対するご理解・ご指示を頂いたと受け止めています。
外交については,私(大臣)も選挙期間中,日本の経済政策及び政治の安定について申し上げてきました。日本は引き続き,こうした経済の取組,あるいは政治の安定をしっかり守っていくということを,選挙を通じて国際社会にも示すことができたのではないかと考えます。そうした取組,しっかり進めながら国際社会における日本の存在感,発言力,しっかりと確保していきたい,このように考えます。
南シナ海に関する比中仲裁裁判
【記者】大臣,先ほどの中比の関係ですけども,これ日本にとってどんな意味を持つことになりそうですか。
【岸田外務大臣】日本は,やはり国際社会において法の支配の貫徹,これが重要であるということを訴えてきました。また,国際法に基づいて平和的に物事が解決される,こうしたことの重要性を訴えてきました。こういった考え方に基づいて,今回の仲裁手続に関する最終判断というものは重要であると考えてます。そうした点で,今回の判断を重視していきたいと考えます。